
先に結論:PGNTは「側脳室近くの嚢胞+隔壁+充実部」。画像だけでは確定せず、病理とPRKCA融合遺伝子の検査で診断
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | グリア(星細胞系)と神経細胞からなる、まれな低悪性度の腫瘍。偽乳頭状の構造が特徴 |
| 好発 | 97%がテント上(大脳)。側脳室に接する部位や深部白質に多い(80.5%) |
| 年齢 | 若い成人。平均26.9歳(138例)、中央値23歳(71例) |
| 画像 | 嚢胞と充実部の混在が約7割。嚢胞内の隔壁が約7割。石灰化や出血もある |
| 診断 | 病理+SLC44A1-PRKCA融合などPRKCAの異常。組織だけで診断すると他の腫瘍に誤分類されやすい |
PGNTとは
PGNTは papillary glioneuronal tumor の略で、日本語では乳頭状グリア神経細胞腫瘍といいます。顕微鏡で見ると、グリア(星細胞系)の細胞が血管のまわりに乳頭のように並ぶ「偽乳頭状」の構造と、その間にある神経細胞の成分が特徴です(Gelpi 2007)。WHO分類ではgrade 1(低悪性度)に分類されています(Ahmed 2017)。
2007年のWHO分類で、グリオニューロン腫瘍として新しく加わった3つの腫瘍の1つです。残りの2つは、第4脳室のロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍(RGNT)と、神経毡様島を伴うグリア神経細胞腫瘍です(Schlamann 2014)。画像診断科では、「大脳の脳室近くの嚢胞性腫瘤」を見たときに鑑別に挙がります。
グリオニューロン腫瘍やてんかん関連腫瘍の概観は、神経節膠腫(ganglioglioma)と胚芽異形成性神経上皮腫瘍(DNT)の記事も参考になります。画像の特徴が重なるため、2023年のレビューでも、病理や遺伝子の検査だけでは決まらない症例で画像が助けになるとされています(Park 2023)。
どこに・誰にできるか
PGNT 36例の画像検討では、平均年齢22.5歳(±11.2)、男性17例・女性19例でした。病変の97.2%(35例)がテント上にあり、80.5%(29例)が側脳室に接する部位か深部白質でした。初発症状はてんかんが10例、頭痛が7例でした(Du 2024)。
個別患者データのメタ解析(PGNT 71例)でも、年齢の中央値は23歳(4〜75歳)、97%がテント上でした(Schlamann 2014)。138例の系統的レビューでは、平均年齢は26.9±16.3歳で、男性が1.42対1とやや多い結果でした(Ahmed 2017)。年齢や性別の分布は報告ごとに少し違います。
症状と見つかるきっかけ
36例では、てんかんが10例、頭痛が7例、その他が19例でした(Du 2024)。7例の報告でも、頭痛とてんかんがそれぞれ4例ずつでした(Yadav 2017)。特異的な症状はなく、発作や頭痛の検査で頭部MRIを撮って、嚢胞性の腫瘤が見つかる流れが多くなります。
画像所見:MRIとCT
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 内部構造 | 混在する嚢胞と充実部が24例(66.7%)、嚢胞+壁在結節が4例、嚢胞のみが4例、充実のみが4例(Du 2024) |
| 隔壁 | 36例中25例(69.4%)に隔壁(septation)(Du 2024)。7例では、造影される隔壁が最も多い所見(Yadav 2017) |
| 石灰化 | CTまたはSWIを撮った18例のうち9例(Du 2024)。7例では3例(Yadav 2017) |
| 出血 | 9例(25%)(Du 2024)。7例では5例(Yadav 2017) |
| 浮腫 | 9例(25%)と少ない(Du 2024) |
| T2-FLAIR mismatch | 純粋な嚢胞の4例で見られた(Du 2024) |
| 場所 | 7例では5例(71.4%)が側頭葉の脳室周囲(Yadav 2017) |
隔壁の造影は、病理で嚢胞内に長く突き出た偽乳頭状の突起に対応するとされます。このため、脳室周囲に嚢胞があり、隔壁と、中に充実部がある腫瘤では、PGNTを疑うきっかけになります(Yadav 2017)。
症例 38歳男性 PGNT(右前頭葉)

引用:Du X, et al. Neurosurg Rev. 2024;47(1):179(Figure 1)、CC BY 4.0(図は加工していません)
右前頭葉に、嚢胞と充実部が混在する腫瘤があります。T2強調像(A)では内部に隔壁を思わせる信号があり、T1強調像(B)で嚢胞と充実部が分かれて見えます。DWI(C)で拡散制限はありません。SWI(D)で石灰化と出血を示す信号があり、造影(E)では充実部が不均一に造影され、CT(F)では点状・斑状の石灰化があります(Du 2024)。
