CT値とウィンドウ 白黒が変わるしくみ

CT値とは、CT画像の1マスごとに入っている「X線の止められやすさ」の数字で、水を0、空気を-1000とします。ウィンドウとは、そのうちどの範囲を白黒に割り当てるかの決まりです。研修医のハジメくんと一緒に、縦隔条件・肺野条件で何を変えているのかを整理します。

先に結論

  1. CT値とは、CT画像の1マスごとの数字。水が0、空気が-1000。脂肪はマイナス、骨は大きなプラス。
  2. 画面の白黒は、CT値のどの範囲を灰色の階調に割り当てるか(ウィンドウ)で決まる。WLは範囲の真ん中、WWは範囲の広さ。
  3. 同じ撮影でも、ウィンドウを変えるだけで縦隔条件・肺野条件・骨条件の画像になる。胸部CTは縦隔条件と肺野条件をセットで見る。

目的から読む: CT値とは / CT値の目安 / ウィンドウとは / 縦隔条件と肺野条件 / ウィンドウの設定値 / 再構成関数との違い / 高吸収・低吸収

CT値とは? CTは「数字の地図」

CT値とは、CT画像の1マス(画素)ごとに入っている、X線がどれだけ止められたかを表す数字です。単位はHU(ハンスフィールド単位)です。CTの画像は、もともと色ではなく数字の並びで、画面の白黒はあとから数字に割り当てています。

ハジメハジメ(研修医)
先生、CTの白いところと黒いところって、何の色なんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
じつは色ではないんです。1マスずつ数字が入った地図だと思ってください。
ハジメハジメ(研修医)
数字の地図…。その数字は何を表しているんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
X線の止められやすさです。骨は大きい数、空気は小さい数になります。

基準は2つだけ覚えれば足ります。水が0、空気が約-1000です。水よりX線を止めやすいものはプラス、止めにくいものはマイナスになります。緻密な骨(皮質骨)はおよそ+1000です(Goldman 2007)。

図1 CT値のものさし 水を0、空気を-1000とした縦の目もり。脂肪は少しマイナス、血液や筋肉は少しプラス、骨は大きなプラス。数値は目安です。
図1 CT値のものさし 水を0、空気を-1000とした縦の目もり。脂肪は少しマイナス、血液や筋肉は少しプラス、骨は大きなプラス。数値は目安です。

CT値の目安 脂肪はマイナス、血液・筋肉はプラス

体の中のものは、だいたい次の順に並びます。空気 → 肺 → 脂肪 → 水 → 血液・筋肉 → 骨の順に数字が大きくなります。数値は装置や撮り方で少し動くので、目安として覚えます。

もの CT値の目安(HU) ふだんの見え方(縦隔条件)
空気 -1000 まっ黒
肺 -850前後 まっ黒
脂肪 -100前後 水より黒い
水 0 灰色
血液・筋肉 少しプラス(数十) 水より少し白い
骨(皮質骨) +1000前後 まっ白
ハジメハジメ(研修医)
脂肪ってマイナスなんですね。水より黒いってことですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。だからCT値をはかってはっきりマイナス(-100前後)なら、脂肪を含むと考えられます。
ハジメハジメ(研修医)
それって、どんなときに使うんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
腫瘤の中に脂肪があるかを見て、奇形腫や血管筋脂肪腫を見分けるときに使いますよ。

脂肪と空気はどちらもマイナスですが、空気は-1000近く、脂肪は-100前後と、数字は大きく離れています。2つの見分け方はCTで黒く見えるもの(#05)で、例と合わせて読めます。

マルオマルオ(技師)
撮る側からひとこと!装置は毎日、水の入った筒(ファントム)を撮って確かめています!
ハジメハジメ(研修医)
何を確かめるんですか?
マルオマルオ(技師)
水がちゃんと0付近に出るかです。ものさしがずれると、全部の判断がずれちゃいますから!

