
先に結論:滑膜肉腫は「若い人の関節の近くにできる悪性の軟部腫瘍」
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 軟部組織(筋肉・腱・脂肪などの体を支える組織)にできる肉腫。軟部肉腫の中で4番目に多い |
| だれに・どこに | 15〜40歳に多く、80〜95%が手足。とくに膝の裏(膝窩)。関節の中ではなく関節の近く |
| 画像の手がかり | 石灰化(約30%)、MRIで多房性・不均一(triple sign)、出血や液面形成(bowl of grapes) |
| 落とし穴 | 小さい(5cm未満)、境界がきれい、ゆっくり大きくなる例があり、良性に見えることがある |
| 次にすること | 造影MRIで広がりを評価し、生検(組織を取って調べる検査)で診断。骨軟部腫瘍を扱う専門施設に相談 |
しこりが「良性っぽく見える」ことだけで安心できない腫瘍です。気になるしこりがあれば医療機関を受診してください。
滑膜肉腫とは
滑膜肉腫(synovial sarcoma)は軟部組織に発生する悪性腫瘍で、軟部肉腫の中では4番目に多く、悪性軟部腫瘍全体の2.5〜10.5%を占めます(Murphey 2006)。
名前から関節の滑膜から生じる腫瘍のように思えますが、関節内に発生することは多くなく、関節の近くに発生するのが典型です(Murphey 2006)。名前は顕微鏡で見た姿が滑膜に似ていることに由来し、滑膜そのものの腫瘍ではありません。
病理学的には単相型(monophasic)、二相型(biphasic)、低分化型(poorly differentiated)に分けられ、t(X;18)転座がこの腫瘍にきわめて特異的な遺伝子異常として知られています(Murphey 2006)。最終診断は生検組織の病理と遺伝子の検査で行います。
どんな人に、どこにできる?
- 年齢:思春期〜若年成人(15〜40歳)に多い(Murphey 2006、Cho 2023)。
- 部位:手足が80〜95%で、とくに膝の裏(膝窩)に多い(Murphey 2006)。
- 深さ:手足の大きな関節の近くの深い軟部組織に多い(Cho 2023)。34例のMRIの検討では63%が関節から7cm以内に中心がありました(Jones 1993)。
手足以外にも腹壁・後腹膜・頭頸部などに発生した報告があります(de Haas 2015 など)。
症状は?
多くは「しこり(軟部腫瘤)」として気づかれます。注意したいのは、ゆっくり大きくなることがある点で、診断までの期間は平均2〜4年と報告されています(Murphey 2006)。長く「変わらないしこり」として様子を見られていることがあるわけです。
しこりの大きさや硬さ、痛みの有無だけでは良性か悪性かは決められません。気になるしこりがあれば医療機関を受診し、画像検査を受けてください。
画像診断:レントゲン・CT・MRIでの見え方
レントゲン・CT
レントゲンでは特徴的ではないことも多いのですが、若い人の関節の近く(関節の中ではない)の軟部腫瘤、とくに石灰化を伴うものは滑膜肉腫を強く疑う所見とされます。石灰化は約30%に見られます(Murphey 2006)。CTは石灰化や近くの骨への影響を見るのに役立ちます。
MRI
MRIは腫瘍の広がりを評価し、手術の範囲を決めるために欠かせない検査です(Murphey 2006)。代表的な所見を表にまとめます。
| 所見 | 内容 | 報告された頻度 |
|---|---|---|
| 深在性・大きい | 深部にあり、5cm以上が多い | 5cm以上 85%(Jones 1993) |
| 境界明瞭 | 周囲との境目がはっきり。良性と誤る原因にもなる | 91%(Jones 1993)、27/31例(Baheti 2015) |
| T2強調像で不均一 | 多房性で信号がまだら | 82%(Jones 1993) |
| triple sign | T2強調像で脂肪より高い・同じ・低い信号の3つが混在 | 35%(Jones 1993)、11/31例(Baheti 2015) |
| 出血 | T1・T2強調像ともに高信号の部分 | 44%(Jones 1993) |
| 液面形成(fluid-fluid level) | 出血成分が上下に分かれた水平面。T2強調像で見やすい | 18%(Jones 1993) |
| bowl of grapes | 出血・液面・隔壁が集まり「ぶどうを盛った器」のように見える | 5/31例(Baheti 2015) |
| 石灰化 | CT・レントゲンで確認しやすい | 約30%(Murphey 2006)、6/31例(Baheti 2015) |
造影MRIでは不均一に造影される充実部と、造影されない嚢胞・出血の部分が混ざります(Baheti 2015)。腫瘍の周りの浮腫(perilesional oedema)や、筋膜に沿った広がり(interfascial extension)、区画をまたぐ広がり(intercompartmental extension)も評価します(Baheti 2015)。
良性に見える滑膜肉腫に注意
滑膜肉腫には、初診時5cm未満と小さい、境界が明瞭、内部が均一、ゆっくり大きくなるといった、良性腫瘍のような特徴を示すものがあり、最初に良性と判断されてしまう原因になります(Murphey 2006、Cho 2023)。小さいT1病期の腫瘍でも、不均一な造影、筋膜に沿った広がり、周囲の浮腫が見られることがあります(Baheti 2015)。
