食道癌の特徴及び症状
- 飲酒歴や喫煙歴のある中高年の男性に多く、男女比は、5:1で、男性に多い。
- 扁平上皮癌が9割と最も多い。
- 胸部中部食道が好発部位で約5割を占める。次いで、胸部下部食道に多い。
- 飲酒歴や喫煙歴の他、野菜や果物の摂取不足、Barrett 食道、食道アカラシアなどが危険因子となる。
- 食道癌の多くは無症状であるが、わずかにしみる感じがするという症状で、発症することあり。進行すると、周囲臓器への直接浸潤により、嗄声、咳嗽、胸痛などの症状が出てくる。
- 食道は他の消化管と異なり、漿膜に覆われていないため、進行したがんは容易に周囲にしやすい特徴あり。
- 反回神経に浸潤すると、嗄声や誤嚥といった症状生じ、気管及び気管支に浸潤すると、食道気管瘻・食道気管支瘻、咳嗽や肺炎といった症状生じる。また肺実質や胸膜に浸潤すると背部痛や胸痛といった症状を生じる。その他肺静脈や心膜嚢胞、横隔膜や大動脈に浸潤することあり。
- 食道がんは頭頚部癌や、他の消化管癌・肺癌等、double cancerを合併しやすいので全身検索する必要がある。
- Barrett 食道からは、腺癌を生じるが、近年増加傾向にある。
食道癌の診断
- 内視鏡検査で診断をし、表在食道癌(早期食道癌)の場合は、わずかな発赤や隆起及び陥凹を認める。より詳しい色素をふりかけた検査で、ヨードが染まらない部位として描出される。
- 超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasonography)は、がんの深達度診断及び、リンパ節転移の検索に用いられる。
- 進行食道癌の場合は、内視鏡検査や、食道造影検査(食道胃透視)において診断可能であり、辺縁に不整な潰瘍や隆起・狭窄を認める。
- 確定診断は内視鏡において、生検細胞診にて行う。
- CT においてはリンパ節転移や、周囲臓器への浸潤をチェックする。その他遠隔転移においては、PET/CT を施行することあり。
食道癌の治療
- 早期癌の場合:EMR や ESD と呼ばれる内視鏡的治療を行う。
- 早期胃癌以外で切除可能な場合:食道切除+リンパ節郭清+食道再建という経過的治療を行う。食道温存を希望する場合などは、化学放射線療法を施行する。
※化学放射線療法後は、放射線感受性を高める抗癌剤を用いた化学療法と放射線療法を同時進行で行う治療法のこと。
- 切除が不可能な場合(遠隔転移や、他臓器浸潤あり。):化学療法(5FU +シスプラチン)、放射線療法(50~60Gy)を施行する。
- ただし、食道内腔狭窄や、食道気管瘻・食道気管支瘻等に対しては、姑息的治療として、食道ステント挿入、バイパス術、胃瘻造設などを行う。
食道再建術にはおもに三種類
- 胸壁前(皮下):皮膚と胸骨の間を剥離し消化管挙上して再建する。
- 胸骨後:最も多く用いられる再建であり、胸骨の裏側を剥離し消化管を挙上する。
※これらの二つの方法はいずれも、経路が長くなりやすく、吻合部の血流が低下しやすいリスクがあるが、吻合部不全を生じても、アプローチしやすいため、致命的なりにくいというメリットあり。
- 胸腔内(後縦隔):切除した食道の部位に消化管を挙上して再建する。経路が短いというメリットがあるが、吻合不全により縦隔炎や膿胸のリスクあり。