胃粘膜下腫瘍 CTで種類を見分ける4つの点

健診のバリウムか胃カメラで「胃に粘膜下腫瘍があります」と言われました。がんなのでしょうか。CTを撮ると何がわかりますか?
粘膜下腫瘍は「胃の壁の内側にできたしこり」の総称で、病名ではありません。中身は脂肪腫のように心配の少ないものから、GIST(消化管間質腫瘍)のように経過を追うものまでさまざまです。CTで見る順番と、種類ごとの見え方、その先の検査を整理します。

先に結論:粘膜下腫瘍は「病名」ではなく見つかり方の名前。CTでは場所・形・造影・内部の4点で絞る

項目 ポイント
粘膜下腫瘍とは 胃の壁の粘膜より深い層にできた、表面が正常粘膜でおおわれた隆起の総称。中身は腫瘍とは限らない
CTでまず見る点 どの層から出ているか、場所、形と育ち方(内腔向きか外向きか)、造影の強さ、内部(脂肪・壊死・石灰化)
CTだけで決まりやすいもの 脂肪腫(脂肪のCT値)。異所性膵は好発部位と形、造影が膵に似るかで絞れる
CTでも迷うもの GIST・平滑筋腫・神経鞘腫は似る。造影の強さや潰瘍、壊死は手がかりだが決め手になりにくい
その先の検査 内視鏡の超音波(EUS)で層を見て、必要なら組織を採る。方針は主治医と相談

粘膜下腫瘍とは

胃の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)という層でできています。内視鏡で見ると、表面は粘膜でおおわれ、その下から盛り上がった「なだらかな山」に見えるものが粘膜下腫瘍(subepithelial lesion、SMT・SELとも呼ばれます)です。バリウム検査でも、辺縁がなだらかで表面が平滑な隆起として写ります。

ここで大切なのは、内視鏡や透視では「壁の中にある腫瘍」と「胃の外から壁を押している臓器や病変」を見分けにくいことです。ACG(米国消化器病学会)のガイドライン(2023年)も、消化管の粘膜下病変には腫瘍や嚢胞のほか、外からの圧迫による隆起も含まれると整理しています(Jacobson 2023)。外からの圧迫か壁の中かは、体の断面を見るCTが得意とする部分です。胃の外の腫瘤がどの臓器から来ているかの考え方は、腫瘤の由来臓器の見分け方も参考になります。

CTで最初に見る4つのポイント

粘膜下腫瘍のCTでは、次の順に見ると整理しやすくなります。小さな病変も拾うには、胃を水や発泡剤で膨らませ、薄いスライスの断面を使って、冠状断など別の向きからも見るのが基本です。再構成の使い分けはMPR・MIP・MinIP・VRとはにまとめています。

見る点 見方 何がわかるか
①場所と由来 胃のどこか(噴門・体部・前庭部)。壁の内側から出ているか、外から押しているか 前庭部〜十二指腸は異所性膵が好発。外から押す病変は胃の外の臓器を探す
②形と育ち方 丸いか細長いか。内腔に向かうか、外へ張り出すか、両方か 長径と短径の比や育つ向きが、異所性膵などの絞り込みに使われる
③造影 造影前後のCT値、造影の強さと均一さ 造影が強いか弱いかは、GISTと平滑筋腫の比較で使われる
④内部 脂肪、壊死、潰瘍、石灰化、出血 脂肪なら脂肪腫。壊死や潰瘍は腫瘍を考えるきっかけ

胃を膨らませたCT(多列検出器CT)で粘膜下腫瘍を調べた41例の検討では、内視鏡の超音波(EUS)で見つかった病変を、CTは感度85.3%・特異度85.7%で検出し、病変の種類まで分類できた割合は78.8%でした(Okten 2012)。CTは粘膜下腫瘍の拾い上げと分類に役立つ一方で、いつも正しく種類を当てられる検査ではない、というのが実際です。

種類ごとのCTの見え方

胃の粘膜下腫瘍として出会うことが多いのは、脂肪腫、異所性膵、平滑筋腫、神経鞘腫、GISTです。見分けの目安を表にします。

種類 CTの手がかり 注意点
脂肪腫 内部が脂肪のCT値(周囲の脂肪と同じ黒さ) 脂肪が確認できれば追加の生検や手術を避けられることがある
異所性膵(迷入膵) 前庭部に多い。内腔に向かって育ち、境界がややぼやけ、表面の粘膜が強く染まる 膵と同じように造影される。基準を複数満たすほど可能性が高い
平滑筋腫 造影はGISTより弱い傾向。粘膜の潰瘍もGISTより少ない GISTと形が似る。造影の弱さが手がかりの一つ
神経鞘腫 境界明瞭な卵円形、均一に中等度に造影。胃体部に多い 潰瘍や、周囲のリンパ節腫大(反応性)を伴うことがある
GIST 造影が強め。内部の壊死、粘膜面の潰瘍 悪性度は大きさや増殖の指標などで評価する(詳細は別記事)

