異染性白質ジストロフィー MRIのtigroid patternとALD

子どもの歩き方がおかしくなり、MRIで「異染性白質ジストロフィー(MLD)の可能性」と言われました。どんな病気ですか?
MLDは、脳や神経を包む「髄鞘(ずいしょう)」が少しずつ壊れていく、生まれつきのまれな病気です。MRIには特徴的な所見があり、診断は血液や遺伝子の検査で確かめます。症状、MRIの見え方、似た病気のALDとの違いを整理します。

先に結論:MLDは常染色体劣性遺伝のライソゾーム病。MRIでは左右対称の白質病変・tigroid pattern・脳梁病変がヒント

項目 ポイント
何か アリルスルファターゼA(ARSA)の働きが足りず、スルファチドがたまって中枢と末梢の神経の髄鞘が壊れる病気
病型 発症年齢で 後期乳児型(2.5歳以下)・若年型(2.5〜16歳未満)・成人型(16歳以上)
MRI 脳室周囲〜深部白質の左右対称のT2高信号、tigroid pattern、脳梁の病変、造影されない
注意 後期乳児型の早い時期はMRIがほぼ正常のことがある
治療 造血幹細胞移植・遺伝子治療。発症前ほど効果が高い

異染性白質ジストロフィー(MLD)とは

異染性白質ジストロフィー(metachromatic leukodystrophy:MLD)は、常染色体劣性遺伝のライソゾーム病です。ARSA遺伝子の病的バリアントによってアリルスルファターゼAの活性が低下し、スルファチドが蓄積して中枢神経と末梢神経の脱髄・神経変性が起こります(Asbreuk 2025)。

出生頻度は報告により出生10万あたり0.16(日本)〜1.85(ポルトガル)と幅があります(Chang 2024b)。

症状(病型ごとの違い)

病型 発症 主な症状
後期乳児型 2.5歳以下(平均16〜18か月) 運動の症状・発達の遅れ。運動機能の低下が速い
若年型 2.5歳〜16歳未満(平均6〜10歳) 運動・認知・行動の症状
成人型 16歳以上 認知の症状、精神・気分の症状

年齢区分はChang 2024b、症状と経過はChang 2024aによります。合併症として、失調、てんかん発作、胆嚢の異常、失禁、末梢神経障害などが報告されています(Chang 2024a)。気になる症状があれば医療機関を受診してください。

MRI所見

白質病変の分布

小児MLD 7例のMRIでは、全例で脳室周囲白質と半卵円中心に左右対称・融合性のT2高信号がみられ、後方優位でした。皮質下U線維は初期には保たれ、ほかに脳梁膝部・膨大部、内包後脚、錐体路にも病変がみられました。造影効果は5検査すべてで認めませんでした(Kim 1997)。

tigroid pattern(虎斑状パターン)

T2強調像で高信号の白質の中に、点状・線状の低信号が並んで虎の縞模様やヒョウ柄(leopard-skin)のように見える所見です。Kim 1997では7例中6例の半卵円中心にみられました。以前はPelizaeus-Merzbacher病に特有と考えられていましたが、MLDでも同様の所見がみられるため、この所見を見たらMLDも考える必要があります(Faerber 1999)。

早期所見:脳梁と「ほぼ正常なMRI」

診断時のMRI 104検査の検討では、脳梁の病変が早期の特徴的な所見で、症状のある後期乳児型の71%、早期若年型の94%、後期若年型と成人型の100%にみられました。一方、症状が出始めた後期乳児型の47%は白質の異常がないか軽度で、「髄鞘化の遅れ」のように見えることもありました(Schoenmakers 2022)。脳梁の部位は脳梁の正常解剖で確認できます。

症例 2歳男児 異染性白質ジストロフィー

異染性白質ジストロフィー MRI T2強調像 横断像
引用:Radiopaedia(Metachromatic leukodystrophy)

両側の脳室周囲から深部白質に左右対称の高信号が広がり、その中に低信号の筋が放射状に並ぶtigroid patternが見えます。皮質直下のU線維は比較的保たれています。症例ページでは脳梁にもびまん性の病変があり、拡散制限はないと記載されています。

