人間ドック(脳ドック)やスクリーニングの頭部CTやMRIでたまたま発見される病気の一つに「くも膜嚢胞(くも膜のう胞)(arachnoid cyst)」があります。

頻度としては1000人に1-2人程度見られます。

今回はそんなくも膜嚢胞(くも膜のう胞)について・・・

  • 症状
  • 原因
  • 実際の画像を見ながら画像のポイント

をまとめました。

くも膜嚢胞の症状とは?

基本的にはほとんどの場合は症状がありません。

ただし、くも膜嚢胞ができた場所や大きさによっては、以下のような症状が出る場合もあります。

  • 頭痛
  • 肩こり
  • 痙攣発作
  • 対麻痺
  • 感覚障害

くも膜嚢胞の原因は何?

原因は

  • 先天性
  • 二次性

に大きく分かれます。

  • 常染色体優性多嚢胞腎

の患者では、この先天性くも膜嚢胞の合併頻度が高いと言われています。

一方で二次性というのは、生まれつきはくも膜嚢胞はないけれども、外傷や炎症によってくも膜嚢胞ができるというものです。

くも膜嚢胞の好発部位は?

くも膜嚢胞ができやすい部位があり、

  • 側頭葉先端部(側頭極)近傍の中頭蓋窩が約半数
  • 鞍上槽
  • 小脳橋角部
  • 後頭蓋窩
  • 円蓋部

などで見られます。

くも膜嚢胞のCT,MRI画像所見は?

脳脊髄液とほぼ同じ信号強度(等吸収)を示す嚢胞性病変として見られます。

すなわちCTでは周りの脳脊髄液と同じように低吸収(黒く)として見られますし、MRIでも周りの脊髄液と同じようにT1強調像では低信号、T2強調像では高信号の嚢胞性病変として認められます。

ただし、T2強調像では周りの脳脊髄液と比較して若干高信号に見られることがあり、これはこの嚢胞内だけ脳脊髄液の流れによる信号(flow void)が消失しているためと言われています。

また、嚢胞はゆっくりとサイズが増大することにより頭蓋骨(内板)に変形を来します。

これは嚢胞の拍動による骨変化とされています。

では実際の画像をいくつか見ていきましょう。

まずは典型的な側頭葉先端部(側頭極)近傍の中頭蓋窩のくも膜嚢胞2症例です。

【症例】10歳代男性 CT

右中頭蓋窩(側頭葉先端部)にくも膜嚢胞を疑う髄液と等吸収な低吸収域を認めています。

【症例】70歳代女性

左中頭蓋窩(側頭葉先端部)にくも膜嚢胞あり。

 

続いて側頭葉先端部以外に生じたくも膜嚢胞の画像です。

【症例】40歳代女性

左前頭部にくも膜嚢胞あり。

前頭骨の内板の菲薄化を認めています。

【症例】70歳代男性

左前頭側頭部に髄液と同じ信号強度を示す嚢胞性病変あり。くも膜嚢胞が疑われる。

前頭骨の内板の菲薄化を認めています。

治療が必要になるのは?

  • くも膜嚢胞が原因でてんかんが起こっていると考えられるとき
  • 硬膜下血腫や嚢胞内出血を来して頭蓋内圧が亢進した場合

などが治療の対象となります。

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