- 「中葉に粘液栓あり。」
- 「中枢側気管支に高吸収な粘液栓を認める。」
などと胸部CTのレポートに記載されることがあります。
この粘液栓とは一体何でしょうか?
今回は、粘液栓(読み方は、ねんえきせん)の画像所見と原因についてまとめました。
先に結論:気管支粘液栓(mucoid impaction)とは
- 粘液栓は、気管支の中にたんなどの粘液がつまって、CTで気管支の形に沿った棒状・Y字/V字形(指を広げた手袋の形)の影として見える所見です。喘息の人にもよくみられます(Dunican 2018)
- 原因は気管支拡張症・非結核性抗酸菌症・喘息・慢性気管支炎などのほか、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)では縦隔条件で粘液が白く(高吸収に)見えるのが特徴です
- 注意すべきは、気管支の根元の腫瘍(肺がん・カルチノイドなど)がふさいでいるために末梢に粘液がたまっている場合です。くり返す・消えない粘液栓では、中枢側に腫瘍がないかをCTや気管支鏡で確認します
粘液栓(mucoid impaction)とは?

- 粘液栓(mucoid impaction)は、気道内に分泌物が過剰に産生され、排出障害を伴って気管支内に蓄積した状態を指す。
- 粘液が充満する機序としては、粘液の過剰な産生と排出障害の両方が考えられる。
- CT画像上では、拡張した気管支の内腔に連続性のある高吸収域や液面形成を示し、周囲の肺実質とは明瞭に区別される所見として認識される。
粘液栓(mucoid impaction)のCT画像所見
- 棒状・管状の濃度上昇:拡張した気管支に沿って連続性のある高吸収域を示す。
- 気管支との連続性:血管ではなく気管支内の粘液貯留であることを、気管支走行に沿った陰影の連続性から評価する。肺動脈と粘液栓を伴った気管支は伴走することがあるため、CT画像で2本の並走した血管構造を見た場合には、気管支粘液栓を疑う必要がある。
- 高吸収性粘液:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)などでは、粘液にカルシウム塩や金属イオン(鉄・マンガンなど)が含まれるため粘液が高吸収を示すことがある。そのため縦隔条件で高吸収を確認することが重要。また、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)では、粘液栓は棍棒状(指手袋状)に認められることがある。
- 液面形成:重力依存性に液面を形成し、立位・仰臥位で液面の位置変化が確認できる場合がある。
これらの特徴的所見により、単なる血管影や結節性病変と区別し、粘液栓を同定する。
CTで気管支を見るポイント(正常と粘液栓)
- 正常の気管支:肺動脈と並んで走り、太さは伴走する動脈とほぼ同じで、壁は薄く、内腔は空気で黒く見えます。
- 気管支拡張:伴走する動脈より太い、末梢に向かって細くならない、胸膜の近くまで追える、といった所見で気づきます。
- 太い気管支の粘液栓:本来黒いはずの内腔が軟部濃度で埋まり、枝分かれした棒状の影になります。肺野条件だけでなく縦隔条件でも見て、中枢側に腫瘤がないか、高吸収かを確認します。
- 細い気管支の粘液栓:末梢の細気管支に詰まると、小葉中心性の粒状影や分岐状の影(tree-in-bud)として見えます。
粘液栓(mucoid impaction)が認められる主な病態・原因疾患
粘液栓は、以下のような様々な呼吸器疾患で認められる。
- 気管支拡張症:慢性の炎症や感染に伴い気管支壁が肥厚・拡張し、粘液が貯留しやすい。非結核性抗酸菌症や陳旧性結核後に多発する。
- 非結核性抗酸菌症
- 閉塞性肺炎:中枢に腫瘍があることで気管支が閉塞し、その末梢の肺に肺炎が生じる病態。閉塞している肺の気管支内には粘液栓がみられることがある。ただし、「肺炎だと思って抗菌薬で治療していたら、実は腫瘍が原因だった」というケースも比較的多く、広範囲なコンソリデーションがある場合は、中枢に腫瘤のようなものがないか、気管支が閉塞していないかをチェックすることが重要。
- 誤嚥性肺炎:誤嚥物や喀痰が原因で起こる肺炎で、下葉背側優位に浸潤影が広がるのが特徴です。気管支内の液面形成や粘液栓の存在は、誤嚥性肺炎の診断を強く支持する所見となります。
- 気管支閉鎖症:区域・亜区域気管支が先天的に閉鎖し、その末梢肺に側副換気によるair trapping(空気の閉じ込め)が生じた状態です。この病態では、拡張した気管支の粘液栓が肺野の境界明瞭な結節として現れ、末梢肺野の透過性亢進(低吸収域)が特徴的です。
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA):アスペルギルスに対するアレルギー反応により、気管支内腔に粘液が貯留し拡張した状態。典型的な画像所見は、中枢気管支の拡張と、その内部の粘液栓子(mucoid impaction)であり、周囲に粒状影が散布されることもある。2024年に改訂されたISHAM-ABPAワーキンググループの診療ガイドラインでは、素因(喘息など)または合致する臨床・画像所見がある患者で、真菌感作と血清総IgE≥500 IU/mLを必須とし、真菌特異的IgG・末梢血好酸球増多・示唆的な画像所見のうち2項目を満たす場合にABPAと診断する。
- 嚢胞性線維症:CFTR遺伝子異常による粘液の粘稠化・排出障害で、小児から若年者にかけて嚢胞状に粘液栓を伴う場合がある
- 気管支内腫瘍:良性・悪性腫瘍による閉塞性病変が粘液排泄を妨げ、二次的に粘液栓形成を引き起こす。肺癌・カルチノイド・転移のほか、過誤腫などの良性腫瘍もある(Martinez 2008)。
- 喘息:喘息146人と対照22人のCTでは、20区域のうち1区域以上に粘液栓があったのは喘息の58%、対照の4.5%で、粘液栓は同じ区域に年単位で残っていた(Dunican 2018)。
- 異物・気管支結石:誤嚥した異物や気管支結石が気管支をふさぎ、その末梢に粘液栓を生じることがある(Martinez 2008)。
症例 70歳代男性

