
先に結論:乳び胸は「胸水の脂質」で診断し、画像は原因とリンパ管の漏れを探す
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 胸管またはその分枝の損傷で、乳びが胸腔に貯留した状態 |
| 原因 | 外傷性(術後を含む)と非外傷性。非外傷性は悪性腫瘍が最多 |
| 診断 | 胸水の中性脂肪110 mg/dL超、胸水/血清の中性脂肪比1.0超、胸水/血清コレステロール比1.0未満、カイロミクロン |
| 画像の役割 | CT:胸水と原因病変(縦隔腫瘤・リンパ腫など)の評価。リンパ管造影・MRリンパ管撮像:漏出部位の同定と治療 |
| 治療 | 食事療法とドレナージ、効果不十分ならリンパ管インターベンションや外科治療 |
外観が乳白色でも乳びとは限りません。偽乳び胸との区別が必要です。

乳び胸とは
乳び胸は、胸管またはその分枝の破綻により乳びが胸腔にたまる病態です。原因は外傷性(術後を含む)と非外傷性に大別され、非外傷性では悪性腫瘍に伴うものが最も多いとされています(Agrawal 2022、Romero 2000)。胸水全般の鑑別は胸水の記事もご覧ください。
原因疾患
- 外傷性:胸部手術・脊椎手術などの術後、外傷
- 非外傷性:悪性腫瘍(リンパ腫など)。胸腔内の腫瘤を伴う自然発症の乳び胸では、CTで腫瘤を見つけることが診断の手がかりになります(Duranti 2025)
診断:CTでは決められない部分
胸水の外観は誤解を招くことが多く、診断には胸水と血清の脂質分析が必要です。乳び胸は通常、カイロミクロンの存在に加えて、中性脂肪が110 mg/dL超、胸水/血清中性脂肪比が1.0超、胸水/血清コレステロール比が1.0未満という条件を満たします(Romero 2000)。
偽乳び胸もミルク状の胸水を呈しますが、病因が異なり、胸水のコレステロールと中性脂肪の測定で区別します(Braun 2021)。CTは胸水の量や分布、縦隔・後腹膜の腫瘤やリンパ節腫大などの原因病変の評価に用います。胸水のCT値だけで乳びと判断する根拠は示されていないため、診断はあくまで脂質分析で行います。
症例 85歳女性 胸腹部大動脈瘤術後
造影CTの横断像です。画像の右側(患者さんの左側)に中等量の胸水があり、辺縁が三日月状ではなく波打つような形をしています。水に近い吸収値で、CTだけでは乳びと断定できず、胸水穿刺と成分分析で乳び胸と確定された症例です。
リンパ管造影・MRリンパ管撮像と治療
漏出部位の同定
足背からのリンパ管造影で胸管の解剖を明らかにでき(Riquet 2002)、脊椎手術後の乳び胸・後腹膜リンパ漏の3症例の報告では、リンパ管造影が診断と治療の要でした(Rodrigues 2026、症例報告)。
リンパ腫に伴う難治性乳び胸の症例では、通常のリンパ管造影を2回行っても漏出部位が不明で、動態造影MRリンパ管撮像(DCE-MRL)で残存リンパ腫病変からの漏出が示されました。漏出部位が確認できないまま胸管塞栓術を行うと悪化することがあると、この報告は述べています(Yamamoto 2026、症例報告)。
治療の流れ
治療は原因によって異なります。食事療法(脂肪制限など)とドレナージが基本で、排液量が多い状態や漏出が長引く場合は、栄養障害が進む前に、外科治療または経皮的なリンパ管インターベンションを考慮します(Agrawal 2022)。ただし、治療を導く質の高い臨床試験はありません(Agrawal 2022)。リンパ腫に伴い化学療法・放射線治療に抵抗する乳び胸では、胸腔鏡下の胸膜癒着術が有効だったとの報告があります(Romero 2000)。悪性腫瘍に伴う乳び胸の自験18例では、72%が保存的治療、28%が再手術で治癒しています(Duranti 2025)。
次にすること
胸水の脂質分析で乳びを確認し、CTで原因病変を探します。漏出が続く場合は、呼吸器内科・interventional radiology・胸部外科でリンパ管造影を含む治療方針を検討します。個別の治療は主治医とご相談ください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 白く濁っていれば乳び胸ですか?
いいえ。外観だけでは判断できず、偽乳び胸もあります。コレステロールと中性脂肪の測定が必要です(Braun 2021)。
Q. 乳び胸は癌のサインですか?
非外傷性では悪性腫瘍が最多ですが(Romero 2000)、術後や他の疾患でも起こります。CTで胸腔内外の腫瘤を確認します。
Q. LAMとの関係は?
リンパ脈管筋腫症(LAM)で乳び胸を繰り返し、診断の手がかりになった症例も報告されています(Ren 2026)。画像はLAMのCT画像診断の記事をご覧ください。
参考文献
- Agrawal A, Chaddha U, Kaul V, et al. Multidisciplinary Management of Chylothorax. Chest. 2022;162(6):1402-1412. PubMed
- Romero S. Nontraumatic chylothorax. Curr Opin Pulm Med. 2000;6(4):287-91. PubMed
- Braun CM, Ryu JH. Chylothorax and Pseudochylothorax. Clin Chest Med. 2021;42(4):667-675. PubMed
- Duranti L, Tavecchio L, Rolli L, et al. Chylothorax in thoracic oncology: diagnostic challenges and management strategies. Med Oncol. 2025;42(3):70. PubMed
- Riquet M, Le Pimpec Barthes F, Badia A. [Chylothorax]. Presse Med. 2002;31(12):548-55. PubMed
- Yamamoto Y, Tsukada J, Tamura M, et al. Successful management of refractory lymphoma-associated chylothorax with CT-guided direct embolization and pleurodesis. CVIR Endovasc. 2026;9(1). PubMed
- Rodrigues TP, Rodrigues MAS, Jensen K, et al. Thoracic and retroperitoneal lymphatic injuries following spine surgery: illustrative cases. J Neurosurg Case Lessons. 2026;12(15). PubMed
- Ren C, Yu X, Li Y, et al. Radiologically atypical lymphangioleiomyomatosis presenting with chylous pulmonary congestion, recurrent chylothorax and extrapulmonary cystic lymphatic lesions: A case report. Ther Adv Respir Dis. 2026;20:17534666261487314. PubMed
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