侵襲性血管粘液腫のMRI 渦巻き状・層状パターンと会陰・骨盤腫瘤の鑑別

会陰部(外陰のあたり)に大きな腫瘤があり、MRIで「侵襲性血管粘液腫かもしれない」と言われました。「侵襲性」という名前が怖いです。
名前に「侵襲性」とつきますが、転移することはまれな良性の間葉系腫瘍です。周りにしみ込むように広がって再発しやすいことから、この名前がついています。

先に結論:会陰・骨盤の境界明瞭な腫瘤で、T2強調像の高信号と「渦巻き状(swirl)・層状」の内部構造があれば侵襲性血管粘液腫を考える

項目 要点
何か 骨盤・会陰に多い、まれな間葉系腫瘍。発育はゆっくりだが局所で広がり、再発しやすい
好発 生殖年齢の女性(報告例の発症年齢中央値34歳)
MRI T1強調像で筋と等信号、T2強調像で高信号、強い造影と渦巻き状(swirled/laminated)パターン
CT 筋より低吸収の、周囲を圧排する境界明瞭な腫瘤
次にすること 骨盤底(肛門挙筋)との関係を含めた広がりを報告。生検とホルモン受容体の検索、術後は長期の経過観察

侵襲性血管粘液腫(aggressive angiomyxoma)とは

侵襲性血管粘液腫(aggressive angiomyxoma:AAM)は、骨盤や会陰に多いきわめてまれな間葉系腫瘍です。多くはエストロゲン・プロゲステロン受容体が陽性で、発育はゆっくりですが局所浸潤性があり、断端陰性で切除しても再発しうる腫瘍とされます(Cardenas Lara 2024)。文献では deep angiomyxoma(深在性血管粘液腫)とも呼ばれます(Yoshida 2025)。

女性87例の報告を集めた検討では、発症年齢は2〜67歳(中央値34歳)、腫瘍の大きさは症例によって大きく異なり、約65.5%は無症状でした。診断にはMRI・超音波・針生検が用いられています(Wang 2023)。腫瘤が大きくても症状が乏しく、偶然見つかることがある点が特徴です。

MRIでどう見えるか

基本の信号

5例のCT・MRIを検討した報告では、腫瘍は境界明瞭で周囲構造を圧排し、T1強調像で筋と等信号、T2強調像で高信号、ガドリニウム造影で強く造影され、内部に特徴的な「渦巻き状(swirled)」のパターンを示しました(Jeyadevan 2003)。

渦巻き状・層状パターン(swirl / laminated sign)

AAMが疑われた16例を病理と照合した研究では、AAM 10例のMRIはすべてT2高信号と強い造影を示し、9例中7例に層状(laminated)パターンがみられました(Kumar 2020)。この所見は「laminated or swirled sign」として紹介されています(Srisajjakul 2025 ※画像サインの解説)。

渦巻き模様の正体については、T2強調像の swirl sign が、腫瘍の長軸に沿ってまっすぐ走る血管と、浮腫状の間質の中でそれを支える膠原線維に対応していたという放射線-病理対比の報告があります(Yoshida 2025)。

シーケンス 典型像 補足
T1強調像 筋と等信号 出血は少ない(10例中1例)(Kumar 2020)
T2強調像 高信号+渦巻き状・層状の内部構造 層状パターン 7/9(Kumar 2020)
拡散強調像 一定しない 拡散制限 2/3(Kumar 2020)、明らかな拡散制限を示した報告も(Zhang 2024)
造影 強い造影、内部に渦巻き状パターン 嚢胞成分を伴うことも(10例中4例)(Kumar 2020)

拡散制限があるからといって悪性腫瘍と決めつけないことが大事です。

症例 40歳代女性 侵襲性血管粘液腫(疑い)

侵襲性血管粘液腫 MRI T2強調像 矢状断像
引用:Radiopaedia(Deep perineal mass with T2 ‘swirl sign’ – likely aggressive angiomyxoma)

会陰の深いところに分葉状の大きな腫瘤があり、腟の後壁に沿って広がり、直腸の前面に接しています。T2強調像で高信号の中に渦を巻くような層状の構造(swirl sign)が見えます。拡散制限はなく、病理も侵襲性血管粘液腫に合う所見でしたが、症例ページでは確定ではなく「可能性が高い」とされています。

CT・超音波での見え方

CTでは筋よりも低吸収の、境界明瞭で周囲を圧排する腫瘤として描出されます(Jeyadevan 2003)。

外陰・腟の浅い部位にある小さく形の整った非典型例の報告では、超音波で境界明瞭な低エコー〜無エコーの腫瘤に、粗い点状エコーが均一に分布し、腫瘍内血流はあることもないこともありました。超音波は3例すべてで部位と範囲を捉えましたが、組織型まで言い当てられたのは1例(33%)でした(Zhang 2024)。表在性で小さくても、AAMは鑑別に残しておく必要があります。

