CTの造影剤であるヨード造影剤は重度腎機能障害にある人には使えません。
なぜ使ってはいけないのでしょうか?
また重度腎機能障害とは具体的にどの程度の腎機能障害なのでしょうか?軽度なら使っても良いのでしょうか?
そこで今回は、腎機能障害のある患者さんにヨード造影剤を使う際の注意点についてまとめました。
CT造影剤(ヨード)を腎機能障害のある患者に使う場合の注意点(禁忌、慎重投与、原則禁忌)
なぜ腎機能障害のある患者さんには注意しなければならないのですか?
造影剤腎症が起こる可能性があるからです。造影剤腎症についてはこちらを参考にしてください。
腎障害のある患者
- eGFR<45では予防策を講ずる。推奨グレードB(行うように薦められる)
- eGFR 45〜59 CINのリスク 4.4-10.5%→基本的には通常通り造影検査を行う。
- eGFR 30〜45 CINのリスク 10.5-16.7%→予防策(CT前後に補液など)を講じる。
- eGFR <30 CINのリスク 10-36.4%→造影検査は行わない。
(Eur Radiol 22:2147-2152,2012、Radiology 268:719-728,2013)
・造影剤投与量が100mlを超えるとリスク上がる。(厳密には上限値=造影剤5ml/kg×体重kg / 血清Cr(mg/dl)を超えた場合)
・高濃度(370mgl/mL)と中濃度(300mgl/mL)の腎機能へ及ぼす影響についての検討では、両者に有意差なし。
では、eGFR 30-45の人への予防策とは?
▶予防策としての補液:(推奨グレードA(=やりなさい。))
- 0.9%生食(等張性補液)を6時間前より1ml/kg/hrで、終了後は1ml/kg/hrで6-12時間 あるいは
- 重曹(1.26%,152mEq/l=等張、メイロンは高張なので使うならば薄めなければ成らない)を1時間前より3ml/kg/hrで、終了後は1ml/kg/hrで4〜6時間
※0.45%と0.9%の生理食塩水補液では、0.45%の方が造影剤腎症の発現率が有意に高いとの報告あり。なので、0.45%ではなく、0.9%を用いる。
- 心不全のリスクある場合は、減らす。
- 外来の患者は?:飲水をすすめる。スポーツドリンクやOS-1を500ml検査前後に飲んでもらう。
- その他、アスコルビン酸(ビタミンC)、テオフィリン・アミノフィリン、スタチン類、プロスタグランジンE1が予防薬に使えるとの検討あり。
- 逆に、フロセミドやマンニトール、エンドセリン受容体拮抗薬は腎血流量を低下させ、造影剤腎症を悪化させる可能性があり、使用すべきではない。
参考)腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012
でも外来の患者さんはもちろん、入院中の人でも造影CT検査6時間前から点滴をして、検査後も6〜12時間かけて点滴するのって、現実は難しいのではないでしょうか?
そうですね。ですので、記載したように、外来では、検査前後で点滴をするのは現実的ではない施設もあると思います。その場合は、できるだけ等張液に近い飲み物を飲んでもらうことで対応します。
入院患者さんについても6時間という時間に厳密にとらわれずに前後で1本点滴を落とすというもので対応してもいいと考えます。
なるほど!よくわかりました。
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