腹部大動脈瘤 CTでの測り方

腹部大動脈瘤とは、おなかの大動脈が直径3cm以上にふくらんだ状態で、多くは腎動脈より下にでき、太くなるほど破裂しやすくなります。研修医のハジメくんと一緒に、CTでどこをどう測るか、太さと破裂リスク・検査の間隔・手術の目安、破裂と切迫破裂のCT所見を整理します。

先に結論

  1. 腹部大動脈瘤とは、おなかの大動脈が直径3cm以上にふくらんだ状態。ふだんは症状がなく、エコーや別目的のCTで見つかることが多い。
  2. CTでは壁在血栓も含めた外壁から外壁までを、血管に直交する断面で測る。エコーはCTより小さめに出やすい。
  3. 太いほど破裂しやすく、男性はおおむね5.5cmが手術を考える目安。破裂は後腹膜血腫、切迫破裂はcrescent signを探す。

目的から読む: 腹部大動脈瘤とは / 原因・なりやすい人 / CTでの測り方 / 大きさと破裂リスク / 検査の間隔 / 手術・ステントグラフトの目安 / 破裂のCT所見

腹部大動脈瘤とは?直径3cm以上で診断

腹部大動脈瘤とは、おなかの大動脈が直径3.0cm以上にふくらんだものです。多くは腎動脈が分かれる所より下にできます。

ハジメハジメ(研修医)
先生、腹部大動脈瘤って何cmからですか?健診のエコーで「大動脈が少し太い」と書かれた方がいて、太ければみんな瘤なのかなと思ってしまって…。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
研究で使われる線は3.0cmです。ただ、太さだけでなく「どこが」ふくらんでいるかも書きます。腎動脈との位置関係は、治療の選び方にそのまま効いてくるからです。
図1 腹部大動脈瘤ができる場所 前から見た腹部大動脈の模式図。多くの瘤は腎動脈の分かれ目より下にでき、へその高さで左右の総腸骨動脈に分かれる手前までふくらみます。
図1 腹部大動脈瘤ができる場所 前から見た腹部大動脈の模式図。多くの瘤は腎動脈の分かれ目より下にでき、へその高さで左右の総腸骨動脈に分かれる手前までふくらみます。

腹部大動脈瘤(AAA)の定義と場所

大動脈は心臓から出て、胸からおなかへ下り、へその高さあたりで左右の足へ向かう血管(総腸骨動脈)に分かれます。おなかの部分(腹部大動脈)がこぶのようにふくらんだものが腹部大動脈瘤(英語でAAA)です。多くは腎臓の動脈が分かれるところより下(腎動脈下)にできます。

臨床研究では、直径3.0cm以上を腹部大動脈瘤とし、3.0〜5.4cmを「小さい瘤(small AAA)」として経過観察の対象にしています(RESCAN 2013, Sweeting 2012)。胸の大動脈瘤も含めた定義・形(紡錘状・嚢状)・種類(真性・仮性・解離性)は「大動脈瘤とは?定義と分類」でまとめています。

ふだんは症状がないことがほとんどで、健診のエコーや、ほかの病気で撮ったCTで偶然見つかるのが典型的です。

太さ・形・症状で見た目安

項目 目安 文献
診断 腹部大動脈の直径3.0cm以上。3.0〜5.4cmは小さい瘤として経過観察の対象 RESCAN 2013
破裂のしやすさ 小さいうちは破裂はまれ。太くなるほど破裂しやすい RESCAN 2013
手術を考える太さ 男性はおおむね5.5cm。女性・急な拡大・症状・嚢状は早めに血管外科へ相談 Lederle 2002, Sweeting 2012
急ぐ症状 急なおなか・腰・背中の激痛、血圧低下 → 破裂を考えて緊急のCTと血管外科への連絡 Rakita 2007

腹部大動脈瘤の原因・なりやすい人(危険因子)

