胞巣状軟部肉腫 T1高信号と多数のflow void

10歳代後半の人の太ももの深いところに、MRIでT1強調像でもやや高信号の腫瘤があり、周りに太い血管のflow voidがたくさん見えます。血管奇形でしょうか、それとも肉腫でしょうか?
若い人の筋肉内の深い腫瘤で、T1・T2ともに高信号、腫瘍の中と周りにflow voidが多い、という組み合わせなら、胞巣状軟部肉腫(ASPS)を考えたいところです。血管奇形や筋肉内の血管腫と間違えやすい肉腫で、診断時にすでに肺転移がある人も少なくありません。MRIの特徴と転移の調べ方を文献で整理します。

先に結論:胞巣状軟部肉腫は若い人の深部にできる、血管がとても豊富な肉腫。MRIではT1でやや高信号・T2で高信号、腫瘍内外の多数のflow voidが手がかり。肺転移が多く、脳転移も起こる

項目 ポイント
どんな腫瘍か 思春期〜若年成人に多いまれな肉腫。成人は下肢、小児は頭頸部に多い。ASPSCR1–TFE3融合遺伝子が特徴(Jaber 2015)
MRIの特徴 深部、T1高信号、中心壊死、線維成分なし、浸潤性の辺縁、tail signなし、腫瘍内外のflow void(5個以上)(Crombé 2019)
見間違えやすいもの 筋肉内の良性血管腫瘍や血管奇形(Crombé 2019)
転移 診断時に43%が遠隔転移(Wang 2016)。転移は肺が中心で、脳転移はステージⅣの19%(Portera 2001)
経過 転移が多い一方で、経過は比較的ゆっくりで長く生存する人もいる(Wang 2016)

胞巣状軟部肉腫(ASPS)とは

胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma、ASPS)は、軟部肉腫のなかでもまれな腫瘍です。顕微鏡で見ると、腫瘍細胞が肺胞のような巣(胞巣)をつくって並ぶことから名前がついています。成人では下肢の軟部、小児では頭頸部に多いとされ、ゆっくり大きくなる腫瘤として、あるいは転移で見つかります(Jaber 2015)。

遺伝子では、X染色体と17番染色体の転座 der(17)t(X;17)(p11;q25) によって、TFE3とASPSCR1が融合するのが特徴です。腫瘍の核がTFE3の免疫染色で陽性になり、診断に使われます(Jaber 2015)。この融合遺伝子は血管新生を進める働きをもつことが報告されており(Jaber 2015)、画像で「血管がとても豊富」に見えることとつながります。

どこにできるか

単一施設の74人の検討では、原発の部位は四肢が60%、体幹が20%、頭頸部が12%、後腹膜が8%で、腫瘍の大きさの中央値は6.5cmでした(Portera 2001)。小児・思春期の6人の報告では、四肢の筋肉内4人、胸壁の筋肉1人、眼窩1人でした(Viry 2013)。下肢・上肢の34人を調べた研究では、31人が下肢でした(Lv 2023)。

MRIの特徴

ASPSは組織の形がそろった腫瘍で、その均一さが画像にも表れるとされています(Crombé 2019)。複数の研究で繰り返し報告されている所見をまとめます。

T1でやや高信号、T2で高信号

軟部肉腫の多くはT1強調像で筋肉と同じくらいの信号ですが、ASPSはT1強調像で筋肉よりやや高信号になることが多いのが特徴です。T2強調像では高信号です。12人の単一施設の検討では、MRIが撮られた全員でT1がやや高信号、T2が高信号で、腫瘍の周りに浮腫がありました(Spinnato 2023)。四肢の34人の検討でも、T2強調像・脂肪抑制T2強調像で不均一な高信号、T1強調像でやや高信号でした(Lv 2023)。小児6人では、T2で全員が高信号、T1では筋肉と比べて高信号か等信号でした(Viry 2013)。

T1で高信号になる理由ははっきりしていません。脂肪や出血、メラニンによるT1高信号とは成り立ちが違う可能性があるため、「T1高信号=脂肪か出血」と決めつけないことが大切です。

腫瘍の中と周りのflow void

ASPSで最も目立つのが、腫瘍の中と周りに多数のflow void(速い血流による無信号の管状構造)が見えることです。34人の検討では全例で腫瘍内外の管状のflow voidが見られました(Lv 2023)。12人の検討でも、MRIの全例でflow voidがあり、太い栄養血管は超音波(7/7)・MRI(10/10)・CT(3/3)のいずれでも見えていました(Spinnato 2023)。小児では、70mmを超える大きな腫瘍で、太い血管が腫瘍の中心に向かって集まる「中心の星状の領域」が見られています(Viry 2013)。flow voidが生じるしくみはflow voidの記事で説明しています。

