MRIと金属は大丈夫? ペースメーカー・人工関節・歯の詰め物の目安

体に金属が入っているんですが、MRIを受けても大丈夫ですか?ペースメーカーや人工関節、歯の詰め物も心配です。
金属が入っていても、受けられる人はたくさんいます。大事なのは「何が・いつ・どこに入っているか」を忘れずに申告すること。最後に受けられるかを決めるのは検査する施設です。

先に結論:MRIと体内の金属

  • 人工関節・骨折のプレートやねじ・歯の詰め物:多くは受けられるが、近くの画像がゆがむことがある
  • ペースメーカー・植込み型除細動器:MRI対応(条件付き)機種なら、決められた手順で受けられることがある。手帳(カード)を持参
  • 脳動脈瘤クリップ・人工内耳など:種類によって可否が分かれる。製品名の確認が必要
  • 持ち込む金属(ヘアピン・カイロ・鍵・ボンベなど):磁石に引き寄せられて飛ぶ危険があるので、すべて外す
  • 迷ったら忘れずに申告して、施設の判断に従うのが基本です


MRIと体内の金属 受けられるかの目安の表

なぜMRIで金属が問題になるの?

MRIは、とても強い磁石と電波を使って体の中を写す検査です(CTとの違いは「CTとMRIの違い」で説明しています)。この強い磁石と電波が、金属に対して次のようなことを起こしうるとされています(Stecco 2007)。

  • 引き寄せ(吸引):鉄などの磁石につく金属が、磁石に向かって飛んでいく。酸素ボンベ、点滴スタンド、ハサミ、体に入った金属片などが報告されています
  • ねじれ:体の中の金属が回ろうとする力を受ける。脳の血管のクリップや人工内耳などで問題になります
  • 発熱・やけど:電気を通す金属やコード、鉄を含むタトゥーのインクなどが熱を持つ
  • 画像のゆがみ(アーチファクト):金属の近くが黒く抜けたりゆがんだりして、見たいところが見えにくくなる
  • 機器の誤作動:ペースメーカーなど電子機器の動きに影響する

このため、MRIの前には問診票や声かけで金属の確認があります。アメリカ放射線学会(ACR)は2002年からMRIの安全指針を出しており、2024年に「ACR Manual on MR Safety」として一つの文書にまとめ直されました(Pedrosa 2025)。日本の施設でも、同じような考え方で確認が行われています。

体の中の金属別・MRIの可否の目安

次の表は、あくまで一般的な目安です。同じ種類でも製品や入れた時期によって扱いが変わるため、最終的には検査する施設が判断します。

体内のもの 受けられる?(目安) 確認されること
ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD) MRI対応(条件付き)機種なら条件つきで可。非対応機種は原則慎重 機種名・手帳。検査前後に機械の設定変更とチェック
人工関節・骨折のプレート・ねじ 多くは可 場所。近くの画像はゆがみやすい
心臓や血管のステント 多くは可 入れた時期・製品名
脳動脈瘤クリップ 製品による 製品名・材質(手術した病院に確認)
人工内耳・神経刺激装置など 製品による(条件付きのものあり) 製品名・カード
歯の詰め物・かぶせ物・インプラント 多くは可 頭や首の検査では画像がゆがむことがある。磁石式の入れ歯は外す・申告
目や体に入った金属片(けがや職業歴) 要注意 金属を削る仕事・けがの経験。事前にレントゲンで確認することも
タトゥー・アートメイク 多くは可 場所・大きさ。熱く感じたらすぐ知らせる

ほかに、MRIが受けられない・慎重になる条件は「MRIの絶対禁忌・相対禁忌(MRIが受けられない人)まとめ」で医療者向けに整理しています。タトゥーについては「タトゥー(刺青)があってもレントゲン・CTは受けられる?MRIの注意点」をどうぞ。

ペースメーカーがあってもMRIは受けられる?

以前は、ペースメーカーや植込み型除細動器があるとMRIは受けられないとされてきました。いまは、MRIを受けられるように作られた「条件付きMRI対応」の機種があり、決められた磁石の強さや撮り方を守り、検査の前後に機械の設定を切り替えることで検査ができます。

また、MRI対応ではない機種でも、決められた手順で設定を変えたうえで1.5テスラのMRI(胸部以外)を行った登録研究では、ペースメーカー1000件・除細動器500件で、死亡や電線(リード)の故障は起きませんでした。ただし、手順どおりに設定されていなかった除細動器1台が検査後に交換となっています(Russo 2017)。つまり「手順を守ることが前提」で、どこでも誰でも受けられるわけではありません。

「MR条件付き」とは?型番の確認が必要な理由

体内の機器には、「MR Safe(MRI対応で安全)」「MR Conditional(条件付きMRI対応)」「MR Unsafe(MRIは不可)」という区別があります。ペースメーカーなどの心臓の機器では、条件付きの機種は決められたプロトコール(手順)を守って撮影することが前提です(Bhuva 2024)。条件は機種ごとに異なり、たとえば磁石の強さ(1.5テスラ・3テスラ)、撮影する範囲、電波の出力の上限などが定められています。同じメーカーでも、本体とリード(電線)の組み合わせで「条件付き」かどうかが変わるため、「ペースメーカーが入っている」だけでは判断できず、本体とリードの型番、入れた時期がわかる手帳(カード)が必要です。