いちばん強い危険因子は喫煙で、男性・高齢・家族歴・動脈硬化の病気が加わります。禁煙するとリスクは下がります(Kent 2010)。

ハジメハジメ(研修医)
大動脈の壁が白く石灰化している方は、動脈硬化が強いので、瘤と書いておけばいいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは分けて考えます。石灰化は壁の「質」、瘤は「太さ」の話です。石灰化が強くても太さが正常なら瘤ではありませんし、曲がっているだけのこともあります。

アメリカの約310万人の超音波検診データでは、次のような関係が示されました(Kent 2010)。

  • 喫煙:吸っていた年数・本数が多いほどなりやすく、禁煙するとリスクは下がる
  • 男性・高齢・家族歴(親きょうだいに大動脈瘤)
  • 心臓や血管の病気(動脈硬化)がある
  • 体重オーバー。運動、野菜・果物・ナッツをとる人は少ない傾向

大動脈の壁にカルシウムがたまる「石灰化」とは別の所見です。石灰化だけの場合は「大動脈の石灰化」、太さは正常で曲がっているだけなら「大動脈の蛇行」の記事も参考にしてください。

腹部大動脈瘤のCT所見と測り方

CTでは、背骨の前の大動脈が輪切りで丸くふくらみ、内側に壁在血栓がドーナツ状についていることがよくあります。太さは血栓も含めた外壁から外壁までを測ります。

ハジメハジメ(研修医)
造影CTで白く染まっている所の幅を測ったら3.5cmでした。これが瘤の太さですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
白い所は血液が流れている内腔だけです。そのまわりの灰色の層は何だと思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
…まわりの脂肪、ではなさそうですね。血の塊ですか。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです、壁在血栓です。破裂するのは外側の壁なので、太さは血栓も含めた外側で測ります。内腔だけだと、実際よりずっと小さく見積もってしまいます。
図2 CT横断で見る腹部大動脈瘤 腎動脈より下の横断の模式図。背骨の前で大動脈が丸くふくらみ、白い内腔のまわりを灰色の壁在血栓が囲み、外側の壁に白い石灰化が並びます。
図2 CT横断で見る腹部大動脈瘤 腎動脈より下の横断の模式図。背骨の前で大動脈が丸くふくらみ、白い内腔のまわりを灰色の壁在血栓が囲み、外側の壁に白い石灰化が並びます。
図3 外壁から外壁で測る 同じ瘤で、内腔だけ・内壁から内壁・外壁から外壁の3通りの測り方を並べた模式図。治療の目安に使うのは外壁から外壁の値です。
図3 外壁から外壁で測る 同じ瘤で、内腔だけ・内壁から内壁・外壁から外壁の3通りの測り方を並べた模式図。治療の目安に使うのは外壁から外壁の値です。

治療方針は太さ(血管に直交する断面での外壁間の最大径)でほぼ決まるため、測り方がとても大切です。

  • 血管の外の壁から外の壁まで(outer-to-outer)を測る方法が、CTでも再現性が高い方法の一つです(Tomee 2021)
  • 大動脈が曲がっていると、輪切り(横断像)のままでは斜めに切れて太めに測れてしまうため、血管の走行に直交する断面(MPR・曲面再構成)で測ると正確になります
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです!蛇行した大動脈は、横断像だと楕円に切れてしまいます。薄いスライスで撮っておけば、あとから血管に直交する断面を作れるので、前回と比べたいときは「直交断面で外壁から外壁の最大径を」と依頼に書いてもらえると助かります!
図4 曲がった大動脈は斜めに切れる 蛇行した大動脈を横から見た模式図。体に水平な輪切りでは楕円に切れて太めに測れ、血管の走行に直交する断面なら本来の円に近くなります。
図4 曲がった大動脈は斜めに切れる 蛇行した大動脈を横から見た模式図。体に水平な輪切りでは楕円に切れて太めに測れ、血管の走行に直交する断面なら本来の円に近くなります。

