
先に結論:胆道閉鎖症は、胆管が炎症と線維化でふさがる乳児の病気。白っぽい便・続く黄疸・濃い尿が3つのサインで、エコーのtriangular cord signや胆嚢の異常が手がかり。早期の葛西手術が大切
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| どんな病気か | 胆管が進行性の炎症と線維化でふさがる病気。新生児の胆汁うっ滞の主な原因 |
| 頻度 | 出生5,000〜20,000人に1人。アジアに多い |
| サイン | 白っぽい(淡い)便、黄疸(直接ビリルビン優位)、濃い色の尿 |
| エコー | triangular cord sign(門脈分岐部の頭側の三角形の高エコー)、胆嚢の異常 |
| 次にすること | 便の色がおかしいと思ったら、すぐに小児科へ。小児外科のある施設で精密検査 |
胆道閉鎖症(biliary atresia)とは
胆道閉鎖症は、胆道の進行性の炎症と線維化によって胆管がふさがる病気で、新生児の胆汁うっ滞(胆汁の流れが滞ること)の主な原因です。出生5,000〜20,000人に1人に起こり、アジアで最も多いとされています。原因はまだわかっていません(Tam 2024)。
胆汁の流れが止まると、生まれたときから肝臓の中で線維化が始まり、数か月で肝硬変に進むとされます(Davenport 2025)。そのため時間との勝負になる病気です。
病型もいくつかあり、脾臓の異常などを伴う型(BASM症候群)、嚢胞をつくる型(cystic BA)、サイトメガロウイルスに関連する型などが知られています(Davenport 2025)。
症状:赤ちゃんの便の色に注目
典型的な症状は次の3つです(Davenport 2025)。
- 白っぽい・クリーム色・淡い黄色の便(胆汁が腸に届かないため)
- 直接ビリルビンが上がる黄疸(生理的な黄疸と違って長引く)
- 濃い色の尿
肝臓や脾臓の腫れを伴うことがあり、進むと腹水が出てきます(Davenport 2025)。
気になる症状があれば医療機関を受診してください。とくに便の色が淡いと感じたら、様子を見ずに小児科に相談してください。
便色カードによるスクリーニング
便の色を見本と比べる便色カードは、日本の栃木県で1994年から使われ、台湾では2004年に全国で導入、日本では2012年から全国で使われています(Matsui 2017)。生後30日以内に葛西手術を受けると、自分の肝臓で生きられる率が高くなるという考えが広がっています(Matsui 2017)。
台湾の全国データでは、胆道閉鎖症の頻度は出生1万人あたり1.48人で、便色カードの導入後に初回入院の日齢の中央値が47日から43日に早まりました(Tseng 2011)。
エコー所見
triangular cord sign
triangular cord signは、門脈の分岐部のすぐ頭側に見える三角形または管状の高エコーです。65人の乳児の前向き研究では、この所見があった25人は全員が胆道閉鎖症で、所見がなかった40人の多く(31人)は新生児肝炎でした。葛西手術のあとに消え、胆汁うっ滞が進んだ3人では再び現れました(Kotb 2001)。
17研究1,444人のメタ解析では、感度85%・特異度97%と高い精度でした。厚さの基準(3mmか4mm)によって研究間のばらつきが生じていました(Yoon 2017)。
胆嚢の異常
23研究のメタ解析では、各所見の診断能は次のとおりでした(Zhou 2016)。
| エコー所見 | 感度 | 特異度 |
|---|---|---|
| 胆嚢の異常 | 85% | 92% |
| triangular cord sign | 74% | 97% |
| triangular cord sign+胆嚢の異常 | 95% | 89% |
| 胆嚢が見えない(10研究) | — | 99% |
Zhouらは、triangular cord signと胆嚢の異常が最も正確で広く受け入れられた所見で、ほかのエコー所見は価値が低いとまとめています(Zhou 2016)。Yoonらのメタ解析でも、胆嚢が描出できない割合は研究によって0〜53%と幅がありました(Yoon 2017)。
ほかの検査
肝臓から腸への胆汁の流れを見る核医学検査(胆道シンチグラフィ)については99mTc-PMT 胆道シンチグラムとはで解説しています。胆管が袋状に広がる病気である先天性胆道拡張症とは別の病気です。
症例 生後2か月女児 胆道閉鎖症

引用:Radiopaedia(Biliary atresia – triangular cord sign)
肝門部で、門脈の前の壁に沿って白っぽい(高エコーの)帯が見え、厚さは約3.6mmと計測されています。症例ページではtriangular cord signとされていますが、一般に使われる目安(4mm以上)よりわずかに薄い値です。総胆管は見えませんでした。

引用:Radiopaedia(Biliary atresia – triangular cord sign)
胆嚢は長さ約17mm、幅約2.5mmと小さく、形もいびつです。この方は手術時の胆道造影で胆管に流れがなく、葛西手術が行われたと記載されています。
治療:葛西手術と肝移植
治療の第一歩は、胆汁の流れを取り戻す葛西手術(肝門部空腸吻合術)で、手術が無理と判断された場合に最初から肝移植を行うのは5%未満です(Davenport 2025)。
葛西手術で胆汁の流れが戻るのは50〜75%で、18歳までに60〜75%が肝移植を必要とするとまとめられています(Tam 2024)。
手術のあとも胆管炎、門脈圧亢進症、線維化の進行に注意が必要です(Tam 2024)。胆汁の流れが戻らない場合や、くり返す胆管炎、治療の難しい静脈瘤、腹水、肝肺症候群などの合併症が起きた場合には、改めて肝移植が検討されます(Davenport 2025)。治療方針は主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 黄疸は赤ちゃんによくあると聞きました。様子を見てもいいですか?
胆道閉鎖症の黄疸は直接ビリルビンが上がるタイプで、淡い便や濃い尿を伴います(Davenport 2025)。便の色が淡い場合は、早めに小児科で血液検査を受けてください。
Q2. エコーで胆嚢が見えると言われました。胆道閉鎖症ではない?
胆嚢が見えないことは特異度が高い所見ですが(Zhou 2016)、胆嚢が見えても胆道閉鎖症のことがあります。胆嚢の形や大きさ、triangular cord signなどを合わせて判断します(Zhou 2016)。
Q3. 手術はいつまでに受ければよいですか?
早いほど望ましく、生後30日以内の葛西手術で自分の肝臓で生きられる率が高まると考えられています(Matsui 2017)。
参考文献
- Tam PKH, Wells RG, Tang CSM, et al. Biliary atresia. Nat Rev Dis Primers. 2024;10(1):47. PubMed
- Davenport M. Updates in Biliary Atresia: Aetiology, Diagnosis and Surgery. Children (Basel). 2025;12(1). PubMed
- Kotb MA, Kotb A, Sheba MF, et al. Evaluation of the triangular cord sign in the diagnosis of biliary atresia. Pediatrics. 2001;108(2):416-20. PubMed
- Matsui A. Screening for biliary atresia. Pediatr Surg Int. 2017;33(12):1305-1313. PubMed
- Tseng JJ, Lai MS, Lin MC, et al. Stool color card screening for biliary atresia. Pediatrics. 2011;128(5):e1209-15. PubMed
- Yoon HM, Suh CH, Kim JR, et al. Diagnostic Performance of Sonographic Features in Patients With Biliary Atresia: A Systematic Review and Meta-analysis. J Ultrasound Med. 2017;36(10):2027-2038. PubMed
- Zhou L, Shan Q, Tian W, et al. Ultrasound for the Diagnosis of Biliary Atresia: A Meta-Analysis. AJR Am J Roentgenol. 2016;206(5):W73-82. PubMed
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