大脳皮質形成異常 MRIで脳のしわの異常を読む順番

子どものてんかんでMRIを撮ったら「皮質形成異常」と言われました。脳のしわの病気のようですが、どんなものがあって、MRIで何が分かるのでしょうか?
大脳皮質形成異常は、胎児期に脳の表面(皮質)がつくられる途中で起きる異常の総称です。脳のしわ(脳回)の数や厚さ、深さの違いで整理するとMRIが読みやすくなります。多小脳回・滑脳症・裂脳症・限局性皮質異形成を中心に、見る順番と見落としやすい所をまとめます。

先に結論:脳回の「数・厚さ・深さ」と灰白質・白質の境目を見る。見え方は年齢と撮像条件で変わる

項目 ポイント
どんな病気か 皮質がつくられる過程の異常。発達の遅れ、脳性麻痺、てんかんで見つかることが多い(Severino 2020)
MRIでまず見る所 皮質の厚さ、脳回・脳溝のパターン、灰白質と白質の境目、白質の信号
滑脳症 皮質が厚く、脳回が少ない(脳表がなめらか)
多小脳回・裂脳症 小さな脳回が密に並ぶ。裂脳症は多小脳回の皮質で縁取られた裂け目
限局性皮質異形成 一部分の異常。軽いと見落とされやすく、溝の底が盲点になる

大脳皮質形成異常とは

大脳皮質形成異常(malformations of cortical development)は、皮質ができる過程のどこかに異常が起きた病気の集まりです。発達の遅れ、脳性麻痺、てんかんで見つかることが多く、神経学的な経過は、異常の種類・範囲・程度と関わる遺伝子によって大きく異なります(Severino 2020)。原因となる遺伝子は、細胞の増殖と分化、神経細胞の移動、皮質の最終的な組み立てのどの段階にもみつかっています(Guerrini 2014)。

画像診断では「どの段階の異常か」を推測しながら、次のように形で分けて読みます。

MRIでの形の特徴 代表的な病気
脳回が少なく皮質が厚い 滑脳症(無脳回・厚脳回)
小さな脳回が密に並ぶ、脳表がでこぼこ 多小脳回
全層に及ぶ裂け目を多小脳回の皮質が縁取る 裂脳症
一部だけ皮質が厚い・境目がぼやける・白質に信号異常 限局性皮質異形成
神経細胞が脳室周囲や白質に残る 灰白質異所性(異所性灰白質)

脳の先天奇形全体の整理は脳の先天奇形に含まれる疾患群まとめも参考になります。

MRIを読む順番とチェックリスト

皮質形成異常は、病名を当てる前に「どこがどう違うか」を言葉にすると読みやすくなります。見る順番の例です。

順番 見る所 異常のサイン
1 皮質の厚さ 厚い(滑脳症、多小脳回)、一部だけ厚い(限局性皮質異形成)
2 脳回・脳溝のパターン 脳回が少ない、小さく密、溝の向きや深さが不自然
3 灰白質と白質の境目 ぼやける(限局性皮質異形成)、ぎざぎざ(多小脳回)
4 白質の信号 T2・FLAIRで高信号、皮質から側脳室へ向かう漏斗状の高信号
5 分布と左右差 片側か両側か、限局か広範囲か
6 合併する異常 脳梁、小脳・脳幹、異所性灰白質、隔壁(透明中隔)

皮質の厚さは、年齢や髄鞘化の進み具合、頭の大きさ、脳の場所でも変わるため、画像上の数値を機械的な基準として使わないよう注意されています(Severino 2020)。

年齢で見え方が変わる

赤ちゃんの脳は髄鞘化(神経線維を覆う膜ができる過程)が進むにつれて、皮質と白質のコントラストが変わります。皮質と白質の差は髄鞘化が始まる前に最も大きく、髄鞘化の途中でいったん小さくなり、生後8〜12か月ごろには「T2等信号」の時期があって形成異常がわかりにくくなります(Severino 2020)。1歳未満で初めて撮像した場合は、髄鞘化が終わる3歳ごろに撮り直すと判断できることがあります(Severino 2020)。

