
先に結論:LGFMSは「画像も組織も良性に見えるのに、長い経過で再発・転移する」深部の軟部肉腫
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 線維成分と粘液成分が混ざる、まれな軟部肉腫。粘液線維肉腫とは別の腫瘍 |
| 好発 | 若年〜中年の、四肢近位や体幹の深部軟部組織 |
| MRIの手がかり | 境界明瞭で、T1・T2とも低信号の線維成分と、T2で水の信号を示す粘液成分が混在。造影は隔壁状・結節状 |
| 落とし穴 | 良性腫瘍に見える。再発や転移が10年以上あとに出ることがある |
| 診断の決め手 | 生検・切除標本の病理(FUS-CREB3L2融合、MUC4染色)。画像だけでは決められない |
LGFMSとは
低悪性度線維粘液性肉腫(low-grade fibromyxoid sarcoma、以下LGFMS)は、穏やかな見た目の紡錘形の細胞が渦巻くように並び、線維の多い部分と粘液の多い部分が急に入れ替わる腫瘍です(Mohamed 2017)。多くはFUS-CREB3L2という融合遺伝子をもち、染色ではMUC4というタンパクが一貫して陽性になります(Mohamed 2017)。
名前がよく似た粘液線維肉腫(myxofibrosarcoma)とは別の腫瘍です。レポートで「LGFMS」と「myxofibrosarcoma」を読み違えると、悪性度の見積もりも経過観察の長さも変わってしまいます。略語は声に出して確認する習慣をつけておくと安全です。
どこに・誰にできるか
| 報告 | 内容 |
|---|---|
| 成人を含む33例(Evans 2011) | 年齢は6〜52歳(中央値29歳)。部位は肩、大腿、鼠径部が多く、大きさは1.5〜16cm(中央値9.4cm) |
| 若年者の典型像(Mohamed 2017) | 四肢近位や体幹の深部軟部組織に生じる |
| 小児11例(Sargar 2015) | 四肢が9例、舌と肺が各1例。深部が7例、浅い部位が4例。全例が境界明瞭な単発で、診断時に転移はなかった |
痛みの少ない、ゆっくり大きくなるしこりとして見つかることが多く、成人でも下腹部の腫瘤として受診した例が報告されています(Yue 2018)。
MRIとCTの見え方
小児11例(MRI10例・CT4例)の検討では、腫瘍は境界明瞭な単発で、内部が「充実成分と嚢胞状成分の混在」だったものが8例、「ほぼ充実」が3例でした(Sargar 2015)。MRIの所見を信号ごとに整理すると、次のようになります。
| 画像 | 所見(Sargar 2015) | 対応する組織 |
|---|---|---|
| T1強調像 | 全例で筋より低信号の部分があり、6例でsplit-fat sign(腫瘍の周りを脂肪が取り囲む所見) | ― |
| T2強調像・STIR | 8例で筋より低信号の部分、8例で水の信号の部分 | 低信号は線維成分、水の信号は粘液成分 |
| 造影MRI | 8例で厚い隔壁状の造影、3例で辺縁の結節状・脳回状の造影 | ― |
| CT | 4例すべてで筋より低吸収。1例に点状の石灰化 | ― |
T1とT2の両方で低信号を示す領域が線維成分、T2で水の信号を示す領域が粘液成分に当たる、と病理と対比されています(Sargar 2015)。つまり「T2で低信号と高信号が層や渦のように混ざる」ことが、この腫瘍の読みどころです。ただし例数は多くなく、小児の報告であることに注意してください。
症例 21歳女性 骨盤前壁の低悪性度線維粘液性肉腫

引用:Yue Y, et al. BMC Musculoskelet Disord 2018;19:65(Figure 1)。CC BY 4.0。図は加工していません。PubMed
下腹部の無痛性の腫瘤が次第に大きくなった21歳女性の報告です。MRIでは12×10×9cmの分葉状の腫瘤で、T1強調像では筋と同程度の信号、脂肪抑制T2強調像では不均一な高信号の中に点状・斑状の低信号がありました。周囲に輪状の低信号があり、被膜または偽被膜と考えられています。拡散強調像で拡散制限を示し、造影では不均一に増強されました(Yue 2018)。
良性に見える落とし穴
LGFMSで一番大切なのは、「画像で境界がきれい、組織も穏やか」でも経過は穏やかとは限らないという点です。
| 見た目の印象 | 実際の報告 |
|---|---|
| 境界明瞭で、ゆっくり大きくなる | 5年以上経過を追えた33例のうち、21例が再発し(最長15年後)、15例が転移した(最長45年後。多くは肺と胸膜)(Evans 2011) |
| 小さければ安心 | 3.5cm未満の4例は、最終受診時にいずれも腫瘍なしだった(Evans 2011)。ただし例数は少ない |
| 組織像が良性様なら予後も良い | 脱分化(悪性度の高い成分への変化)を除き、組織像の違いは経過や生存と関連しなかった(Evans 2011) |
| 取り切れれば終わり | 若年者31例では、顕微鏡的に取り残しがない切除でも24例中5例(21%)が再発。取り残しがあった7例では3例(43%)が局所再発した(Scheer 2020) |
同じ若年者の検討では、診断から6年後に肺・背筋・大腿へ転移した例があり、通常と違う部位に転移しうるため、長期の経過観察の必要性を本人と家族に伝えるべきだと述べられています(Scheer 2020)。また、傍脊椎の腫瘍が神経線維腫と誤診されたまま3回目の再発に至った例もあります(Rose 2011)。
鑑別を考える
深部の境界明瞭な軟部腫瘤で、T2に低信号と高信号が混ざるときは、LGFMSのほかに次のものを考えます。
| 鑑別 | 見分けの手がかり |
|---|---|
| 粘液線維肉腫 | 名前が似るが別の腫瘍。レポート上の取り違えに注意 |
| 神経鞘腫・神経線維腫 | 神経に沿う形、target sign。LGFMSが神経線維腫と誤診された報告がある(Rose 2011) |
| 侵襲性血管粘液腫 | 渦巻き状・層状の信号が似るが、会陰・骨盤に多い |
| 結節性筋膜炎 | 短期間で急に大きくなる、fascial tail sign |
| 滑膜肉腫 | 若年者の関節近くの腫瘤。信号が不均一で混在する |
