喘息のある人へのヨード造影剤は原則禁忌とされています。喘息がない人と比較して、約10倍以上の副作用が起こるというデータがあるためです。(Invest Radiol 26(S1):SS33-36(1991))

とはいえ、絶対禁忌ではないため、喘息の既往がある人や、喘息持ちの人にも必要に応じてヨード造影剤を投与してCT撮影などされることがあります。

今回は、CT造影剤(ヨード)を喘息患者に使う場合の注意点をまとめました。

喘息のある患者にヨード造影剤を使う場合の注意点

喘息患者を大きく3つに分けます。
  • 1、喘息発作がある人(症状が今ある人。)
  • 2、喘息持ちではあるが、薬物などにより症状をコントロールされている人。
  • 3、小児喘息を含めて、気管支喘息の既往歴がある人。(今は症状はない人。)

1、喘息発作がある場合

喘息発作がある(活動性がある)場合や、薬物により症状をコントロールできていない場合、ヨードの造影は禁忌です。

2、喘息持ちではあるが、薬物などにより症状をコントロールされている場合

原則禁忌。ただし、造影検査によるメリットが高いと判断された場合は実施可能なことがあります。

3、小児喘息を含めて、気管支喘息の既往歴がある場合

小児喘息のガイドラインに則り、無治療、無症状の状態が5年以上持続している場合を治癒とします。5年以内は2に分類します

5年以上無治療、無症状に限り、造影を行います。この際、造影により何か患者に症状が生ずれば、その時点で医師が呼ばれ、対応します。

2、3に該当するからといって、ヨード造影剤を積極的に使って良いという訳であはりません。

喘息患者には原則禁忌なので、2や3であっても他の診断法(単純MRIや核医学的検査など)で同等の診断情報が得られることが期待できる場合には他の診断法を優先するべきです。

関連記事)CT造影剤(ヨード)の禁忌、原則禁忌、慎重投与とは?

喘息患者にヨード造影剤使う際の前投薬は?

造影前にステロイド(ソルメドロール®125-250mg)や抗ヒスタミン薬を点滴静注してから造影検査を行うことがある。

これにより副作用を低減できたという報告がある一方、無効であったという報告もああります。

本当に喘息なのか?

患者さん「喘息なんです」

と言っても、実は気管支炎であったり、本当にきちんと気管支喘息と診断されていないケースも多々あります。

  • 真の喘息なのか、COPDなのか。
  • 喘息がコントロールされているのか。

この2点は必ず確認する必要があります。

あくまで目安ですが、処方薬から本当に喘息なのかある程度判断できます。

喘息と本当に診断されていると考えられる処方例

  • ステロイド吸入(フルタイド、キュバール)
  • ステロイド、β2刺激薬吸入(レルベア、アドエア、シムビコート)

を発作がしばらくなくても毎日吸入していて、さらにその上で

  • シングレア
  • キプレス
  • オノン
  • インタール

など内服している場合、より喘息と診断されていると考えられます。

喘息ではない可能性がある処方例

  • 貼り薬のホクナリンテープだけ
  • 以下の短時間作用型β2刺激薬吸入だけ
    ・メプチン
    ・サルタノール
    ・ベネトリン

などは喘息といわれたことがあるというだけで本当に気管支喘息かは疑わしいことがあります。

そもそも喘息の人に造影しないといけない時ってどんな時?

リスクがあるなら単純CTでいいじゃないかということですが、それでも造影しないといけない時とは、以下の場合が挙げられます。

  • 腫瘍の良悪性の鑑別。
  • 腫瘍の広がり診断。
  • 動脈瘤や解離などの血管病変の診断。
  • 外傷、血栓症、塞栓症など診断に緊急を要する場合。
  • 腸管虚血の診断。

など。ただし、他の検査で代用できるのであれば、そちらを優先します。

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