脂肪腫:脂肪のCT値があれば絞れる

胃の脂肪腫はまれな良性腫瘍で、CTで脂肪の濃度を示すことが診断の決め手になります。これを確認できれば、症状のない人では生検や手術を避けられると報告されています(Chagarlamudi 2018)。大きくなると胃の出口をふさぐことがあるため、症状があるときは相談が必要です。次の症例は、胃体部の壁にある大きな脂肪腫です。

症例 60歳代男性 胃粘膜下脂肪腫

胃粘膜下脂肪腫 造影CT 門脈相 横断像
引用:Radiopaedia(Gastric submucosal lipoma)

胃体部の大弯側の壁に、境界のはっきりした大きな脂肪濃度の病変があります。症例ページでは、内部に小さな軟部濃度の造影される部分と、脂肪織の索状の濃度上昇を伴い、内腔が狭くなっているものの閉塞はないと記載されています。病理診断は粘膜下脂肪腫で、隣の胃壁の慢性胃炎が内部の索状影を説明するとされています。

異所性膵:場所と形で疑う

異所性膵は、膵臓以外の場所にできた膵組織です。胃・十二指腸の病理で確認された異所性膵14例、GIST33例、平滑筋腫7例のCTを比べた研究では、前庭部と十二指腸という好発部位、内腔に向かって育つこと、境界がぼやけること、表面の粘膜が強く染まること、長径÷短径が1.4を超えることの5項目が異所性膵の鑑別に役立ちました。5項目のうち2つ以上で感度100%・特異度82.5%、4つ以上では感度42.9%・特異度100%でした(Kim 2009)。経過観察でよいことが多い病変として、異所性膵(迷入膵)の記事もあります。

平滑筋腫:GISTとの違いは造影の強さ

胃の平滑筋腫と胃のGISTを年齢・性別・部位・大きさをそろえて26例ずつ比べた研究では、粘膜の潰瘍はGISTに多く、造影の強さもGISTのほうが動脈相・門脈相ともに高い結果でした。動脈相の造影効果が18HU未満だと、平滑筋腫の可能性が高いとされています(Wang 2023)。ただしこれは1つの施設の比較で、境目の値をそのまま誰にでも当てはめることはできません。

神経鞘腫:均一に染まる境界明瞭な腫瘤

胃の神経鞘腫19例のCTでは、胃体部が73.7%、平均の最大径は4.5cmで、すべて卵円形で境界明瞭でした。発育は外向き36.8%、内腔向き15.8%、混合47.4%で、潰瘍が57.9%、周囲のリンパ節腫大が47.4%に見られ、94.7%が均一に染まっていました(Wang 2019)。リンパ節腫大は炎症に伴う反応性の腫大とされています。胃や耳下腺の神経鞘腫の非典型像は神経鞘腫の非典型像で解説しています。

GIST:大きさと内部が手がかり

GISTは粘膜下腫瘍のなかで、悪性の可能性がある代表的な腫瘍です。胃の粘膜下腫瘍(大きさ2〜5cm)71例の検討では、CTの診断の正確さは78.9%で、EUSの74.6%と同程度でした。GISTを疑う独立した所見は、内部の壊死と長径÷短径が1.5未満(丸い形)です(Huh 2019)。一方でCTの陰性的中率は43.8%にとどまり、CTで平滑筋腫らしく見えても、GISTを除外しきれないことを示しています。GISTそのものの画像所見・好発部位・悪性度はGIST(消化管間質腫瘍)とは?に詳しくあります。

症例 80歳代男性 胃GIST

胃GIST 造影CT 門脈相 横断像
引用:Radiopaedia(Gastrointestinal stromal tumor (GIST) – stomach)

症例ページでは、胃の前壁で小弯に付着する境界明瞭な腫瘤で、周囲への浸潤はなく、内部は不均一、造影は中等度で主に辺縁に見られると記載されています。肺には転移と考えられる多発結節があり、手術標本では前壁の固有筋層から発生した腫瘍と考えられたとされています。

CTのあとに何をするか:EUSと経過観察

CTで種類を絞っても、確定には限界があります。欧州消化器内視鏡学会(ESGE)のガイドライン(2022年)は、粘膜下病変の性質(大きさ、場所、由来の層、エコーの強さ、形)を調べるにはEUSが最良の検査としつつ、EUSだけでもすべての種類は区別できないとしています(Deprez 2022)。ACGのガイドライン(2023年)も、固形で脂肪腫ではない粘膜下病変には、組織を採るEUS検査を提案しています(Jacobson 2023)。

