血胸(読み方は、けっきょう)は胸腔内に血液が貯留した状態であり、外傷や医原性損傷、大動脈解離など多彩な原因で生じます。

単純X線写真では微少な血胸は指摘困難ですが、胸部CTでは高い感度と特異度で検出・評価が可能です。

ただしCTでは一見、胸水のように見えてしまうこともあり注意が必要です。

今回は血胸のCT画像所見について解説します。

先に結論:血胸(けっきょう)とは・CTでの見分け方

  • 血胸は、胸の中(胸腔)に血液がたまった状態です。原因は肋骨骨折や肺の損傷などの外傷が最も多く、ほかに大動脈解離、カテーテルなどの医療処置、腫瘍、抗凝固薬などがあります。量が多いと肺が押されて息苦しくなり、出血性ショックになることもあります
  • CTでは、血液は水に近いふつうの胸水(平均7〜10HU程度)より白く、CT値が35HUを超えるのが見分けるポイントです。固まった血(凝血塊)は50〜90HU程度とさらに白く、かたまりのように見えます。ただし強い貧血ではCT値が低めに出ることがあります
  • 造影CTで造影剤が血管の外へ漏れ出ていれば(extravasation)、今も出血しているサインで、肋間動脈・内胸動脈などが原因血管としてよく見られます。治療は胸腔ドレナージ、カテーテルでの止血(塞栓術)、手術などです。胸をぶつけたあと息苦しさや胸の痛みが強くなるときは、数日たってからでもすぐに受診してください

血胸(hemothorax)とは?

  • 血胸(hemothorax)は外傷性肋骨骨折や肺実質損傷、大動脈損傷、医療手技、腫瘍、薬剤の影響などにより胸腔内で出血を来す病態。特に外傷が主な原因となることが多い。
  • 出血量が多い場合は肺の圧排や緊張性血胸を起こし、呼吸不全や血行動態不安定をきたすため、迅速な診断と対応が求められる。
  • CTで血管外漏出を認めた場合、速やかな胸腔ドレナージや血管塞栓術、外科的止血が必要。胸腔ドレーンで1500mLを超える血液が排出される、または1時間に200mLを超える出血が続く場合は、VATSまたは開胸による外科的止血の適応とされる。ドレナージ後も凝血塊が残る場合は胸腔内線溶療法が選択肢となる(Boersma WG, et al. 2010)。

血胸(hemothorax)のCT画像所見

  • CTでは、急性期に漏れ出た血液は心大血管内の血液とほぼ同じCT値を示し、外傷の急性期には35HUを超える胸腔内の液体は血胸と考えるべきとされる。凝血塊は50~90HUとさらに高い(Lichtenberger JP, et al. 2018)。ふつうの胸水は水に近く、100例の検討で滲出性胸水は平均7.2HU、漏出性胸水は平均10.1HUであった(Abramowitz Y, et al. 2009)。凝血塊が存在する場合には、液体内に不整な軟部腫瘤として描出されることがある。
  • 貯留血液は背側胸腔に集まりやすく、肺底部背側から横隔膜上縁、側胸壁に沿って広がる。臥位撮影時には背側傍椎体領域で透過性低下を認めることが多く、少量血胸でも発見可能である。
  • 造影動脈相または平衡相CTで造影剤の血管外漏出(contrast extravasation)を検出できれば活動性出血を示唆し、緊急止血術の適応判断に役立つ。責任血管としては肋間動脈や内胸動脈がよく知られており 、MPR(multiplanar reconstruction)像などを用いてこれらの血管破綻を確認することが重要。
  • CTは微量血胸の早期診断にも優れる。定量的に出血量を推定し、ドレナージや外科的処置の計画に反映できる。
  • 肺挫傷や肺裂傷など、肺実質損傷を伴う場合、肺被膜の損傷部位から胸腔内に出血し、血胸を併発することがある。また、肋骨骨折も血胸の一般的な合併症として挙げられる。
  • 高度の貧血がある場合、活動性出血であっても、血腫のCT値が水濃度に近い値を示すことがあり、CT値のみでの血性かどうかの診断が困難になることがある。

血胸(hemothorax)の鑑別診断

CTによる胸腔内液貯留の鑑別は、CT画像のみで行うのではなく、外傷歴、感染徴候の有無などの症状や経過、身体所見、採血結果と総合的に評価することが重要。

  • 胸水: 通常は水に近いCT値(平均7〜10HU程度)を示し、三日月状の形態を呈することが多い。心不全や悪性腫瘍などが原因となることが多い。
  • 膿胸: 胸膜肥厚を伴った液貯留で、内部に気泡を伴うことがある(気管支胸膜瘻、ガス産生菌、穿刺後などを示唆)。典型的な膿胸は、CTで胸膜肥厚や造影効果、ガス像を伴い、レンズ状の形態を呈することが多く、split pleura signが診断に有用とされている。
  • 乳び胸: 胸管の閉塞や破綻により乳びが貯留した状態で、CTでは胸水と同様に水に近い濃度/吸収値を示す。

症例 20歳代男性 左肋部への直接打撃

引用:Radiopaedia

左胸水を認めますが、椎体に近い内側よりも高吸収部位を認めており、血腫を伴った血胸が疑われます。

血胸がある部位に隣接する肋骨に骨折を認め、エピソードからも外傷性血胸だと診断することができます。

 

血胸でよくある疑問(Q&A)

Q. 「血胸」と「血性胸水」は同じですか?
A. 同じではありません。血性胸水は、がんや炎症などでたまった胸水が血液まじりで赤く見えるもので、少量の血液でも赤く見えます。血胸は、外傷などで血液そのものが胸腔にたまった状態です。非外傷性の血胸の原因には、抗凝固薬、腫瘍、胸膜の癒着がちぎれることなどがあります(Boersma WG, et al. 2010)。

Q. 肋骨骨折のあと、遅れて血胸がたまることはありますか?
A. あります。肋骨骨折で入院した50歳以上の検討では、入院時のCTで血胸がないかごく少量だったのに48時間以上たって見つかった遅発性血胸が1.3%あり、その57%は退院後(平均9日後)に息切れや胸の痛みで見つかりました(Choi J, et al. 2021)。

 

あわせて読みたい:乳び胸とは?原因とCT所見の限界

参考文献・出典

  1. 画像診断. Vol.34 No.11 増刊号 2018: p.503–504.
  2. Kaewlai R, Avery LL, Asrani AV, et al. Multidetector CT of blunt thoracic trauma. Radiographics. 2008;28(6):1555-1570. PubMed
  3. Boersma WG, Stigt JA, Smit HJ. Treatment of haemothorax. Respir Med. 2010;104(11):1583-1587. PubMed
  4. Lichtenberger JP, Kim AM, Fisher D, et al. Imaging of combat-related thoracic trauma – review of penetrating trauma. Mil Med. 2018;183(3-4):e81-e88. PubMed
  5. Santamarina MG, Beddings I, Lermanda Holmgren GV, et al. Multidetector CT for evaluation of the extrapleural space. Radiographics. 2017;37(5):1352-1370. PubMed
  6. Abramowitz Y, Simanovsky N, Goldstein MS, et al. Pleural effusion: characterization with CT attenuation values and CT appearance. AJR Am J Roentgenol. 2009;192(3):618-623. PubMed
  7. Choi J, Anand A, Sborov KD, et al. Complication to consider: delayed traumatic hemothorax in older adults. Trauma Surg Acute Care Open. 2021;6(1):e000626. PubMed

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