CT値はX線のエネルギーの影響を受けるので、正しい数字を出すには、水や水と同じ性質のファントムでの調整(校正)が欠かせません(Goldman 2007)。水でも0ぴったりではなく、0付近で少しばらつきます。

図2 断面のなかのCT値 胸のCT横断の模式図に、空気・肺・脂肪・筋肉・血液・骨のCT値の目安を札で添えました。画面の左が患者さんの右です。
図2 断面のなかのCT値 胸のCT横断の模式図に、空気・肺・脂肪・筋肉・血液・骨のCT値の目安を札で添えました。画面の左が患者さんの右です。

ウィンドウとは? ものさしのどこを切り取るか

ウィンドウとは、CT値のうち見たい範囲だけを切り取って、黒から白までいっぱいに引き伸ばす表示のしかたです。範囲より低い値はすべてまっ黒、高い値はすべてまっ白になります。

ハジメハジメ(研修医)
-1000から+1000まで全部を白黒にしたら、ほとんど同じ灰色になりませんか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
鋭いですね。人の目が見分けられる灰色の段階は、そんなに多くないんです。

画面が出せる灰色はおよそ250段階で、目で見分けられるのはそのうち100段階ほどとされます。-1000〜+1000の2000の幅を100段階に分けると、1段階が20HU分になります。濃さが数HUしか違わない臓器どうしは、同じ灰色になって見分けられません(Goldman 2007)。

ハジメハジメ(研修医)
だから見たい範囲だけを切り取るんですね。何を決めるんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
決めるのは2つです。WLは範囲の真ん中、WWは範囲の広さです。
  • WL(ウィンドウレベル、ウィンドウの中心): 切り取る範囲の真ん中のCT値。WLを上げると画像は全体に黒っぽく、下げると白っぽくなります。
  • WW(ウィンドウ幅): 切り取る範囲の広さ。表示される範囲は「WL – WW÷2」から「WL + WW÷2」まで。WWが狭いほど、わずかな濃さの差が大きな白黒の差になります。
図3 WLとWWのしくみ CT値のものさしの一部を切り取り、黒から白の帯に引き伸ばす様子です。WLは範囲の真ん中、WWは範囲の広さ。範囲の外はまっ黒かまっ白です。
図3 WLとWWのしくみ CT値のものさしの一部を切り取り、黒から白の帯に引き伸ばす様子です。WLは範囲の真ん中、WWは範囲の広さ。範囲の外はまっ黒かまっ白です。
ハジメハジメ(研修医)
WWを狭くすると、どうなるんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
コントラストが強くなります。でも、範囲の外は白か黒につぶれます。

WWを狭めると、近い濃さのものを見分けやすくなる代わりに、範囲の外のものは見えなくなります。広いWWは全体を見る、狭いWWは近い濃さの差を見る、という使い分けです。

図4 WWの広さとコントラスト 同じ2つの臓器(CT値40と50)を、WW 400とWW 80で表示した比較です。WWが狭いと、10の差がはっきりした白黒の差になります。
図4 WWの広さとコントラスト 同じ2つの臓器(CT値40と50)を、WW 400とWW 80で表示した比較です。WWが狭いと、10の差がはっきりした白黒の差になります。

縦隔条件と肺野条件の違い 同じ1枚を切り取り方だけ変える

縦隔条件と肺野条件の違いは、撮り方ではなく、表示するCT値の範囲です。縦隔条件(WL 40/WW 400)は-160〜+240を黒から白に割り当てます。肺(-850前後)は範囲より下なのでまっ黒、骨の多くは範囲より上なのでまっ白になります。