症例 19歳男性 PGNT(左前頭葉・純粋な嚢胞)

引用:Du X, et al. Neurosurg Rev. 2024;47(1):179(Figure 2)、CC BY 4.0(図は加工していません)
左前頭葉の嚢胞性病変で、T2強調像(A)で全体が均一な高信号、T2-FLAIR(B)ではmismatch signを示します。造影(C)では造影される部分はありません。このように嚢胞のみで、充実部が目立たないPGNTもあります。
再発したときの画像
7例のうち再発した1例では、出血と脳表のヘモジデリン沈着(superficial siderosis)、まだらな拡散制限、コリンの上昇、局所的な灌流の増加が見られ、病理で細胞密度の増加と退形成に対応していました(Yadav 2017)。再発や増大を比較読影するときは、造影される領域の変化とともに、拡散・灌流・出血の変化も見てください。
CTとMRIの使い分け
CTは石灰化の確認に役立ちます。Duらの検討でも、CTやSWIで評価した18例のうち9例に石灰化がありました(Du 2024)。MRIでは、嚢胞と充実部の関係、隔壁の造影、拡散制限、周囲の浮腫を見ます。SWIは石灰化と出血の両方に敏感で、症例1のように、石灰化や出血を示す信号を見つけるのに役立ちます。T2-FLAIR mismatchは、嚢胞のみの病変で確認します。
鑑別と読影の考え方
PGNTは、他のグリオニューロン腫瘍やグリア系腫瘍に似た画像になります。大切なのは、場所、年齢、嚢胞と壁在結節の関係を整理することです。
| 鑑別 | ポイント |
|---|---|
| 神経節膠腫 | 側頭葉に多い皮質の嚢胞+壁在結節。詳細は神経節膠腫の画像診断 |
| DNT | 皮質を主座とする、脳溝に沿った多房性の腫瘤。詳細はDNTの画像診断 |
| 中枢性神経細胞腫 | 側脳室の透明中隔付近。石灰化・泡沫状。詳細は中枢性神経細胞腫の画像所見 |
| 毛様細胞性星細胞腫 | 小児の嚢胞+壁在結節。詳細は毛様細胞性星細胞腫の画像所見 |
| 多形黄色星細胞腫(PXA) | 皮質・髄膜に接する嚢胞+壁在結節。詳細は多形黄色星細胞腫(PXA)の画像所見 |
PGNTは側脳室に近い深部にできやすいという報告があります(Du 2024)。神経節膠腫やDNTが皮質、または皮質と皮質下白質を主座とすること(Urbach 2008)との違いが、場所の手がかりになります。ただし、これは傾向であり、側頭葉の脳室周囲にできた症例も報告されています(Yadav 2017)。
病理・遺伝子診断と誤分類
PGNTは、組織像だけで診断すると他の腫瘍と取り違えやすいことが知られています。組織学的にPGNTと診断された28例を調べた研究では、17例が他の腫瘍のメチル化プロファイル(主にDNTと大脳の毛様細胞性星細胞腫)を示しました。残りの11例が独自のPGNTのメチル化プロファイルを示しました。このPGNTのクラスで解析できた腫瘍のすべてに、PRKCA遺伝子を含む融合が見つかり、典型的なSLC44A1-PRKCA融合は12例中11例でした(Hou 2019)。
画像診断科では遺伝子を直接読みませんが、病理報告に「SLC44A1-PRKCA融合」とあれば、PGNTの診断を裏付けます。組織診断だけで「PGNT」とされた症例は、他の腫瘍の可能性も残ります。
経過と予後
PGNTは低悪性度ですが、再発や悪性の経過をとる症例が報告されています。138例のレビューでは、5年無増悪生存率は85.9±3.9%でした。男性の方が女性より良好で(94.0%と74.8%)、全摘出後は2年無増悪生存率が91.9%、亜全摘出では46.7%でした(Ahmed 2017)。
増殖能を示すKi-67指数が5以上の腫瘍は、5年無増悪生存率が55.6%で、5未満の94.8%より低くなりました。Ki-67の高い腫瘍は、浮腫やリング状造影を伴う傾向が見られましたが、統計学的な有意差には届いていません(Ahmed 2017)。71例のメタ解析では、全摘出が報告されたのは52例(73%)で、1.5年無増悪生存率は86±5%でした(Schlamann 2014)。治療の詳細は、この記事では扱いません。
読影のチェックリスト
- 場所:大脳(テント上)で、側脳室に接するか、深部白質か
- 年齢・症状:若い成人で、てんかんや頭痛がないか
- 内部構造:嚢胞と充実部が混在するか。嚢胞内の隔壁と、その造影はあるか
- 石灰化・出血:CTやSWIで確認する。両方ともよく見られる
- 拡散・造影:拡散制限は目立たないか。充実部は不均一に造影されるか
- 鑑別:神経節膠腫・DNT・中枢性神経細胞腫・毛様細胞性星細胞腫・PXAを並べる
- 報告書:「グリオニューロン腫瘍(PGNTなど)を鑑別」と書く。断定しない
よくある疑問(Q&A)
