
先に結論:胆管癌を疑って切除した例の数%〜十数%は良性。病歴(門脈血栓・外傷・免疫チェックポイント阻害薬)と、腫瘤・血管浸潤・葉萎縮の有無を合わせて考える
| 良性の狭窄 | 背景 | 画像の手がかり |
|---|---|---|
| 門脈性胆道症(門脈海綿状変化に伴う胆道症) | 慢性門脈血栓・肝外門脈閉塞 | 肝門〜肝十二指腸間膜の側副血行路(cavernoma)、胆管の屈曲・波状の圧排(scalloping)・狭窄 |
| 外傷後胆管狭窄 | 鈍的腹部外傷の既往 | 総胆管の急な狭小化と上流の拡張。症状は外傷から遅れて出る |
| 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連胆管炎 | ICI投与中・投与後 | 肝外胆管のびまん性壁肥厚、胆管拡張、胆道系酵素優位の肝障害 |
| IgG4関連硬化性胆管炎など | 自己免疫性膵炎などの合併 | 胆管癌として切除された良性例の中で最多(Otsuka 2019)。詳しくは関連記事へ |
胆管癌として切除された良性狭窄はどのくらいあるか
肝門部の胆管狭窄は、胆管癌と良性狭窄の区別が難しい領域です。名古屋大学の707例の検討では、肝門部胆管癌として切除された症例のうち22例(3.1%)が最終病理で良性でした(Otsuka 2019)。内訳はIgG4関連硬化性胆管炎9例、肝内結石4例、肉芽腫性胆管炎3例、非特異的慢性胆管炎3例、胆嚢摘出後の良性狭窄2例などです。術前の胆管生検・細胞診は特異度90%に対して感度62%にとどまり、組織診断を増やしても良性切除の割合は時代とともに減っていませんでした。
米国の単施設では、肝門部閉塞で手術を受けた182例のうち25例(14%)が良性でした(Jain 2024)。この検討で悪性と関連した断面画像の所見は、肝葉の萎縮、軟部腫瘤・浸潤、血管への進展の3つです。黄疸の有無やビリルビンの最高値は悪性と相関しませんでした。黄疸が改善した後のCA19-9の中央値は悪性80 U/mL、良性21 U/mLで差がありましたが、値の範囲は重なっています。
IgG4関連硬化性胆管炎やPSCとの区別は、PSC(原発性硬化性胆管炎)のMRCP・画像所見とIgG4関連胆管炎の画像診断にまとめています。ここでは、それ以外で「腫瘤がないのに狭窄がある」ときに思い出したい3つを取り上げます。
門脈性胆道症(portal cavernoma cholangiopathy)
何が起こっているか
慢性の門脈血栓で門脈が海綿状変化(cavernoma)を起こすと、胆管の周りや壁内の静脈(paracholedochal・epicholedochal veins)が拡張し、胆管を外から圧排します。長く続くと静脈圧による虚血や、線維化した側副血行路による胆管の取り囲みも加わります(Khuroo 2016)。
頻度と症状
系統的レビューでは、慢性門脈血栓の患者における胆道症の頻度は報告により4〜92%と幅があり、MRCPやERCPを用いた研究では平均67.0%でした。多くは無症状で、症状が出るのは約25%です(Pinto 2025)。
MRCPでの見え方
特発性肝外門脈閉塞の52例を前向きにMRCPで評価した研究では、80.7%に胆道症がみられ、その95%で肝外胆管が侵されていました(Jabeen 2016)。肝外胆管の所見は次の頻度です。
| 肝外胆管の所見 | 頻度 |
|---|---|
| 屈曲(angulation) | 90% |
| 波状の圧排(scalloping) | 76.2% |
| 外からの圧痕 | 45.2% |
| 狭窄 | 14.3% |
造影CT・MRIで門脈本幹が見えず、肝門部に蛇行した側副血行路が集まっていることに気づけば、狭窄部に腫瘤を探す前に門脈性胆道症を考えられます。MRCPが最も正確な評価法とされ、無症状例は保存的に経過をみます(Pinto 2025)。
症例 20歳代男性 門脈性胆道症

引用:Radiopaedia(Portal hypertensive biliopathy)
MRCPで総胆管の上の方に狭いところ(黄色の丸)があり、そこから上の胆管が太くなっています。

引用:Radiopaedia(Portal hypertensive biliopathy)
総胆管のまわりを、門脈の側副血行路(海綿状変化)が取り囲んでいます(矢印)。症例ページでは、門脈血栓の既往があり、黄疸をくり返した方で、門脈性胆道症が最も考えられると記載されています。
外傷後の胆管狭窄
鈍的腹部外傷後の胆管狭窄5例の報告では、狭窄は膵上部の総胆管に4例、膵内胆管に1例でした(Yoon 1998)。ERCPでは平滑な同心性狭窄が3例、平滑な偏心性狭窄が1例、途絶様が1例で、CTでは全例で総胆管の急な狭小化と上流の拡張がみられました。症状は外傷から遅れて出現し、病歴や他臓器の損傷の痕跡がないと、CTやERCPだけでは診断が難しいとされています。
読影では、過去の外傷歴(交通外傷など)と、肝・膵・十二指腸の損傷後の変化を過去画像で確認することが手がかりになります。腫瘤を伴わない短い急峻な狭窄では、依頼医に外傷歴を問い合わせる価値があります。
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連胆管炎