鑑別診断

AAMを疑った症例のうち、病理で別の疾患だったもの(mimics)は、線維腫症2例、神経原性腫瘍2例、胚細胞腫瘍1例、炎症性筋線維芽細胞腫瘍1例でした。最も紛らわしかったのは骨盤の線維腫症で、1例は層状パターンを示しました(Kumar 2020)。

疾患 AAMとの違いの目安
線維腫症(デスモイド) 層状パターンを示すことがあり最も紛らわしい(Kumar 2020)。病理での確認が要る
神経原性腫瘍 神経の走行に沿った位置・形に注目
バルトリン腺嚢胞など会陰部の嚢胞 造影されない嚢胞で、渦巻き状の充実部はない

会陰部の嚢胞性病変はバルトリン腺嚢胞・スキーン腺嚢胞・ガートナー管嚢胞の違いを、女性の鼠径部の嚢胞はNuck管水腫の画像所見を参照してください。

治療と再発・レポートで書くこと

骨盤のAAM 32例(94%が女性、経過観察期間の中央値65か月)の検討では、30例が切除、2例が薬物療法のみで治療されました。初回手術で断端陰性(R0)切除となった15例のうち4例(27%)が再発し、死亡例はありませんでした。CT・MRIで診断と手術計画を立て、術前生検とホルモン受容体の検索を組み合わせ、治療後は綿密な経過観察を行うことが勧められています(Cardenas Lara 2024)。GnRHアゴニストが術前の縮小や再発予防に用いられることもあります(Wang 2023)。

MRIは腫瘍の広がりと骨盤底との関係を示すことができ、再発腫瘍は初発と似た像を示します(Jeyadevan 2003)。レポートでは次の点を書くと手術計画に役立ちます。

  • 腫瘍の最大径と、坐骨直腸窩・会陰・骨盤内への広がり
  • 肛門挙筋をまたいで骨盤内と会陰に連続しているか
  • 直腸・腟・膀胱・尿道との位置関係(圧排か、境界が不明瞭か)
  • 術後なら、初発と同じ信号・パターンの再発がないか

肛門挙筋の解剖は肛門挙筋とは?CT・MRI画像での解剖で確認できます。気になる症状があれば婦人科を受診してください。治療方針は主治医に相談しましょう。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 「侵襲性」なのはがんだからですか?

いいえ。発育はゆっくりで、局所に広がり再発しやすい性質からこの名前があります(Cardenas Lara 2024)。2003年の報告でも良性の間葉系腫瘍として扱われています(Jeyadevan 2003)。

Q2. MRIだけで診断できますか?

渦巻き状・層状パターンは診断の確信度を上げますが(Kumar 2020)、線維腫症などにも似た像があるため、確定には生検・病理が用いられます。

Q3. 手術でとりきれば再発しませんか?

断端陰性で切除しても再発した例があり(15例中4例)(Cardenas Lara 2024)、長期の経過観察が必要とされます(Wang 2023)。
参考文献

  1. Jeyadevan NN, Sohaib SA, Thomas JM, et al. Imaging features of aggressive angiomyxoma. Clin Radiol. 2003;58(2):157-62. PubMed
  2. Kumar N, Goyal A, Manchanda S, et al. Aggressive pelvic angiomyxoma and its mimics: can imaging be the guiding light? Br J Radiol. 2020;93(1111):20200255. PubMed
  3. Yoshida H, Kikkawa N, Takigawa W, et al. Unveiling the swirl sign: A radiologic-pathologic correlation in deep angiomyxoma. Ann Diagn Pathol. 2025;75:152426. PubMed
  4. Srisajjakul S, Prapaisilp P, Bangchokdee S. The “laminated or swirled” sign. Abdom Radiol (NY). 2025;50(10):5064-5065. PubMed
  5. Wang Y, Bu X, Liu Y, et al. Characteristics and treatment strategies of aggressive angiomyxoma in women: A retrospective review of 87 cases. Front Surg. 2023;10:966971. PubMed
  6. Cardenas Lara FJ, Bauzon JS, Perry WRG, et al. Aggressive Angiomyxoma of the Pelvis: 35-Year Experience. Dis Colon Rectum. 2024;67(4):514-522. PubMed
  7. Zhang L, Liu R, Peng J. Misleading clinical and imaging features in atypical aggressive angiomyxoma of the female vulvovaginal or perianal region: report of three cases and review of the literature. Front Oncol. 2024;14:1373607. PubMed

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