Q. PGNTは良性ですか?
A. WHO grade 1の低悪性度の腫瘍で、多くはゆっくりした経過ですが、再発や悪性の経過をとる例も報告されています。Ki-67の高い例で無増悪生存率が低い結果でした(Ahmed 2017)。
Q. 画像でPGNTと診断できますか?
A. 画像だけで確定することは難しいとされます。嚢胞内の隔壁と充実部、脳室周囲という特徴は手がかりになりますが(Yadav 2017、Du 2024)、他のグリオニューロン腫瘍と重なります。病理とPRKCAの検査が診断の決め手です(Hou 2019)。
Q. 子どもにもありますか?
A. 年齢の範囲は4〜75歳と報告されており、小児の例もあります(Schlamann 2014)。ただし中央値は23歳で、若い成人に多い腫瘍です。男性がやや多いという報告もあります(Ahmed 2017)。
Q. てんかんで見つかった腫瘍は、全部同じですか?
A. 長期のてんかんに関連する腫瘍には、神経節膠腫やDNTなど複数の種類があり、場所や画像が違います(Urbach 2008)。PGNTはその1つとして鑑別に入ります。
Q. 頭の中に腫瘍があると言われました。
A. てんかん発作や頭痛が続くときは、脳神経外科や神経内科で相談してください。
あわせて読みたい:AT/RT(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)のMRI画像所見、ETMR(多層ロゼットを伴う胎児性腫瘍)のMRI画像所見、RGNT(ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見
参考文献
- Schlamann A, von Bueren AO, Hagel C, et al. An individual patient data meta-analysis on characteristics and outcome of patients with papillary glioneuronal tumor, rosette glioneuronal tumor with neuropil-like islands and rosette forming glioneuronal tumor of the fourth ventricle. PLoS One. 2014;9(7):e101211. PubMed
- Ahmed AK, Dawood HY, Gerard J, et al. Surgical Resection and Cellular Proliferation Index Predict Prognosis for Patients with Papillary Glioneuronal Tumor: Systematic Review and Pooled Analysis. World Neurosurg. 2017;107:534-541. PubMed
- Du X, He Y, Li F, et al. Imaging manifestations of papillary glioneuronal tumors. Neurosurg Rev. 2024;47(1):179. PubMed
- Yadav N, Rao S, Saini J, et al. Papillary glioneuronal tumors: A radiopathologic correlation. Eur J Radiol. 2017;97:44-52. PubMed
- Hou Y, Pinheiro J, Sahm F, et al. Papillary glioneuronal tumor (PGNT) exhibits a characteristic methylation profile and fusions involving PRKCA. Acta Neuropathol. 2019;137(5):837-846. PubMed
- Gelpi E, Preusser M, Czech T, et al. Papillary glioneuronal tumor. Neuropathology. 2007;27(5):468-73. PubMed
- Park YW, Vollmuth P, Foltyn-Dumitru M, et al. The 2021 WHO Classification for Gliomas and Implications on Imaging Diagnosis: Part 3-Summary of Imaging Findings on Glioneuronal and Neuronal Tumors. J Magn Reson Imaging. 2023;58(6):1680-1702. PubMed
- Urbach H. MRI of long-term epilepsy-associated tumors. Semin Ultrasound CT MR. 2008;29(1):40-6. PubMed
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