一方で、MRI対応の表示がない機種や、条件を満たさない場合でも、臨床上の必要性が高ければ、決められた手順のもとで撮影を検討できるという安全データが増えてきた、と英国の合意文書に書かれています(Bhuva 2024)。ただし、これは専門の設備と手順がある施設での話で、個人が自己判断で受けられるわけではありません。

自分のペースメーカーがMRI対応かどうか、わかりません……。
ペースメーカー手帳やカードに機種が書いてあります。MRIの予約のときに見せて、かかっている循環器の先生にも相談してくださいね。対応機種でも、循環器の先生と放射線科の連携が必要です。

人工関節・ステント・クリップ・歯の場合

人工関節や骨折の手術で入れた金属は、体の骨にしっかり固定されていて、多くはMRIを受けられます。ただ、金属の周りは画像が黒く抜けたりゆがんだりするので、その近くを調べたいときは、撮り方を工夫したりCTなど別の検査を選んだりします。

ステント(血管を広げておく網の筒)も、多くはMRIを受けられるものです。入れた時期や製品によって扱いが異なるため、手術や治療を受けた病院の情報を伝えましょう。

脳動脈瘤のクリップは、古い時代の製品の一部で、磁石にねじれる力がかかる問題があるとされてきました(Stecco 2007)。製品名がわかれば判断できることが多いので、手術を受けた病院に確認してもらうのが近道です。

歯の詰め物・かぶせ物・インプラントは、多くの場合そのまま検査できます。ただし頭や顔、首のMRIでは、口の周りの画像がゆがむことがあります。磁石で付ける入れ歯(磁性アタッチメント)は、入れ歯側は外し、歯ぐき側に磁石の受け皿があることを申告してください。

歯の材料や増毛パウダーによる画像のゆがみ

  • 歯の材料による画像のゆがみ(アーチファクト)は、材料によって大きさが違います。ご遺体のあごに歯科インプラントを入れて比べた研究では、CTでのゆがみの割合はジルコニア製で39〜50%、チタン・ジルコニウム製で5〜16%と、ジルコニア製の方が大きく出ました(Matta 2023)。歯科用のコーンビームCTで25種類の歯科材料を比べた研究では、ニッケルクロム合金やアマルガム、根の治療に使う充填材でゆがみが多く、グラスファイバーの土台やグラスアイオノマーセメントでは少なめでした(Valizadeh 2024)。
  • 髪に振りかける粉状の増毛剤もMRIに影響することがあります。13種類を調べた研究では、ファンデーションタイプは磁石に強く引かれ(振れ角90度)、画像に大きなゆがみが出ましたが、ヘアシックナータイプではみられませんでした。ファンデーションタイプは手持ちの強磁性体検知器でしか見つけられませんでした(Sato 2023)。金属成分を含む粉状のヘアカラーで、頭のMRIに信号の乱れが出た例も報告されています(Chenji 2017)。
  • 頭や顔のMRIを受ける日は、粉状の増毛剤やヘアカラーを使っているかも申告しておくと安心です。

検査中に起こること:騒音・体温の上昇(SAR)・やけど

金属がなくても、MRIには注意したい点があります。ここでは、検査中に体感する3つを整理します。

大きな音(騒音)と耳栓・ヘッドホン

MRIは検査中に、「ガンガン」「ブーン」という大きな音が出ます。これは、画像をつくるために磁場を切り替える装置が振動する音です。装置の音は大きいため、耳栓やヘッドホンなどの聴覚保護具を使って、聞こえへの影響を防ぐのが基本です。保護具の効果は、きちんと正しく装着できているかに左右されるため、正しく付けて、付けたあとに確認することが大切だとされています(Steckner 2025)。装着がゆるいと保護が不十分になります。音が気になるときや、耳に違和感があるときは、遠慮せず検査の前に伝えましょう。

SAR(電波による体のあたたまり)と体温

MRIは磁石のほかに電波(高周波)を体に当てて画像をつくります。この電波のエネルギーの一部は体に吸収されて熱になります。SAR(比吸収率)は、体が吸収する電波のエネルギーの目安で、検査は設定されたSARの範囲内で行われます。そのため、ふつうは体がぽかぽかする程度ですが、暑がり・発熱中・妊娠中の方、体温調節が苦手な方は、事前に申告してください。検査中に暑く感じたら、ブザーですぐに伝えます。

やけど(熱傷)を防ぐには

MRIの機器に関する有害事象の報告を調べた米国FDAの10年間のまとめでは、熱による事象が重い傷害として最も多く(59%)、次いで体のぶつかり・転倒などの機械的な事象(11%)、金属が飛ぶ事象(9%)、音による事象(6%)でした(Delfino 2019)。やけどを防ぐポイントとして、系統的レビューでは次の3つがあげられています(Baker 2024)。

