
先に結論:バリウム検査は「二重造影を主役に、体位を変えて胃の壁をひと回り写す」検査。写真は壁の凹凸と形を見る
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何をしているか | バリウムを壁に薄く付け、発泡剤の空気で胃を膨らませて、壁の表面を写す |
| 主役の撮り方 | 二重造影。弱いところを、バリウムで満たす充盈法と、おなかを押す圧迫法で補う |
| 体の向きを変える理由 | 背臥位(あおむけ)で後壁、腹臥位(うつぶせ)で前壁が写る。胃は体位で形が変わる |
| 写真で見るもの | 辺縁(輪郭)の凹凸、壁の硬さ、粘膜の模様、バリウムのたまり、隆起 |
| 要精密検査と言われたら | 多くの人は内視鏡で確認し、異常なしや軽い胃炎で終わる。不安なら早めに受診する |
バリウム検査(胃透視)とは
バリウム検査は、正式には上部消化管X線検査(胃透視)と呼ばれます。バリウム(X線を通しにくい白い液体)と、胃を膨らませる発泡剤(炭酸ガスを出す顆粒)を飲み、X線を当てながら、体の向きを変えて何枚も撮影します。食道、胃、十二指腸が写ります。胃の動きをおさえる注射を使うことがあり、使えない人もいるので、問診で確認されます。検査前の食事や薬の扱いは、主治医・検査施設の指示に従ってください。
日本では、バリウム検査(上部消化管X線検査)と内視鏡検査のどちらも、胃がん検診の方法として推奨されています(Hamashima 2018)。
4つの撮り方と、それぞれが写すもの
胃のバリウム検査は、次の撮り方を組み合わせます。写真を見るときは、「どの撮り方の写真か」を最初に確認します。
| 撮り方 | 何をするか | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 二重造影法(主役) | バリウムを壁に薄く付け、空気で膨らませる。バリウムと空気の「二重」で壁を写す | 壁の細かな凹凸、小さなくぼみ(潰瘍やびらん)、隆起、ひだの集まり方 |
| 充盈(じゅうえい)法 | バリウムを多めに飲み、胃をバリウムで満たす | 胃の形と大きさ、辺縁(輪郭)のゆがみ、胃壁の硬さ、大きな病変 |
| 圧迫法 | おなかを押して、胃の厚みを薄くして撮る | 二重造影で写りにくい部位や、病変の厚み・硬さ |
| 粘膜レリーフ法 | バリウムを少なくして、粘膜のひだの模様を見る | ひだの太さや走り方。撮影が難しく、初心者向きではないとされる |
胃は、食道とのつなぎ目(噴門)と十二指腸への出口(幽門)以外は固定されていません。バリウムの重さ、空気の量、立った姿勢か寝た姿勢かで形が変わります。そのため二重造影が主役で、その弱点を充盈法と圧迫法で補う、という考え方が基本です。
胃の上部(穹窿部など)では、二重造影を使うと、通常の撮影では気づかない潰瘍や腫瘤が見つかります。通常のバリウム撮影でできる偽の腫瘤(本物ではない影)も、二重造影で見分けられると報告されています(Norton 1980)。
胃の部位の呼び名
胃の写真には、部位の名前が出てきます。結果の用紙を読むときにも役立つので、簡単にまとめます。
| 呼び名 | 場所 |
|---|---|
| 噴門(ふんもん) | 食道とのつなぎ目。胃の入口 |
| 穹窿部(きゅうりゅうぶ) | 噴門より上にふくらんだ部分。背中側にバリウムがたまりやすい |
| 体部 | 胃の中央の大きな部分 |
| 胃角(いかく) | 小弯が角のように曲がる所。潰瘍ができやすい所のひとつ |
| 前庭部 | 出口に近い、やや細くなった部分 |
| 幽門(ゆうもん) | 十二指腸への出口 |
| 小弯・大弯 | 胃のカーブの内側(小弯)と外側(大弯)。小弯は短く、大弯は長い |
撮影の写真は、噴門側から幽門側へ、また前壁・後壁・小弯・大弯と、順に見ていくのが基本です。食道と十二指腸も一緒に写るので、胃だけでなく、食道の壁の凹凸や十二指腸球部の形も確認します。
体位を変える理由:壁をひと回り写す
| 体位 | バリウムがたまる場所 | よく写る壁・部位 |
|---|---|---|
| 背臥位(あおむけ) | 胃の背中側(穹窿部)にたまる | 後壁。胃の体部から前庭部の二重造影 |
| 腹臥位(うつぶせ) | おなか側の壁にたまる | 前壁。うつぶせのとき、頭を低くして撮ることもある |
| 左右の斜位 | 体の傾きでバリウムが移動 | 食道は背骨と重ならない斜位が大切。胃の側壁や噴門部 |
| 立位 | 下(前庭部)にたまる | 充盈像。胃の形、胃の下がり具合 |
