先に結論:signet ring sign

  • signet ring signはCTで気管支の内径がとなりの肺動脈より太く見える所見で、気管支拡張症を示します
  • 気管支壁の肥厚(tram line)・粘液栓・air trappingを伴うことが多く、分布(上葉優位か・中葉舌区か)が原因推定の手がかりになります
  • 高齢者や高地居住者では正常でも気管支が少し太く見えることがあるため、壁の肥厚や先細りの欠如もあわせて判断します
  • 気管支拡張症は気管支が元に戻らない形で太くなる病気で、慢性の咳・痰・血痰と気道感染のくり返しが主な症状です

signet ring sign(シグネットリングサイン)は、胸部CTで代表的に見られる気管支拡張症の画像所見です。気管支の腔径が肺動脈よりも大きく見えるという特徴的な形から、印章付きの指輪(signet ring)に例えられています。

気管支拡張症とは?症状・原因・治療の全体像

気管支拡張症(bronchiectasis)は、気管支の壁が壊れて元に戻らない形で太くなった状態です。太くなった気管支には痰がたまりやすく、細菌が住みつく→炎症で気管支がさらに傷む→もっと痰がたまる、という感染と炎症の悪循環で少しずつ進みます。

  • 症状:長く続く咳と痰(膿のような痰のことも)、血痰・喀血、肺炎や気管支炎のくり返し、息切れ、だるさなど
  • 原因:結核や小児期の重い肺炎などの感染後、非結核性抗酸菌症(NTM)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、原発性線毛機能不全、免疫不全、関節リウマチなどの膠原病。調べても原因が分からないことも少なくありません
  • 診断:症状に加えて胸部CTで気管支の拡張(このページのsignet ring signなど)を確認し、痰の培養などで原因を探します
  • 治療:原因となる病気の治療、痰を出しやすくする排痰法・呼吸リハビリ、増悪したときの抗菌薬、ワクチンによる感染予防が中心です。喀血が多いときは気管支動脈塞栓術が行われることもあります

咳や痰が長く続く、血痰が出るなど気になる症状があれば、医療機関(呼吸器内科)を受診してください。

詳しくは気管支拡張症のCT・レントゲン画像所見|signet ring signと原因・症状で解説しています。

signet ring signの定義と語源

signet ringは、昔の印章付き指輪を意味します。胸部CTでは、肺動脈(印章部分)よりも気管支(指輪部分)が大きく見える状態をこの名で表現します(図参照)。

  • 正常:肺動脈と気管支の直径 ≒ 同等
  • 異常:気管支径 > 肺動脈径 → signet ring sign

signet ring signのCT画像所見

  • 両肺下葉に好発
  • しばしば tram line(トラムライン) や air trapping なども併存
  • 気管支の内径が伴走する肺動脈径以上(比1.0以上)であれば気管支拡張と判断し、気管支の先細りの欠如や胸膜から1cm以内に気管支が見えることも診断の根拠になる
  • CTで気管支の連続した数珠状拡張像が、「string of pearls(真珠の首飾り状)」と表現されることもある。特にvaricose型(静脈瘤状)気管支拡張症でみられる所見で、進行したnon-tuberculous mycobacterial infection(NTM感染)でもみられる。なお、cystic型では嚢胞状の拡張が房状に集まる「cluster of grapes」と表現される。

症例

引用:Radiopaedia

気管支拡張を認め、signet ring signを認めていることがわかります。

診断的意義:signet ring signは何を意味する?

この所見は、気管支拡張症(bronchiectasis)の存在を強く示唆します。

気管支拡張症の主な原因

CTで見られるsignet ring signは、非可逆性の気道拡張を意味します。臨床では慢性咳嗽や反復性肺炎の精査中に見つかることもあります。

他の所見との組み合わせ

気管支拡張症では、次のような所見も同時に認められることがあります。

  • Tram line(トラムライン): 肥厚した気管支が平行線状に見える所見
  • Air trapping: 呼気時にも残る過透亮域(小葉レベルで認識)
  • 粘液栓: 末梢気道内の粘液貯留(ABPAなど)

※アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)や非結核性抗酸菌症(NTM)などでは、signet ring signとtram lineが同時に現れやすい。分布はABPAで上葉優位・中枢側(粘液栓を伴う)、NTMで中葉・舌区優位が特徴で、原因推定の手がかりになります。

まとめ:signet ring signの読影ポイント

項目 内容
所見名 signet ring sign(シグネットリングサイン)
意味 気管支拡張症の存在を示唆
特徴 気管支径 > 肺動脈径
好発部位 両側下葉
併存所見 tram line, air trapping, 粘液貯留など

 

関連記事:【胸部CT読影】覚えておきたい代表的な画像|肺実質・血管・胸膜サインを体系的に整理

関連記事:気管支粘液栓(mucoid impaction)とは?胸部CT画像所見と原因(ABPA・気管支拡張症・腫瘍)

参考文献

  1. Webb WR, Müller NL, Naidich DP. High-Resolution CT of the Lung, 5th ed. Lippincott Williams & Wilkins, 2014.
  2. Cartier Y, et al. Bronchiectasis: accuracy of high-resolution CT in the differentiation of specific diseases. AJR Am J Roentgenol. 1999;173(1):47-52.
  3. Naidich DP, McCauley DI, Khouri NF, et al. Computed tomography of bronchiectasis. J Comput Assist Tomogr. 1982;6(3):437-444. PubMed
  4. Milliron B, Henry TS, Veeraraghavan S, et al. Bronchiectasis: Mechanisms and Imaging Clues of Associated Common and Uncommon Diseases. Radiographics. 2015;35(4):1011-1030. PubMed
  5. Aliberti S, Goeminne PC, O’Donnell AE, et al. Criteria and definitions for the radiological and clinical diagnosis of bronchiectasis in adults for use in clinical trials: international consensus recommendations. Lancet Respir Med. 2022;10(3):298-306. PubMed

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