
先に結論:PMDは胎盤腫大と多嚢胞性の胎盤で胞状奇胎に似るが、栄養膜の増殖はなく、胎児の核型は多くが正常。母体血清AFPの上昇とhCGがあまり高くないことが手がかり。胎児発育不全や胎児死亡が多く、約2割でBeckwith-Wiedemann症候群を伴う
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 胎盤腫大、絨毛膜板の血管の瘤状拡張と血栓、ブドウの房のような水腫状の絨毛を特徴とする胎盤の病気(Soejima 2022) |
| エコー・MRI | 厚い胎盤の中に多数の嚢胞。カラードプラで嚢胞の中に血流が見える「ステンドグラス」状の所見(Colpaert 2019) |
| 胞状奇胎との違い | 栄養膜の増殖がない。胎児の核型は正常が多く、女児が多い。hCGは正常〜軽度上昇、AFPは上昇しやすい(Colpaert 2019、Tang 2023) |
| 胎児・母体への影響 | 日本の49例で胎児発育不全72.3%、胎児死亡17.0%(Kodera 2021) |
| BWSとの関連 | PMDの胎児の約20%がBWSで、逆もまた同様(Soejima 2022) |
胎盤間葉性異形成(PMD)とは
胎盤間葉性異形成(placental mesenchymal dysplasia、PMD)は、胎盤が大きくなり(胎盤腫大)、胎児面の絨毛膜板の血管が瘤のように拡張して血栓を伴い、ブドウの房のような大きな水腫状の絨毛ができる病気です(Soejima 2022)。見た目が胞状奇胎に似るため、部分胞状奇胎や、全胞状奇胎と正常胎児の双胎と誤られやすいことが知られています(Soejima 2022)。
病理での最も大きな違いは、胞状奇胎に見られる栄養膜(トロホブラスト)の増殖がないことです(Colpaert 2019)。PMDでは、水腫状の幹絨毛と拡張した血管が主体で、周囲には正常の絨毛が残ります。多くの例で、父由来の染色体だけを持つ細胞と両親由来の細胞が混ざるモザイク(androgenetic/biparental mosaicism)が見つかっています(Soejima 2022)。
頻度は低く、生まれる前に診断されないことも多い病気です。7つの高次施設で病理のデータベースから拾い上げた22例の検討では、PMDは出生前に十分に診断されていなかったと述べられています(Guenot 2019)。
エコー所見:妊娠の時期で見え方が変わる
PMDの基本の像は、厚くなった胎盤の中に多数の無エコーの嚢胞が並ぶ多嚢胞性の胎盤で、「スイスチーズ」「虫食い」のようと表現されます。カラードプラで嚢胞の中にいろいろな程度の血流が見えることがあり、「ステンドグラス」状の所見と呼ばれます(Colpaert 2019)。
15例をまとめた検討では、妊娠の時期によって次のように見え方が変わりました(Wei 2024)。
| 時期 | エコーの見え方(Wei 2024) |
|---|---|
| 妊娠初期 | 胎盤の実質に、ごく小さな無エコーの嚢胞域が見える |
| 妊娠中期 | 胎盤がびまん性に腫大・肥厚し、嚢胞域が周囲の正常の胎盤とはっきり分かれて見える |
| 妊娠後期 | 嚢胞域はしだいに小さくなる |
| 血管の所見 | 臍帯付着部付近の血管に瘤のような病変があり、ときに血管内の血栓を伴う。臍帯静脈の蛇行・拡張も見られる |
嚢胞の部分は胎盤の一部に限られることも多く、その位置と広がりは胎児の発育に関わる要素とされています(Wei 2024)。妊娠後期に嚢胞が目立たなくなる経過は、後半で初めて胎盤を見たときに見逃しやすい理由の一つです。
症例 30歳代女性 胎盤間葉性異形成のエコー

引用:Li T, Zhang W, Wang X, et al. Placental mesenchymal dysplasia: A rare case report and literature review. Medicine (Baltimore) 2025;104(23):e42663(Figure 1)(CC BY 4.0)
(A)妊娠7週で胎嚢の形が不整でした。(B、C)妊娠23週では胎盤が厚く、広い範囲に低エコーの嚢胞域があり(赤矢印)「スイスチーズ」「虫食い」状に見えます。嚢胞の中に血流が見える「ステンドグラス」状の所見と、臍帯付着部の絨毛膜板の血管の拡張(青矢印)があります。(D、E)妊娠28週では胎盤がさらに厚くなり、臍帯付着部の血管の拡張がブドウの房のように目立ちます。(F)妊娠32週2日では羊水の減少と臍帯血流の異常が見られました。
MRI所見
MRIは、エコーで胎盤の広がりや胎児との関係がつかみにくいとき、または胞状奇胎との区別に迷うときに追加されます。T2強調像では、胎盤の中に水を含む嚢胞が高信号として多数見え、病変の範囲や、正常の胎盤が残っている部分、臍帯付着部の血管の拡張を全体として把握できます(Li 2025)。妊娠中のMRIの安全性や造影剤の考え方は妊娠中のMRIは大丈夫?にまとめています。
全胞状奇胎と正常胎児の双胎との比較では、嚢胞の部分と胎盤との間にはっきりした境界面があることが、双胎の胞状奇胎を支持する所見とされました。PMDでは、嚢胞の部分と正常の胎盤の間にはっきりした面がありません(McNally 2021)。
