胸部の鈍的な外傷により、胸部の様々な部位に損傷が起こります。
中でも、肺実質が損傷を受けることがあり、これを肺挫傷(読み方は「はいざしょう」、英語表記でpulmonary contusion)と言います。
胸郭に守られた肺が損傷を受けると
- どのようなCT画像所見を示すのか
- どのような合併症があるのか
などを実際のCT画像を用いてまとめました。
先に結論:肺挫傷・肺裂傷とは(裂傷・挫傷の意味)
- 挫傷(ざしょう)は打撲などで組織がつぶれて傷ついたもの、裂傷(れっしょう)は組織が裂けた傷のことです
- 肺挫傷は、胸を強く打ったときに肺の中に出血やむくみが起こる状態(肺の打ち身)。肺裂傷は肺の組織そのものが裂けたもので、裂け目に血液がたまると肺内血腫、空気がたまると外傷性肺嚢胞(ニューマトシール)になります
- CTでは、打った場所の近くに、気管支の分布に関係なく広がる(非区域性の)すりガラス影〜浸潤影が見られます。多くは数日〜1週間ほどで薄くなっていきますが、気胸・血胸・肋骨骨折などの合併に注意します
- 治療は呼吸の管理などの支持療法が中心です(Cohn 2010)。肺炎やARDS(急性呼吸窮迫症候群)の合併に注意して経過をみます
胸を強く打ったあとに息苦しさ・胸の痛み・血の混じった痰などが出たときは、すぐに医療機関を受診してください。
肺挫傷とは?

上に述べたように、外力により肺実質そのものの損傷(肺実質損傷)を肺挫傷と言います。
肺実質が損傷を受けると、肺胞、間質への出血や浮腫を生じます。
肺裂傷とは?
肺挫傷の中には、肺実質内に亀裂を生じ、肺胞の構造が破壊され、肺裂傷(pulmonary laceration)となることがあります。
- 裂傷部位に血液が貯留→肺内血腫
- 裂傷部位に空気が貯留→外傷性肺嚢胞(pneumatocele(ニューマトシール))、air cystといった嚢胞
が形成されます。

肺挫傷部位は、治癒の過程で気道と交通すれば肺嚢胞(pneumatocele)となったり、血腫が縮小して、結節として残ることがあります。
ですので、肺嚢胞には裂傷に伴うものと、治癒の過程で後遺症としてできるものがあります。
肺挫傷の診断は?
肺挫傷の診断には画像診断(胸部レントゲン検査及び胸部CT検査)が有効です。
特に胸部CTはレントゲンと比較して、肺挫傷の検出率は高いと報告されています(Radiology 1988;167:77-82)。この報告(85例)では、CTで99か所の肺裂傷が見つかったのに対し、胸部レントゲンで指摘できたのは5か所だけでした。また肺裂傷は、受傷機転とCT所見から圧迫破裂・圧迫剪断・肋骨穿通・癒着断裂の4型に分類されています。
肺挫傷のCT画像所見は?

出血量を反映して、すりガラス影から肺胞性陰影まで様々な濃度の浸潤影として画像では認められます。
この陰影だけでは非特異的と言えますが、外傷後+外傷を受けた部位にすりガラス影〜浸潤影を認めるという点が診断には重要です。
また、この浸潤影は、非区域性であるという点も肺炎などとは異なる点であり重要です。
非区域性に広がる浸潤影とは気管・気管支の分布を無視して広がる浸潤影のことです。

通常肺炎などの感染症は気管支を経て広がるため、区域性に広がります。
ですので、区域を無視した非区域性の場合は感染症以外を考える手がかりとなります。
肺挫傷の陰影は、通常受傷後数時間以内に現れ、およそ7日で改善します。息苦しさなどの症状は受傷後72時間ごろに最も強くなります(Cohn 2010)。
肺裂傷は肺の末梢や胸膜直下に単発性あるいは多発性の嚢胞性病変として認められます。
ただし、周囲の肺挫傷に埋もれてしまい、受傷直後にははっきりしないこともあり注意が必要です。
裂傷内部に出血を伴う場合は、ニボー像(鏡面形成)を認めることがあります。
症例 40歳代男性 胸部打撲

胸部単純CTで左の下葉の末梢に楔型の浸潤影を認めています。
隣接する肋骨には骨折線を認めており、肋骨骨折+肺挫傷と診断されました。
症例 50歳代男性 脚立より転落

胸部単純CTで左に気胸を認めています。
また背側に非区域性に広がる浸潤影を認めており、肺挫傷を疑う所見です。
接する肋骨には骨折線を認めています。
外傷性気胸+肺挫傷+肋骨骨折と診断されました。
症例 30歳代男性 交通事故

胸部単純CTで右下葉に楔型の浸潤影を認めており、肺挫傷を疑う所見あり。
浸潤影の内部に嚢胞性病変あり。肺裂傷(外傷性肺嚢胞)を疑う所見です。肋骨骨折も認めていました。
肺挫傷+肺裂傷+肋骨骨折と診断されました。
症例 20歳代女性 交通事故

