先に結論:卵巣甲状腺腫(struma ovarii)とは
- 卵巣甲状腺腫は、卵巣にできる奇形腫の一種で、腫瘍の大部分が甲状腺の組織からなるまれな腫瘍です。ほとんど(約95%)は良性で、閉経前の中年女性に多く見られます。甲状腺ホルモンを出して甲状腺機能亢進症を起こすことはまれです
- 画像では大小の袋が集まった多房性嚢胞性腫瘤で、甲状腺コロイド(ヨードを含む)を反映して、単純CTで一部の袋が白く(高吸収)、MRIのT2強調像で一部の袋が真っ黒(著明な低信号)に見えるのが特徴です。充実部はよく造影されます
- 見た目が似る粘液性嚢胞腺腫などと間違えやすいため、「CTで高吸収・T2で強い低信号の袋」を見たら卵巣甲状腺腫を考えることが診断のポイントです
卵巣甲状腺腫(struma ovarii)

- 単胚葉性奇形腫。
- 成熟奇形腫に甲状腺成分が含まれることがある。このうち、腫瘍全体もしくは肉眼で認めるような広範囲を占めるものを、卵巣甲状腺腫(struma ovarii)という。
- 卵巣奇形腫の2〜5%と稀。
- 閉経前の中年女性に好発
- 95%が良性なので術前に診断される意義は大きい。
- ホルモンを産生し、甲状腺機能亢進症を生じる頻度は低い。
卵巣甲状腺腫の画像所見
- 多房性嚢胞性腫瘤+充実部、いわゆるstained glass appearanceを示す。嚢胞が寄り集まったような多嚢胞性腫瘍(個々の嚢胞が丸く、境界明瞭)。
- 甲状腺コロイドを反映し、T1WI低〜軽度高信号、T2WI低信号、単純CTで高吸収(ヨードを含有するため)。
- 単純CTで高吸収を示し、比較的頻度の高い石灰化と合わせ、診断の鍵となることがある。CT所見を検討した13例の報告では、全例が片側性で辺縁平滑、84.6%が多房性で、84.6%に単純CTで嚢胞部分の高吸収域(92〜121HU、平均約107HU)がみられた。嚢胞壁の造影効果はないか中等度のものが多かった。
- T2WIにて著明な低信号を呈する嚢胞を含むことが多い。26例の検討では、T2強調像で著明な低信号の房が16例に、T1強調像で充実部やその近くの点状高信号が24例にみられました。単純CTを撮影した7例中6例に高吸収域があり、その多くはT2強調像の低信号部に一致していました。出血や甲状腺コロイドによる蛋白濃度・粘性の高さを反映したものと考えられている。
- 充実成分が比較的豊富なことが多く、造影剤で増強される多血性腫瘍(hypervascular tumor)である。
- I131シンチグラフィにて集積を認めた例が報告されており、鑑別診断に有用な場合があると考えられる。
症例 30歳代女性

引用:Radiopaedia
嚢胞性の左側付属器の塊が直腸子宮窩を占め、単純CTで一部高吸収を示しています。
T2WIではステンドグラス様の多房性嚢胞性病変を示し、一部は著明に低信号を示しています。
卵巣甲状腺腫(struma ovarii)と診断されました。
鑑別診断
- 粘液性嚢胞腺腫をはじめとする、stained glass appearanceを呈する腫瘍すべて。ただし、頻度は圧倒的に粘液性嚢胞腺腫が多い。
- 逆に、頻度は少ないが、stained glass appearanceを見たときに本疾患を鑑別に挙げられるかが重要。
- よくenhanceされ、CTで高吸収の充実性部分を含む場合には、卵巣甲状腺腫を考慮する。
T2WIで低信号を呈する卵巣腫瘤
- 線維腫(Fibroma)
- Fibrothecoma
- Brenner腫瘍(充実部優位、遅延性の淡い増強効果、ホルモン産生や石灰化を呈するものあり)
- 腺線維腫/嚢胞腺線維腫(adenofibroma/cystadenofibroma)
- Sclerosing stromal tumor (充実部は不均一、早期濃染)
- 卵巣甲状腺腫(Struma ovarii)(CTで高吸収、ゲル状内容物には増強効果なし)
- 転移性卵巣腫瘍,Krukenberg tumor(軽度低信号、充実部は不整、壊死を伴う)
- 内膜症性嚢胞 (T1WI高信号、shading)
- 境界悪性嚢胞性腫瘍/嚢胞腺癌(厚い隔壁、乳頭状結節、卵巣を超えて進展)
- 悪性リンパ腫
参考文献
- Ikeuchi T, Koyama T, Tamai K, et al. CT and MR features of struma ovarii. Abdom Imaging. 2012;37(5):904-10. PubMed
- Dujardin MI, Sekhri P, Turnbull LW. Struma ovarii: role of imaging? Insights Imaging. 2014;5(1):41-51. PubMed
- Dumachița-Șargu G, Socolov R, Balan TA, et al. Struma Ovarii during Pregnancy. Diagnostics (Basel). 2024;14(11):1172. PubMed
- Jung SI, Kim YJ, Lee MW, et al. Struma ovarii: CT findings. Abdom Imaging. 2008;33(6):740-3. PubMed
- Joja I, Asakawa T, Mitsumori A, et al. Struma ovarii: appearance on MR images. Abdom Imaging. 1998;23(6):652-6. PubMed
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