ハジメハジメ(研修医)
あ、だから縦隔条件だと肺が真っ黒で、肺の中の淡い影は見えないんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。では、同じ1枚を3つの条件で並べてみます。
図5 縦隔条件の切り取り方 縦隔条件(WL 40/WW 400)では-160〜+240だけを黒から白に割り当てます。肺は範囲より下でまっ黒、骨の多くは範囲より上でまっ白です。
図5 縦隔条件の切り取り方 縦隔条件(WL 40/WW 400)では-160〜+240だけを黒から白に割り当てます。肺は範囲より下でまっ黒、骨の多くは範囲より上でまっ白です。
図6 同じ胸部CTを3つのウィンドウで 撮り直さずに、縦隔条件・肺野条件・骨条件で表示した模式図。右肺(画面の左)の淡いすりガラス状の結節は、肺野条件でだけ見えます。
図6 同じ胸部CTを3つのウィンドウで 撮り直さずに、縦隔条件・肺野条件・骨条件で表示した模式図。右肺(画面の左)の淡いすりガラス状の結節は、肺野条件でだけ見えます。
ハジメハジメ(研修医)
右肺の淡い影、縦隔条件だと黒に埋もれて、肺野条件だとはっきり見えます!
ごろ〜ごろ〜(指導医)
それがすりガラス状の結節です。どうして縦隔条件で消えると思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
えっと…CT値が-160より低いから、まっ黒につぶれる…ですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
正解です。-600前後なので、縦隔条件の範囲より下なんです。

すりガラス状の陰影は、肺がうっすら白くなっても、中の気管支や血管のふちは見えている状態です(Hansell 2008)。CT値は肺と水のあいだ(例では-600前後)なので、縦隔条件では黒くつぶれます。中身の詰まった濃い結節なら、縦隔条件でも見えます。

ハジメハジメ(研修医)
じゃあ、胸のCTは肺野条件だけ見ればいいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いいえ。肺野条件では、心臓も筋肉もほぼ同じ白でつぶれてしまいます。

結節の中に石灰化や脂肪があるかなど、濃さを確かめるのは縦隔条件の仕事です。だから胸部CTは、最低でも縦隔条件と肺野条件の両方を見ます。外傷なら骨条件も足します。CTで白く見えるもの(石灰化・出血・造影剤・金属)の見分け方はCTで白く見えるもの(#04)で読めます。

ウィンドウの設定値の目安 縦隔条件・肺野条件・骨条件・脳

よく使われるウィンドウの値は、何と何を見分けたいかで決まります。下の値は代表的な一例で、施設や読影医の好みで少しずつ違います。

条件 WL / WW の一例 表示される範囲(計算) 見分けたいもの
縦隔条件(軟部条件) 40 / 400 -160〜+240 脂肪・水・筋肉・血液・造影された血管
肺野条件 -600 / 1500 -1350〜+150 空気・肺・すりガラス状の陰影・血管
骨条件 400 / 1800 -500〜+1300 骨のふち・骨折線・骨の中
脳(頭部) 40 / 80 0〜+80 灰白質と白質のわずかな差

表示される範囲は「WL ± WW÷2」で計算できます。脳の条件はWWがとても狭いのが特徴で、10HUほどしか違わない灰白質と白質の差を白黒の差として見せています。

ハジメハジメ(研修医)
数字を全部暗記しないといけませんか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
数字より、範囲の外は白か黒につぶれることを覚えておけば大丈夫です。

ウィンドウと再構成関数の違い 表示だけか、作り直しか

ウィンドウはできあがった画像の表示だけを変えるもので、画面でいつでも切り替えられます。肺用・骨用のシャープな画像は、それとは別に「再構成関数」を変えて作り直した画像です。

マルオマルオ(技師)
ここ、よく混ざるんです!肺野条件と肺用の画像は別ものなんですよ!
ハジメハジメ(研修医)
えっ、同じだと思っていました…。
マルオマルオ(技師)
画面で切り替えられるのがウィンドウ、作り直しが要るのが再構成関数です!
マサマサ(技師)
……再構成関数の話なら、ちょっと補足しても。カーネルというのはですね…
ハジメハジメ(研修医)
えっと…どなたですか?
マルオマルオ(技師)
MRI担当のマサさんです。話し出すと長いので、また今度で!