エコーとCTの差・測り直しのぶれ

  • エコーはCTより小さめに出やすい:測り方によって平均1〜5mmほど小さく測れたという報告があります(Chiu 2014)。前回とちがう検査で比べるときは注意が必要です
  • 決まった手順のエコーでも、同じ人が測り直すと1.6mm程度はぶれます(Tomee 2021)。数mmの変化は誤差のこともあります
比べたこと 結果 文献
エコーの3つの測り方とCT CTより外壁-外壁で平均1mm、前縁-前縁で3mm、内壁-内壁で5mm小さい Chiu 2014
手順を決めたエコーと各施設のCT CTが平均4.1mm大きい。測り方をそろえると差は1.8mmに縮まった Tomee 2021
CTでの測る人どうしの一致(ICC) 内壁-内壁 0.94、外壁-外壁 0.96 Tomee 2021
ハジメハジメ(研修医)
前回のエコーが4.6cmで、今回のCTが5.0cmでした。半年で4mmも大きくなったので、急いで相談ですね!
ごろ〜ごろ〜(指導医)
検査の種類が変わると、それだけで数mmずれます。できれば同じ検査どうし、同じ測り方で比べてから「大きくなった」と書きましょう。

症例 70歳代男性 別の検査で偶然見つかった腹部大動脈瘤(治療前の精査)

腹部大動脈瘤 造影CT 横断像
引用:Radiopaedia(Abdominal aortic aneurysm)

腎動脈の分かれ目より下の大動脈が、こぶ状に大きくふくらんでいます(この症例では最大径59mm)。白く造影されている血液の通り道(内腔)のまわりを、灰色の血栓(壁在血栓)が厚く取り囲んでおり、壁には白い石灰化も見えます。瘤の大きさは、この血栓も含めた外側の壁から壁までで測ります。

レポートに書いておくこと

項目 なぜ書くか
最大径(直交断面・外壁間) 経過観察の間隔と手術の目安を決める値
瘤の上端と腎動脈との距離 ステントグラフト(EVAR)ができるかの判断に使う
総腸骨動脈への広がり 治療の範囲が変わる
壁在血栓・壁の石灰化の途切れ 切迫破裂・破裂の手がかり
周囲の脂肪のにごり・軟部組織 炎症性・感染性の手がかり

周囲に厚い軟部組織がまとわりつくタイプは「炎症性腹部大動脈瘤」で、嚢状で周囲が炎症を起こしているときは「感染性大動脈瘤」で、それぞれ症例のCTと見分け方を確かめられます。

腹部大動脈瘤の大きさと破裂リスク

太さが0.5cm増えるごとに破裂の起こりやすさは約1.9倍になります(RESCAN 2013)。小さい瘤の拡大は平均で年に約2.2mmです(Sweeting 2012)。

ハジメハジメ(研修医)
腹部大動脈瘤の破裂リスクは、太さに比例して少しずつ上がる感じですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
足し算ではなく、かけ算で上がると考えてください。0.5cmごとに約2倍なので、3cm台と5cm台では同じ「瘤」でも重みがまったく違います。それに、同じ太さでも女性や喫煙中の方は破裂しやすいんです。
図5 太さと破裂の起こりやすさ 3.0cmを1として、0.5cm太くなるごとに約1.9倍になる関係を描いた模式グラフです。坂が急になっていく形を見てください。
図5 太さと破裂の起こりやすさ 3.0cmを1として、0.5cm太くなるごとに約1.9倍になる関係を描いた模式グラフです。坂が急になっていく形を見てください。

小さい瘤(3.0〜5.4cm)の約1万5千人のデータをまとめた研究では、次のことがわかっています。

わかったこと 数値 文献
平均の大きくなる速さ 年に約2.2mm Sweeting 2012
太さと破裂 0.5cm太くなるごとに破裂の起こりやすさは約1.9倍 RESCAN 2013
破裂しやすい人 女性は男性の約4倍、喫煙中の人は約2倍、血圧が高いほど上昇 Sweeting 2012
大きくなりやすい人 喫煙者(年0.35mm速い)。糖尿病の人は年0.51mm遅い Sweeting 2012
4.0〜5.4cmを経過観察した群 破裂は年0.6% Lederle 2002

