くも膜顆粒(arachnoid granulation)は、頭部CTや頭部MRI、脳ドックなどで偶然見つかることがある正常構造です。
静脈洞内や頭蓋骨近傍に丸い低吸収域・高信号域として見えるため、初見では「腫瘍ではないか」「骨が溶けているのではないか」「静脈洞血栓ではないか」と心配されることがあります。
しかし、多くのくも膜顆粒は病的意義のない生理的構造であり、画像上の特徴を理解しておけば、不要な精査や過剰な心配を避けることができます。
本記事では、くも膜顆粒の役割、好発部位、CT・MRI画像所見、鑑別すべき疾患について整理します。
先に結論:くも膜顆粒は心配のない正常構造
- くも膜顆粒は、脳のまわりの髄液を血液(静脈洞)に戻す正常な構造で、横静脈洞・上矢状洞の中や近くの頭蓋骨の内側に、小さな丸い影として見えます
- CT・MRIで髄液と同じ濃さ・信号(FLAIRで黒いことが多い)、境界がなめらか、造影されないのが特徴で、静脈洞血栓症・骨の腫瘍や転移と区別します
- 多くは経過観察も不要です。大きいものや形が不自然な場合は、MRIや造影検査で確認します
くも膜顆粒とは?
くも膜顆粒とは、くも膜下腔が硬膜静脈洞内、あるいは静脈洞近傍の硬膜・頭蓋骨内へ突出した小さな構造物です。
英語では arachnoid granulation と呼ばれ、別名として Pacchionian granulation(パキオニ小体) とも呼ばれます。
脳と脊髄は、外側から順に硬膜、くも膜(英語で arachnoid mater)、軟膜という3層の髄膜に覆われています。
くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔があり、この空間は脳脊髄液で満たされています。

くも膜顆粒は、このくも膜下腔の一部が硬膜静脈洞方向へ突出した構造です。
多くは上矢状洞、横静脈洞、S状静脈洞などの硬膜静脈洞内に認められますが、静脈洞近傍の頭蓋骨内板や板間層へ入り込むこともあります。

そのため、CTでは静脈洞内の充盈欠損として見えるだけでなく、骨条件で小さな骨欠損や圧排性変化のように見えることがあります。
くも膜顆粒の内部はくも膜下腔と連続しているため、CTやMRIでは脳脊髄液に近い吸収値・信号を示すことが多いです。
つまり、くも膜顆粒は「頭蓋内静脈洞やその周囲への、くも膜下腔の突出」と理解するとわかりやすいです。
くも膜顆粒の役割

