脳表ヘモシデリン沈着症(Superficial Siderosis)は、慢性または間欠的なくも膜下出血により脳および脊髄の軟膜表面にヘモジデリンが沈着する疾患です。

感音性難聴や小脳失調など多彩な神経症状を呈することもあり、診断にはMRIによる評価が不可欠です。

今回は脳表ヘモシデリン沈着症についてまとめました。

先に結論:ヘモジデリンとは・脳表ヘモジデリン沈着症とは

  • ヘモジデリンは、出血した血液(赤血球のヘモグロビン)が分解されたあとに残る鉄を含んだ色素です。古い出血の「跡」として組織に残り、MRIのT2*強調像やSWIで真っ黒(低信号)に写ります
  • 脳表ヘモジデリン(ヘモシデリン)沈着症(superficial siderosis)は、くも膜下腔へ少量の出血が長い間くり返し、脳や脊髄の表面にヘモジデリンがたまる病気です。小脳・脳幹の表面に目立ち、進行する難聴(感音性)・ふらつき(小脳失調)が代表的な症状です。siderosisは「鉄(sidero-)が沈着した状態(-osis)」という意味です
  • 出血源として硬膜の欠損(過去の外傷・手術、脊髄の硬膜の穴)、腫瘍、血管奇形、高齢者では脳アミロイド血管症などを探します。MRIでは脳の表面を縁取るような黒い線が特徴で、出血源の治療が進行を防ぐ鍵になります

※聞こえにくさやふらつきが少しずつ進むときは、神経内科・耳鼻科を受診してください。

脳表ヘモシデリン沈着症の概念と病態生理

  • くも膜下腔への反復的な出血が神経組織に慢性の鉄沈着をもたらし、ヘモジデリンが軟膜表面に蓄積することで発症する。
  • 主に小脳、脳幹、大脳表面や脊髄に病変が分布し、進行性の感音性難聴、錐体路障害、小脳失調、認知機能低下などを引き起こす。テント下(小脳・脳幹)にびまん性・対称性に広がる古典型と、大脳皮質の脳溝に限局する限局型(皮質型)に分けられ、後者は高齢者では脳アミロイド血管症の重要なマーカーとなる。無症候性例も報告されている。50〜89歳の住民1412人のMRIでは、推定有病率は50〜69歳で0.21%、70歳以上で1.43%で、多くは大脳の皮質型であった(Pichler 2017)。

脳表ヘモシデリン沈着症の主な原因

これらの疾患がくも膜下出血を繰り返すことで、脳脊髄液を介して軟膜表面へヘモジデリンが拡散する。テント下の古典型(type 1)では83%に頭蓋または脊髄の硬膜異常が見つかり、脊髄MRIを含めた検索でほぼ全例に原因候補が同定されたと報告されています。脊柱管内の腹側硬膜外に液体貯留があれば椎間板由来の硬膜欠損を疑い、ダイナミックCTミエログラフィで漏出部位を特定します。

古典型(テント下型)と二次型・皮質型の違い

型 特徴 主な原因
テント下・古典型(type 1) はっきりした脳出血の既往がない。48例中39例(83%)に難聴・失調・脊髄症状 硬膜欠損(椎間板・外傷・手術)が最多
テント下・二次型(type 2) 過去の1回の出血(くも膜下出血や外傷など)のあと。17例で上記の症状はなし 原因となった出血そのもの
皮質型(cSS) 大脳の脳溝に限局。高齢者に多い 脳アミロイド血管症が多い

テント下型の分類と人数はWilsonら(Wilson 2017)、皮質型は脳アミロイド血管症との関係をまとめた総説(Charidimou 2015)にもとづきます。

脳表ヘモシデリン沈着症のMRI画像所見

  • SWI(susceptibility-weighted imaging)やT2*WIでは磁化率効果を強調し、軟膜面のヘモジデリン沈着が鮮明な低信号として描出される。このような鉄に敏感な撮像法で最もよく描出される(Kumar 2021)。
  • T2WIでも軟膜表面に沿った低信号域を認めるが、病変が薄く同定困難な場合もある。
  • CTでは時に軽度の高吸収域を示すことがあるが、感度は低い。石灰化を伴う他疾患との鑑別にCTが有用な場合がある。

症例 30歳代女性 発話停止および右上肢のチクチクしたしびれ感

引用:Radiopaedia

正常例と比べると小脳半球の脳溝に沿って異常な無信号域が広がっている様子がわかります。

脳表ヘモシデリン沈着症(Superficial Siderosis)と診断されました。

脳表ヘモシデリン沈着症の治療

  • 原因として最も多いのは硬膜の病変(硬膜の裂け目)で、出血源・硬膜欠損を手術で修復することが理にかなった治療とされる。ただし症状の経過はさまざまである(Kumar 2021)。
  • 脳に届く鉄キレート薬のデフェリプロンが試みられている。テント下型69例をまとめた系統的レビューでは、画像上は改善28.9%、不変53.3%、悪化17.8%で、無顆粒球症が5.8%にみられた(Flores Martin 2021)。一方で、ルーチンに使うにはデータが不十分とする総説もある(Kumar 2021)。

※使える薬や手術の適応は、神経内科・脳神経外科の担当医と相談してください。

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参考文献・出典

  1. Bracchi M, Savoiardo M, Triulzi F, et al. Superficial siderosis of the CNS: MR diagnosis and clinical findings. AJNR Am J Neuroradiol. 1993;14:227–236. PubMed
  2. 山脇健盛. 脳表ヘモジデリン沈着症の臨床. 臨床神経学. 2012;52(11):947–950. PubMed
  3. Charidimou A, Linn J, Vernooij MW, et al. Cortical superficial siderosis: detection and clinical significance in cerebral amyloid angiopathy and related conditions. Brain. 2015;138:2126–2139. PubMed
  4. Kumar N. Neuroimaging in superficial siderosis: an in-depth look. AJNR Am J Neuroradiol. 2010;31(1):5-14. PubMed
  5. Wilson D, Chatterjee F, Farmer SF, et al. Infratentorial superficial siderosis: classification, diagnostic criteria, and rational investigation pathway. Ann Neurol. 2017;81(3):333-343. PubMed
  6. Kumar N. Diskogenic dural defect is the reason for the ventral location of the epidural spinal fluid collection seen in superficial siderosis. Neurol Clin Pract. 2021;11(4):e508-e515. PubMed
  7. Pichler M, Vemuri P, Rabinstein AA, et al. Prevalence and natural history of superficial siderosis: a population-based study. Stroke. 2017;48(12):3210-3214. PubMed
  8. Kumar N. Superficial Siderosis: A Clinical Review. Ann Neurol. 2021;89(6):1068-1079. PubMed
  9. Flores Martin A, Shanmugarajah P, Hoggard N, et al. Treatment Response of Deferiprone in Infratentorial Superficial Siderosis: a Systematic Review. Cerebellum. 2021;20(3):454-461. PubMed

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