造影・拡散強調像

造影では強く、持続する増強を示します。ダイナミック造影の時間信号曲線では、早い動脈相での増強とゆっくりした洗い出しが見られました。拡散強調像では高信号で、ADCの平均は0.86×10−3 mm2/sと低めでした(Lv 2023)。63人の検討では、組織学的に高悪性度のものほどADCが低く、ADCとKi-67の発現には負の相関がありました(Yuan 2024)。

8つのMRI所見の組み合わせ

フランスの肉腫グループは、ASPS 25人(平均18.5歳)と、良性・悪性のさまざまな軟部腫瘍292人の造影MRIを比べ、ASPSと関連する8つの所見を挙げました(Crombé 2019)。

ASPSと関連した所見 読影のときの見方
深部にある 筋膜より深い、筋肉内の腫瘤
T1強調像で高信号 筋肉より明らかに白い部分がある
中心の壊死 中心部が造影されない
線維成分がない T1・T2で低信号の線維性の部分が乏しい
浸潤性の発育 辺縁が不整で周囲にしみ込む
tail signがない 筋膜に沿って尾を引く造影がない
腫瘍内外のflow void 腫瘍の中と周りに無信号の血管
flow voidが5個以上 数が多いほどASPSらしい

ASPSの25人中20人(80%)がこの8項目のうち7項目以上を満たしたのに対し、対照の292人で7項目以上を満たしたのは4人(1.4%)でした。7項目に届かなかったASPS 5人は、いずれも40mm未満の小さな腫瘍でした(Crombé 2019)。小さいASPSは典型像がそろわないことがある、と覚えておきます。

症例 10歳代女性 前腕の胞巣状軟部肉腫

胞巣状軟部肉腫 前腕MRI 腫瘍内外のflow void
引用:Spinnato P, et al. Imaging Features of Alveolar Soft Part Sarcoma: Single Institution Experience and Literature Review. Clin Pract 2023;13(6):1369-1382 (Figure 5). CC BY 4.0。PMC10660714

前腕の筋肉内の腫瘤です。矢状断(a)と冠状断(c)のプロトン密度強調脂肪抑制像で中等度の高信号を示し、周囲にびまん性の浮腫(*)があります。液体に敏感な撮像で腫瘍の中と周りにflow void(矢印)が見え、冠状断のT1強調像(d)では不均一なやや高信号の腫瘤です(Spinnato 2023)。

鑑別:血管奇形・血管腫、ほかの肉腫

flow voidが多くT2で高信号の筋肉内腫瘤は、良性の血管腫瘍や血管奇形と紛らわしくなります。Crombéらも、同じ年代に起こる筋肉内の良性血管腫瘍や血管奇形とASPSを間違えることがあると注意しています(Crombé 2019)。

鑑別 ASPSと比べるときの手がかり
筋肉内血管腫・血管奇形 脂肪成分や静脈石が手がかりになることがある。ASPSは充実性の腫瘤とその周りのflow void、中心壊死が目立つ
滑膜肉腫 若い人の深部の肉腫として鑑別に挙がる。T2で信号が混在する形(滑膜肉腫の記事)
神経鞘腫 flow voidを伴うことがある。神経との連続を確認する(神経鞘腫の非典型像の記事)
ほかの高悪性度肉腫 対照で7項目以上を満たしたのは、良性血管腫瘍1、孤立性線維性腫瘍1、高悪性度肉腫2(Crombé 2019)

転移:肺が中心、脳にも

ASPSは転移が多い肉腫です。米国のSEERデータベースの251人では、診断時に43%が遠隔転移を伴っていました(Wang 2016)。12人の単一施設では、診断時の全身造影CTで8人(66.7%)に転移があり、最大径5cmを超える腫瘍は診断時の遠隔転移と関連していました(Spinnato 2023)。小児6人では5人に肺転移があり、4人は診断時からでした(Viry 2013)。

脳転移はASPSの特徴としてよく挙げられます。74人の検討では、ステージⅣ(M1)で受診した48人のうち9人(19%)に脳転移があり、脳転移はいつもほかの部位の転移と一緒に見られました。著者らはこの結果から、全員に頭部の画像検査を行うのではなく、状況に応じて選ぶことを提案しています(Portera 2001)。一方で脳転移が多いことから、病期診断に頭部の画像を含める考え方もあり、施設や主治医の方針によって異なります。

