神経鞘腫の非典型像 悪性(MPNST)との見分け方

神経鞘腫と思っていた腫瘍がPETで強く光っていて、悪性かもしれないと言われました。神経鞘腫でもそんなことがありますか?
あります。良性の神経鞘腫でもFDGが強く集まったり、内部が不均一だったりして、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)と区別しにくいことがあります。数値の目安と限界、場所ごとの落とし穴を整理します。

先に結論:神経鞘腫の「悪性らしさ」は1つの所見では決めない

非典型像 何が紛らわしいか 手がかり
FDG-PET高集積 MPNSTのSUVmaxの目安を超える神経鞘腫がある SUVmaxだけで悪性と決めない。MRI所見と組み合わせる
大きく不均一・内部の非造影域 MPNSTの所見と重なる 周囲浮腫・不整な辺縁・split fat signの有無
flow void(血流の多い神経鞘腫) 傍神経節腫・血管性腫瘍に似る 多血性神経鞘腫というタイプがある
胃の神経鞘腫 周囲リンパ節が見えて悪性腫瘍に見える 均一な造影・壁外性発育・周囲リンパ節・ゆっくり増大
耳下腺内神経鞘腫 多形腺腫など耳下腺腫瘍と区別しにくい 術前診断は難しく、MRIが最も有用

神経鞘腫と悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)

神経鞘腫は末梢神経のシュワン細胞から生じる良性腫瘍で、典型像はターゲットサインやsplit fat signを伴う境界明瞭な腫瘤です。典型像は神経鞘腫と神経線維腫のMRI画像診断、神経鞘腫とは?脊柱管内・ダンベル型神経鞘腫のMRI画像にまとめています。悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)については悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)とは?をご覧ください。

問題は、良性の神経鞘腫がMPNSTの「悪性を示す所見」を持つことがある点です。

FDG-PET:SUVmaxの目安と、その限界

良悪性の目安

病理で確かめた良性末梢神経鞘腫瘍23病変とMPNST 20病変の検討では、SUVmaxはMPNSTで10.1、良性で4.2(平均)でした。SUVmax 4.3未満はすべて良性、8.1を超えるものはすべて悪性で、カットオフ6.1で感度90.0%・特異度78.3%でした。MPNSTでは不均一な集積、周囲の浮腫、嚢胞変性・壊死、不整な辺縁が多く見られました(Broski 2016)。

神経鞘腫でも高集積はめずらしくない

一方、病理で確かめた神経鞘腫95病変の検討では、平均SUVmaxは5.4で、75病変中26病変(35%)がSUVmax 6.1を超え、11病変(15%)が8.1を超えていました。MRIでは53病変中29病変(55%)に内部の非造影域があり、PETとMRIの両方がある40病変のうち28病変(70%)が、不整な辺縁・内部非造影域・周囲浮腫・不均一な集積・SUVmax 8.1超のいずれか1つ以上を持っていました(Dewey 2021)。

つまり、SUVmaxのカットオフは「悪性を拾う」には役立ちますが、神経鞘腫を悪性と誤るおそれがあります。

症例 60歳代男性 PETで集積した良性の神経鞘腫(膝窩)

膝窩の神経鞘腫 FDG-PET/CT 冠状断像
引用:Radiopaedia(FDG PET positive benign peripheral Schwannoma)

左の膝の裏(膝窩)に丸い腫瘤があり、PETで集積しています(矢印)。症例ページでは、悪性黒色腫の経過観察中に見つかりましたが、切除の結果は良性の神経鞘腫だったと記載されています。

膝窩の神経鞘腫 MRI 脂肪抑制T2強調像 矢状断像
引用:Radiopaedia(FDG PET positive benign peripheral Schwannoma)

同じ方のMRIでは、膝の裏に境界のはっきりした大きな腫瘤があり、内部に車輪のスポークのような線状の模様が見えます。症例ページでは、総腓骨神経に接した腫瘤と記載されています。

MRIでMPNSTを疑う所見

研究 MPNSTを示した所見
Wasa 2010(MPNST 41例 vs 神経線維腫 20例) 大きさ、辺縁優位の造影、周囲の浮腫様領域、腫瘍内嚢胞。4つのうち2つ以上で感度61%・特異度90%
Yun 2021(MRIで判断に迷う55病変) ADC平均値が低いこと、split fat signがないこと。組み合わせでC-index 0.90〜0.95

Wasa 2010は神経線維腫との比較であり、神経鞘腫にそのまま当てはまるとは限りません。所見を組み合わせ、疑わしい場合は生検を検討するという考え方が示されています(Wasa 2010)。

flow voidのある神経鞘腫

T2強調像のflow voidは傍神経節腫を思わせる所見ですが、神経鞘腫にも血流の多いタイプがあります。椎骨脳底動脈系から腫瘍濃染を示す多血性前庭神経鞘腫36例の検討では、通常の前庭神経鞘腫に比べて若年で大きく、多数のflow voidを伴う充実性腫瘍でした(Teranishi 2018)。

