
先に結論:基本は「T1・T2+脂肪抑制+部位ごとの得意技」。足すシーケンスは疑う病態で決まる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 基本の画像 | T1強調像で形、T2強調像で水・病変、脂肪抑制で脂肪の信号を消して病変を目立たせる |
| 頭部 | T1・T2・FLAIR・拡散強調像(DWI)・T2*/SWI。造影やMRAは疑う病態で足す |
| 体幹・関節 | 脊椎は矢状断のT1・T2とSTIR、肝臓はダイナミック造影とDWI、骨盤はT2とDWI、関節は脂肪抑制つきのプロトン密度強調像が中心 |
| 足す理由 | 造影は血流や炎症の評価、T2*/SWIは出血、MRCPは胆管・膵管の描出が目的 |
MRIのシーケンスとは
MRIは、撮り方(シーケンス、パルスシーケンスとも呼びます)を変えると、同じ体の同じ場所でも見え方が大きく変わります。CTのように「1回撮れば決まった画像が出る」検査ではなく、何を見たいかに合わせて画像の種類を組み合わせる検査です。スピンエコー法とグラディエントエコー法といった撮り方の違いはMRIのスピンエコー法とグラディエントエコー法の違いで解説しています。ここでは「どの部位で何を撮り、各画像で何が見えるか」に絞ります。
なお、TR・TEなどの撮像条件の数値は装置や施設で異なるため、この記事では扱いません。施設のプロトコールは、画像に付いているシーケンス名(T1WI、T2WI、FS、STIR、DWIなど)で確認してください。
各シーケンスで何が見えるか
| シーケンス | 見えるもの(1行) | 読影での使いどころ |
|---|---|---|
| T1強調像(T1WI) | 脂肪、亜急性期の出血、蛋白を多く含む液、メラニン、造影剤が白い。水・髄液は黒い | 解剖の確認、脂肪や出血の同定、造影前後の比較 |
| T2強調像(T2WI) | 水・浮腫・多くの炎症や腫瘍が白い | 病変を見つける。液体の貯留の確認 |
| FLAIR | T2強調像から髄液の信号だけを消した画像 | 脳室や脳表の近くの病変(脳梗塞・炎症・多発性硬化症など) |
| 脂肪抑制(FS・STIR・Dixonなど) | 脂肪の白さを消し、水や造影される部分を目立たせる | 骨髄の浮腫、造影後の評価、脂肪を含む腫瘤の確認 |
| 拡散強調像(DWI) | 水の動きが制限された所が白い | 急性期の脳梗塞、膿瘍、細胞が詰まった腫瘍 |
| T2*強調像・SWI | 出血・石灰化・鉄など磁場を乱すものが黒い | 微小出血、陳旧性出血、血管の異常 |
| 造影T1強調像 | 血流が豊富な部分、血液脳関門が壊れた部分、炎症部分が白くなる | 腫瘍・感染・炎症の範囲と性状 |
T1強調像で白く見えるものはいくつもあるため、「白い=脂肪」とは決められません。脂肪抑制T1で白さが消えれば脂肪、消えなければ出血や蛋白などを考える、という順序で絞り込みます。
脂肪抑制には、化学シフトを利用する方法(CHESS)、反転回復を使うSTIR、両者を組み合わせた方法(SPAIR)、水だけを励起する方法、Dixon法などがあり、磁場強度や撮りたい部位で使い分けます(Del Grande 2014)。画像に付いたラベルで、どの方法の脂肪抑制かを確認するのが第一歩です。
部位別の基本セットと足すもの
| 部位 | 基本のセット | 病態で足すもの |
|---|---|---|
| 頭部 | T1・T2・FLAIR・DWI・T2*/SWI | 造影T1(腫瘍・感染・炎症)、MRA・MRV(血管)、3D-FLAIR(多発性硬化症) |
| 脊椎 | 矢状断T1・T2、STIR(または脂肪抑制T2)、軸位T2 | 造影T1(感染・腫瘍・術後)、全脊椎の撮像 |
| 肝臓 | T1(同位相・逆位相)、T2(脂肪抑制)、DWI | ダイナミック造影、肝細胞相、MRCP |
| 骨盤 | T2(多断面)、T1、DWI | T1脂肪抑制(出血・脂肪の確認)、ダイナミック造影 |
| 関節 | プロトン密度強調像(脂肪抑制)、T1、T2またはSTIR | MR関節造影、造影T1 |
これは一般的な組み立て方の例で、施設や目的によって変わります。部位ごとに理由を見ていきます。
頭部:T1・T2・FLAIR・DWI・T2*が基本
頭部は、形を見るT1、病変を見つけるT2とFLAIR、急性期を見るDWI、出血を見るT2*またはSWIが基本です。読む順番は頭部MRIの読み方にまとめています。
救急で脳卒中を疑う患者356人を比べた前向き研究では、DWIと磁化率強調像を含むMRIが急性の虚血性脳卒中を検出したのは164人(46%)で、CTの35人(10%)を大きく上回りました。急性脳卒中全体の診断の感度はMRI 83%、CT 26%でした(Chalela 2007)。一方、急性期の頭蓋内出血の検出はMRIとCTで同等で、慢性の出血(多くは微小出血)はMRIだけが示しました(Chalela 2007)。
発症6時間以内の脳卒中症状の200人をグラディエントエコー(T2*系)で調べた研究でも、急性出血の診断はMRIとCTで一致率96%でした。慢性の出血は49人でMRIにだけ見えました(Kidwell 2004)。出血を見たいなら、T2*またはSWIを基本セットに入れる意味があります。