胸部単純CTで左気胸を認めています。
左下葉に非区域性に広がる浸潤影を認めており、肺挫傷を疑う所見です。
その内部に2箇所嚢胞性病変を認めています。外側のものはニボー像を認めており、肺裂傷及び肺内血腫を疑う所見です。
なお肋骨骨折も伴っていました(非提示)。
外傷性気胸+肺挫傷+肺裂傷+肋骨骨折と診断されました。
見落としやすい反対側の肺挫傷(contre-coup)
- 頭部外傷で知られるcontre-coup(対側)損傷は肺にも起こります。直接の外力による肺の損傷は、外力を受けた側だけでなく反対側にも見られることがあるとされます(De Wever 2000)。肺のcontre-coup損傷の存在を示した報告もあります(Rashid 2000)。
- 国内の報告では、2mの高さから落ちて左胸を打った47歳男性で、胸部X線の浸潤影と胸水は右肺だけにみられ、右肺の気管支肺胞洗浄で血性の液体、経気管支肺生検でヘモジデリン沈着とフィブリン析出を認め、肺挫傷と確認されました。陰影は1週間以内に自然に消えています。文献的にはまれで、縦隔の反対側部分の高速な振動による細い血管の損傷が機序として考えられています(Katoh 1996)。
- 肋骨骨折や打撲がある側だけでなく、反対側の肺にも浸潤影や胸水(血胸)がないかを確認します。
肺挫傷の合併症は?
- 気胸/血胸
- 外傷性ARDS
- 肺嚢胞
気胸/血胸
肺被膜の損傷を伴うと、その部位より空気や血腫が胸腔内に漏れ出てしまい、気胸や血胸を伴うことがあります。
外傷性ARDS
肺挫傷は肺実質の直接障害を起こし、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)の原因となることがあります(2012年のBerlin定義以降、従来ALIと呼ばれた範囲はPaO2/FIO2 200〜300mmHgの軽症ARDSとして扱われます)。
受傷後1週間以上経過しても浸潤影が消失しない場合は、二次感染の他、広範な無気肺、外傷性ARDSの可能性があります。肺挫傷の範囲(体積)は合併症の予測にも役立ちます。CTで測った挫傷の体積が全肺の約20%以上の例では、肺炎・ARDS・死亡などの合併症が起こりやすく、ICU滞在も長くなると報告されています(Strumwasser 2011)。3次元CTで測定した挫傷体積の割合は、入院時のPaO2/FIO2比とともにARDS発症の独立した予測因子でした(Wang 2011)。
肺嚢胞
肺裂傷に合併する外傷性肺嚢胞は、多くは自然に小さくなりますが、感染や出血を起こすと治療が必要になります(Lempereur 2025)。外傷性肺嚢胞101例の検討では、死亡例はすべて肺出血によるもので、喀血と嚢胞内の液面形成(ニボー)が死亡と関連していました(Beattie 2021)。
参考書籍:Emergency Radiology 救急の画像診断とIVR P54-55
参考書籍:画像診断 Vol.30 No.11 臨時増刊号 2010 s226-229
胸部の外傷では肺挫傷と同時に起こりうる肋骨骨折も重要です。
肺挫傷でよくある疑問(Q&A)
Q1. 肺挫傷の原因は何ですか?
A. 交通事故・転落・スポーツなどで胸を強く打つ鈍的外傷がほとんどです。肋骨骨折や気胸・血胸と一緒に見つかることがよくあります。
Q2. レントゲンで肺挫傷はわかりますか?
A. 受傷直後のレントゲンでは見えにくいことがあります。CTは肺挫傷の検出に感度が高く、のちに人工呼吸が必要になるかの予測にも役立ちます(Cohn 2010)。
Q3. 肺挫傷はどのくらいで治りますか?治療は?
A. 多くはおよそ7日で改善し、治療は支持療法が中心です(Cohn 2010)。1週間以上たっても陰影が残るときは、肺炎・無気肺・ARDSなどの合併を考えます。
最後に
胸部の外傷で起こりうる肺挫傷についてまとめました。
肺挫傷には、肺胞実質の破壊を伴う肺裂傷も含まれており、また陰影自体は非特異的であるため、
- 胸部外傷のエピソード
- 肺炎を疑う臨床所見がないか
- 肺嚢胞・気胸・血胸を疑う所見
などがないかをチェックすることが重要です。
また、外傷後1週間以上経過しても陰影の軽減を認めない場合は、外傷性ARDSなどの可能性があるので注意が必要です。
参考文献
- Wagner RB, Crawford WO, Schimpf PP. Classification of parenchymal injuries of the lung. Radiology. 1988;167(1):77-82. PubMed
- Kaewlai R, Avery LL, Asrani AV, et al. Multidetector CT of blunt thoracic trauma. Radiographics. 2008;28(6):1555-1570. PubMed
- Cohn SM, Dubose JJ. Pulmonary contusion: an update on recent advances in clinical management. World J Surg. 2010;34(8):1959-1970. PubMed
- ARDS Definition Task Force; Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al. Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition. JAMA. 2012;307(23):2526-2533. PubMed
- Strumwasser A, Chu E, Yeung L, et al. A novel CT volume index score correlates with outcomes in polytrauma patients with pulmonary contusion. J Surg Res. 2011;170(2):280-5. PubMed
- Wang S, Ruan Z, Zhang J, et al. The value of pulmonary contusion volume measurement with three-dimensional computed tomography in predicting acute respiratory distress syndrome development. Ann Thorac Surg. 2011;92(6):1977-83. PubMed
- De Wever W, Bogaert J, Verschakelen J. Radiology of lung trauma. JBR-BTR. 2000;83(4):167-73. PubMed
- Rashid MA. Contre-coup lung injury: evidence of existence. J Trauma. 2000;48(3):530-2. PubMed
- Katoh T, Hirakata Y, Kobayashi J, et al. [Contralateral lung contusion]. Nihon Kyobu Shikkan Gakkai Zasshi. 1996;34(9):993-6. PubMed
- Beattie G, Cohan CM, Tang A, et al. Differences in clinical characteristics and outcomes for blunt versus penetrating traumatic pulmonary pseudocysts. Am J Emerg Med. 2021;45:433-438. PubMed
- Lempereur A, Yerna M, Deeba A. [Traumatic pulmonary pseudocyst]. Rev Med Liege. 2025;80(9):563-566. PubMed
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