撮像条件の目安

髄鞘化がほぼ終わった脳では、1mm以下の薄いスライスの3D T1強調像、3mm以下の横断像・冠状断のT2強調像、できれば薄い3D FLAIRを撮り、多方向に再構成して見ることが推奨されています(Severino 2020)。新生児ではT2強調像を3方向で撮ることが重要で、FLAIRは髄鞘化が不十分で灰白質・白質のコントラストがつきにくいため不要とされています(Severino 2020)。基本のシーケンスはMRIの基本シーケンスを部位別にで整理しています。

滑脳症:皮質が厚く、脳表がなめらか

滑脳症(lissencephaly)は「なめらかな脳」の意味で、神経細胞が脳の表面に向かう移動が不十分なために起きます。MRIの決め手は、厚い皮質と少ない脳回です(Severino 2020)。

型 MRIの特徴
無脳回(agyria) 脳溝がほとんどなく、軸位断で8の字のような形。シルビウス裂は幅広く縦に立つ
厚脳回(pachygyria) 幅の広い脳回が少数あり、脳溝は浅い
皮質の厚さ 10〜20mmと著しく厚いものを「厚い」滑脳症、5〜10mmのものを「薄い」滑脳症と呼ぶ(それでも正常より厚い)

(Severino 2020)

厚い皮質はMRIでは外側・中間・内側の3つの帯として見え、内側の帯が最も厚くなります(Severino 2020)。以前は「II型滑脳症」と呼ばれていた石畳様奇形(cobblestone malformation)は、神経細胞が移動しすぎる別の仕組みであり、脳表もなめらかではないため、現在は滑脳症から外されています(Severino 2020)。重い多小脳回や石畳様奇形では皮質が厚く見えて「厚脳回」と誤って呼ばれることがある点にも注意が必要です(Severino 2020)。

滑脳症のスペクトラムには無脳回、厚脳回、皮質下帯状異所性灰白質が含まれます。原因遺伝子は19個が知られ、画像のパターンは21種類に整理されて、原因遺伝子の推定に役立つとされています(Di Donato 2017)。画像のパターンと臨床の重症度は一致しないため、重症度の目安も別に作られています(Di Donato 2017)。

多小脳回:小さな脳回が密に並ぶ

多小脳回(polymicrogyria)は、皮質形成異常の中でも多いものの一つです。小さな脳回が過剰に密集し、脳表がでこぼこに見えます。見え方は一定ではなく、細かく繊細なもの、厚くて粗いもの、小さな溝の上を外側の層が覆うために逆になめらかに見えるものがあります(Severino 2020)。画像の解像度が不足するとなめらかに見えるため、薄いスライスで確かめます(Severino 2020)。

分布のパターン(328例) 割合
シルビウス裂周囲(perisylvian) 61%
全般性 13%
前頭葉 5%
傍矢状の頭頂後頭部 3%
脳室周囲の灰白質異所性を伴う 11%

(Leventer 2010)

同じ328例の検討では、てんかん発作が78%、全般的な発達の遅れが70%、痙縮が51%、小頭症が50%にみられました。診断時年齢の中央値は4か月で、38%は出生前か新生児期に見つかっていました。広がりが大きい型ほど早く、重い症状で見つかっています(Leventer 2010)。スウェーデンのストックホルムで行われた小児の集団調査では、有病率は1万人あたり2.3人で、てんかんは54%、遺伝学的な原因が確認されたのは3分の1(32%)でした(Kolbjer 2023)。

原因は遺伝子の異常だけではありません。胎内感染(サイトメガロウイルスなど)、動脈の梗塞、双胎間輸血症候群なども原因になります(Severino 2020)。診断は、画像の形と分布に加えて、遺伝学的検査の結果や原因の推定を合わせて考えます。

裂脳症:多小脳回で縁取られた裂け目

裂脳症(schizencephaly)は、脳室の壁から脳表まで、大脳半球を貫く裂け目があり、その壁が多小脳回の灰白質や異所性灰白質で縁取られているものをいいます(Severino 2020)。胎生早期に胚芽層の限局した障害か、ごく未熟な脳での梗塞が起こり、組織が溶けたことが原因と考えられています(Severino 2020)。

型 MRIの特徴
開唇型(open-lip) 裂け目が開いて脳脊髄液で満たされる。脳室とくも膜下腔がつながる
閉唇型(closed-lip) 裂け目の縁が接して閉じている。脳室の壁にくぼみ(dimple)があるのが手がかり

(Severino 2020)