腹部大動脈瘤の経過観察:検査の間隔

間隔は太さで変わります。SVSのガイドラインは3.0〜3.9cmなら3年ごと、4.0〜4.9cmなら12か月ごと、5.0〜5.4cmなら6か月ごとの画像検査を勧めています(Chaikof 2018)。

ハジメハジメ(研修医)
3.2cmの方にも「半年後にCT」と書きそうになりました。もっと空けていいんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
平均の伸びが年2mmほどなら、3cm台が5.5cmに届くまでには時間がかかります。太さに合わせて間隔を決めるのが基本です。実際の間隔は主治医が体の状態と合わせて決めます。
図6 太さ別の検査間隔と手術の目安 SVSの推奨で、3.0〜3.9cm・4.0〜4.9cm・5.0〜5.4cm・5.5cmの順に検査の間隔が短くなり、手術の相談へ進む流れ図です。
図6 太さ別の検査間隔と手術の目安 SVSの推奨で、3.0〜3.9cm・4.0〜4.9cm・5.0〜5.4cm・5.5cmの順に検査の間隔が短くなり、手術の相談へ進む流れ図です。

ふだんの間隔は上のアメリカ血管外科学会(SVS)の推奨にそろえます(Chaikof 2018)。参考までに、RESCANのモデル解析では、男性で「5.5cmを超える危険を10%未満に抑える」なら、3.0cmで約7年おき、5.0cmで約8か月おきの検査で足りると推定されました(RESCAN 2013)。これは特定の条件での推定で、推奨される間隔ではありません。

手術・ステントグラフトを考える目安

男性ではおおむね5.5cmが手術を考える目安です。女性、急な拡大、症状がある瘤、嚢状の瘤は、それより小さくても早めに血管外科へ相談します。

ハジメハジメ(研修医)
破裂が怖いなら、4cmくらいで早めに手術したほうが安心じゃないですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そう思いますよね。でも、それを確かめた試験では、すぐ手術しても長生きにはつながりませんでした。小さいうちは、手術そのもののリスクのほうが勝ってしまうんです。

小さい瘤(4.0〜5.4cm)の人を「すぐ手術する群」と「5.5cmになるか症状が出たら手術する群」に分けた試験では、すぐ手術しても長生きにはつながりませんでした(Lederle 2002)。このため、男性ではおおむね5.5cmが手術を考える目安として広く使われています。

  • 女性は同じ太さでも破裂しやすいため、より小さい太さで手術を考えてもよいとされています(Sweeting 2012)
  • 急に大きくなる、痛みが出た(症状のある瘤)、嚢状(片側だけ袋状にふくらむ形)は、太さにかかわらず早めの相談が必要です
  • 日本では「2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」(日本循環器学会など4学会合同)があり、英語版も出ています(Ogino 2023)。実際の判断は、このガイドラインと体の状態をふまえて主治医が行います
ハジメハジメ(研修医)
ステントグラフトと開腹手術の違いは何ですか?体への負担が小さいなら、みんなステントグラフトでいい気がします。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
ステントグラフトは内側から瘤に「ふた」をする方法なので、ふたを固定できる正常な血管が瘤の上下に要ります。だからレポートの「腎動脈との距離」が効いてくるんです。それに、ふたの横から血液がもれていないか、術後もCTで見続けます。
図7 開腹手術とステントグラフトの違い 前から見た比較図。左は瘤を人工血管に取りかえる開腹手術、右は足の付け根から入れた人工血管で瘤を内側からふさぐEVARです。
図7 開腹手術とステントグラフトの違い 前から見た比較図。左は瘤を人工血管に取りかえる開腹手術、右は足の付け根から入れた人工血管で瘤を内側からふさぐEVARです。

