先に結論:野球肘の分類とMRI

  • 野球肘は、成長期にくり返し投げることで起こる肘の障害で、内側型(最多:内側上顆の骨端障害=リトルリーグ肘、内側側副靱帯損傷)、外側型(上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎)、後方型(肘頭の障害)に分けられます
  • 外側型の離断性骨軟骨炎は数は少ないものの、見つかるのが遅れると関節が壊れて後遺症を残しやすいため、早期発見(超音波検診・MRI)が特に重要です
  • MRIでは骨端・骨の中のむくみ(骨髄浮腫)、靱帯や腱の信号上昇、軟骨・骨軟骨片の状態を評価し、投球中止の期間や手術の必要性を判断します

※投げると肘が痛む・肘が伸びにくいときは、早めに整形外科を受診してください。

野球肘 baseball elbow

  • 成長期に繰り返す投球動作により生じる肘関節障害の総称。
  • 発生メカニズムは投球動作時の外反ストレスと過伸展による。
  • 投球時の痛みで気づかれることが多い。一方、思春期の男子野球選手44人のMRIでは、症状のない損傷が内側上顆と内側側副靱帯近位にそれぞれ半数以上みられた(Yoshizawa 2021)。
  • 病期が進めば伸展痛、安静時の疼痛など運動時以外でも症状が出現する。
  • 病型は内側型、外側型、後方型の3つからなる。

内側型

  • 投球動作による肘関節の外反ストレスと伸展ストレスによる。
  • 内側上顆裂離骨折、内側上顆炎、内側側副靭帯損傷など
  • 骨端線閉鎖前の成長期に生じた、内側型野球肘のことをリトルリーグ肘(内側骨端障害)(Little League elbow)という。
リトルリーグ肘(Little League elbow)
  • 骨端線が残存した成長期は筋腱の牽引力が骨強度より強いため、投球動作などでの牽引性ストレスがかかると屈筋群とMCL付着部の内側上顆に異常を来す。
  • レントゲン所見:内側上顆の骨端核の変形・分節化、骨端線離開・癒合遅延
  • 内側上顆炎、屈筋腱の損傷、MCL損傷を合併することがある。
  • リトルリーグ肘9人の検討では、X線の異常は4人、MRIの異常は6人にみられ、内側側副靱帯は全員正常だった(Wei 2010)。

症例 12歳男児 ピッチャー

レントゲンでは内側顆に骨片(骨折、骨端核の変形・分節化、骨端線離開)を認めており、MRIでは総屈筋腱および内側側副靱帯に異常な高信号を認めている。リトルリーグ肘による変化を疑う所見です。

外側型

  • 投球動作による上腕骨小頭と橈骨頭の圧迫と剪断力による。
  • 上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎、外側上顆炎など
  • 野球肘と言えば離断性骨軟骨炎が有名だがイコールではなく、むしろ内側型の方が多い。少年野球の男子13,130人の超音波検診では、内側上顆の異常が24.0%、上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎が2.4%だった(Munemori 2026)。中学・高校の野球選手2433人の超音波検診では、上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎は3.4%に見つかった。発症者は野球を始めた年齢が早く競技歴が長かったが、守備位置との関連はなかった。病期は透亮期・分離期・遊離体期などに分けられた(Kida 2014)。

後方型

  • 肘頭が肘頭窩に衝突することによる。
  • 肘頭窩の遊離体、肘頭分節化など

肘MRIの撮影法(ポジショニング)

  • 1.5T以上で撮像し、空間分解能の高い3Tが望ましいとされる(Powell 2021)。
  • 体位は、腕を頭の上に伸ばすうつ伏せ(superman position)か、腕を体の横に置くあおむけ(前腕回外・肘伸展)。うつ伏せは肘が磁場の中心に近く画質が安定し、肘伸展位は内側側副靱帯の前方線維が張るため評価しやすい(Powell 2021)。
  • T1強調像またはプロトン密度強調像と、水に敏感な撮像を組み合わせる。骨端線が閉じていない子どもでは、脂肪抑制グラディエントエコー法が骨端の軟骨の評価に向く(Powell 2021)。

参考文献:

  1. イラストでわかる 整形外科診療 P62-63
  2. 岡本 嘉一. 肘関節. 臨床画像 34(5):530-539, 2018(本記事の参照: P530-531)
  3. 武井 洋平, 小川 健, 岡本 嘉一. 肘関節. 画像診断 39(6):553-562, 2019(本記事の参照: P556)
  4. Kida Y, Morihara T, Kotoura Y, et al. Prevalence and clinical characteristics of osteochondritis dissecans of the humeral capitellum among adolescent baseball players. Am J Sports Med. 2014;42(8):1963-71. PubMed
  5. Kijowski R, De Smet AA. MRI findings of osteochondritis dissecans of the capitellum with surgical correlation. AJR Am J Roentgenol. 2005;185(6):1453-9. PubMed
  6. Powell GM, Murthy NS, Johnson AC. Radiographic and MRI Assessment of the Thrower’s Elbow. Curr Rev Musculoskelet Med. 2021;14(3):214-223. PubMed
  7. Munemori M, Momma D, Numaguchi K, et al. Prevalence of Capitellar Osteochondritis Dissecans and Medial Epicondylar Abnormalities in Female Youth Baseball Players: A Large-Scale Ultrasonographic Screening Study. Orthop J Sports Med. 2026;14(8):23259671261469729. PubMed
  8. Wei AS, Khana S, Limpisvasti O, et al. Clinical and magnetic resonance imaging findings associated with Little League elbow. J Pediatr Orthop. 2010;30(7):715-9. PubMed
  9. Yoshizawa T, Okamoto Y, Makihara T, et al. Investigation of site and frequency of asymptomatic injury in medial structures of the elbow in adolescent baseball players using dedicated magnetic resonance imaging. Jpn J Radiol. 2021;39(3):261-266. PubMed

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