造影を足す場面は、腫瘍・感染・炎症の疑いなどです。多発性硬化症では、2021年のMAGNIMS-CMSC-NAIMS合意で、3D-FLAIRを脳の中心的なシーケンスとし、ガドリニウム造影剤は目的に応じて慎重に使うことが推奨されています(Wattjes 2021)。血管の評価に使うMRAはCTAとMRAの違いも参考になります。
脊椎:矢状断のT1・T2とSTIR
脊椎は、矢状断のT1・T2で椎体・椎間板・脊髄・脊柱管を一度に見て、軸位T2で椎間板ヘルニアや神経根の圧迫を確認するのが基本です。正常解剖は腰椎MRIの見方で確認できます。
椎体の骨髄は脂肪が多く、T2強調像では浮腫の白さが脂肪の白さに紛れることがあります。そこでSTIRなどの脂肪抑制T2を足すと、新鮮な圧迫骨折、感染、転移などの骨髄浮腫が目立ちます。脂肪抑制は骨髄病変の視認性を上げる目的で使われます(Del Grande 2014)。
感染や腫瘍が疑われるときは造影T1(脂肪抑制つき)を足します。硬膜外膿瘍7例の検討では、膿瘍はT1強調像で脊髄と同等〜低信号、プロトン密度・T2強調像で高信号でした。造影後の増強パターンは、均一なもの、辺縁だけが増強するもの(中心は壊死した膿瘍)、両者の混在の3つでした。2例では造影T1が、感染部分と周囲の髄液の区別でT2強調像より優れていました(Sandhu 1991)。
症例 60歳代女性 化膿性椎間板炎・椎体炎(spondylodiscitis)

引用:Radiopaedia(Spondylodiscitis)

引用:Radiopaedia(Spondylodiscitis)
L2-L3椎間板に複雑な液体貯留があり、T1強調像では低信号、T2強調像では主に高信号と記載されています。STIRでは信号が高く、L3椎体やL2の終板、傍椎体間隙、両側の腸腰筋、後壁へ広がっています。同じ病変でも、T1では黒く、STIRでは白く、シーケンスで見え方が反対になるのが読み比べのポイントです。
肝臓:DWIとダイナミック造影
肝臓は、T1(同位相・逆位相)で脂肪沈着や脂肪を含む病変を、脂肪抑制T2で嚢胞や血管腫などの水を多く含む病変を確認し、DWIで小さな病変の拾い上げを行います。そのうえで腫瘤の性状を調べるときに、ダイナミック造影(動脈相・門脈相・平衡相と時間を追って撮る)を足します。腫瘍が最初に染まる時期と、あとで洗い流される(washout)かどうかが性状診断の手がかりになります。
肝細胞に取り込まれる造影剤(ガドキセト酸)を使うMRIは、肝細胞癌の診断で、小さな病変を対象にした研究では感度が0.919と、CTの0.637より高い結果でした。大きさを問わない全体では、0.881と0.713で統計学的な差はありませんでした(Duncan 2017)。小さな病変ほどMRIの上乗せが大きいと読めます。
胆管や膵管を見たいときは、造影剤を使わずに水を強調するMRCPを足します。詳しくはMRCP検査とはを参照してください。
骨盤:T2強調像が主役、DWIと脂肪抑制を足す
骨盤では、多断面のT2強調像が基本です。子宮の層構造、卵巣、前立腺、直腸・膀胱の壁などは、T2強調像で最も見分けやすくなります。T1強調像は出血や脂肪の確認に使い、T1脂肪抑制を足すと、出血を伴う嚢胞と脂肪を含む腫瘤(成熟奇形腫など)を区別できます。DWIは細胞密度の高い腫瘍の検出に使います。
前立腺MRIの報告基準PI-RADS v2.1(2019年)は、各シーケンスに点数をつけ、それを組み合わせて全体の評価を出す枠組みを維持しています(Turkbey 2019)。前立腺ではT2強調像・拡散強調像・ダイナミック造影の組み合わせが使われます。
関節:脂肪抑制つきのプロトン密度強調像
膝・肩などの関節では、脂肪抑制つきのプロトン密度強調像(関節液と軟骨・半月板・靱帯のコントラストを取りやすい撮り方)と、骨髄の脂肪を見るT1を組み合わせます。骨髄の浮腫の確認にはT2脂肪抑制やSTIRを使います。靱帯や関節唇の損傷を詳しく見たいときは、関節内に造影剤を入れるMR関節造影を足すことがあります。
膝の半月板損傷についてのメタ解析(17研究)では、MRIの感度・特異度は内側半月板で92%・90%、外側半月板で80%・95%でした(Wang 2021)。外側は感度がやや低いので、画像で所見がなくても臨床所見が強いときは主治医と相談してください。
初心者のための読み方チェックリスト
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 撮像部位・断面・シーケンス名(FS・STIR・造影の有無)を確認する |
| 2 | T1とT2を並べて、病変が白いか黒いかを両方で見る |
| 3 | T1が白いときは脂肪抑制T1で脂肪かどうかを確かめる |
| 4 | DWIが白いときは、ADCで本当に拡散が制限されているかを見る |
| 5 | 出血・石灰化が疑われるときはT2*/SWIを見る |
| 6 | 造影前後を同じ断面・同じ条件で比べる |
水・脂肪・出血・石灰化の見え方を、基本の組み合わせで覚えておくと便利です。