鑑別に使える既存記事として、軟部腫瘍の画像診断と鑑別、侵襲性血管粘液腫のMRI所見、結節性筋膜炎のCT・MRI所見、滑膜肉腫のMRI・CT所見、異型脂肪腫様腫瘍・高分化脂肪肉腫のMRI・CTがあります。
診断と治療の流れ
画像で「良性らしい」と感じても、深部で大きい、あるいは大きくなる軟部腫瘤は、生検を含めた精査が必要です。LGFMSの診断は病理が中心で、FUS-CREB3L2融合の検出にはFISH法とRT-PCR法が使われます。23例の検討では、融合が検出された割合はRT-PCRで50%、FISHで81.8%で、FISHのほうが感度が高いと報告されています(Rose 2011)。
治療は、断端を確保した外科的切除が基本です(Mohamed 2017)。遅れて再発や転移が出るため、正しい診断と、長期の経過観察が重要とされています(Mohamed 2017、Rose 2011)。治療の方針は、肉腫を扱う専門施設で検討されるのが一般的です。
組織像と画像のつながり、再発時の変化
典型的な組織像は、線維の多い部分と粘液の多い部分が対照的に並び、細胞は少なめで、核分裂はまれ、細胞が渦巻くように並ぶというものです(Evans 2011)。粘液の部分には血管が目立つことが多いとされます(Evans 2011)。MRIで見える「T2で低信号の線維成分」と「T2で水の信号の粘液成分」は、この組織像を反映していると考えられています(Sargar 2015)。
注意したいのは、再発や転移の腫瘍では、細胞の多い領域が増えることです(Evans 2011)。33例の中には、悪性度の高い細胞に置き換わった「脱分化」を起こした再発が2例、硬化性類上皮線維肉腫に似た像で再発した例が1例ありました(Evans 2011)。硬化性類上皮線維肉腫は、LGFMSと近い関係が議論されている別の線維芽細胞性腫瘍で、一部にLGFMSと区別できない領域を含むことがあります(Mohamed 2017)。術後のフォローで再発腫瘍の信号や造影の様子が最初の腫瘍と違って見えたら、悪性度が上がった可能性も考えて、生検などの確認を提案します。
研修医のための読影チェックリスト
| 見る点 | 確認すること |
|---|---|
| 部位・深さ | 筋膜より深いか。四肢近位・体幹か |
| T2の内部構造 | 低信号(線維)と高信号(粘液)が層・渦状に混ざるか |
| 境界 | 境界明瞭でも悪性を否定する根拠にはならない |
| 造影 | 隔壁状・結節状の造影があるか |
| 周囲・遠隔 | 周囲への浸潤の有無。肺(胸部CT)への転移の有無 |
| レポートの書き方 | 「良性とは言い切れない深部軟部腫瘍。生検・専門施設での評価を推奨」と明記 |
よくある疑問(Q&A)
Q. 何年も変わらない腫瘤でも、LGFMSの可能性はありますか?
A. あります。LGFMSはゆっくり育つ腫瘍で、再発や転移が診断から10年以上あとに出た報告があります(Evans 2011)。大きさや経過だけで良性と判断せず、画像と病理で確認します。
Q. 小児にもできますか?
A. できます。小児の報告では四肢の深部に多く、MRIでは線維成分と粘液成分が分かれて見えます(Sargar 2015)。小児の登録研究では、5年無イベント生存率は71%でした(Scheer 2020)。
Q. 切除したあと、画像のフォローは必要ですか?
A. 局所再発も遠隔転移も遅れて起こりうるため、長期の経過観察が重要とされています(Rose 2011、Scheer 2020)。間隔や期間は主治医や専門施設の方針に従ってください。
Q. 気になるしこりがあるときは?
A. 大きくなるしこりや深いところのしこりは、整形外科などの医療機関を受診してください。
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参考文献
- Evans HL. Low-grade fibromyxoid sarcoma: a clinicopathologic study of 33 cases with long-term follow-up. Am J Surg Pathol. 2011;35(10):1450-62. PubMed
- Sargar K, Kao SC, Spunt SL, et al. MRI and CT of Low-Grade Fibromyxoid Sarcoma in Children: A Report From Children’s Oncology Group Study ARST0332. AJR Am J Roentgenol. 2015;205(2):414-20. PubMed
- Scheer M, Vokuhl C, Veit-Friedrich I, et al. Low-grade fibromyxoid sarcoma: A report of the Cooperative Weichteilsarkom Studiengruppe (CWS). Pediatr Blood Cancer. 2020;67(2):e28009. PubMed
- Mohamed M, Fisher C, Thway K. Low-grade fibromyxoid sarcoma: Clinical, morphologic and genetic features. Ann Diagn Pathol. 2017;28:60-67. PubMed
- Rose B, Tamvakopoulos GS, Dulay K, et al. The clinical significance of the FUS-CREB3L2 translocation in low-grade fibromyxoid sarcoma. J Orthop Surg Res. 2011;6:15. PubMed
- Yue Y, Liu Y, Song L, et al. MRI findings of low-grade fibromyxoid sarcoma: a case report and literature review. BMC Musculoskelet Disord. 2018;19(1):65. PubMed
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