裂脳症は、片側のこともあれば両側のこともあり、反対側の多小脳回や、脳弓・透明中隔の異常(septo-optic dysplasia-plus)などを合併することがあります(Severino 2020)。脳室の壁まで達する欠損でも、壁が灰白質で縁取られていれば裂脳症、白質とグリオーシスで縁取られていれば脳の破壊性の病変(孔脳症など)と見分けます(Severino 2020)。孔脳症の画像は孔脳症の画像診断で解説しています。

予後は裂け目の大きさと場所で異なります。MRIと臨床経過を検討した20例では、両側の裂脳症は片側より知的発達と言語の遅れが強く、片側でも大きい・中等度の開唇型は運動・知的障害が強い一方、小さな片側の裂脳症で運動野を含まないものは発達の予後が良好でした(Barkovich 1992)。

引用元の図 多小脳回と裂脳症のMRI

多小脳回と裂脳症のMRI 軸位断・矢状断 開唇型・閉唇型
引用:Severino M, et al. Brain. 2020;143(10):2874-2894 (Figure 7). PubMed/CC BY-NC 4.0(図は加工していません)

A・Bは片側びまん性の多小脳回で、細かい脳回が密に並び、シルビウス裂の向きが異常です。J・Kは開唇型の裂脳症で、左半球を貫く広い裂が多小脳回の皮質で縁取られています。L・Mは閉唇型で、裂は狭く、脳室壁のくぼみから始まります。

限局性皮質異形成(FCD):軽いと見落とされる

限局性皮質異形成(focal cortical dysplasia:FCD)は、皮質の一部の構造が乱れる病変で、難治性てんかんの原因になります。国際抗てんかん連盟(ILAE)は2022年に分類を更新しました。主な変更点は、軽度皮質形成異常(mMCD)、オリゴデンドログリア過形成を伴う軽度皮質形成異常(MOGHE)、「病理でFCDと確定できないもの」を新しい区分に加えたことです。さらに、病理診断に画像と遺伝子の情報を重ねる多層の診断モデルが提案されています(Najm 2022)。type IIでは、mTOR経路の遺伝子の変化が確認されています(Najm 2022)。

ILAE分類 MRIの見え方
type I 直接見えないことがある。灰白質・白質の境目のぼやけや、髄鞘化の左右差を示すことがある
type II(IIa・IIb) 皮質の肥厚、境目のぼやけ、脳回・脳溝の乱れ。IIbは漏斗状の高信号(transmantle sign)
type III 海馬硬化・腫瘍・血管奇形などに伴う皮質の異常
MOGHE 3歳ごろまではT2・FLAIRで皮質直下の高信号の帯。年長児では皮質と白質の区別が低下

(Urbach 2022、Severino 2020)

MRIの所見として、皮質の肥厚はFCDの60〜91%、灰白質・白質の境目のぼやけは74〜96%、transmantle signはtype IIaの75%、type IIbの94%に認められると報告されています(Urbach 2022)。transmantle signは「皮質から側脳室に向かって細くなる漏斗状の高信号」で、type IIにだけ見られ、IIbを示唆しますが、IIbのすべてにあるわけではありません(Urbach 2022)。脳腫瘍(神経節膠腫など)との鑑別も必要で、てんかんを起こす腫瘍の代表は胚芽異形成性神経上皮腫瘍(DNT)です。

症例 右上前頭溝のFCD type IIb

限局性皮質異形成 type IIb 3D FLAIR 軸位断・冠状断・矢状断 transmantle sign
引用:Urbach H, et al. Neuroradiology. 2022;64(3):443-452 (Figure 1). PubMed/CC BY 4.0(図は加工していません)

3テスラの3D FLAIR(A〜C)で、右上前頭溝の深部に皮質の肥厚があり、側脳室前角に向かって細くなる高信号(transmantle sign、B・Cの矢印)がみられます。図の説明では、右上前頭溝の深部のFCD type IIbとされています。

見落としやすい所:溝の底

FCDのMRI異常は軽く、生涯で変化しないために見落とされがちです。最も見落とされやすいのは溝の深部(bottom of sulcus dysplasia)の病変です(Urbach 2022)。薬が効かないてんかんの15〜30%は「MRI陰性」とされますが、実際は軽い病変を見落としている場合が多く、見落とし率は約30%、研究によっては41%や78%と報告されています(Urbach 2022)。