ALD(副腎白質ジストロフィー)との違い

項目 MLD ALD
遺伝形式 常染色体劣性(Asbreuk 2025) X連鎖性
造影効果 みられない(Kim 1997) 大脳型では造影される病変があり、造影の強さが炎症の程度や移植後の経過と関連(Miller 2016)
重症度の評価 — Loesスコア

ALDのMRIパターンやLoesスコアは副腎白質ジストロフィー(ALD)とは?MRI画像所見とLoesのパターンで解説しています。U線維を侵す白質疾患はU-fiberを含む皮質下白質を侵す疾患も参考になります。

診断と治療

MRIでMLDが疑われたら、酵素や遺伝子の検査で確かめます。治療として同種造血幹細胞移植があり、早期発症型の一部の患者さんでは造血幹細胞遺伝子治療がEU・英国・米国で承認されています。いずれも発症前に行うほど効果が高いため、一部の国では新生児スクリーニングが始まっています(Asbreuk 2025)。治療の適応は専門の医療機関・主治医と相談してください。

読影のチェックポイント

  • 脳室周囲〜半卵円中心の左右対称・融合性のT2高信号か
  • 後方(後頭部)優位か。後期乳児型では後頭部の脱髄が目立つ(Kim 1997)
  • 皮質下U線維は初期に保たれているか(経過で侵されることがある)
  • 脳梁膝部・膨大部、内包後脚、錐体路、前障の病変はあるか
  • tigroid patternはあるか
  • 造影効果がないか(あればALDなど他疾患も考える)

症状が軽い時期の後期乳児型ではこれらがそろわないことがあるため、臨床症状と画像が合わないときは酵素・遺伝子検査を検討します(Schoenmakers 2022)。

経過は症状の出方で変わる

MLDは発症年齢による病型分類が使われ、早く発症する型ほど神経症状の進行が速いとされます。さらに近年は、最初の症状の種類でも経過が異なり、認知の症状で始まる患者さんでは運動機能の低下がずっと緩やか、またはみられないことが分かってきました(Asbreuk 2025)。

よくある疑問(Q&A)

Q. MRIが正常ならMLDは否定できますか?
A. 否定できません。後期乳児型では症状があってもMRIの異常がないか軽いことがあります(Schoenmakers 2022)。

Q. tigroid patternがあればMLDと決まりますか?
A. 決まりません。Pelizaeus-Merzbacher病など他の白質疾患でもみられます(Faerber 1999)。

Q. 大人でも発症しますか?
A. 16歳以上で発症する成人型があり、認知や精神の症状で始まることが多いとされます(Chang 2024a)。

参考文献

  1. Chang SC, Bergamasco A, Bonnin M, et al. A systematic review on the birth prevalence of metachromatic leukodystrophy. Orphanet J Rare Dis. 2024;19(1):80. PubMed
  2. Chang SC, Eichinger CS, Field P. The natural history and burden of illness of metachromatic leukodystrophy: a systematic literature review. Eur J Med Res. 2024;29(1):181. PubMed
  3. Asbreuk MABC, Schoenmakers DH, Adang LA, et al. Metachromatic Leukodystrophy: New Therapy Advancements and Emerging Research Directions. Neurology. 2025;105(2):e213817. PubMed
  4. Kim TS, Kim IO, Kim WS, et al. MR of childhood metachromatic leukodystrophy. AJNR Am J Neuroradiol. 1997;18(4):733-8. PubMed
  5. Faerber EN, Melvin J, Smergel EM. MRI appearances of metachromatic leukodystrophy. Pediatr Radiol. 1999;29(9):669-72. PubMed
  6. Schoenmakers DH, Beerepoot S, Krägeloh-Mann I, et al. Recognizing early MRI signs (or their absence) is crucial in diagnosing metachromatic leukodystrophy. Ann Clin Transl Neurol. 2022;9(12):1999-2009. PubMed
  7. Miller WP, Mantovani LF, Muzic J, et al. Intensity of MRI Gadolinium Enhancement in Cerebral Adrenoleukodystrophy: A Biomarker for Inflammation and Predictor of Outcome following Transplantation in Higher Risk Patients. AJNR Am J Neuroradiol. 2016;37(2):367-72. PubMed

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