
先に結論:乳児の頭囲拡大は多くが良性。ただし「画像で確認」と「経過の頭囲グラフ」が大切
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 頭囲拡大とは | 頭囲が同じ月齢の平均より2標準偏差を超えて大きい状態(Huang 2023) |
| よくある原因 | 脳の表面の髄液の隙間が広い良性くも膜下腔拡大(BESS)(Huang 2023) |
| 注意したい病気 | 水頭症、硬膜下の液体、腫瘍、まれな先天性の病気 |
| 画像の見分け | BESSは前頭部の髄液腔が広く、脳室はほぼ正常。水頭症は脳室が広がる |
| 受診の目安 | 頭囲の伸びが急、元気がない・吐く・機嫌が悪い、発達の遅れ、外傷が疑われるとき |
乳児の頭囲拡大(巨頭症)とは
頭囲拡大(macrocephaly)は、頭囲が同じ年齢・性別の平均より2標準偏差を超えて大きい状態をいいます。乳児健診でよく見つかり、頭部の画像検査を行う理由として多い所見です(Huang 2023)。ただし頭囲が大きいこと自体は診断名ではなく、良性のこともあれば、詳しい検査が必要なこともあります(Bryant 2021)。
頭の中は「髄液」「血液と血管」「脳そのもの」「頭蓋骨」の4つで構成され、どれが増えているかを考えると原因が整理できます。小児では髄液の隙間が広い場合が最も多く、中でも良性くも膜下腔拡大(BESS)が代表です(Huang 2023)。
| 増えているもの | 代表的な原因 |
|---|---|
| 髄液 | 良性くも膜下腔拡大(BESS)、水頭症、硬膜下の液体(水腫) |
| 血液・血管 | 硬膜下血腫などの出血 |
| 脳そのもの | 腫瘍、まれな先天性・代謝性の病気 |
| 頭蓋骨 | 頭蓋骨そのものの病気 |
(Huang 2023を参考に整理)
良性くも膜下腔拡大(BESS)
BESSは、脳の表面と頭蓋骨の間(くも膜下腔)の髄液が多めに見える状態で、「良性外水頭症」などとも呼ばれます。乳児の頭囲拡大の原因として最も多いとされます(Nasiri 2021)。
画像の特徴
CT・MRI・エコーでは、前頭部の髄液の隙間と大脳半球の間(前方の半球間裂)が広く、シルビウス裂が広いこともあります。脳室は正常か、ごくわずかに広い程度です(Raissaki 2023)。
| 見るところ | BESSで見られる所見 |
|---|---|
| 髄液の隙間の幅 | 脳表と頭蓋骨の間の幅が5mmを超えると拡大、10mmを超えると著明な拡大とされる(Raissaki 2023) |
| 脳の圧迫 | 髄液で脳が押されていない(脳回の平坦化なし) |
| 血管 | 細い血管が拡大した隙間を横切り、脳表側へ引き寄せられていない |
| 脳室 | 正常かわずかに拡大 |
(Raissaki 2023)。ただしBESSには統一された画像基準や確立した境界値はありません(Raissaki 2023)。
症例 生後5か月の男児 乳児の良性くも膜下腔拡大

引用:Radiopaedia(Benign enlargement of the subarachnoid space in infancy)
前頭部の左右と前方の半球間裂に髄液の隙間の拡大があり、隣り合う脳回の平坦化はありません。脳室は拡大していません。症例ページには前大泉門の拡大と、皮質静脈が頭蓋骨の内板に接して見えることも書かれています。
経過と見通し
BESSの赤ちゃんは、頭囲が大きい家族がいることが多く、生まれたときから頭囲が大きいか、普通のことがあり、多くは発達が正常です。広がった髄液の隙間は1〜2歳ごろまでに小さくなり、頭囲は大きめの曲線(95〜98パーセンタイル付近)に沿って平行に伸び続けます(Raissaki 2023)。
一方、BESSの乳児32人を2歳まで追った研究では、発達の遅れ(デンバー式発達スクリーニング)を22%に認め、出生時と生後6か月の頭囲が大きい子ほど遅れが目立ちました(Nasiri 2021)。小規模な研究ですが、BESSでも定期的な発達の確認が大切です。頭囲拡大の乳児で、頭の成長の仕方が異なる(5〜7か月での頭囲の伸びが速い)ことがBESSを疑う手がかりになるとの報告もあります(Karuparti 2025)。
家族性の頭囲拡大
頭囲が大きい健康な子どもを調べた古い研究では、頭囲を測れた13家族のうち11家族で、親のどちらか(主に父親)の頭が大きいという結果でした(Day 1979)。親の頭囲の確認は、不要な検査や不安を避ける助けになります。
水頭症との違い
水頭症は、髄液が脳室にたまり、脳室が拡大する病気です。乳児では頭囲が次第に大きくなる形で現れ、年長児では機嫌が悪い、頭痛、吐き気・嘔吐、ぼんやりして元気がないなどが目立ちます(James 1992)。原因には、先天性のものや、感染、腫瘍、出血に続くものがあります(James 1992)。髄液の流れについては脳室と髄液の流れと交通性・非交通性水頭症の違いで解説しています。
| BESS | 水頭症 | |
|---|---|---|
| 広がる場所 | 脳の表面(くも膜下腔) | 脳室 |
| 脳室 | 正常かわずかに拡大 | 明らかに拡大 |
| 経過 | 1〜2歳ごろまでに髄液腔が縮小 | 多くは髄液を逃がす手術などの治療が必要(James 1992) |
| 症状 | 多くは無症状・発達は正常 | 頭囲の急な増大、嘔吐、元気がないなど |
くも膜下腔や脳槽の位置関係は脳槽はどこ?大槽・鞍上槽・迂回槽・シルビウス槽などの名前と場所も参考になります。
硬膜下の液体(硬膜下水腫・硬膜下血腫)との見分け
頭囲の大きい乳児では、脳の表面に液体がたまる硬膜下水腫や硬膜下血腫が見つかることがあります。BESSでは、液体は脳を押さず、血管が隙間全体を横切りますが、硬膜下水腫では血管が脳表側へ押しやられます(Raissaki 2023)。エコーでは、クモ膜がはっきり見えることが硬膜下の液体を示す手がかりになります(Raissaki 2023)。
