
先に結論:妊娠中・授乳中のMRI
| 場面 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 妊娠中・造影剤なしのMRI | 害が増えたという根拠はなく、超音波(エコー)とならんで妊娠中に選ばれる検査 |
| 妊娠中・ガドリニウム造影 | 赤ちゃんに届くため原則避ける。どうしても必要なときだけ |
| 授乳中の造影MRI | 母乳に出る量はごくわずか。授乳を中断しなくてよいとする指針がある |
| 受けるときにすること | 妊娠(の可能性)・週数を忘れずに伝え、主治医と必要性を相談 |

MRIは放射線を使わない検査
MRIは、強い磁石と電波で体の中を写す検査で、レントゲンやCTのような放射線(X線)を使いません。そのため「被ばく」はありません。CTやレントゲンの被ばくが妊娠中にどう影響するかは「レントゲン・CTの被ばく量は大丈夫?妊娠中・授乳中の影響」や「妊婦のCT検査による胎児への影響はある?」でくわしく説明しています。
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)の指針では、超音波とMRIは(胎児への)リスクと関連せず、妊娠中の画像検査として第一に選ばれる方法とされています。ただし、なんでも気軽に撮ってよいという意味ではなく、「知りたいことに答えが出る」「本人の役に立つ」と見込まれるときに慎重に使うべき、とも書かれています(ACOG 2017)。
妊娠中の造影なしMRI:大規模研究でわかったこと
カナダ・オンタリオ州で2003〜2015年に生まれた約142万件の出産を調べた研究があります(Ray 2016)。
- 妊娠初期(最初の3か月)にMRIを受けた1737人と、受けなかった人をくらべました
- 死産・生後28日以内の死亡は、統計的にはっきりした差はありませんでした
- 先天異常(生まれつきの病気)、小児がん、聴力・視力の障害(4歳まで)も、増えていませんでした
研究チームは「妊娠初期のMRIは、受けなかった場合とくらべて胎児や幼児期の害の増加と関連しなかった」とまとめています。一方で、とてもまれな影響まで見つけられる研究ではなかった、とも書いています(Ray 2016)。
ガドリニウム造影剤は、なぜ原則避けるの?
MRIの造影剤(ガドリニウム)は、胎盤を通って赤ちゃんに届きます。上と同じ研究では、妊娠中に造影MRIを受けた397人も調べています(Ray 2016)。
| くらべた結果(造影MRIあり vs MRIなし) | 結果 |
|---|---|
| NSFに似た皮膚・結合組織の病気 | はっきりした差なし |
| リウマチ・炎症・皮膚の病気など広い範囲 | 多かった(調整後ハザード比1.36) |
| 死産・新生児死亡 | 多かった(調整後相対リスク3.70) |
また、ガドリニウムは腎臓の働きが正常な大人でも、くり返し使うと脳にごく微量残ることがわかっていて、その健康への影響はまだわかっていません(McDonald 2015)。
この研究だけで「造影剤が原因」とは言い切れません(造影MRIが必要になるような、もともとの病気の重さが影響している可能性もあります)。それでも、こうした結果があるため、妊娠中のガドリニウム造影は「本当に必要で、ほかの方法では代わりにならないとき」に限るのが一般的な考え方です。造影剤の種類や副作用は「MRI造影剤の種類一覧と副作用」にまとめています。
授乳中に造影MRIを受けるとき
授乳中の女性20人にガドリニウム造影剤を注射して、母乳に出てくる量を測った研究があります。24時間で母乳に出た量は、注射した量の0.04%未満でした。さらに、赤ちゃんの腸から吸収される量はもっと少ないと考えられます(Kubik-Huch 2000)。
こうした結果から、ACOGの指針は「ガドリニウム投与のあと授乳を中断すべきではない」としています(ACOG 2017)。ただし、施設によっては念のため一定時間の授乳中止をすすめることもあります。心配なら、検査前に搾乳しておく方法もあるので、検査を受ける施設に相談してください。CTのヨード造影剤と授乳については「CT造影剤(ヨード)を授乳婦に使う場合、乳児への影響は?」をどうぞ。
時期の考え方
- 急ぐ病気が疑われるとき(虫垂炎、脳の病気など):お母さんの病気の診断が遅れることのほうが、母子にとって危険になりえます。必要なら週数にかかわらず、造影なしMRIが選ばれます
- 急がない検査(人間ドック、経過観察など):出産後まで待てるかどうか、主治医と相談するのが一般的です
- 妊娠に気づかずにMRIを受けた:造影なしなら、上の研究で害の増加は見られていません。造影MRIだった場合も、あわてずに産科の主治医に伝えて相談しましょう
いずれの場合も、検査の前に「妊娠している・その可能性がある」こと、週数を忘れずに伝えてください。体内の金属の確認など、ふつうのMRIの注意は 「MRIと金属」の記事、検査の流れは 「MRI検査の流れ」の記事 にまとめています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 妊娠初期のMRIは避けたほうがいいですか?
A. 大規模研究では妊娠初期のMRIで害の増加は見られていません(Ray 2016)。そのうえで、急がない検査は時期を主治医と相談する、という考え方が一般的です。
Q. CTとMRI、妊娠中はどちらがいいですか?
A. 調べたい病気によります。ACOGの指針では超音波とMRIが第一の選択とされていますが、CTが必要な場面でも、多くの検査の被ばくは胎児に害が出る量よりずっと少ないとされ、必要なら控えるべきではないとされています(ACOG 2017)。くわしくは「CTとMRIの違い」もどうぞ。
Q. 閉所が苦手で、妊娠中なので鎮静剤も心配です。
A. 鎮静剤を使うかどうかは産科の主治医と相談になります。薬を使わずに乗り切る工夫は「MRIが怖い・閉所恐怖症でも受けられる?」にまとめています。
まとめ
- MRIは放射線を使わない。造影なしMRIは妊娠中でも選ばれる検査
- 妊娠初期のMRIでも、大規模研究で赤ちゃんへの害の増加は見られていない
- ガドリニウム造影剤は、妊娠中は原則避け、本当に必要なときだけ
- 授乳中の造影剤は母乳に出る量がごくわずかで、授乳を中断しなくてよいとする指針がある
- 妊娠・授乳中であることを忘れずに伝え、検査の必要性は主治医と相談を
関連:「レントゲン・CTの被ばく量と妊娠・授乳」・「妊婦のCT検査による胎児への影響」・「CT造影剤(ヨード)を妊婦に使う場合」
▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧
あわせて読みたい:妊娠中の腹痛・虫垂炎の画像検査
参考文献
- Ray JG, Vermeulen MJ, Bharatha A, et al. Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes. JAMA. 2016;316(9):952-961. PubMed
- Committee Opinion No. 723: Guidelines for Diagnostic Imaging During Pregnancy and Lactation. Obstet Gynecol. 2017;130(4):e210-e216. PubMed
- Kubik-Huch RA, Gottstein-Aalame NM, Frenzel T, et al. Gadopentetate dimeglumine excretion into human breast milk during lactation. Radiology. 2000;216(2):555-558. PubMed
- McDonald RJ, McDonald JS, Kallmes DF, et al. Intracranial Gadolinium Deposition after Contrast-enhanced MR Imaging. Radiology. 2015;275(3):772-782. PubMed
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