見つけやすくする方法として、MP2RAGE・FLAWS・EDGEといった専用の撮像法や、画像解析ソフトによる後処理があります。7テスラの追加効果は証明の途中で、3テスラで見つからない例に限る使い方が勧められています(Urbach 2022)。薄い3D FLAIR(3D T1強調像と合わせて)が基本の撮像で、3テスラで最も重要なシーケンスとされています(Urbach 2022)。

見落としと間違いやすいポイント

場面 注意すること
生後8〜12か月の撮像 「T2等信号」の時期で異常が見えにくい。3歳ごろの撮り直しを考える
スライスが厚い・方向が少ない 多小脳回がなめらかな脳に見えることがある。薄い3D像を多方向で再構成する
「厚脳回」と書く前に 重い多小脳回や石畳様奇形を厚脳回と取り違えない(Severino 2020)
溝の底の皮質 FCD type IIbは溝の底に隠れる。冠状断・矢状断で溝の底をたどる
「MRI陰性」の報告 陰性は病変が無いことを意味しない。専用の撮像法や追加の解析を相談する
脳梁・小脳・脳幹 皮質の異常に気を取られず、合併する形成異常を確認する

よくある疑問(Q&A)

Q. MRIで異常がないと言われても、てんかんの原因が皮質形成異常のことはありますか?
A. あります。FCDなど軽い病変は通常のMRIで見落とされやすく、薬が効かないてんかんの15〜30%は「MRI陰性」とされます。専用の撮像法や追加の解析で病変が見つかることがあります(Urbach 2022)。

Q. 生後半年で撮ったMRIで診断がつかなかったのは、検査が不十分だったのでしょうか?
A. 乳児期は髄鞘化の途中で、皮質と白質のコントラストが一時的に下がるため、形成異常がわかりにくい時期があります。髄鞘化が終わる3歳ごろに撮り直すと診断できることがあります(Severino 2020)。

Q. 多小脳回があると、いつもてんかんになりますか?
A. いいえ、全員ではありません。ストックホルムの小児の集団調査では、多小脳回のある子どものうち、てんかんがあったのは54%でした(Kolbjer 2023)。経過は広がりや原因によって異なるため、主治医に相談してください。

Q. 裂脳症と孔脳症はどう違いますか?
A. 裂け目の壁が灰白質(多小脳回)で縁取られていれば裂脳症、白質とグリオーシスで縁取られていれば孔脳症などの破壊性病変と考えます(Severino 2020)。

お子さんの発達やけいれんが気になるときは、小児科・神経内科など医療機関に相談してください。

あわせて読みたい:脳MRIの鑑別診断の進め方

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参考文献

  1. Guerrini R, Dobyns WB. Malformations of cortical development: clinical features and genetic causes. Lancet Neurol. 2014;13(7):710-26. PubMed
  2. Severino M, Geraldo AF, Utz N, et al. Definitions and classification of malformations of cortical development: practical guidelines. Brain. 2020;143(10):2874-2894. PubMed
  3. Leventer RJ, Jansen A, Pilz DT, et al. Clinical and imaging heterogeneity of polymicrogyria: a study of 328 patients. Brain. 2010;133(Pt 5):1415-27. PubMed
  4. Kolbjer S, Martín Muñoz DA, Örtqvist AK, et al. Polymicrogyria: epidemiology, imaging, and clinical aspects in a population-based cohort. Brain Commun. 2023;5(4):fcad213. PubMed
  5. Di Donato N, Chiari S, Mirzaa GM, et al. Lissencephaly: Expanded imaging and clinical classification. Am J Med Genet A. 2017;173(6):1473-1488. PubMed
  6. Barkovich AJ, Kjos BO. Schizencephaly: correlation of clinical findings with MR characteristics. AJNR Am J Neuroradiol. 1992;13(1):85-94. PubMed
  7. Najm I, Lal D, Alonso Vanegas M, et al. The ILAE consensus classification of focal cortical dysplasia: An update proposed by an ad hoc task force of the ILAE diagnostic methods commission. Epilepsia. 2022;63(8):1899-1919. PubMed
  8. Urbach H, Kellner E, Kremers N, et al. MRI of focal cortical dysplasia. Neuroradiology. 2022;64(3):443-452. PubMed

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