くも膜顆粒は、古典的には脳脊髄液を静脈洞へ吸収・排出する部位として説明されてきました。
脈絡叢などで産生された脳脊髄液は、脳室系からくも膜下腔へ流れ、最終的に静脈系やリンパ系へ排出されます。
くも膜顆粒は、その排出経路の一つです。
ただし、近年では脳脊髄液の吸収経路はくも膜顆粒だけではなく、硬膜リンパ管、篩板周囲、脳神経周囲、脊髄周囲など複数の経路が関与すると考えられています。
したがって「くも膜顆粒だけが髄液吸収の唯一の出口である」とは言い切れません。一方で、画像診断の実務上は、くも膜顆粒を「髄液腔と静脈洞をつなぐ正常構造」と理解しておくとわかりやすいですね。
くも膜顆粒の好発部位
くも膜顆粒は、硬膜静脈洞に沿って認められます。
特に多い部位は以下です。
- 横静脈洞
- S状静脈洞
- 上矢状洞
- 静脈洞への皮質静脈流入部近傍
- 後頭骨、側頭骨、頭頂骨など静脈洞に接する頭蓋骨内
文献上、横静脈洞やS状静脈洞のくも膜顆粒は、静脈洞内の限局性充盈欠損として描出されることがあります。
また、造影CTや造影MRIでは、静脈洞内に丸い造影欠損として見えることがあり、静脈洞血栓との鑑別が問題になります。
くも膜顆粒のCT・MRI画像所見
くも膜顆粒はくも膜下腔と連続するため、CT及びMRIでは多くが脳脊髄液に近い吸収値・信号を示します。ただし1cmを超える大きなものでは、FLAIRなどで髄液と異なる信号や、内部の血管・間質を反映する構造を伴うことが多いと報告されています。
つまり、
- CTでは髄液と同じ程度の低吸収
- MRIでは髄液と同じ程度にT2強調像では高信号
を示す分葉状の構造物として存在します。
特にCTでは骨に溶骨性病変のように見えるのが特徴です。
ただし、くも膜顆粒の内部に石灰化を伴うことがあり(41個中3個)、その場合はCTの濃さやMRIの信号が髄液と異なって見えます(Roche 1996)。
MRIの少し細かい話になりますが、T1強調像やFLAIR像では静脈洞のflow void内に低信号として存在するためこのくも膜顆粒は同定しにくいとされます。
一方でT2強調像ではflow void内に高信号の脳脊髄液貯留として描出されるため異常な結節様構造として同定することができます。
巨大くも膜顆粒とは?
くも膜顆粒の多くは小さく、1cm未満のものが多いです(Trimble 2010)。
しかし、まれに1cmを超える大きなものがあり、これを巨大くも膜顆粒(giant arachnoid granulation)と呼ぶことがあります。
巨大くも膜顆粒は、横静脈洞、S状静脈洞、上矢状洞、静脈洞交会部などに発生し、腫瘤性病変や静脈洞血栓と誤認されることがあります。
多くは偶発的に見つかりますが、非常に大きい場合には静脈洞狭窄や静脈圧上昇との関連が議論されることもあります。
ただし、巨大くも膜顆粒が見つかったからといって、直ちに治療が必要になるわけではありません。
症状、静脈洞の狭窄の程度、周囲脳実質の変化、血流評価を総合して判断する必要があります。
くも膜顆粒と鑑別すべき疾患
くも膜顆粒と鑑別すべき主な疾患・病変は以下です。
- 硬膜静脈洞血栓症
- 転移性骨腫瘍
- 多発性骨髄腫
- 類上皮腫
- 皮様嚢腫
- 髄膜腫
- くも膜嚢胞
- 静脈洞内腫瘍
特に骨条件CTで頭蓋骨の小さな欠損として認める場合、骨腫瘍との鑑別が問題になります。
しかし、くも膜顆粒は静脈洞近傍にあり、辺縁が比較的整で、髄液と同様の画像所見を示します。
一方、腫瘍性病変では骨破壊が不整であったり、軟部腫瘤を伴ったり、造影効果を示したりすることがあります。
S状静脈洞・横静脈洞の「丸い抜け」は血栓?見分けのチェック
くも膜顆粒が横静脈洞やS状静脈洞の中に突き出ると、造影CT・MRI・MR静脈造影(MRV)で静脈洞内の欠損として写り、静脈洞血栓症と紛らわしくなります。横静脈洞・S状静脈洞のくも膜顆粒41個の検討では、CTでは髄液と同じ吸収値の境界明瞭な欠損、MRIではすべての撮像法でおおむね髄液と同じ信号を示し、MRAの斜めの投影では楕円形に見えて血栓と間違えられうるとされています(Roche 1996)。造影CTの24%、造影MRIの13%に静脈洞内の限局した欠損があり、多くは横静脈洞の外側寄りで、静脈が流れ込む部位の近くにありました(Leach 1996)。
読影のチェックポイント
- 形:小さく限局した、境界明瞭な丸い欠損か
- 濃さ・信号:CT・MRIで髄液と同じか
- 場所:横静脈洞・S状静脈洞の、静脈が流れ込む部位の近くか
これらに当てはまらない欠損では静脈洞血栓症を考えて精査します。静脈洞の隔壁やくも膜顆粒などの正常構造による「血栓ではない欠損」を血栓と誤ると危険な結果につながりうるため、その画像の特徴を知っておくことが勧められています(Zedde 2025)。
くも膜顆粒は年齢とともに増える?
くも膜顆粒は小児では目立たず、加齢とともに大きさや数が増える傾向があるとされます。3T MRIの120人の検討では、新生児と2歳児の85%で静脈洞や頭蓋骨にくも膜顆粒が見えませんでした(Radoš 2021)。
高齢者の頭部CTやMRIで偶然認めることが多いのはこのためです。造影3D T1強調像で静脈洞内のくも膜顆粒を評価した300例の検討でも、年齢とくも膜顆粒の大きさ・数に弱い正の相関がみられました。また2.7%では、脳実質がくも膜顆粒の中へ入り込む像(brain herniation into arachnoid granulation)を認めています。内部に脳と同じ信号の組織が見えても、それだけで腫瘍と判断しないことが大切です。
一方で、くも膜顆粒の数や大きさには個人差が大きく、明らかなくも膜顆粒が少ない人でも正常な髄液循環を保っていることがあります。
そのため、くも膜顆粒の有無だけで髄液循環の正常・異常を判断することはできません。
症例 40歳代 女性 頭痛

引用:Radiopaedia
左横静脈洞に低吸収な抜けを認め、造影MRIでは造影効果を伴っていないことがわかります。
左横静脈洞のくも膜顆粒を疑う所見です。
症例 60歳代 男性

こちらも上の症例と同様に左横静脈洞に抜けを認め、左横静脈洞のくも膜顆粒を疑う所見です。
症例 90歳代 女性

頭頂骨にCTで抜けを認めます。
一見、溶骨性病変のようにも見えますが、上矢状静脈洞のくも膜顆粒を疑う所見です。
症例 70歳代 女性

後頭骨にCTで溶骨領域を認めMRIでは髄液と同程度の高信号を示しています。
横静脈洞部のくも膜顆粒を疑う所見です。
症例 70歳代 女性

先ほどの症例と同じような部位にT2WIおよびCISSで脳脊髄液と同様の高信号を認めます。
こちらも同様にくも膜顆粒です。
関連記事)【保存版】頭部CTの見方まとめ!実際の画像を見ながら。
動画で画像をご説明したものもありますので、合わせてご覧ください。
あわせて読みたい:頭蓋骨のレントゲン(頭蓋単純X線)の見方
参考文献
- Leach JL, Jones BV, Tomsick TA, Stewart CA, Balko MG. Normal appearance of arachnoid granulations on contrast-enhanced CT and MR of the brain: differentiation from dural sinus disease. AJNR Am J Neuroradiol. 1996;17(8):1523-1532. PubMed
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- Leach JL, Jones BV, Tomsick TA, Stewart CA, Balko MG. Large arachnoid granulations involving the dorsal superior sagittal sinus: findings on MR imaging and MR venography. AJNR Am J Neuroradiol. 2008;29(7):1335-1339.https://www.ajnr.org/content/29/7/1335
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- Trimble CR, Harnsberger HR, Castillo M, et al. “Giant” arachnoid granulations just like CSF?: NOT!! AJNR Am J Neuroradiol. 2010;31(9):1724-1728. PubMed
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- Zedde M, Pascarella R. Non-Thrombotic Filling Defects in Cerebral Veins and Sinuses: When Normal Structures Mimic a Disease. Neurol Int. 2025;17(1). PubMed
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