「関節の近くの境界のきれいなしこり」は、ガングリオンや滑液包炎、Baker嚢胞、結節性筋膜炎などとも鑑別になります。嚢胞に見えても、造影で充実部がないかを確認することが大切です。関連記事:滑液包炎・滑膜嚢胞・ガングリオンの違い、Baker嚢胞(膝窩嚢胞)とは?、結節性筋膜炎のCT・MRI画像所見
症例 50歳代女性 滑膜肉腫(膝)

引用:Radiopaedia(Synovial sarcoma – knee)
膝蓋骨の下、膝蓋腱のまわりに分葉状で境界の比較的はっきりした腫瘤があり、脂肪抑制像で高信号です。症例ページでは膝蓋腱に入り込み、Hoffa脂肪体まで広がると記載されています。

引用:Radiopaedia(Synovial sarcoma – knee)
同じ腫瘤は造影でよく染まります。手術で切除され、病理で単相型の滑膜肉腫と確かめられています。
転移と予後に関係する画像所見
手足の滑膜肉腫78例の検討では、経過中に63%が再発・転移を起こし、26%は初診時すでに転移がありました。転移先は胸膜・肺が最も多く、胸膜に接する転移が多いのが特徴です(Baheti 2015)。
同じ検討で、腫瘍が大きいこと、腫瘍周囲の浮腫、区画をまたぐ広がり、腫瘍内出血、bowl of grapes所見が転移の多さと関連していました(Baheti 2015)。レビューでも、石灰化がないこと、嚢胞成分、出血、bowl of grapes、triple sign、区画をまたぐ広がりが予後に関係する画像所見として挙げられています(Cho 2023)。
そのため診断時には、原発巣のMRIに加えて胸部CTで肺・胸膜を評価するのが一般的な流れです。
次にすること(受診先・検査)
- 受診先:まずは整形外科。滑膜肉腫が疑われる場合は、骨軟部腫瘍(肉腫)を扱う専門施設で検査・治療を計画します。
- 検査:造影MRIで腫瘍の広がりを確認し、生検で病理診断(t(X;18)転座などの遺伝子異常の確認を含む)を行います。
- 治療:根治的な治療の基本は広範切除(腫瘍を周りの正常組織ごと取る手術)です(Cho 2023)。追加の治療は病状により主治医が判断します。
よくある疑問(Q&A)
Q. 滑膜肉腫は関節の中にできるのですか?
A. 関節の中にできることは多くなく、関節の近くの軟部組織にできるのが典型です(Murphey 2006)。
Q. 小さくて境界がきれいなら良性と考えてよいですか?
A. いいえ。滑膜肉腫には5cm未満で境界明瞭、ゆっくり大きくなるものがあり、良性と誤られやすいことが知られています(Murphey 2006)。画像だけで決めず、主治医と相談してください。
Q. triple signとは何ですか?
A. T2強調像で、脂肪より高い信号・同じくらいの信号・低い信号の3種類が1つの腫瘍の中に混ざって見える所見です。出血・壊死・充実部などが混在していることを反映します(Jones 1993、Murphey 2006)。
Q. 何年も前からあるしこりなら心配ないですか?
A. 滑膜肉腫は診断までに平均2〜4年かかると報告されており(Murphey 2006)、長くあることは良性の証拠にはなりません。大きさの変化や画像所見を含めて主治医に相談してください。
参考文献
- Murphey MD, Gibson MS, Jennings BT, et al. From the archives of the AFIP: Imaging of synovial sarcoma with radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2006;26(5):1543-65. PubMed
- Jones BC, Sundaram M, Kransdorf MJ. Synovial sarcoma: MR imaging findings in 34 patients. AJR Am J Roentgenol. 1993;161(4):827-30. PubMed
- Baheti AD, Tirumani SH, Sewatkar R, et al. Imaging features of primary and metastatic extremity synovial sarcoma: a single institute experience of 78 patients. Br J Radiol. 2015;88(1046):20140608. PubMed
- Cho EB, Lee SK, Kim JY, et al. Synovial Sarcoma in the Extremity: Diversity of Imaging Features for Diagnosis and Prognosis. Cancers (Basel). 2023;15(19):4860. PubMed
- de Haas RJ, Bonenkamp JJ, Flucke UE, et al. Synovial sarcoma of the abdominal wall: Imaging findings and review of the literature. J Radiol Case Rep. 2015;9(2):24-30. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