| 組織 | T1 | T2 | 脂肪抑制で |
|---|---|---|---|
| 水・髄液 | 黒い | 白い | 変わらない(T2では白いまま) |
| 脂肪 | 白い | 白〜やや白い | 黒くなる |
| 亜急性期の出血 | 白いことがある | 状態で変わる | 白いまま |
| 石灰化・空気・骨の皮質 | 黒い | 黒い | 黒いまま |
よくある疑問(Q&A)
Q. 造影剤は毎回使うのですか?
A. 毎回ではありません。頭部や脊椎でも、造影なしで足りる場面は多くあります。腫瘍・感染・炎症が疑われるときに追加します。多発性硬化症では、目的に応じた慎重な使用が推奨されています(Wattjes 2021)。造影剤の使用は、腎機能やアレルギーなどを確認したうえで、検査施設の指示に従います。
Q. 脂肪抑制とSTIRは同じですか?
A. STIRは脂肪抑制の方法の一つです。ほかに化学シフトを利用する方法やDixon法などがあり、磁場強度や部位で使い分けます(Del Grande 2014)。
Q. 拡散強調像は全身どこでも同じように見ますか?
A. 白いことの意味は同じ(水の動きの制限)ですが、頭部では急性期の脳梗塞が、体幹では細胞密度の高い腫瘍や膿瘍が主な対象です。白くても正常な構造や別の原因のことがあるため、ADCや他のシーケンスと合わせて判断します。
Q. 検査の結果が気になります。
A. シーケンスの種類は施設で異なり、必要な画像は症状と疑う病気で決まります。気になる症状があれば、医療機関で相談してください。
参考文献
- Chalela JA, Kidwell CS, Nentwich LM, et al. Magnetic resonance imaging and computed tomography in emergency assessment of patients with suspected acute stroke: a prospective comparison. Lancet. 2007;369(9558):293-298. PubMed
- Kidwell CS, Chalela JA, Saver JL, et al. Comparison of MRI and CT for detection of acute intracerebral hemorrhage. JAMA. 2004;292(15):1823-1830. PubMed
- Wattjes MP, Ciccarelli O, Reich DS, et al. 2021 MAGNIMS-CMSC-NAIMS consensus recommendations on the use of MRI in patients with multiple sclerosis. Lancet Neurol. 2021;20(8):653-670. PubMed
- Sandhu FS, Dillon WP. Spinal epidural abscess: evaluation with contrast-enhanced MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 1991;12(6):1087-1093. PubMed
- Duncan JK, Ma N, Vreugdenburg TD, et al. Gadoxetic acid-enhanced MRI for the characterization of hepatocellular carcinoma: A systematic review and meta-analysis. J Magn Reson Imaging. 2017;45(1):281-290. PubMed
- Turkbey B, Rosenkrantz AB, Haider MA, et al. Prostate Imaging Reporting and Data System Version 2.1: 2019 Update of Prostate Imaging Reporting and Data System Version 2. Eur Urol. 2019;76(3):340-351. PubMed
- Del Grande F, Santini F, Herzka DA, et al. Fat-suppression techniques for 3-T MR imaging of the musculoskeletal system. Radiographics. 2014;34(1):217-233. PubMed
- Wang W, Li Z, Peng HM, et al. Accuracy of MRI Diagnosis of Meniscal Tears of the Knee: A Meta-Analysis and Systematic Review. J Knee Surg. 2021;34(2):121-129. PubMed
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