脳動静脈奇形(cerebral arteriovenousmalformation:AVM)
- 動静脈の短絡部に異常血管塊(ナイダス、nidus)が存在する状態。
- ナイダスが破綻すると脳内出血や脳室内出血、クモ膜下出血をきたす。
- 症状を起こす脳血管奇形では最も多い。
- ほとんど単発。稀に多発(4〜10%)。多発性はRendu-Osler-Weber病やWyburn-Mason症候群に合併する。
- 好発年齢は20〜40歳でやや男性に多い(脳動脈瘤より20歳若い)。なので、若年者で脳内血腫があればAVMをまず疑え!
- 好発部位は8割はテント上で一側大脳半球に偏在、続いて、正中深部、テント下。
- 一般的には年に3%の率で破裂する(動脈瘤は1%だからそれよりは多い)。
- 破裂例における再出血は20%(1年以内の再出血が6%)。
- 治療方針決定のために、Spetzlerの重症度分類が用いられる。
Spetzlerの重症度分類とは?
- nidusの大きさ(<3cm:1点、3-6cm:2点、>6cm:3点)
- 周囲脳の機能的重要性(non-eloquent:0点、eloquent:1点)
- drainer(流出静脈)の型(表在性のみ:0点、深在性:1点)
の3因子の合計で、grade Ⅰ(1点)〜Ⅴ(5点)に分類される。grade Ⅰ〜Ⅲが予後良好。gradeが低いほど手術が容易で合併症が少ない。
画像診断
- 診断にはCTAやMRIを用いるが、確定診断や術前評価には血管造影が必要。
- 非典型的な脳出血では、拡張した血管構造を探す。ただし、血腫の影響で認めにくい場合もある。
- 典型的には、nidusを示す無数の点状〜蜂巣状の無信号(flow void)と拡張蛇行する無信号の血管(主にdrainer)が特徴的。
- CTAでは、流入動脈、nidus、流出静脈を描出できる。
- MRIではT1WIおよびT2WIで蛇行したflow voidを描出できる。SWIやT2*WIではより明瞭に描出できる。
- MRAは、通常の脳動脈を観察するときに行なう3D-time-of-flight(TOF)ではなくて、静脈がよく描出されるphase contrast(PC)法の方が適している。nidusや流出静脈の流速が遅い事がおおいため。
症例 40歳台女性
T2強調画像において、右後頭葉に蛇行血管と蜂巣状の低信号域(nidus)を認めています。
MRAではnidusおよび流入動脈を確認することができます。
血管造影では、nidusおよび流入動脈をより明瞭に確認することができます。
また流出静脈も確認できます。
脳動静脈奇形と診断されました。
動画でチェックする。
症例 30歳台男性
左の頭頂葉にT2強調画像において低信号を示す蜂の巣状構造あり。
MRA元画像では高信号を示し、脳動静脈奇形を疑う所見です。
症例 60歳代女性 頭痛、左不全麻痺
左が頭部単純CT。右が血腫除去術後のMRIのT2強調像です。
右頭頂葉から側頭葉皮質下を中心に出血あり。T2強調像にて血腫の内側にnidusを認めています。
動静脈奇形からの脳内皮質下出血の症例です。
症例 20歳代女性 頭痛、左不全麻痺
頭部単純CTで左後頭葉皮質下出血3cm大あり。周囲に低吸収域軽度あり。後角から脳室穿破あり。
T2WIで低信号で抜ける小さなnidusあり。
MRA元画像で高信号を示す集簇(nidus)あり。
動静脈奇形からの脳内皮質下出血の症例です。
頭部MRおよび脳血管撮影にて脳動静脈奇形と診断され、主な流入血管は角回動脈および頭頂後頭動脈、流出静脈は上矢状静脈洞および横静脈洞への2本でした。
脳動脈奇形摘出手術が施行されました。
参考)よくわかる脳MRI P288-289