治療は大きく2つです。

治療 方法 特徴
開腹手術(人工血管置換術) おなかを開け、瘤の部分を人工血管に取りかえる 体への負担は大きめ
ステントグラフト内挿術(EVAR) 足の付け根の血管からバネ付きの人工血管を入れて、内側から瘤をふさぐ 体への負担が小さい。術後も定期的なCT・エコーが必要

どちらが向くかは、瘤の形(腎動脈との距離など)、年齢、心臓・肺の状態で決まります。EVARのあとに瘤の中へ血液がもれ続ける「エンドリーク」のタイプ分けと造影CTでの見え方は、「TEVAR・EVAR後のエンドリーク」で確かめられます。

腹部大動脈瘤破裂の症状とCT所見(切迫破裂も)

破裂の多くは、瘤のまわりの後腹膜血腫として見えます。切迫破裂では、血栓の中の三日月形の高吸収(crescent sign)を探します(Rakita 2007)。

ハジメハジメ(研修医)
腹部大動脈瘤が破裂したときの症状は、激しい腹痛ですよね?腰痛だけの方なら、尿管結石を先に考えていいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこが落とし穴です。破裂は腰や背中の痛みで来ることもあって、尿管結石やぎっくり腰とまちがわれます。高齢の方の急な腰痛や背部痛で血圧が低ければ、まず瘤を考えます。

破裂すると死亡率は非常に高く、約85%とされます(Kent 2010)。症状は突然の腹痛・腰痛・背部痛、血圧低下(ショック)で、尿管結石やぎっくり腰とまちがわれることもあります。

図8 破裂した腹部大動脈瘤のCT 横断の模式図。瘤の後ろ横から腎臓のまわりの後腹膜へ血腫が広がり、ぐるりとつながる石灰化が途切れた所が、破れた場所の手がかりになります。
図8 破裂した腹部大動脈瘤のCT 横断の模式図。瘤の後ろ横から腎臓のまわりの後腹膜へ血腫が広がり、ぐるりとつながる石灰化が途切れた所が、破れた場所の手がかりになります。
ハジメハジメ(研修医)
血栓の中に白い三日月がありました。石灰化ですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
石灰化は壁に沿った細い白い線です。血栓の中に、ぼんやりした三日月形の高吸収があれば、壁の中の新しい出血、crescent sign を考えます。前回のCTと並べて、前はなかったかも見てください。
図9 切迫破裂・被覆された破裂のサイン 横断の模式図を2つ並べました。左は血栓の中の三日月形の高吸収(crescent sign)、右は瘤の後ろの壁が背骨に沿う形です。
図9 切迫破裂・被覆された破裂のサイン 横断の模式図を2つ並べました。左は血栓の中の三日月形の高吸収(crescent sign)、右は瘤の後ろの壁が背骨に沿う形です。
状態 CTで見えること(Rakita 2007)
破裂 瘤のまわりの後腹膜血腫(腎臓の周りなどへ広がる)。壁や、ぐるりとつながった石灰化の途切れが破れた場所の手がかり
破裂しかけ(切迫破裂) 血栓の中に三日月形の高吸収(crescent sign)=壁の中の新しい出血。瘤の拡大、内腔にくらべて血栓が薄い
被覆された破裂 瘤の後ろの壁が背骨に沿ってべったり張りつく(draped aorta sign)

少量の血腫は、十二指腸や瘤のまわりの線維化、リンパ節とまぎらわしいことがあります(Rakita 2007)。

破裂した瘤の治療は時間との勝負で、SVSガイドラインは来院から治療開始まで90分未満を目標にし、破裂した瘤の治療にはステントグラフト(EVAR)を第一に勧めています(Chaikof 2018)。破裂と切迫破裂の実際のCTは「大動脈瘤破裂のCT画像所見」で複数の症例と合わせて見られます。