頭囲拡大で画像検査を受けた538人(2歳以下、水頭症や急性外傷は除外)では、水頭症は7人(1.3%)、大きな両側の慢性硬膜下血腫が1人(0.2%)でした。BESSの乳児に偶然見つかる硬膜下の液体は311人中18人(5.8%)で、BESSの隙間が深いほど多い傾向でした(Tucker 2016)。BESSは硬膜下の液体が見つかる素地になりうるため、見つかったからといって虐待を意味するとは限りません(Tucker 2016)。
一方で、外傷の既往がない2歳未満の硬膜下血腫は虐待による頭部外傷を考える必要があり、BESSがあっても、硬膜下の液体が見つかったときには虐待の評価(骨の全身撮影など)を検討することが勧められています(Raissaki 2023)。詳しくは硬膜下水腫とは?頭のCTで言われたら、小児虐待による外傷の特徴と画像診断をご覧ください。
保護者の方へ:受診の目安
頭囲の評価は、一度の値より母子手帳の成長曲線で、頭囲の伸び方を見ることが大切です。一般的な目安として、次のような場合は早めに小児科や小児神経・脳神経外科に相談してください。
- 頭囲の伸びが急で、成長曲線を大きく上に外れていく
- 機嫌が悪い、ぐったりして元気がない、嘔吐を繰り返す(James 1992)
- 首のすわりやお座りなど、発達の遅れが気になる
- 頭をぶつけた、原因のはっきりしないけがやあざがある
健診で指摘されたのに元気で発達も順調な場合は、慌てずに医師の説明どおり、頭囲を定期的に測って経過を見ることが多いです。気になる症状があれば医療機関を受診してください。ご両親の頭囲を医師に伝えると診断の助けになります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 頭が大きいと、頭がいい・悪いに関係しますか?
A. 家族性の大きい頭は発達が正常な子が多く、BESSでも多くは正常に発達します(Day 1979、Raissaki 2023)。ただし発達の遅れが出る子もいるため、健診での確認が大切です(Nasiri 2021)。
Q. BESSは治療が必要ですか?
A. 多くの場合、広がった髄液の隙間は1〜2歳ごろまでに小さくなります(Raissaki 2023)。治療ではなく経過観察が中心です。
Q. 画像検査は何を選びますか?
A. 大泉門が開いている乳児ではエコーが使えます。必要に応じてCTやMRIを組み合わせます(Huang 2023、Raissaki 2023)。どの検査かは主治医と相談してください。
Q. 家で気をつけることはありますか?
A. 母子手帳の頭囲の記録を持参し、ご両親の頭囲も伝えてください(Day 1979)。健診での指摘が続くかどうかも、診断の助けになります。
参考文献
- Huang J, Sarma A, Little S, et al. Systematic Approach to Pediatric Macrocephaly. Radiographics. 2023;43(5):e220159. PubMed
- Raissaki M, Adamsbaum C, Argyropoulou MI, et al. Benign enlargement of the subarachnoid spaces and subdural collections-when to evaluate for abuse. Pediatr Radiol. 2023;53(4):752-767. PubMed
- Tucker J, Choudhary AK, Piatt J. Macrocephaly in infancy: benign enlargement of the subarachnoid spaces and subdural collections. J Neurosurg Pediatr. 2016;18(1):16-20. PubMed
- Nasiri J, Madihi Y, Mirzadeh AS, et al. Neurodevelopmental Outcomes of Infants with Benign Enlargement of the Subarachnoid Space. Iran J Child Neurol. 2021;15(2):33-40. PubMed
- Karuparti S, Lizer A, Landwehr F, et al. Head Growth in Infants with Benign Enlargement of Subarachnoid Spaces Versus Macrocephaly. J Pediatr. 2025;287:114743. PubMed
- Day RE, Schutt WH. Normal children with large heads–benign familial megalencephaly. Arch Dis Child. 1979;54(7):512-7. PubMed
- James HE. Hydrocephalus in infancy and childhood. Am Fam Physician. 1992;45(2):733-42. PubMed
- Bryant JP, Hernandez NE, Niazi TN. Macrocephaly in the Primary Care Provider’s Office. Pediatr Clin North Am. 2021;68(4):759-773. PubMed
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