先に結論:脳・頭部の嚢胞性病変

  • 脳の嚢胞性病変には、透明中隔腔・Verga腔・中間帆腔などの正常変異と、くも膜嚢胞・脈絡裂嚢胞・松果体嚢胞・巨大大槽などの良性の嚢胞が多く含まれます
  • コロイド嚢胞は第3脳室のMonro孔付近にでき、急な水頭症を起こすことがあるため要注意です
  • 髄液と同じ信号か、壁の造影・結節・拡散制限(類表皮嚢胞など)がないかを確認して区別します
  • 多くは症状のない偶然の発見で、成人の脳MRIではくも膜嚢胞が1.4%にみられます(Al-Holou 2013)

脳および頭部の嚢胞性病変の鑑別としては以下のものが挙げられます。

 

脳の嚢胞とは?症状は?

嚢胞とは液体がたまった袋状の構造で、脳の嚢胞の多くは生まれつきの構造や正常変異です。成人48,417人の脳MRIではくも膜嚢胞が1.4%にみられ、平均3.8年の経過で大きくなったのは2.3%でした(Al-Holou 2013)。症状が出るのは、大きくて脳や神経を圧迫するときや、髄液の流れをふさいで水頭症を起こすとき(コロイド嚢胞など)で、頭痛・吐き気・ふらつきなどがみられます。

嚢胞をみたときの考え方

頭蓋内の嚢胞性病変は、正常変異から腫瘍まで幅広いため、場所(脳実質外・脳実質内・脳室内)でまず分けると鑑別を絞りやすいです。そのうえで、髄液と同じ信号か、拡散強調像で高信号か、壁や結節に造影効果があるかを確認します。

主な嚢胞の見分け方

病変 好発部位 画像の特徴
くも膜嚢胞 中頭蓋窩、後頭蓋窩、鞍上部 全ての撮像法で髄液と同じ信号。FLAIRで抑制され、拡散制限なし。周囲の骨の菲薄化を伴うことがある
類表皮嚢胞(鑑別として重要) 小脳橋角部、鞍上部 T1・T2は髄液に近いが、FLAIRで抑制されず、拡散強調像で高信号。血管や神経を包み込む
脈絡裂嚢胞 側頭葉内側(海馬の上内側) 髄液と同じ信号。矢状断で紡錘形。造影効果なし
松果体嚢胞 松果体 多くは1cm未満。壁が薄く輪状に造影されることがある。壁が厚い・結節状なら腫瘍を考える
コロイド嚢胞 第3脳室前上部(Monro孔) CTで高吸収のことが多い。信号は内容によりさまざま
巨大大槽・Blake’s pouch cyst 後頭蓋窩 巨大大槽は小脳虫部が正常。Blake’s pouch cystは第4脳室とつながり、水頭症を伴うことがある
透明中隔腔・Verga腔・中間帆腔 正中 正常変異。髄液と同じ信号で、腫瘤効果なし

コロイド嚢胞の危険性

コロイド嚢胞は偶然見つかることもありますが、Monro孔をふさいで急な閉塞性水頭症を起こし、突然死の原因になりえます。64例の検討では、T2-FLAIRで高信号の嚢胞(53.1%)は大きく、若い患者に多く、低信号の嚢胞に比べて閉塞性脳室拡大の危険が高い(相対リスク6.18)ことが示されました。FLAIRでの信号と側脳室の大きさを必ず報告書に書きます。

症例 40歳代男性(コロイド嚢胞による水頭症)

第3脳室コロイド嚢胞 水頭症 頭部CT
引用:Radiopaedia(Colloid cyst with hydrocephalus)

頭痛で受診した症例の頭部単純CTです。Monro孔の位置に境界明瞭な高吸収の円形病変があり、両側の側脳室が拡大して閉塞性水頭症を起こしています。

落とし穴

  • 「髄液と同じに見える嚢胞」でも、拡散強調像を見ないと類表皮嚢胞を見落とします。
  • 壁の結節、造影される充実部分、周囲の浮腫がある嚢胞は、嚢胞性腫瘍(毛様細胞性星細胞腫・血管芽腫など)や膿瘍を考えます。膿瘍は内容が拡散強調像で高信号になります。
  • 寄生虫(神経嚢虫症)では、嚢胞内に頭節(点状の結節)がみられることがあります。

病変と取り違えやすい嚢胞・結節(海馬溝遺残・巨大血管周囲腔・側脳室壁の結節)