見つけたあとの一手

ごろ〜ごろ〜(指導医)
偶然見つけた瘤は、太さと形を書いて血管外科へつなぐまでが読影の仕事です。危険因子の話も添えておくと、主治医が説明しやすくなります。
  1. 血管外科・心臓血管外科へ紹介:太さ・形を確認し、次の検査の時期を決める
  2. 禁煙:大きくなる速さと破裂の両方に関係します(Sweeting 2012)
  3. 血圧の管理:血圧が高いほど破裂しやすい傾向があります(Sweeting 2012)
  4. 家族歴:家族歴は危険因子です(Kent 2010)。親きょうだいへの情報提供も検討します
  5. 急な激痛のときの連絡:「大動脈瘤がある」と伝えて救急要請するよう、本人に説明しておく

よくある勘違い

Q. 造影CTで白く染まった内腔の幅が、瘤の太さ?

いいえ。内腔のまわりの壁在血栓も含めて、外壁から外壁までを測ります。蛇行した大動脈は、血管に直交する断面で測ります。

Q. 前回のエコーより今回のCTが数mm大きければ、拡大している?

エコーはCTより小さめに出やすく、測り直しでも1.6mmほどぶれます。同じ検査・同じ測り方で比べてから判断します。

Q. 薬で腹部大動脈瘤は小さくなる?

血圧やコレステロールの薬などで、小さい瘤の拡大や破裂がはっきり抑えられるという結果は出ていません(Sweeting 2012)。薬は主に心臓・脳の病気を防ぐ目的で使います。対策の中心は禁煙と血圧の管理です。

今日のまとめ

  1. 腹部大動脈瘤は直径3cm以上。太さは外壁から外壁まで、血管に直交する断面で測る。
  2. 0.5cm太くなるごとに破裂は約1.9倍。小さい瘤は太さに合わせた間隔で経過観察、男性はおおむね5.5cmで手術を考える。
  3. 急な腹痛・腰痛・背部痛では破裂を考え、後腹膜血腫・石灰化の途切れ・crescent signを探す。

関連記事

▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧

参考文献

  1. RESCAN Collaborators, Bown MJ, Sweeting MJ, et al. Surveillance intervals for small abdominal aortic aneurysms: a meta-analysis. JAMA. 2013;309(8):806-813. PubMed
  2. Sweeting MJ, Thompson SG, Brown LC, et al. Meta-analysis of individual patient data to examine factors affecting growth and rupture of small abdominal aortic aneurysms. Br J Surg. 2012;99(5):655-665. PubMed
  3. Lederle FA, Wilson SE, Johnson GR, et al. Immediate repair compared with surveillance of small abdominal aortic aneurysms. N Engl J Med. 2002;346(19):1437-1444. PubMed
  4. Kent KC, Zwolak RM, Egorova NN, et al. Analysis of risk factors for abdominal aortic aneurysm in a cohort of more than 3 million individuals. J Vasc Surg. 2010;52(3):539-548. PubMed
  5. Chaikof EL, Dalman RL, Eskandari MK, et al. The Society for Vascular Surgery practice guidelines on the care of patients with an abdominal aortic aneurysm. J Vasc Surg. 2018;67(1):2-77.e2. PubMed
  6. Rakita D, Newatia A, Hines JJ, et al. Spectrum of CT findings in rupture and impending rupture of abdominal aortic aneurysms. Radiographics. 2007;27(2):497-507. PubMed
  7. Tomee SM, Meijer CA, Kies DA, et al. Systematic approach towards reliable estimation of abdominal aortic aneurysm size by ultrasound imaging and CT. BJS Open. 2021;5(1):zraa041. PubMed
  8. Chiu KW, Ling L, Tripathi V, et al. Ultrasound measurement for abdominal aortic aneurysm screening: a direct comparison of the three leading methods. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2014;47(4):367-373. PubMed
  9. Ogino H, Iida O, Akutsu K, et al. JCS/JSCVS/JATS/JSVS 2020 Guideline on Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and Aortic Dissection. Circ J. 2023;87(10):1410-1621. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →