
先に結論:perfusionは「血流の量」と「血液が届くまでの時間」を分けて見る。コアとペナンブラの区別が目的
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何を見るか | 脳組織レベルの血流の状態。CBF、CBV、MTTのマップから、梗塞コアとペナンブラを推定する(Konstas 2009) |
| マップの基本 | CBF:血流量、CBV:血液量、MTT:通過する時間、Tmax:造影剤が届くまでの遅れ |
| 典型像 | コアはCBFとCBVが低下、ペナンブラは時間のマップ(MTT・Tmax)が延びるがCBVは保たれやすい |
| 数値の扱い | 閾値は研究・装置・ソフトで異なる。数値だけで決めず、画質と他の画像も合わせて読む |
perfusion画像とは
CT perfusion(CTP)は、造影剤を急速に注入しながら同じ範囲を繰り返し撮影し、脳組織に造影剤が出入りする様子から毛細血管レベルの血流の状態を調べる検査です。単純CTやCT angiographyでは見えない情報を補います。血流のマップから、すでに不可逆的に障害された「梗塞コア」と、強く虚血になっているが助かる可能性のある「ペナンブラ」を推定します(Konstas 2009)。ペナンブラの考え方は脳虚血の代償機構とペナンブラ|misery perfusionとdiffusion-perfusion mismatchで詳しく説明しています。
MRIでも同じ考え方の検査があり、造影剤を使う方法(DSC)と、造影剤を使わず血液自体を目印にする動脈スピンラベリング(ASL)があります。ASLの臨床での使い方は、国際磁気共鳴医学会(ISMRM)の位置づけ文書で、急性期脳梗塞や狭窄・閉塞性の血管病変などの場面ごとに整理されています(Lindner 2023)。
マップの読み方:CBF・CBV・MTT・Tmax
| マップ | 意味 | 見え方のポイント |
|---|---|---|
| CBF(脳血流量) | 一定の脳組織に、一定の時間に流れる血液の量 | 低下した場所が血流不足 |
| CBV(脳血液量) | 一定の脳組織の中にある血液の量 | 血流が減っても血管が広がって保たれる(代償)。コアでは低下 |
| MTT(平均通過時間) | 血液が脳組織を通り抜ける平均の時間 | 血流が減ると延長する |
| Tmax | 造影剤が組織に届くまでの遅れ(時間のマップ) | 主な動脈の閉塞で、遅れて届く領域が延長 |
| TTP(ピークまでの時間) | 造影剤の濃さがピークに達するまでの時間 | MTTやTmaxと同様に、延長した領域を見る |
CBF、CBV、MTTには、MTT=CBV÷CBFの関係があります。血流(CBF)が減ると、血管が広がってCBVが保たれる間は、MTTが延びる形で表れます。血管が広がる余力を使い切ると、CBVも下がります。この違いが、コアとペナンブラを分ける手がかりです。
コアとペナンブラのパターン
| 領域 | CBF | CBV | MTT・Tmax |
|---|---|---|---|
| 梗塞コア | 強く低下 | 低下 | 延長 |
| ペナンブラ(救える可能性のある領域) | 低下 | 保たれる〜上昇 | 延長 |
| 血流がやや低下しただけの領域 | 軽度低下 | 正常〜上昇 | 延長はごく軽度 |
急性期脳梗塞を疑う130例のCTP研究では、動脈の閉塞が続く場合に、梗塞に至る危険のある組織を最もよく表したのは相対MTT(最適な閾値は145%)で、入院時の梗塞コアを最もよく表したのは絶対CBV(最適な閾値は2.0 mL/100 g)でした(Wintermark 2006)。つまり、1つのマップではなく、時間のマップとCBVの組み合わせで読むのが基本です。
症例 70歳代男性 左後大脳動脈(P1)閉塞のCT perfusion

引用:Radiopaedia(Acute P1 occlusion with PCA ischemic penumbra (CT perfusion))
Tmaxのマップです。後頭葉の広い範囲で、時間が延びた領域が暖色(黄〜赤)で表示されています。症例ページでは、左後頭葉で時間のパラメータが延長し、左後大脳動脈領域全体にわたる大きなペナンブラと記載されています。

引用:Radiopaedia(Acute P1 occlusion with PCA ischemic penumbra (CT perfusion))
同じ症例、同じ高さのCBFマップです。後頭葉の一部で血流の低下が青〜紫の領域として見えます。症例ページでは、左後頭葉の中心部でCBVとCBFが低下しており、梗塞コアにあたると記載されています。時間のマップで広く、CBFで狭い。この広さの違いが、助かる可能性のある領域の目安になります。
しきい値は研究ごとに違う
ペナンブラとコアを分ける数値は、1つに決まっているわけではありません。研究ごとの例を挙げます。
| 研究 | 対象・方法 | 示された閾値や結果 |
|---|---|---|
| Wintermark 2006 | CTP、130例。拡散強調像・FLAIRを基準にROC解析 | 相対MTT 145%(危険な組織)、絶対CBV 2.0 mL/100 g(コア) |
| Olivot 2009 | MRIのperfusion。DEFUSE研究(発症3〜6時間)33例 | Tmax 4〜6秒を超える領域が、重度の低灌流組織の推定に適する |
| Lin 2016 | 全脳CTP(320列)、296例。MRIを基準に比較 | 遅れ時間3秒超(ペナンブラ)、遅れ補正CBF 30%未満(コア)の閾値が良好 |
数値が異なるのは、対象、撮像方法、解析ソフト、基準とする画像が違うためです。他施設の数値を自施設のソフトにそのまま当てはめないことが大切です。さらに、撮影範囲が狭いと誤差が出ます。Lin 2016の検討では、撮影範囲を80 mmに減らすと遅れ時間3秒超の虚血体積が過小評価され、40 mm以下ではCBF 30%未満のコア体積が過小評価されました(Lin 2016)。
MR perfusionの見方:拡散強調像との組み合わせ
MRIでは、拡散強調像(DWI)の高信号をコアの目安、perfusionの異常域を虚血の範囲の目安として重ねて読みます。perfusionの異常域がDWIの高信号より広ければ、その差(ミスマッチ)が救える可能性のある領域の候補です。頭部MRIの基本の撮像は頭部MRIの読み方も参照してください。
| DWIとperfusionの関係 | 読み方 |
|---|---|
| perfusionの異常域がDWIより広い | ミスマッチあり。ペナンブラが残っている可能性 |
| perfusionとDWIの範囲がほぼ同じ | ミスマッチなし。救える領域は少ない可能性 |
| DWIの異常があるのにperfusionは正常 | 血流が再開した可能性。閉塞血管の状態も確認 |
perfusionで治療を選んだ試験
治療を選ぶうえでの使われ方は、無作為化試験から見ることができます。以下は試験の対象条件であり、個々の患者さんの治療方針は脳卒中の専門医が決めます。表のmRSは日常生活の自立度を0(症状なし)〜6(死亡)で表す尺度、ASPECTSは単純CTで早期の虚血変化を10点で採点するスコアで、点数が低いほど梗塞が広いことを示します。
| 試験 | perfusionを使った選び方 | 結果 |
|---|---|---|
| DEFUSE 3(Albers 2018) | 最終健常確認から6〜16時間。中大脳動脈または内頸動脈の近位部閉塞、初期の梗塞体積が70 mL未満、perfusionで虚血組織の体積と梗塞体積の比が1.8以上 | 機能的自立(mRS 0〜2)は血栓回収群45%、内科治療群17% |
| EXTEND(Ma 2019) | 発症4.5〜9時間または起床時発症。自動解析のperfusionで、低灌流だが救える領域がある | 症状がないか軽微(mRS 0〜1)は、アルテプラーゼ群35.4%、プラセボ群29.5% |
| SELECT2(Sarraj 2023) | 24時間以内。ASPECTS 3〜5、またはCT perfusionか拡散強調像でコア体積50 mL以上の大きな梗塞 | 機能的自立は血栓回収群20%、内科治療群7% |
これらはいずれも、perfusionを含む画像で対象を選んだ試験です。DEFUSE 3は症状が出てから6〜16時間でも、救える組織が残る患者さんで血栓回収の効果を示しました(Albers 2018)。SELECT2は、コアが大きくても血栓回収で機能的自立が増えることを示しました(Sarraj 2023)。ただし、これらの条件に当てはまるかどうかと、実際にどの治療を選ぶかは別の問題です。症状、血管の状態、全身状態を合わせて専門医が判断します。
読影の順番とピットフォール
- 画質を確認する:体動、造影剤の注入が不十分、血管の選び方の誤りがあると、マップ全体が不正確になります。
- 左右を比べる:マップは左右差を見ます。両側性の変化や、全体の色合いが合わないときは画質を疑います。
- 時間のマップとCBVの組み合わせで読む:MTT・Tmaxが延び、CBVが保たれればペナンブラ、CBVも低下すればコアを考えます。
- 単純CT・CT angiography・拡散強調像と合わせる:閉塞血管と虚血の範囲が一致するかを確認します。
- 撮影範囲と解析ソフトを確認する:範囲が狭いとコアや虚血の体積を過小評価します(Lin 2016)。ソフトごとの閾値の違いも意識します。
脳血管障害には、脳梗塞以外にも血管攣縮などperfusionが使われる場面があります(Konstas 2009)。
突然の顔のゆがみ、手足の力の入りにくさ、言葉の出にくさなどがあるときは、すぐに救急要請や医療機関の受診をしてください。
よくある疑問(Q&A)
Q. CT perfusionとMR perfusionのどちらがよいですか?
A. どちらも梗塞コアとペナンブラの評価に使われます。MRIにはASLのように造影剤を使わない方法もあります(Lindner 2023)。実際には、施設の設備と患者さんの状態で選ばれます。
Q. Tmaxの値が大きければ、治療が必要ですか?
A. 数値だけで決まるものではありません。Tmaxは、4〜6秒を超える領域が重度の低灌流組織の推定に適するとされた研究(Olivot 2009)があり、遅れ時間3秒超を用いた研究もある(Lin 2016)など、基準は研究や解析ソフトで異なります。治療の判断は専門医が行います。
Q. ペナンブラがあれば、いつも助かるのですか?
A. いいえ。ペナンブラは「助かる可能性のある領域」で、血流が早く戻らなければコアに変わります。時間とともに変化します。
Q. 造影剤の副作用が心配です。
A. CT perfusionでは造影剤を使います。アレルギーや腎臓の病気などがある場合は、主治医と検査施設の指示に従ってください。
あわせて読みたい:皮質層状壊死(cortical laminar necrosis)とは、未破裂脳動脈瘤が見つかったら
あわせて読みたい:脳血管造影(DSA)の見方
参考文献
- Konstas AA, Goldmakher GV, Lee TY, et al. Theoretic basis and technical implementations of CT perfusion in acute ischemic stroke, part 1: Theoretic basis. AJNR Am J Neuroradiol. 2009;30(4):662-8. PubMed
- Wintermark M, Flanders AE, Velthuis B, et al. Perfusion-CT assessment of infarct core and penumbra: receiver operating characteristic curve analysis in 130 patients suspected of acute hemispheric stroke. Stroke. 2006;37(4):979-85. PubMed
- Lin L, Bivard A, Krishnamurthy V, et al. Whole-Brain CT Perfusion to Quantify Acute Ischemic Penumbra and Core. Radiology. 2016;279(3):876-87. PubMed
- Olivot JM, Mlynash M, Thijs VN, et al. Optimal Tmax threshold for predicting penumbral tissue in acute stroke. Stroke. 2009;40(2):469-75. PubMed
- Albers GW, Marks MP, Kemp S, et al. Thrombectomy for Stroke at 6 to 16 Hours with Selection by Perfusion Imaging. N Engl J Med. 2018;378(8):708-718. PubMed
- Ma H, Campbell BCV, Parsons MW, et al. Thrombolysis Guided by Perfusion Imaging up to 9 Hours after Onset of Stroke. N Engl J Med. 2019;380(19):1795-1803. PubMed
- Sarraj A, Hassan AE, Abraham MG, et al. Trial of Endovascular Thrombectomy for Large Ischemic Strokes. N Engl J Med. 2023;388(14):1259-1271. PubMed
- Lindner T, Bolar DS, Achten E, et al. Current state and guidance on arterial spin labeling perfusion MRI in clinical neuroimaging. Magn Reson Med. 2023;89(5):2024-2047. PubMed
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