  • 海馬溝遺残(hippocampal sulcus remnant):海馬と歯状回の間にみえる径1〜2mmの丸い〜弧状の小さな嚢胞で、どの撮像でも髄液と同じ信号です。組織との対比で、胎生期の海馬溝が閉じきらずに残った腔(拡張した血管周囲腔)と確かめられています(Sasaki 1993)。7T MRIでは高齢でない健常成人33人の全員にみられ、形は点状・弧状・卵円形・数珠状とさまざまでした(Yamashita 2020)。側頭葉内側の小さな髄液信号を、梗塞や海馬硬化と取り違えないようにします。
  • 巨大な血管周囲腔(giant tumefactive perivascular spaces):37例の検討では、32例が大小の嚢胞の集まった多房性、5例が単房性で、全例が髄液と同じ信号で造影されませんでした。部位は中脳・視床が最多(36例中21例)で、次いで大脳白質(14例)でした。腫瘤効果が目立つこともありますが、腫瘍と取り違えないことが大切です。ただし中脳・視床のものは9例で水頭症を起こし、手術が必要でした(Salzman 2005)。
  • 側脳室壁のリング状結節(ring-shaped lateral ventricular nodules):造影MRI 1,111例中5例(0.45%)にみられ、側脳室前角や体部の天井に付く小結節で、T1・T2・DWIでは脳実質と同じ信号、FLAIRでわずかに高信号、造影されず、8〜24か月の経過で変化はありませんでした(Nakajima 2013)。鑑別には異所性灰白質、上衣下腫、上衣下過誤腫、上衣下巨細胞性星細胞腫が挙がります(Romano 2023)。

Blake’s pouch cystとは?症状は?

胎児期の第4脳室の袋(Blake’s pouch)が開通せずに残り、小脳の下に張り出したものです。小脳虫部の形が保たれる点がDandy-Walker奇形と異なります。胎児105例の検討では、Blake’s pouch cystと巨大大槽は約3分の1が胎内で自然に消え、ほかの異常のない生存例の90%以上は発達が正常でした(Gandolfi Colleoni 2012)。水頭症を起こすと、頭囲の拡大や嘔吐などで見つかります。

頭痛が強くなる、吐き気やふらつきが続くなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

症例 30歳代男性(Blake’s pouch cyst)

Blake's pouch cyst MRI T2強調像 矢状断
引用:Radiopaedia(Blake’s pouch cyst)

頭痛とかすみ目で受診した症例のT2強調像(矢状断)です。拡大した第4脳室が小脳の下の嚢胞とつながっており、小脳虫部は圧排されていますが形は保たれ、回転していません。中等度の水頭症を伴っています。

参考文献

  1. Osborn AG, Preece MT. Intracranial cysts: radiologic-pathologic correlation and imaging approach. Radiology. 2006;239(3):650-64. PubMed
  2. Khanpara SD, Day AL, Bhattacharjee MB, et al. The Variable Appearance of Third Ventricular Colloid Cysts: Correlation with Histopathology and the Risk of Obstructive Ventriculomegaly. AJNR Am J Neuroradiol. 2020;41(10):1833-1840. PubMed
  3. Al-Holou WN, Terman S, Kilburg C, et al. Prevalence and natural history of arachnoid cysts in adults. J Neurosurg. 2013;118(2):222-31. PubMed
  4. Gandolfi Colleoni G, Contro E, Carletti A, et al. Prenatal diagnosis and outcome of fetal posterior fossa fluid collections. Ultrasound Obstet Gynecol. 2012;39(6):625-31. PubMed
  5. Sasaki M, Sone M, Ehara S, et al. Hippocampal sulcus remnant: potential cause of change in signal intensity in the hippocampus. Radiology. 1993;188(3):743-6. PubMed
  6. Yamashita K, Zong X, Hung SC, et al. Hippocampal Sulcus Remnant: Common Finding in Nonelderly Adults on Ultra-High-Resolution 7T Magnetic Resonance Imaging. J Comput Assist Tomogr. 2020;44(1):43-46. PubMed
  7. Salzman KL, Osborn AG, House P, et al. Giant tumefactive perivascular spaces. AJNR Am J Neuroradiol. 2005;26(2):298-305. PubMed
  8. Nakajima R, Uchino A, Saito N, et al. Ring-shaped lateral ventricular nodules detected with brain MR imaging. Magn Reson Med Sci. 2013;12(2):105-10. PubMed
  9. Romano N, Fiannacca M, Castaldi A. Imaging of ring-shaped lateral ventricular nodules (RSLVNs). Neurol Sci. 2023;44(6):2223-2225. PubMed

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