症例 30歳代女性 胎盤間葉性異形成のMRI(妊娠32週)

引用:Li T, Zhang W, Wang X, et al. Placental mesenchymal dysplasia: A rare case report and literature review. Medicine (Baltimore) 2025;104(23):e42663(Figure 2)(CC BY 4.0)
(A)T2強調矢状断像、(B)T2強調横断像です。胎盤の実質の中に、多数の嚢胞状の部分(赤矢印)があり、胎児側の臍帯付着部の付け根には血管の瘤状の病変(青矢印)が見えます。この例は妊娠中に胎児発育不全となり、32週で帝王切開により出生し、母子ともに産後の経過は良好でした。
部分胞状奇胎・全胞状奇胎との違い
PMDを胞状奇胎と誤ると、正常な胎児を含む妊娠が中断される可能性があります。逆に、胞状奇胎をPMDと誤ると、続発する絨毛性腫瘍の管理が遅れます。区別には、画像のほかに、胎児の形態、核型、血液の値、病理を合わせて見ます。胞状奇胎そのものの画像は胞状奇胎のエコー・MRI所見で解説しています。
| 項目 | PMD | 部分胞状奇胎 | 全胞状奇胎と正常胎児の双胎 |
|---|---|---|---|
| 胎児の核型 | 多くは正常(Colpaert 2019) | 三倍体が典型 | 胎児は正常の核型 |
| 胎児の性別 | 女児が多い(Kodera 2021では85.1%) | 偏りの特徴なし | 偏りの特徴なし |
| hCG | 正常〜軽度上昇(Colpaert 2019)。一過性の上昇は17.8%(Kodera 2021) | 上昇することが多い | 著しい高値。報告5例は全例20万IU/L超(McNally 2021) |
| 母体血清AFP | 上昇しやすい。測定18例中15例(83.3%)で上昇(Kodera 2021) | ― | ― |
| 画像の手がかり | 嚢胞と正常の胎盤の間に明瞭な面がない。ステンドグラス状の血流 | 胎盤の嚢胞性変化と胎児の異常 | 嚢胞の部分と正常の胎盤の間に明瞭な面がある(McNally 2021) |
| 病理 | 栄養膜の増殖なし(Colpaert 2019) | 栄養膜の増殖あり | 栄養膜の増殖あり |
表の胞状奇胎の欄の核型と病理は、教科書的な定義です。日本の49例の検討は、母体血清AFPが高くhCGが正常であることがPMDを示す、とまとめています(Kodera 2021)。別の報告でも、ステンドグラス状の所見、hCGが正常、AFPの上昇、女児であることが、PMDを胞状奇胎と区別する特徴として挙げられています(Tang 2023)。誤って胞状奇胎とされ、妊娠を続けて健康な児が生まれた例もあります(Tang 2023)。部分胞状奇胎を除外するために、遺伝学的検査を相談することが勧められています(Guenot 2019)。
胎児・母体への影響
PMDは、母体と胎児の両方にとってリスクの高い状態です。日本の多施設の49例(2000〜2018年)では、妊娠を続けた47例の85.1%に何らかの有害な経過があり、胎児発育不全72.3%、切迫早産29.8%、胎児死亡17.0%、妊娠高血圧症候群12.8%でした。死産は8例、新生児の46.2%に合併症がありました(Kodera 2021)。7施設の22例でも、胎児発育不全50%、胎児死亡18%、母体の妊娠高血圧・妊娠高血圧腎症27%で、経過が正常だったのは3例(14%)だけでした(Guenot 2019)。生まれた14人のうち5人は生後61日以内に亡くなり、5人に一過性の血小板減少がありました(Guenot 2019)。
胎児側の合併症として、血液の異常、BWS、肝の腫瘍(肝間葉性過誤腫など)が挙げられ、母体側では妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、HELLP症候群、子癇が報告されています(Colpaert 2019)。そのため、PMDが疑われれば、胎児の発育と血流、母体の血圧などを注意深く見守る管理になります。管理の方針や分娩の時期は、主治医(産科)と相談して決めます。急な腹痛や出血、胎動の減少、頭痛やむくみなどがあれば、健診の日を待たずに受診してください。
Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)との関連
PMDとBWSは分子レベルでつながりがあり、PMDの胎児の約20%がBWSで、BWSの側から見ても同程度にPMDを伴うとされています(Soejima 2022)。日本の49例でも、8例(17.0%)がBWSでした(Kodera 2021)。両者に共通して、父由来の細胞と両親由来の細胞のモザイク(父性片親性二倍体モザイク)が見つかることがありますが、すべての例で分子の特徴が一致するわけではありません(Soejima 2022)。
BWSは、巨舌・臍帯ヘルニア・片側肥大などを特徴とし、小児の腎臓や肝臓の腫瘍のリスクが高くなる病気です。PMDのある妊娠では、BWSの可能性を念頭に置いて、出生前の胎児の評価と出生後の児の評価につなげます。BWSの特徴と腫瘍検診のエコーはBeckwith-Wiedemann症候群とはで解説しています。
