
先に結論:脊椎の後方にできる骨形成腫瘍。周りの浮腫が強く、腫瘍が実際より大きく見えることがある
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 骨を作る細胞(骨芽細胞)の良性腫瘍。原発性骨腫瘍の約1%とまれ |
| 好発部位 | 脊椎の後方成分(椎弓・横突起・棘突起など)と仙骨。長管骨にもできる |
| 画像の特徴 | CTで石灰化を伴うニドゥス。MRIでは周囲の骨髄浮腫と軟部組織の浮腫が強い |
| 類骨骨腫との違い | 顕微鏡では似ているが別の疾患とされる。以前は大きさで分けていたが、現在は大きさだけでは分けない |
| 注意点 | 動脈瘤様骨嚢腫を伴うことがあり、攻撃的な像を示すもの・骨肉腫との区別も必要 |
骨芽細胞腫とは
骨芽細胞腫(osteoblastoma)は、骨を作る細胞(骨芽細胞)が増える良性の骨形成腫瘍で、原発性骨腫瘍の約1%、良性骨腫瘍の1〜5%、脊椎の骨腫瘍の約10%を占めるとされるまれな腫瘍です。かつては「巨大な類骨骨腫」と呼ばれていましたが、現在は後で説明する類骨骨腫とは別の疾患とする考えが主流です(Limaiem 2023)。良性とされる一方で、局所で再発する性質から中間的な(局所侵襲性の)腫瘍と記載する報告もあります(Liu 2020)。
好発部位は脊椎の後方成分(椎弓など)と仙骨で、長管骨では骨幹端〜骨幹に多く、上肢より下肢に多いとされています(Limaiem 2023)。脊椎では胸椎・腰椎に多く(Kan 2008)、若い成人に多い腫瘍です(Wu 2019)。症状は部位によって異なり、脊椎では痛みや神経の症状から見つかることがあります。画像の読みかたの前提として、脊椎・脊髄腫瘍の分類(硬膜内髄外・髄内・硬膜外)で発生部位ごとの考え方を押さえておくと整理しやすくなります。また、全身の骨腫瘍をどう絞るかは骨腫瘍の画像診断(年齢・部位・レントゲン所見で考える鑑別)が参考になります。
類骨骨腫との違い
骨芽細胞腫と類骨骨腫(osteoid osteoma)は、顕微鏡の見た目はとてもよく似ていますが、症状と分布が異なります。類骨骨腫は夜間の痛みがサリチル酸系の薬ですぐに和らぐことが多く、骨芽細胞腫は主に体幹(軸骨格)にできて、脊椎の病変が報告例の約3分の1を占めます(Greenspan 1993)。
| 項目 | 類骨骨腫 | 骨芽細胞腫 |
|---|---|---|
| 症状 | 夜間痛が典型で、NSAIDsなどが効く | 部位により異なる。痛みや神経症状 |
| 好発部位 | 長管骨の皮質など(脊椎の後方にもできる) | 脊椎の後方成分・仙骨(脊椎の病変は報告例の約3分の1) |
| 大きさ | 小さい傾向 | 大きい傾向。ただし大きさだけでは分けない |
| 顕微鏡 | 骨芽細胞が類骨を作る(似ている) | 同様に似ている |
(Greenspan 1993、Chotel 2012を参考に整理)
以前は大きさで2つを区別するのが一般的でした。しかし、類骨骨腫が骨芽細胞腫に変化するのかを検討した症例の報告では、2つの腫瘍は別の疾患であり、もはや大きさで区別すべきではないと結論づけられています(Chotel 2012)。「小さいから類骨骨腫、大きいから骨芽細胞腫」と単純に判断せず、症状・部位・経過と病理を合わせて考えます。類骨骨腫の症状や画像は類骨骨腫とは?夜間痛・NSAIDsが効く症状とレントゲン・CT画像(ナイダス)、治療で詳しく説明しています。
画像診断の見方
脊椎の骨芽細胞腫35人を、単純X線・骨シンチ・CT・MRIで調べた報告があります。検査ごとの特徴を表にまとめます(Liu 2020)。
| 検査 | わかること |
|---|---|
| 単純X線 | 病変の87.1%(27/31)で検出できた |
| 骨シンチ | 全病変で集積の増加 |
| CT | 全例でニドゥスの位置を正確に示し、石灰化をいつも検出できた |
| MRI | ニドゥスをT2強調像で88.2%(30/34)が明瞭に描出。周囲に強い浮腫 |
(Liu 2020)
CT:ニドゥスと石灰化
21人の脊椎の骨芽細胞腫の報告では、19人で脊椎の後方成分に病変の中心がありました。そのうち13人は椎体にまで広がっていました。CTでは全例に点状・結節状の石灰化があり、周囲を取り囲む硬化性の縁(sclerotic rim)は12人で全周に、8人で一部にありました(Huang 2020)。つまり、後方成分の溶けた病変の中に石灰化した小さな病巣(ニドゥス)があり、周囲に骨の硬化が見られるというのが典型像です。単純X線では見つけにくいことがあるため、背部痛で後方成分に異常を疑ったら、CTでニドゥスの有無を確かめます。
MRI:病変よりも浮腫が目立つ
MRIで見るのは次の3点です(Liu 2020)。
- ニドゥス:T2強調像で見えやすい。MRIだけでは石灰化が分かりにくいので、CTとあわせて確認する
- 骨髄浮腫:32人中23人(71.9%)で、ニドゥスのまわりに中等度〜高度の骨髄浮腫と軟部組織の浮腫があった。浮腫は椎体の中で偏って広がり、ニドゥスに近いほど強い
- 軟部組織の浮腫:隣の筋の束に沿って広がるが、皮下脂肪には及ばない
この浮腫の広がりは、腫瘍の範囲を実際より大きく見せることがあります。MRIでは周囲の炎症が悪性のように見えたり、反応性の変化や隣の軟部組織の腫瘤のために病変の範囲を過大に評価したりすると指摘する著者もいます(Liu 2020)。強い浮腫を見たら、CTでニドゥスと石灰化を探すのが実践的な読み方です。
症例 24歳女性 骨芽細胞腫(周囲の浮腫)

引用:Liu J, et al. Insights Imaging. 2020;11(1):122 (Figure 5) CC BY 4.0(加工なし)・PubMed
C6の左側の後方成分に病変がある、脂肪抑制T2強調像です。論文の症例説明では、病変周囲の軟部組織の浮腫と骨髄浮腫が高度で(グレード4)、軟部組織の浮腫は皮下脂肪には及ばないとされています。骨髄浮腫は椎体の中で偏って分布し、ニドゥスの側から内側へ広がって、椎体全体に及ぶこともあります。ニドゥスを含む椎体で浮腫が最大で、ほかの椎体の浮腫はニドゥスから離れるほど小さくなる、とも説明されています。
骨シンチ・PET
骨シンチでは全病変に集積が増えます(Liu 2020)。FDG-PET/CTを行った8人は全例が代謝亢進を示しました。また、CTやMRIで病変の周囲に炎症反応が広がる「flare現象」がありました(Huang 2020)。PETの数値は施設・装置で異なるため、ここでは数字の紹介にとどめます。
動脈瘤様骨嚢腫(二次性ABC)を伴うことがある
骨芽細胞腫には、二次性の動脈瘤様骨嚢腫(aneurysmal bone cyst:ABC)を伴うことがあります。脊椎の骨芽細胞腫35人のうち6人にABCがありました(Liu 2020)。ABCはMRIで液面形成(fluid-fluid level)を示す嚢胞性の病変で、基礎にある腫瘍を見落とさないことが大切です。ABCの画像は動脈瘤様骨嚢腫(ABC)のCT・MRI画像診断で詳しく解説しています。ABCを見たら「その中に別の腫瘍(骨芽細胞腫など)がないか」を考える習慣をつけると、見落としが減ります。
症例 28歳男性 骨芽細胞腫(動脈瘤様骨嚢腫を伴う)

引用:Liu J, et al. Insights Imaging. 2020;11(1):122 (Figure 4) CC BY 4.0(加工なし)・PubMed
右側の後方成分の病変です。論文の症例説明では、ニドゥスは軸位CT(特に骨条件)でよく見え、MRIではT1強調像で等信号、脂肪抑制T2強調像で高信号とされています。ABCはMRIで明瞭で、典型的なfluid-fluid levelを示しました。
攻撃的な骨芽細胞腫と骨肉腫との区別
骨芽細胞腫の画像は、おとなしいものから非常に攻撃的なものまでさまざまです。攻撃的な像や臨床所見があるときは、攻撃的(類上皮)骨芽細胞腫や、骨芽細胞腫に似た骨肉腫との区別が必要になります(Limaiem 2023)。21人の脊椎の検討では、16人が良性、5人が攻撃的な骨芽細胞腫でした(Huang 2020)。この報告の図示例には、針生検の前にユーイング肉腫または骨肉腫と診断されていた攻撃的な骨芽細胞腫もありました。画像で攻撃的な像を示す場合も、最終診断には病理が必要です。
読影のチェックリスト
- 背部痛や頸部痛で、脊椎の後方成分(椎弓・横突起・棘突起)に溶けた病変や硬化がないか
- 病変の中に石灰化した小さな病巣(ニドゥス)がないか(CTの骨条件で確認する)
- MRIで、病変の大きさに比べて骨髄浮腫・筋の浮腫が不釣り合いに広くないか
- 嚢胞成分とfluid-fluid levelがあれば、二次性ABCとその基礎の腫瘍を考える
- 皮質破壊・軟部腫瘤・急速な増大など攻撃的な所見があれば、骨肉腫なども含めて病理で確認する
似た画像を示す病気
骨の中の小さな病巣と周囲の強い浮腫という組み合わせは、骨芽細胞腫や類骨骨腫だけでなく、慢性の骨の感染(Brodie膿瘍)でも見られ、鑑別が問題になります。Brodie膿瘍と類骨骨腫の違いはBrodie膿瘍のレントゲン・MRI画像所見(penumbra signと類骨骨腫との鑑別)で説明しています。ニドゥスの石灰化の有無、病変の位置、症状の経過を合わせて考えます。
治療と経過
治療は手術が基本で、病巣を掻爬する方法や、周囲の正常な骨を含めて切除する方法があります。手術ができない場合には放射線治療も行われます(Limaiem 2023)。脊椎の骨芽細胞腫13人の手術例では、痛みのスコアは6.2から0.5へ下がり、局所再発は1人でした。ニドゥスを正確に特定して取り切ることが再発予防の鍵とされています(Wu 2019)。治療の方針は主治医と相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 骨芽細胞腫は悪性ですか?
A. 良性の骨形成腫瘍とされますが、画像で攻撃的な像を示すものがあり、骨肉腫との区別が必要な場合があります(Limaiem 2023)。
Q. 類骨骨腫との違いは大きさだけですか?
A. 以前は大きさで区別されていましたが、現在は2つの腫瘍は別の疾患とされ、大きさだけでは区別しません(Chotel 2012)。症状・好発部位・病理もあわせて判断します。
Q. X線で異常がないと言われました。腫瘍はないのでしょうか?
A. 脊椎の骨芽細胞腫でX線で検出できたのは87.1%でした(Liu 2020)。痛みが続く場合はCTやMRIでの確認が検討されます。気になる症状があれば、医療機関で相談してください。
Q. MRIで強い浮腫があるとどう考えますか?
A. 浮腫が強いときは、その中心にニドゥスがないかをCTで確認します(Liu 2020)。
あわせて読みたい:中殿筋腱・小殿筋腱断裂(大転子疼痛症候群)のMRI
参考文献
- Liu J, Han S, Li J, et al. Spinal osteoblastoma: a retrospective study of 35 patients’ imaging findings with an emphasis on MRI. Insights Imaging. 2020;11(1):122. PubMed
- Huang Z, Fang T, Si Z, et al. Imaging algorithm and multimodality evaluation of spinal osteoblastoma. BMC Musculoskelet Disord. 2020;21(1):240. PubMed
- Greenspan A. Benign bone-forming lesions: osteoma, osteoid osteoma, and osteoblastoma. Clinical, imaging, pathologic, and differential considerations. Skeletal Radiol. 1993;22(7):485-500. PubMed
- Chotel F, Franck F, Solla F, et al. Osteoid osteoma transformation into osteoblastoma: fact or fiction?. Orthop Traumatol Surg Res. 2012;98(6 Suppl):S98-104. PubMed
- Limaiem F, Byerly DW, Mabrouk A, et al. Osteoblastoma. . 2023. PubMed
- Wu M, Xu K, Xie Y, et al. Diagnostic and Management Options of Osteoblastoma in the Spine. Med Sci Monit. 2019;25:1362-1372. PubMed
- Kan P, Schmidt MH. Osteoid osteoma and osteoblastoma of the spine. Neurosurg Clin N Am. 2008;19(1):65-70. PubMed
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