先に結論:造影剤腎症
- 造影剤腎症は造影剤のあと72時間以内に血清クレアチニンが0.5mg/dL以上または25%以上上がる腎障害で、3〜5日でピーク、多くは1〜2週間で戻ります
- リスクはCKD(特にeGFRの低い人)・高齢・糖尿病性腎症・脱水・NSAIDsで、動脈から入れるカテーテル検査(PCIなど)では静注の造影CTより起こりやすいです
- 予防の基本は等張液の補液と造影剤量を減らすことです。カテーテル後に数週間かけて腎機能が悪くなるときはコレステロール塞栓症も考えます
造影剤腎症(CIN:contrast induced nephropathy)
・造影剤に起因する急性の腎障害のこと。近年は造影剤投与後の腎機能低下を、原因を問わずpost-contrast acute kidney injury(PC-AKI)と呼ぶことが推奨されており、静注造影剤による腎障害のリスクは従来過大評価されていたとされる。対照群をおいた13研究(25,950例)のメタ解析では、静注造影剤を使った群と使わなかった群でAKI・透析・死亡の頻度に差はなかった。ACRと全米腎臓財団(NKF)の2020年の合意声明は、静注造影剤での生理食塩水による予防を透析中でないeGFR 30未満またはAKIの患者に推奨し、eGFR 30〜44では高リスクの場合に個別に考慮するとしている。
・定義:造影剤使用後 72時間以内にCr0.5mg/dl以上上昇もしくは25%上昇
・3-5日でピークで7-14日で前値に戻る。一過性のもの。ただし、戻らずに透析が必要となる慢性腎不全に至ることもまれにある。
※なので、1週間後に採血して、大丈夫というものではない。(3−5日後には腎障害を生じていたかもしれないから。)
・CKDとはここではeGFR<60と定義。eGFRは筋肉が少なければ低くなったり、多ければ高くなったりするので、筋肉量の影響を受けにくい血清シスタチンCでGFRを推算する方法もある。
・CINを起こしたCKD患者の予後は悪いと報告されているが、CINそのものが予後を決める因子かどうかは明らかではない(日本腎臓学会ほか 2018)。
・CAG(冠動脈造影)後のCINは、日本のガイドラインに引用された報告で3.2〜4.5%。国内の多施設研究(CINC-J)ではeGFR 30未満で13.1%と高く、eGFR 60未満の人にCAGを行うときは、前後の補液などの予防策をとるよう勧められている(日本腎臓学会ほか 2018)。
・eGFR 60未満ではPCI後のCINのリスクが高まる。血清Cr 1.8mg/dL以上の439例では36.7%にCINが起こり、7.1%が透析を要した(日本腎臓学会ほか 2018)。
CINのリスク
・加齢、CKD、CKDを伴うDM、NSAIDs
・利尿薬は、内服の継続がリスクを上げるかははっきりしないが、予防目的に利尿薬を使うとCINが増えるため勧められない(日本腎臓学会ほか 2018)。
・RAS阻害薬がCINのリスクを上げるという根拠はない(日本腎臓学会ほか 2018)。
・CKDを伴わないDMがリスクファクターになるかは明らかではない。
その他
・片腎(腎摘後や腎移植など)は腎機能が低いことが多く注意されてきたが、片腎そのものが両腎に比べてCINのリスクを上げるかは明らかではない(日本腎臓学会ほか 2018)。eGFRで腎機能を評価して判断する。
・IVRおよびPCIの際には、造影剤腎症と鑑別すべきとしてコレステロール塞栓症あり。コレステロール塞栓症では腎機能低下がカテーテル検査の数日〜数週間後に生じて進行し、非可逆的なことが多い。足の網状皮斑やblue toeなどの塞栓症状、発熱・好酸球増加・血清補体低下などの血管炎に似た所見を伴うことがある(日本腎臓学会ほか 2018)。
造影剤腎症でよくある疑問(Q&A)
Q. 造影剤腎症の症状は?
A. 血清クレアチニンの上昇で診断するため、自覚症状だけでは判断できません。リスクの高い人は造影後の採血で確認します。気になる症状があれば医療機関に相談してください。
Q. 透析中の人は造影CTのあとすぐ透析が必要ですか?
A. 造影後に血液浄化で造影剤を除いてもCINは減らず、血液透析ではかえってリスクが上がったというメタ解析があり、予防目的の透析は勧められていません。維持透析中の人は、体液量の過剰がなければ造影剤を使え、造影後に透析を始める必要はないとされています(日本腎臓学会ほか 2018)。
Q. 多発性骨髄腫では造影剤を使えませんか?
A. ESURの委員会は、骨髄腫では腎機能が低下していることが多くリスクが上がるため、腎機能を確認し、造影前に高カルシウム血症を補正するとしています。ベンス・ジョーンズ蛋白の検査は造影前に不要とされます(Stacul 2018)。
参考文献
- van der Molen AJ, Reimer P, Dekkers IA, et al. Post-contrast acute kidney injury – Part 1: Definition, clinical features, incidence, role of contrast medium and risk factors. Eur Radiol. 2018;28(7):2845-2855. PubMed
- Isaka Y, Hayashi H, Aonuma K, et al. Guideline on the Use of Iodinated Contrast Media in Patients With Kidney Disease 2018. Circ J. 2019;83(12):2572-2607. PubMed 原本PDF
- Davenport MS, Perazella MA, Yee J, et al. Use of Intravenous Iodinated Contrast Media in Patients with Kidney Disease: Consensus Statements from the American College of Radiology and the National Kidney Foundation. Radiology. 2020;294(3):660-668. PubMed
- McDonald JS, McDonald RJ, Comin J, et al. Frequency of acute kidney injury following intravenous contrast medium administration: a systematic review and meta-analysis. Radiology. 2013;267(1):119-28. PubMed
- Stacul F, Bertolotto M, Thomsen HS, et al. Iodine-based contrast media, multiple myeloma and monoclonal gammopathies: literature review and ESUR Contrast Media Safety Committee guidelines. Eur Radiol. 2018;28(2):683-691. PubMed
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