転移の部位 文献の報告
全体 診断時に43%が遠隔転移(SEER 251人、Wang 2016)、66.7%(12人、Spinnato 2023)
肺 小児6人中5人(Viry 2013)。限局例の再発も肺のみ(Portera 2001)
脳 ステージⅣの19%。ほかの部位の転移と同時(Portera 2001)

予後と経過

SEERの251人の5年全生存率は56%で、局所・領域の病変では82%、遠隔転移があると27%でした。高齢、10cmを超える腫瘍、診断時の遠隔転移、体幹の原発が独立した予後不良因子でした。著者らは、転移が多い一方で経過は比較的ゆっくりで、長く生存する人もいるとまとめています(Wang 2016)。限局したASPS 22人を中央値9年追った研究でも、局所再発は2人、転移は3人(すべて肺のみ)でした(Portera 2001)。

治療の方針(手術・放射線治療・薬物療法)は、肉腫を専門とするチームで決めます。若い人で、筋肉の深いところに大きくなるしこりがある、しこりが脈打つように感じるといったときは、整形外科などの医療機関を受診してください。

読影のポイント

若い人の深部の軟部腫瘤で、T1でやや高信号、多数のflow voidがあれば、ASPSを鑑別の上位に挙げます。そのうえで、生検は肉腫を扱える施設で行うこと、胸部CTで肺転移を確認すること、状況に応じて頭部の画像検査を検討することをレポートに添えると、次の動きにつながります。ASPSとは反対に、線維成分が多くT2で低信号と高信号が混ざる深部の肉腫については低悪性度線維粘液性肉腫の記事で説明しています。

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よくある疑問(Q&A)

Q. T1で高信号なら、脂肪か出血ではないのですか?
A. ASPSはT1でやや高信号になることが報告されています(Spinnato 2023、Lv 2023)。脂肪抑制で信号が落ちるか、出血の時期に合う信号かを確かめ、flow voidの多さとあわせて考えます。

Q. 小さい腫瘍でも典型的な所見がそろいますか?
A. そろわないことがあります。8項目のうち7項目に届かなかったASPSは、いずれも40mm未満でした(Crombé 2019)。

Q. 脳のMRIは全員に必要ですか?
A. 意見が分かれます。74人の検討では、脳転移はいつもほかの転移と一緒に見られ、著者らは選択的な頭部検査を提案しました(Portera 2001)。検査の範囲は主治医の方針に従います。

Q. 肺転移があると予後はとても悪いのですか?
A. 遠隔転移があると5年生存率は27%と下がりますが、経過は比較的ゆっくりで長く生存する人もいます(Wang 2016)。

参考文献

  1. Crombé A, Brisse HJ, Ledoux P, et al. Alveolar soft-part sarcoma: can MRI help discriminating from other soft-tissue tumors? A study of the French sarcoma group. Eur Radiol. 2019;29(6):3170-3182. PubMed
  2. Spinnato P, Papalexis N, Colangeli M, et al. Imaging Features of Alveolar Soft Part Sarcoma: Single Institution Experience and Literature Review. Clin Pract. 2023;13(6):1369-1382. PubMed
  3. Lv C, Xue X, Huang M, et al. The dynamic contrast enhanced-magnetic resonance imaging and diffusion-weighted imaging features of alveolar soft part sarcoma. Quant Imaging Med Surg. 2023;13(10):7269-7280. PubMed
  4. Viry F, Orbach D, Klijanienko J, et al. Alveolar soft part sarcoma-radiologic patterns in children and adolescents. Pediatr Radiol. 2013;43(9):1174-81. PubMed
  5. Yuan J, Xie D, Fang S, et al. Qualitative and quantitative MRI analysis of alveolar soft part sarcoma: correlation with histological grade and Ki-67 expression. Insights Imaging. 2024;15(1):142. PubMed
  6. Portera CA Jr, Ho V, Patel SR, et al. Alveolar soft part sarcoma: clinical course and patterns of metastasis in 70 patients treated at a single institution. Cancer. 2001;91(3):585-91. PubMed
  7. Wang H, Jacobson A, Harmon DC, et al. Prognostic factors in alveolar soft part sarcoma: A SEER analysis. J Surg Oncol. 2016;113(5):581-6. PubMed
  8. Jaber OI, Kirby PA. Alveolar Soft Part Sarcoma. Arch Pathol Lab Med. 2015;139(11):1459-62. PubMed

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