検査中に「右に回って」「うつぶせに」と言われるのは、胃の壁を順に写すためです。バリウムが壁にうまく付くように、体をゆっくり回す動きも大切です。
症例 60歳代女性 胃ポリープ(背臥位の二重造影)

引用:Radiopaedia(Multiple gastric polyps)
胃の背中側(穹窿部)に溜まったバリウムが白く厚く写り、膨らんだ胃の壁にはバリウムが薄く付いて網目のような模様に見えます。症例ページでは、二重造影の検査で、胃の穹窿部・体部・幽門に、10mm未満が大半の小さな丸〜楕円形の透亮像(バリウムが入らない部分)が多数あり、過形成性ポリープに合致し、内視鏡で確認されたと記載されています。矢印の先に輪状の影があります。
症例 60歳代女性 胃ポリープ(腹臥位)

引用:Radiopaedia(Multiple gastric polyps)
同じ症例の腹臥位の写真です。体位が変わると、バリウムのたまる場所と胃の形が変わり、壁に付いたバリウムの見え方も変わります。背臥位と腹臥位を合わせて、胃の壁をひと回り確認します。
写真で見る所見:潰瘍・隆起・がんを疑う形
| 所見 | 見え方 | 考えること |
|---|---|---|
| バリウムのたまり(ニッシェ) | 壁のくぼみにバリウムが溜まり、突出して見える | 胃潰瘍など。まわりにひだが集まる(胃潰瘍の透視・CT所見) |
| 隆起 | バリウムが入らない丸い影(透亮像)や、輪のような影 | ポリープなど。大きさ・形・表面を見る |
| 辺縁の不整・壁の硬さ | 輪郭がギザギザ、体位を変えても伸びない | 胃癌など(胃癌の肉眼分類と胃透視) |
| ひだの異常 | ひだが途中で途切れる・太くなる | 胃炎、潰瘍、がんなど |
| 胃の形のゆがみ | 胃の下がり・ねじれ | 体質的な形の場合も多い |
ごく早期の胃がんは、広い範囲がわずかに粗く見えるだけのことがあり、見つけにくい病変です。内視鏡で切除できる小さな早期胃がんを調べた研究では、検診のバリウム検査(間接撮影・直接撮影)で病変の部位に何らかの異常を指摘できたのは約半数でした(Arai 2002)。バリウム検査は役に立ちますが、バリウム検査だけですべてを拾えるわけではありません。
バリウム検査と内視鏡の違い
地域の検診データ(バリウム検査73,653件、内視鏡61,658件)の解析では、限局した胃がんを見つける感度は、内視鏡83.4%に対してバリウム検査65.3%、特異度は99.0%と88.7%でした。バリウム検査で「要精密検査」とされた人のうち、限局した胃がんだった割合(陽性的中率)は2.2%で、内視鏡は27.4%でした(Chei 2026)。つまり、バリウム検査で「要精密検査」と言われても、その大半は胃がんではありませんが、見つかった疑いは内視鏡で確かめる必要があります。
一方で、日本のガイドラインは、偽陽性・偽陰性・合併症は両方の検査で見られるものの、合併症の割合は内視鏡のほうが高かったとしています(Hamashima 2018)。また、バリウム検査の見逃しは、読影する人の経験にも左右されます。デジタルトモシンセシス(断層撮影)を追加した研究では、早期胃癌の検出率は経験のある読影者で71.0%→83.9%、経験の浅い読影者で53.4%→79.0%と改善しました(Tachi 2025)。
1984年の研究でも、バリウム検査の見逃しは、わずかな病変を描けないことに加えて、受診者の協力が得にくいことや、読影・撮影の失敗が要因でした(Dooley 1984)。ゲップを我慢する、指示された体位にすばやく動く、といった協力が、写真の質に影響します。
「要精密検査」と言われたら・検査後の注意
- 要精密検査=がんの診断ではありません。胃炎、ひだの偏り、胃の形、空気やバリウムの付き方による見かけの影でも指摘されます。
- 精密検査は、多くは内視鏡(胃カメラ)です。指摘された後は、早めに予約を取りましょう。
- バリウムは、検査後に便と一緒に出ます。水分をとり、施設の指示に従って下剤を使います。便が白いのは、バリウムのためです。便が出ない、おなかが張る、強い腹痛があるときは医療機関へ。
- バリウムの過敏反応(皮膚のかゆみ・発疹など)は非常にまれです(Janower 1986)。
- 検査後のCTで、腸に残ったバリウムが白く写ることがあります(バリウム検査後のCTで見える高吸収)。
胃の痛み、胸やけ、黒い便、体重減少など、気になる症状があるときは、健診の結果にかかわらず、早めに医療機関へ相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. バリウム検査では、なぜ何度も体の向きを変えるのですか?