ICIによる免疫関連有害事象(irAE)の1つとして硬化性胆管炎が起こります。国立がん研究センターの10例では、全例で胆道系酵素優位の肝障害がありましたが、黄疸は1例のみでした(Okamoto 2024)。造影CTで最も多い所見は肝外胆管のびまん性の壁肥厚で、ERCPでは肝内胆管の枯れ枝状(pruned-tree)の像などさまざまな所見がみられました。経乳頭的胆管生検ではCD8陽性T細胞優位の炎症細胞浸潤が63%に認められています。ステロイドが効いたのは2例で、治療抵抗例が多く、予後は不良でした。
ICI投与中の患者で、以前のCTになかった肝外胆管の壁肥厚が新たに出てきたときは、胆管癌や転移の前にICI関連胆管炎を候補に挙げ、主治医に胆道系酵素を確認してもらうのが実践的です。ICIの種類は免疫チェックポイント阻害剤と種類、中枢神経の合併症は免疫チェックポイント阻害剤・抗体製剤による中枢神経合併症を参照してください。
悪性を疑う所見と、良性を考えるきっかけ
| 悪性を疑う | 良性を考えるきっかけ | |
|---|---|---|
| 形態 | 軟部腫瘤・壁外への浸潤、肝葉萎縮(Jain 2024) | 腫瘤がない、平滑な狭窄、外からの圧排 |
| 血管 | 門脈・肝動脈への浸潤(Jain 2024) | 門脈の海綿状変化と側副血行路 |
| 病歴 | ― | 門脈血栓、腹部外傷、ICI投与、胆嚢摘出 |
| 経過 | 増大 | 過去画像で長く変化がない、治療で改善 |
右肝動脈による圧排など、MRCPの偽狭窄についてはMRCPにおける右肝動脈による胆管狭窄の偽病変も参照してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 生検で悪性が出なければ良性と考えてよいですか?
いいえ。肝門部胆管癌の検討では術前の胆管生検・細胞診の感度は62%で(Otsuka 2019)、陰性でも癌は否定できません。画像・病歴・経過と合わせて判断します。
Q. 門脈性胆道症はどの検査で評価しますか?
MRCPが最も正確とされ(Pinto 2025)、造影CT・MRIで門脈の海綿状変化と側副血行路を同時に確認します。
Q. ICI関連胆管炎は黄疸で気づかれますか?
黄疸が出るのは少数で、胆道系酵素の上昇が中心でした(Okamoto 2024)。投与中のCTで新たな胆管壁肥厚に気づくことが拾い上げの手がかりになります。
胆管の狭窄を指摘された方は、病歴や過去の画像を含めて主治医に相談してください。
参考文献
- Otsuka S, Ebata T, Yokoyama Y, et al. Benign hilar bile duct strictures resected as perihilar cholangiocarcinoma. Br J Surg. 2019;106(11):1504-1511. PubMed
- Jain AJ, Lendoire M, Boyev A, et al. Revisiting the Malignant Masquerade at the Liver Hilum: Have We Made Progress? Ann Surg Oncol. 2024;31(5):3062-3068. PubMed
- Pinto E, Elkrief L, Hernández-Gea V, et al. Portal cavernoma cholangiopathy: A systematic review of current understanding, clinical significance, and management. Hepatol Commun. 2025;9(11):e0833. PubMed
- Jabeen S, Robbani I, Choh NA, et al. Spectrum of biliary abnormalities in portal cavernoma cholangiopathy (PCC) secondary to idiopathic extrahepatic portal vein obstruction (EHPVO)-a prospective magnetic resonance cholangiopancreaticography (MRCP) based study. Br J Radiol. 2016;89(1068):20160636. PubMed
- Yoon KH, Ha HK, Kim MH, et al. Biliary stricture caused by blunt abdominal trauma: clinical and radiologic features in five patients. Radiology. 1998;207(3):737-41. PubMed
- Okamoto K, Hijioka S, Nagashio Y, et al. Immune-related adverse event-associated sclerosing cholangitis due to immune checkpoint inhibitors: imaging findings and treatments. Jpn J Clin Oncol. 2024;54(8):887-894. PubMed
- Khuroo MS, Rather AA, Khuroo NS, et al. Portal biliopathy. World J Gastroenterol. 2016;22(35):7973-82. PubMed
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