場所ごとの落とし穴

胃の神経鞘腫

5cm以下の胃神経鞘腫16例とGIST 56例の比較では、神経鞘腫は均一な造影、壁外性または混合性の発育、周囲リンパ節が多く、GISTは内部の低吸収域が多く見られました。腫瘍体積の倍加時間は神経鞘腫で平均1685日、GISTで378日と、神経鞘腫はゆっくり増大していました(Choi 2012)。胃の粘膜下腫瘍に周囲リンパ節が見えても、悪性腫瘍の転移とは限りません。

耳下腺内の顔面神経鞘腫

耳下腺内顔面神経鞘腫70例の検討では、多くは痛みのない耳下腺腫瘤として見つかり、顔面神経麻痺を伴ったのは3例でした。術前の検査の中ではMRIの診断能が最も高かったものの、その割合は37.1%でした(Huang 2025)。術前に神経鞘腫と診断しにくい腫瘍であることを知っておく必要があります。

聴神経鞘腫については聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)とは?、縦隔の神経原性腫瘍は神経原性腫瘍とは?縦隔の神経鞘腫・神経線維腫・神経芽腫で扱っています。

まとめ:読影で確認すること

  • SUVmaxが高くても、神経鞘腫の約3分の1は6.1を超える(Dewey 2021)。PETだけで悪性と書かない。
  • MRIでは周囲の浮腫、不整な辺縁、辺縁優位の造影、腫瘍内嚢胞、split fat signの消失、低いADCを組み合わせて見る(Wasa 2010、Yun 2021、Broski 2016)。
  • flow voidが目立つ腫瘍でも、多血性の神経鞘腫を鑑別に残す(Teranishi 2018)。
  • 胃の粘膜下腫瘍では、均一な造影・壁外性発育・周囲リンパ節を神経鞘腫の手がかりにする(Choi 2012)。

よくある疑問(Q&A)

Q. SUVmaxが8を超えたら悪性と考えてよいですか?

MPNSTを含む検討では8.1超はすべて悪性でしたが(Broski 2016)、神経鞘腫だけを集めた検討では15%が8.1を超えていました(Dewey 2021)。SUVmaxだけで判断せず、MRI所見や経過と組み合わせます。

Q. 神経鞘腫の内部が不均一なのは悪性のサインですか?

神経鞘腫の55%に内部の非造影域があったという報告があり(Dewey 2021)、不均一さだけでは悪性と言えません。周囲浮腫、不整な辺縁、増大の速さなどをあわせて評価します。

Q. 胃の粘膜下腫瘍に周りのリンパ節腫大があれば悪性ですか?

胃神経鞘腫では周囲リンパ節がGISTより多く見られました(Choi 2012)。リンパ節だけで悪性と決めず、治療方針は主治医と相談してください。

参考文献

  1. Broski SM, Johnson GB, Howe BM, et al. Evaluation of (18)F-FDG PET and MRI in differentiating benign and malignant peripheral nerve sheath tumors. Skeletal Radiol. 2016;45(8):1097-105. PubMed
  2. Dewey BJ, Howe BM, Spinner RJ, et al. FDG PET/CT and MRI Features of Pathologically Proven Schwannomas. Clin Nucl Med. 2021;46(4):289-296. PubMed
  3. Wasa J, Nishida Y, Tsukushi S, et al. MRI features in the differentiation of malignant peripheral nerve sheath tumors and neurofibromas. AJR Am J Roentgenol. 2010;194(6):1568-74. PubMed
  4. Yun JS, Lee MH, Lee SM, et al. Peripheral nerve sheath tumor: differentiation of malignant from benign tumors with conventional and diffusion-weighted MRI. Eur Radiol. 2021;31(3):1548-1557. PubMed
  5. Teranishi Y, Kohno M, Sora S, et al. Hypervascular Vestibular Schwannomas: Clinical Characteristics, Angiographical Classification, and Surgical Considerations. Oper Neurosurg. 2018;15(3):251-261. PubMed
  6. Choi JW, Choi D, Kim KM, et al. Small submucosal tumors of the stomach: differentiation of gastric schwannoma from gastrointestinal stromal tumor with CT. Korean J Radiol. 2012;13(4):425-33. PubMed
  7. Huang L, Xu W, Zhu W, et al. Intraparotid Facial Nerve Schwannoma: A Comprehensive Review of 70 Cases at One Single Institution. Oral Dis. 2025;31(8):2487-2495. PubMed

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