ステントグラフト、TEVAR、EVARとは?

  • ステントグラフトは人工血管(グラフト)と金属製の骨組み(ステント)で構成され、動脈瘤にステントグラフトを留置することにより、瘤内への血管流入を防ぎ、動脈瘤に血圧がかからなくなるため、動脈瘤の破裂を防ぐ治療法として用いられる。
  • 2007年より、我が国で企業製ステントグラフトが保険算定され、臨床に用いられるようになった。
  • 胸部大動脈瘤に対するものをthoracic endovascular aortic repair(TEVAR(読み方はティーバー))、腹部大動脈瘤に対するものをendovascular aortic repair(EVAR(読み方はイーバー))と呼ぶ。
  • EVAR・TEVAR後の大動脈瘤には動脈瘤内腔とステントグラフトの間に空間が生じる。この動脈瘤内でステントグラフト外の空間に治療後血流が残存する状態をエンドリークとよぶ。
  • ステントグラフトに伴う合併症としてはエンドリークが最多。
  • エンドリーク評価にはCT、超音波検査、血管造影、MRIが用いられるが、造影CTによる評価が一般的。

エンドリークのタイプ、分類は?

  • エンドリークはタイプⅠ〜Ⅳ(Ⅴ)に大きく分けられる。
  • Type Ⅰや Ⅲエンドリークは追加治療の適応、Type Ⅱ、Ⅳエンドリークは経過観察。

Type Ⅰ

  • グラフトと宿主血管の不完全な密着によるシール不全が原因によるエンドリーク。
  • 動脈瘤内圧の増加から動脈瘤の破裂に密接な関与があるとされ、速やかな治療が必要。特にtype Ⅰaエンドリークは瘤増大、破裂に繋がるので、早急な治療が必要。
  • ステントグラフト中枢端or末梢端からかのエンドリークによりtype ⅠaとⅠbに分けられる。
  • type Ⅰa:ステントグラフト中枢端からのエンドリーク
  • type Ⅰb:ステントグラフト末梢端からのエンドリーク

Type Ⅱ

  • 動脈瘤から分岐する分枝(下腸間膜動脈や腰動脈)からの逆行性のリーク。最も頻度が高く、5~30%の症例で生じる。
  • EVARでは、下腸間膜動脈・腰動脈・正中仙骨動脈・腎動脈、TEVARでは、鎖骨下動脈・助間動脈・気管支動脈が原因血管となりうる。
  • Type Ⅱ エンドリークは、術後6ヶ月までは自然消退することもあり、動脈瘤の拡大や破裂に関与することは少なく、経過観察が可能。
  • 6ヶ月を超えて持続し、かつ動脈瘤が有意に増大(最大短径で5mm~1cm)するものが治療の対象。

Type Ⅲ

  • グラフト破損やグラフト接合部に起因する動脈瘤内への血流。
  • Type Ⅰ エンドリークと同様に、動脈瘤内圧の増加と動脈瘤の破裂の危険に密接に関係するエンドリーク。
  • 動脈瘤が拡大し破裂の危険が高まるので、早急な治療を考慮するべき。
  • type Ⅲa:モジュラー型のステントグラフト接合部からのリーク、接合部のはずれによるリーク。
  • type Ⅲb:グラフト素材の破損(破れ)からのリーク。

Type Ⅳ

  • グラフと素材(線維間隙)からの染み出しによるリーク。経過で自然消失する。
  • 通常はEVAR後30日以内と定義されており、ポリエステルを使用したグラフトでは比較的多く観察されるが、経過とともに血栓化するのが一般的であるため、経過観察を行う。
  • 30日以降も残存するものはType Ⅲ Bエンドリークに分類される。
  • Type Ⅳエンドリークに対する治療は原則不要。

Endotension(エンドテンション)とは?

術後エンドリークが画像で検出できないにもかかわらず動脈瘤の増大をみる場合に、原因不明のエンドリークとして分類されEndotensionという。type Ⅴに分類されることもある。

エンドリークのCT画像所見のポイント

  • Type Ⅰ、Ⅲエンドリークは、大動脈圧が直接かかるため、ダイナミックCTでhigh flow typeで動脈相から明瞭に描出されることが多い。
  • type Ⅰエンドリークは瘤内の造影効果が大動脈からステンドグラフトの端より連続して認め、type Ⅲエンドリークは瘤内の造影剤の造影効果がステントグラフト接合部あるいはステントグラフト壁から直接瘤内に連続して見られる。
  • 一方で、type Ⅱ、Ⅳエンドリークは大動脈圧が直接かからないため、high flow typeのエンドリークとなる。
  • ただし、type Ⅳエンドリークはステントグラフト留置直後では、Type Ⅰ、Ⅲエンドリークと紛らわしいことがある。
  • typeⅡエンドリークはあたかも動静脈奇形のように動脈瘤のsac内の造影腔(nidus)に連続する流入血管と流出血管を同定できることがあり、他のタイプとの鑑別点となる。

参考文献:

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