先に結論:正常の空腸が壁肥厚に見える落とし穴
- 空腸は普段しぼんでいる(虚脱している)ことが多く、CTで壁が厚く見えてもしばしば正常です
- 腸閉塞で拡張した腸のすぐ先のしぼんだ空腸を「閉塞の原因の壁肥厚」と間違えないことが大切です
- 壁肥厚とは腸の壁が正常より厚くなった状態で、小腸の壁は広がっていれば3mmを超えないのが目安です(Fernandes 2014)
- 本当の壁肥厚では、粘膜・浮腫の層・漿膜の3層構造(target sign)がはっきりしたり、腸管が広がっても厚いままだったりします
腸管の壁肥厚とは?正常の厚さの目安
壁肥厚とは腸の壁が正常より厚い状態です。正常の厚さは腸の広がり具合で変わります(Fernandes 2014)。
| 部位 | 正常の壁の厚さの目安 |
|---|---|
| 小腸 | 広がっていても3mm以下 |
| 大腸 | 広がれば1〜2mm、縮むと5mm程度まで |
正常な空腸が壁肥厚に見える理由
空腸では異常はなくてもあたかも壁肥厚があるため注意が必要です。
通常空腸はほぼ常に虚脱しているため、収縮した壁は正常でも厚く見えるためです。
腸閉塞症例などでこの空腸を閉塞機転などと間違えないようにしましょう。
空腸に病的な壁肥厚がある場合、浮腫などにより3層構造(target sign)が明瞭になることが多いですが、腫瘍などでは均一な壁肥厚を示すこともあります。
具体例を見てみましょう。
【症例】40歳代 女性 腹痛、嘔気・嘔吐

腸閉塞症例です。
拡張した空腸に連続してあたかも壁肥厚様に見える空腸があります。
一見壁肥厚があり、この部位が閉塞機転となって腸管が拡張に見えるかもしれませんが、3層構造は明瞭化しておらず、単に虚脱している正常空腸であることが分かります。
同部が閉塞機転となっているわけではなく、腸閉塞の腸管の拡張がこの手前までおよんでいるため、このように見えるということです。真の壁肥厚を評価する際は、範囲(限局性<5cm、区域性6〜40cm、びまん性>40cm)と対称性に注目します。限局性で不整・非対称な壁肥厚は腫瘍を、壁肥厚の程度に比べて周囲の脂肪織濃度上昇が目立つ場合は炎症性疾患を考えます。
壁肥厚の造影CTでの見え方(5つのパターン)
真の壁肥厚では、造影CTでの壁の濃度のパターンで病気を絞り込みます(Wittenberg 2002)。
| パターン | 見え方 | よくみられる病気 |
|---|---|---|
| white(白) | 静脈と同じかそれ以上に強く染まる | 炎症性腸疾患、血管性疾患 |
| gray(灰色) | 造影の弱い均一な壁 | 良悪の区別に使うが特異度が最も低い |
| water halo(水の層) | 2〜3層の対称な層構造 | 炎症性腸疾患、血管性疾患、感染など |
| fat halo(脂肪の層) | 中間層が脂肪濃度の3層構造 | 小腸ではクローン病、大腸では炎症性腸疾患 |
| black(黒) | 壁の中のガス(腸管気腫) | 虚血、感染、外傷 |
ちなみに、3層構造を保った壁肥厚(water target pattern)を小腸で認めた場合は、以下の様な疾患を鑑別に挙げる必要があります。

腸管の壁肥厚でよくある疑問(Q&A)
Q. 腸の壁が厚いと言われました。どんな病気が考えられますか?
A. 限局した壁肥厚は腫瘍や炎症で起こり、区域性・びまん性の壁肥厚はリンパ腫を除くと虚血・感染・炎症などの良性の病気が多いとされます(Fernandes 2014)。大腸も同様ですが、縮んで厚く見えるだけのこともあり、症状などと合わせて判断します。
腹痛や下痢・血便などが続くときは、医療機関で相談してください。
参考文献
- Macari M, Balthazar EJ. CT of bowel wall thickening: significance and pitfalls of interpretation. AJR Am J Roentgenol. 2001;176(5):1105-16. PubMed
- Wittenberg J, Harisinghani MG, Jhaveri K, et al. Algorithmic approach to CT diagnosis of the abnormal bowel wall. Radiographics. 2002;22(5):1093-107. PubMed
- Silva AC, Pimenta M, Guimarães LS. Small bowel obstruction: what to look for. Radiographics. 2009;29(2):423-39. PubMed
- Fernandes T, Oliveira MI, Castro R, et al. Bowel wall thickening at CT: simplifying the diagnosis. Insights Imaging. 2014;5(2):195-208. PubMed
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