  • 電気を通すものを外す:金属のアクセサリーや、金属繊維の衣類、貼り薬など
  • 体と体、体と機器が触れて輪(ループ)をつくらないようにする:脚や腕を組まない、両手を合わせない、太もも同士・腕と体が皮膚で接触しないように、パッドなどで絶縁する
  • 検査中も声をかける:熱さや違和感があれば、がまんせずにすぐに知らせる

このレビューでは、これらを守れば皮膚のやけどの97%は防げると推定されています(Baker 2024)。技師さんに指示された姿勢を保ち、熱い・ちくちくすると感じたらすぐにブザーで知らせることが、いちばんの予防です。

いちばん怖いのは「持ち込み」の事故

MRIの磁石は、検査をしていないときもいつも磁力が出ています。鉄を含むものを検査室に持ち込むと、強い力で引き寄せられて飛び、人や機械に当たる事故が起こりえます(Kanal 1990, Stecco 2007)。次のものは検査室に入る前に忘れずに外しましょう。

  • ヘアピン・アクセサリー・腕時計・メガネ・補聴器
  • 鍵・小銭・ライター・使い捨てカイロ
  • スマートフォン・キャッシュカード(磁気で壊れることがある)
  • 金属のついた下着や服(服装は「レントゲン・CTの服装」も参考に。MRIでは検査着に着替えることが多いです)
  • 湿布・貼り薬(金属を含むものがある)

付き添いの家族も同じです。車いすやストレッチャーも、MRI専用のものに乗り換えます。

申告のときに伝えること

  • 体に入っているもの(ペースメーカー、関節、ステント、クリップ、人工内耳など)と、入れた時期・病院・製品名
  • 手帳やカードがあれば持参
  • 金属を削る仕事や、目に金属片が入ったけがの経験
  • タトゥー・アートメイク・貼り薬

検査中に熱い・痛い・気分が悪いと感じたら、すぐにブザーで知らせてください。MRIそのものが怖い方は「MRIが怖い・閉所恐怖症でも受けられる?」もどうぞ。

よくある疑問(Q&A)

Q. 金属が入っていると言うと、検査を断られますか?
A. 多くの場合は確認のうえで受けられます。受けられない場合も、CTなど別の検査で代わりになることがあります。黙って受けるのが一番危険です。

Q. 何十年も前の手術で、何が入っているかわかりません。
A. 手術した病院に問い合わせる、レントゲンで金属の形を確認する、などの方法があります。わからないことも含めて、そのまま伝えてください。

Q. CTやレントゲンなら金属があっても大丈夫?
A. CTやレントゲンは磁石を使わないので、体内の金属で危険が生じることはふつうありません(金属の周りの画像が見えにくくなることはあります)。

Q. MRIの音がうるさいと聞きました。耳は大丈夫ですか?
A. 検査中は大きな音が出るため、耳栓やヘッドホンで耳を守ります。保護具は正しく付けないと効果が下がるので、技師さんの説明どおりに装着してください(Steckner 2025)。

Q. 検査中に体が熱く感じました。すぐ伝えたほうがいいですか?
A. はい、すぐにブザーで知らせてください。MRIの電波で体があたたまることがあり、また、皮膚が触れ合う部分や金属が近くにあると、一部だけ熱くなることがあります(Baker 2024)。

まとめ

  • 体に金属があっても、MRIを受けられる人は多い
  • ペースメーカーは「条件付きMRI対応」機種なら、決められた手順で受けられることがある
  • クリップ・人工内耳などは製品名で判断が分かれる
  • 持ち込みの金属は飛ぶ危険があるので、すべて外す
  • 検査中の騒音は耳栓・ヘッドホンで防ぎ、熱さや違和感はすぐにブザーで知らせる
  • 忘れずに申告し、最終的な判断は検査する施設に任せる。不安なことは主治医に相談を

関連:「CTとMRIの違い」・「MRIが怖い・閉所恐怖症」・「タトゥーとMRI」

▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧

参考文献

  1. Pedrosa I, Altman DA, Dillman JR, et al. American College of Radiology Manual on MR Safety: 2024 Update and Revisions. Radiology. 2025;315(1):e241405. PubMed
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  3. Russo RJ, Costa HS, Silva PD, et al. Assessing the Risks Associated with MRI in Patients with a Pacemaker or Defibrillator. N Engl J Med. 2017;376(8):755-764. PubMed
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  5. Kanal E, Shellock FG, Talagala L. Safety considerations in MR imaging. Radiology. 1990;176(3):593-606. PubMed
  6. Matta RE, Knapp Giacaman S, Wiesmueller M, et al. Quantitative analysis of zirconia and titanium implant artefacts in three-dimensional virtual models of multi-slice CT and cone beam CT: does scan protocol matter?. Dentomaxillofac Radiol. 2023;52(8):20230275. PubMed
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