よくある疑問(Q&A)
Q. PMDは胞状奇胎のように、絨毛性腫瘍になりますか?
A. PMDは栄養膜の増殖を伴わない病気で、胞状奇胎とは別のものです(Colpaert 2019)。悪性の絨毛性疾患を伴わない点が、胞状奇胎との大きな違いとされています(Li 2025)。
Q. 多嚢胞性の胎盤で胎児が正常なら、PMDと考えてよいですか?
A. それだけでは決められません。全胞状奇胎と正常胎児の双胎も、胎児は正常に見えます。hCGの値、嚢胞の部分と胎盤の境界、胎児の核型を合わせて判断し(McNally 2021)、部分胞状奇胎の除外には遺伝学的検査を相談します(Guenot 2019)。
Q. PMDでも元気な赤ちゃんは生まれますか?
A. はい。正常に生まれた例も報告されています(McNally 2021、Li 2025)。ただし日本の49例で胎児発育不全が72.3%、胎児死亡が17.0%と多く(Kodera 2021)、注意深い経過観察が必要です。
Q. 生まれた後に気をつけることは?
A. BWSを伴う可能性(約20%)があり(Soejima 2022)、児の血液の異常や肝の腫瘍も報告されています(Colpaert 2019)。胎盤の病理診断の結果を小児科と共有して、児の評価につなげます。
参考文献
- Soejima H, Hara S, Ohba T, et al. Placental Mesenchymal Dysplasia and Beckwith-Wiedemann Syndrome. Cancers (Basel). 2022;14(22):5563. PubMed
- Kodera C, Aoki S, Ohba T, et al. Clinical manifestations of placental mesenchymal dysplasia in Japan: A multicenter case series. J Obstet Gynaecol Res. 2021;47(3):1118-1125. PubMed
- Guenot C, Kingdom J, De Rham M, et al. Placental mesenchymal dysplasia: An underdiagnosed placental pathology with various clinical outcomes. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2019;234:155-164. PubMed
- Colpaert RM, Ramseyer AM, Luu T, et al. Diagnosis and Management of Placental Mesenchymal Disease. A Review of the Literature. Obstet Gynecol Surv. 2019;74(10):611-622. PubMed
- McNally L, Rabban JT, Poder L, et al. Differentiating complete hydatidiform mole and coexistent fetus and placental mesenchymal dysplasia: A series of 9 cases and review of the literature. Gynecol Oncol Rep. 2021;37:100811. PubMed
- Wei CM, Li TG, Ma B, et al. Evaluation and analysis of influencing factors of placental mesenchymal dysplasia diagnosed using prenatal ultrasonography and pregnancy outcomes: case series. Quant Imaging Med Surg. 2024;14(9):6934-6944. PubMed
- Tang P, Jin X, Li J, et al. Misdiagnosis of placental mesenchymal dysplasia as pregnancy with hydatidiform mole: A case report and literature review. Medicine (Baltimore). 2023;102(15):e33438. PubMed
- Li T, Zhang W, Wang X, et al. Placental mesenchymal dysplasia: A rare case report and literature review. Medicine (Baltimore). 2025;104(23):e42663. PubMed
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