再構成関数(カーネル)は、撮ったデータから画像を作るときの計算の種類で、画像のなめらかさとくっきりさを決めます。関数を変えるには、撮影したときのデータから計算し直す必要があります。しくみと使い分けはスライス厚・MPR・再構成関数とは(#07)で見られます。

選ぶもの いつ選ぶか 選べるもの 変えるには
再構成関数 撮影データから画像を作るとき やわらかい / シャープ(肺・骨用) 撮影データから計算し直す
ウィンドウ できた画像を見るとき 縦隔条件 / 肺野条件 / 骨条件 画面でいつでも変えられる

「高吸収」「低吸収」とは 白い・黒いと書かない理由

高吸収・低吸収とは、まわりよりCT値が高い・低いという意味です。画面の白黒はウィンドウで変わるので、レポートでは「白い」「黒い」ではなく、CT値の高い低いで書きます。

ハジメハジメ(研修医)
高吸収って、白いの言いかえだと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
同じ結節でも、ウィンドウを変えると白にも黒にもなりますよね。
ハジメハジメ(研修医)
あ…でもCT値は変わらないから、「高吸収」なら誰が見ても同じなんですね。

ウィンドウを変えても、もとのCT値は1つも変わりません。迷ったら、その場所のCT値を測って、まわりや水(0)とくらべます。画面の左右が患者さんのどちらになるかはCT画像の左右はなぜ逆?(#03)で確かめられます。

図7 白黒は変わってもCT値は同じ 同じCT値(+30)の結節を、縦隔条件と肺野条件で表示した比較。見た目の白さは変わっても、CT値の数字は同じです。
図7 白黒は変わってもCT値は同じ 同じCT値(+30)の結節を、縦隔条件と肺野条件で表示した比較。見た目の白さは変わっても、CT値の数字は同じです。

よくある勘違い

Q. ウィンドウを変えれば、どんな病変でも見えるようになる?

いいえ。ウィンドウは見え方を変えるだけで、もとのCT値は変わりません。造影していない、厚いスライスで撮った、などの理由で写っていないものは出てきません。

Q. 「高吸収」「低吸収」は白い・黒いの言いかえ?

CT値がまわりより高い・低いという意味です。画面の白黒はウィンドウで変わるので、レポートでは「白い」ではなく「高吸収」と書きます。

Q. ウィンドウの数値は全国共通?

目安はありますが、施設や読影医の好みで少しずつ違います。この記事の数値も代表的な一例です。

今日のまとめ

  1. CT値の基準は水0・空気-1000。脂肪はマイナス、骨は大きなプラス。
  2. WLは切り取る範囲の真ん中、WWは範囲の広さ。範囲の外はまっ黒かまっ白。
  3. 胸部は縦隔条件と肺野条件をセットで。ウィンドウは表示、再構成関数は作り直し。

次の#02では、CTの断面の向き(横断・冠状断・矢状断)を扱います。向きの見分け方は横断・冠状断・矢状断とは(#02)で読めます。

根拠(もう少し詳しく)

  • CT値(単位HU)は、水を0とした減弱(X線の止められやすさ)の相対値です。水は約0(ノイズのため0ぴったりとは限らない)、空気は約-1000、緻密な皮質骨は約+1000です。CT値はX線のエネルギーの影響を受けるため、水または水等価のファントムでの校正が正確で再現性のある値に欠かせません(Goldman 2007)。
  • 画面に出せる灰色は約250段階、目で見分けられるのは100段階ほどともいわれます。-1000〜+1000を100段階に割ると1段階が20HUになり、多くの軟部組織がまわりと同じ灰色になってしまいます。そのため、表示するCT値の範囲(ウィンドウ幅)と中心(ウィンドウレベル)を選ぶウィンドウ処理が使われます(Goldman 2007)。
  • すりガラス状陰影(ground-glass opacity)は、気管支や血管のふちが見える程度にうっすら肺の濃度が上がった状態をいいます(Hansell 2008)。
  • 表の「表示される範囲」は「WL ± WW÷2」の計算です。ウィンドウの値・CT値の目安は代表的な一例で、施設・装置・撮影条件で異なります。
  • CTのスライス厚・再構成・ウィンドウ・造影の時相までを1ページで振り返るなら:CT検査の基本まとめ|スライス厚・再構成・ウィンドウ・造影の時相・アーチファクト・3D画像

参考文献

  1. Goldman LW. Principles of CT and CT technology. J Nucl Med Technol. 2007;35(3):115-128. PubMed
  2. Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, McLoud TC, Müller NL, Remy J. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697-722. PubMed

図はすべて説明用の模式図で、実際の患者さんの画像ではありません。数値は目安です。

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