脳表ヘモシデリン沈着症(Superficial Siderosis)は、慢性または間欠的なくも膜下出血により脳および脊髄の軟膜表面にヘモジデリンが沈着する疾患です。
感音性難聴や小脳失調など多彩な神経症状を呈することもあり、診断にはMRIによる評価が不可欠です。
今回は脳表ヘモシデリン沈着症についてまとめました。
脳表ヘモシデリン沈着症の概念と病態生理
- くも膜下腔への反復的な出血が神経組織に慢性の鉄沈着をもたらし、ヘモジデリンが軟膜表面に蓄積することで発症する。
- 主に小脳、脳幹、大脳表面や脊髄に病変が分布し、進行性の感音性難聴、錐体路障害、小脳失調、認知機能低下などを引き起こす。無症候性例も報告されている。
脳表ヘモシデリン沈着症の主な原因
- 脳・脊髄腫瘍や髄膜瘤などによる慢性出血
- 脳動静脈奇形(AVM)や硬膜動静脈瘻(DAVF)
- 脳動脈瘤の破裂後や術後変化
- 硬膜欠損(外傷、手術後)
- 脊髄小脳変性症や原因不明の特発性例
- 高齢者では脳アミロイド血管症(脳アミロイドアンギオパチー)に関連する例
これらの疾患がくも膜下出血を繰り返すことで、脳脊髄液を介して軟膜表面へヘモジデリンが拡散する。
脳表ヘモシデリン沈着症のMRI画像所見
- SWI(susceptibility-weighted imaging)やT2*WIでは磁化率効果を強調し、軟膜面のヘモジデリン沈着が鮮明な低信号として描出される。中でもSWIが診断に最も有用。
- T2WIでも軟膜表面に沿った低信号域を認めるが、病変が薄く同定困難な場合もある。
- CTでは時に軽度の高吸収域を示すことがあるが、感度は低い。石灰化を伴う他疾患との鑑別にCTが有用な場合がある。
症例 30歳代女性 発話停止および右上肢のチクチクしたしびれ感
引用:radiopedia
正常例と比べると小脳半球の脳溝に沿って異常な無信号域が広がっている様子がわかります。
脳表ヘモシデリン沈着症(Superficial Siderosis)と診断されました。
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参考文献・出典
- Bracchi M, Zissin R, Apter S, et al. Superficial siderosis of the CNS: MR diagnosis and clinical findings. AJNR Am J Neuroradiol. 1993;14:227–236.
- 山脇健盛. 脳表ヘモジデリン沈着症の臨床. 臨床神経学. 2012;52:847–950.
- Charidimou A, Linn J, Vernooij MW, et al. Cortical superficial siderosis: detection and clinical significance in cerebral amyloid angiopathy and related conditions. Brain. 2015;138:2126–2139.
- Kumar N. Neuro-imaging superficial siderosis: an in-depth look. AJNR. 2010;31:5–14.
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