気管支転移（endobronchial metastasis）は、肺外の悪性腫瘍が気管支内に転移してくる現象で、咳嗽や血痰、無気肺などの原因となる重要な画像所見です。
肺がんとは異なり、原発が肺外にあるにもかかわらず気道病変を呈する点で注意が必要です。
気管支転移(気管転移/気管支内転移)を起こしやすい原発がん
以下は、報告の多い代表的な原発腫瘍です：
| 原発がんの種類 | 特徴・コメント |
|---|---|
| 乳癌（breast cancer） | 最も頻度が高く、発症から年単位経過して現れることも。 |
| 大腸癌（colon cancer） | 肝・肺転移に加えて気管支内転移の報告も多い。 |
| 腎細胞癌（renal cell carcinoma） | 血行性に肺へ飛びやすく、気道に到達しやすい。 |
| 甲状腺癌（thyroid cancer） | 乳頭癌型での気道圧排・気管支内進展がみられることも。 |
| 子宮癌（cervical/endometrial cancer） | 進行例で肺や気道へ転移することがある。 |
| 前立腺癌（prostate cancer） | 晩期転移として報告あり。 |
気管支転移の胸部CT画像での特徴的な所見
- 気管支内腫瘤（endobronchial mass）
- 末梢気道閉塞 → 無気肺や air trapping を伴う
- 粘液栓様の充填像（特に近位気管支）
- 腫瘤に一致する末梢肺野の結節や低吸収域
症例 80歳代男性 腎癌術後
多発肺転移あり。
右側の気管支内に充実部分あり、末梢はmucoid impactionを形成している。
気管支内転移が疑われる。
気管支内転移診断のポイント
- 過去に乳癌や大腸癌などの治療歴がある場合は特に注意
- bronchoscopy + 生検が確定診断に有効
- 肺がんとの鑑別が困難な場合もある → 病理必須
まとめ
- 気道内腫瘤と末梢病変のセットに注目
- 既知の原発がんがある患者では常に疑う
- 肺がんや感染性病変との鑑別を意識する
関連記事：転移性肺腫瘍(肺転移)のCT画像診断【非典型例、特殊な形態の場合】
参考文献
- Marchioni A, et al. Endobronchial metastases: report of 18 cases and review of the literature. Lung Cancer. 2014;84(3):222–227.
- Akoglu S, et al. Endobronchial metastases from extrathoracic malignancies: A clinicopathologic study. Respirology. 2004;9(2):223–229.
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