板状無気肺(読み方は、ばんじょうむきはい)という用語が胸部CTの画像所見に用いられることがありますがどのような画像所見でどういった意味を持つのでしょうか。
気道閉塞による無気肺とは異なり、横隔膜や胸郭の呼吸運動障害に伴う肺胞の虚脱(低換気)によって生じるとされます。
今回は板状無気肺についてまとめました。
板状無気肺(platelike atelectasis)の定義と発生メカニズム
- 板状無気肺(platelike atelectasis)は「linear atelectasis(線状無気肺)」「band atelectasis(帯状無気肺)」「Fleischner atelectasis」などとも呼ばれる。ただしFleischner線という用語は胸部X線写真での呼称。CTでは通常用いられない。
- 気道狭窄や閉塞が原因ではなく、肺換気能低下(低換気)によって肺胞が虚脱することで発生。
- 横隔膜運動制限(全身麻酔、腹部手術後、腹水、肥満など)や胸郭運動障害(疼痛、リウマチ性疾患)を背景に認められやすい。
板状無気肺(platelike atelectasis)のCT画像所見のポイント
以下の特徴を押さえることで、板状無気肺を正確に同定できる。
所見 | 詳細 |
---|---|
形態 | 数mm~1cmの厚みを持つ板状・線状の高吸収域 |
部位 | 主に肺底部背側に沿って出現 |
分布 | 片側/両側いずれも可、左右差が出ることもある |
付随所見 | 胸水や胸膜肥厚を伴わないことが多い。気管支拡張や線維化所見は原則として認められない。 |
症例 60歳代女性
右下葉に索状影を認め板状無気肺を疑う所見です。
まとめ
板状無気肺は低換気を反映した特徴的なCT所見であり、肺底部に沿った薄い板状・線状の陰影として観察される。
臨床的意義は限定的であるが、広範囲に及ぶ場合は低換気の原因検索が必要である。
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参考文献・出典
- Westcott JL, Cole S. Plate atelectasis. Radiology. 1985;155(1):1–9.
- Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, McLoud TC, Müller NL, Remy J. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697–722.
- Gurney JW. Atypical manifestations of pulmonary atelectasis. J Thorac Imaging. 1996;11(2):165–175.
- Price J. Linear atelectasis in the lingula as a diagnostic feature of left lower lobe collapse: Nordenström’s sign. Australas Radiol. 1991;35(1):56–60.
- Woodring JH, Reed JC. Radiographic manifestation of lobar atelectasis. J Thoracic Imaging. 1996;11(2)
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