A. 胃は固定されておらず、壁の位置が体位で変わるためです。あおむけで後ろの壁、うつぶせで前の壁、斜めで側面や入口の部分を、バリウムを移動させながら順に写します。
Q. 二重造影とは何ですか?
A. バリウムを壁に薄く付け、空気で胃を膨らませて撮る方法です。バリウムと空気の2つで壁を写すので「二重」と呼びます。壁の細かな凹凸を見るのに向いています。
Q. バリウム検査と胃カメラは、どちらがよいですか?
A. 地域の検診データでは、限局した胃がんの検出は内視鏡のほうが感度が高い結果でした(Chei 2026)。一方、日本のガイドラインは、どちらの検査も検診の方法として推奨しています(Hamashima 2018)。どちらを受けるかは、検診の案内や主治医と相談してください。
Q. 「要精密検査」と言われました。胃がんですか?
A. 要精密検査は、疑いのある所見があるので内視鏡で確認してください、という意味です。バリウム検査で要精密検査となった人のうち、限局した胃がんが見つかった割合は2.2%でした(Chei 2026)。ただし、確認の検査は受けてください。
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参考文献
- Hamashima C. Update version of the Japanese Guidelines for Gastric Cancer Screening. Jpn J Clin Oncol. 2018;48(7):673-683. PubMed
- Chei CL, Nakamura S, Watanabe K, et al. Sensitivity and specificity of endoscopic and radiographic screening for localized gastric cancer in a real-world, population-based setting. Gastric Cancer. 2026 Sep 9. doi: 10.1007/s10120-026-01797-w. PubMed
- Arai J, Yamada H, Maruyama M. Initial radiographic findings of early gastric cancer detected in health check programs and human “dry dock” (multiphasic screening) collective health checks and treated by endoscopic mucosal resection. Gastric Cancer. 2002;5(1):35-42. PubMed
- Tachi M, Sohara K, Kumita S. Improving early gastric cancer detection in upper gastrointestinal series adding digital tomosynthesis (DTS): a preliminary study. Jpn J Radiol. 2025;43(8):1313-1322. PubMed
- Norton GA, Kelvin FM, Thompson WM. Double contrast technique in the proximal stomach. J Can Assoc Radiol. 1980;31(1):57-61. PubMed
- Dooley CP, Larson AW, Stace NH, et al. Double-contrast barium meal and upper gastrointestinal endoscopy. A comparative study. Ann Intern Med. 1984;101(4):538-45. PubMed
- Janower ML. Hypersensitivity reactions after barium studies of the upper and lower gastrointestinal tract. Radiology. 1986;161(1):139-40. PubMed
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