異型脂肪様腫瘍(ALT)、高分化脂肪肉腫(WDL)

  • 脂肪性腫瘍のうち、良・悪性中間腫瘍(intermediate(locally aggressive))に異型脂肪様腫瘍(atypical lipomatous tumorALT)、悪性(malignant)に高分化脂肪肉腫(well differentiated liposarcoma:WDL)がある。両者は病理学的には同じ。
  • ALT:切除のみでほとんど再発しない。四肢や肩、背部に発生する。
  • WDL:完全切除が難しく、再発しやすい。縦隔や後腹膜、精索などに発生する。
  • 脂肪腫、ALT /WDLはともに脂肪を主体としているため、鑑別が難しいことがある。
  • ALT /WDLは局所再発や脱分化して、より悪性度の高い脂肪肉腫になる可能性がある。

脂肪腫よりALT /WDLをより疑う所見

  • 高齢男性(>66歳)
  • サイズが10cm以上
  • 腫瘍の局在が皮下ではなく深在性
  • 脂肪成分が75%未満
  • CTMRIで内部に非脂肪性の厚い隔壁(>2mm)・結節
  • 脂肪抑制T2強調像での淡い信号上昇、造影効果など

特徴的な所見や特徴を呈する良性脂肪性腫瘤

  • 筋肉脂肪腫(intramuscular lipoma):T1WIT2WIで筋線維と同様の信号が腫瘍の内部に認められる
  • 紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma):中高年男性の後頸部皮下に発生することが多い。画像での鑑別は困難。
  • 褐色脂肪腫(hibernoma):FDG-PETで鑑別が可能。画像での鑑別は困難。

症例 70歳代女性

引用:radiopedia

右大腿部の中間広筋に粗大な腫瘤を認めています。(頭尾方向の伸長は約 24 cm、最大横径は 9 cm、前後径は約 7.5 cm)

T1WI高信号、脂肪抑制T1WI低信号、T2WI高信号(非提示)で脂肪濃度で、わずかな造影効果を有する隔壁構造を有しています。

高分化脂肪肉腫(WDL)の疑いで生検がされ、組織学的診断は非定型脂肪腫性腫瘍 (ALT) でした。

関連記事:脂肪腫(lipoma)のCT、MRI画像所見のポイント

参考文献:画像診断 Vol.42 No.11 増刊号2022 P173

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