状況 ガイドラインの考え方
診断がはっきりした無症状の平滑筋腫・脂肪腫・異所性膵・神経鞘腫など 追跡は勧められない(ESGE 2022)
診断がつかない無症状の胃の粘膜下病変 内視鏡で経過を追う。10mm未満は3〜6か月後、その後2〜3年ごと。10〜20mmは1〜2年ごと(ESGE 2022)
20mmを超えて切除しない病変 内視鏡とEUSで6か月後、その後6〜12か月ごと(ESGE 2022)
GISTを疑う20mm超、または高リスクの所見がある病変 組織診断を提案(ESGE 2022)
胃GISTが2cmを超える 切除を提案。2cm未満は経過観察か切除かを決める根拠が足りない(ACG 2023)

つまり、粘膜下腫瘍と言われたら、①種類の見当をつける、②大きさ・症状・高リスクの所見を確認する、③必要ならEUSと組織診断、④診断がつかない小さな病変は間隔を決めて追う、という流れになります。具体的な間隔や手術の判断は、病変ごとに主治医が決めます。気になる症状(黒い便、吐き気、お腹の張り、貧血を指摘された場合など)があれば、早めに医療機関へ相談してください。

画像を見るときの落とし穴

  • 胃が縮んでいると壁が厚く、粘膜下腫瘍のように見える。胃を水で膨らませたCTや、冠状断で確認する。
  • 外から押す正常構造や病変も隆起に見える。脾臓、膵臓、肝臓、血管、リンパ節がつくる圧迫の可能性を確認する。
  • CTで平滑筋腫らしく見えても、GISTを除外できない。造影の強さだけで決めない。
  • 脂肪の黒さが確認できたら、他の病変にこだわらない。

よくある疑問(Q&A)

Q. 粘膜下腫瘍は、がんですか?
A. 粘膜下腫瘍は壁の中にできた隆起の総称で、脂肪腫や異所性膵、平滑筋腫などの良性のものが含まれます。一方でGISTのように悪性の可能性がある腫瘍もあり、種類の確認が大切です(Jacobson 2023)。

Q. CTを撮れば種類はわかりますか?
A. 脂肪腫のように、CTで脂肪の濃度が確認できれば絞れるものがあります。GIST、平滑筋腫、神経鞘腫は似るため、CTだけで決められないことが多く、EUSや組織診断を組み合わせます(Huh 2019、Deprez 2022)。

Q. 経過観察でよいのは、どんなときですか?
A. ガイドラインでは、診断がはっきりした無症状の平滑筋腫・脂肪腫・異所性膵・神経鞘腫などは、追跡を勧めないとされています。診断がつかない病変は、大きさに応じた間隔で内視鏡の経過観察が提案されています(Deprez 2022)。

Q. 2cmより小さいGISTは、切除したほうがよいですか?
A. ACGのガイドラインは、胃のGISTが2cm未満の場合、経過観察と切除のどちらがよいかを決める根拠が足りないとしています(Jacobson 2023)。ESGEは、組織で診断された20mm未満の胃GISTは、切除を経過観察の代わりに考えてもよいと提案しています(Deprez 2022)。多職種で相談して決めます。

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参考文献

  1. Deprez PH, Moons LMG, O’Toole D, et al. Endoscopic management of subepithelial lesions including neuroendocrine neoplasms: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Guideline. Endoscopy. 2022;54(4):412-429. PubMed
  2. Jacobson BC, Bhatt A, Greer KB, et al. ACG Clinical Guideline: Diagnosis and Management of Gastrointestinal Subepithelial Lesions. Am J Gastroenterol. 2023;118(1):46-58. PubMed
  3. Okten RS, Kacar S, Kucukay F, et al. Gastric subepithelial masses: evaluation of multidetector CT (multiplanar reconstruction and virtual gastroscopy) versus endoscopic ultrasonography. Abdom Imaging. 2012;37(4):519-30. PubMed
  4. Kim JY, Lee JM, Kim KW, et al. Ectopic pancreas: CT findings with emphasis on differentiation from small gastrointestinal stromal tumor and leiomyoma. Radiology. 2009;252(1):92-100. PubMed
  5. Wang Q, Wang L, Qi X, et al. Computed tomography features of gastric leiomyoma versus gastric stromal tumor: a case-control study with propensity score matching. J Int Med Res. 2023;51(5):3000605231171025. PubMed
  6. Wang W, Cao K, Han Y, et al. Computed tomographic characteristics of gastric schwannoma. J Int Med Res. 2019;47(5):1975-1986. PubMed
  7. Chagarlamudi K, Devita R, Barr RG. Gastric Lipoma: A Review of the Literature. Ultrasound Q. 2018;34(3):119-121. PubMed
  8. Huh CW, Jung DH, Kim JS, et al. CT Versus Endoscopic Ultrasound for Differentiating Small (2-5 cm) Gastrointestinal Stromal Tumors From Leiomyomas. AJR Am J Roentgenol. 2019;213(3):586-591. PubMed

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