肺野条件の横断像で右肺底部に分葉状の高吸収域を認めます。
冠状断像では気管支と連続した構造であり、粘液栓が疑われます。
症例 70歳代男性

左下葉気管支は腫瘍と思われる軟部影による狭小化し、その先には分枝状の粘液栓を疑う所見を認めます。
左肺門部腫瘍→左下葉気管支の狭小化→気道内分泌物の排出障害→粘液栓 という機序が考えられます。
縦隔には多発リンパ節腫大を認め、リンパ節転移が疑われます。
症例 20歳代女性 慢性咳嗽

引用:Radiopaedia
左上葉の気管支に縦隔条件でも高吸収な粘液栓を認めその末梢は無気肺となっています。

右下葉気管支にも縦隔条件で高吸収な粘液栓を認め、その周囲には小葉中心性粒状影を認めています。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)による閉塞性肺炎を強く示唆する所見で、実際ABPAと診断されました。
粘液栓でよくある疑問(Q&A)
Q. 粘液栓は自然に消えますか?
感染や一時的なたんの増加によるものは、たんが出たり治療をしたりすると消えることが多いです。一方、喘息では粘液栓が3年後も同じ区域に残りやすく、粘液栓が増えるほど呼吸機能が下がる関係がみられました(Tang 2022)。同じ場所にくり返す・消えない粘液栓は、中枢側の腫瘍や気管支閉鎖症などの原因がないかを確認します。
Q. 粘液栓と言われたら受診が必要ですか?
粘液栓そのものより、その原因(気管支拡張症、喘息、ABPA、腫瘍など)を調べることが大切です。せき・たんが続く、血たんが出る、息苦しいといった症状があるときは、呼吸器内科などの医療機関で相談してください。
参考文献・出典
- Martinez S, Heyneman LE, McAdams HP, et al. Mucoid impactions: finger-in-glove sign and other CT and radiographic features. Radiographics. 2008;28(5):1369-1382. PubMed
- Nguyen ET. The gloved finger sign. Radiology. 2003;227(2):453-454.
- Tsuji S, Heki S, Kobara Y, et al. The syndrome of bronchial mucocele and regional hyperinflation of the lung. Report of four cases. Chest. 1973;64(4):444-447.
- Agarwal R, Sehgal IS, Muthu V, et al. Revised ISHAM-ABPA working group clinical practice guidelines for diagnosing, classifying and treating allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycoses. Eur Respir J. 2024;63(4). PubMed
- Agarwal R, Chakrabarti A, Shah A, et al. Allergic bronchopulmonary aspergillosis: review of literature and proposal of new diagnostic and classification criteria. Clin Exp Allergy. 2013;43(8):850-873. PubMed
- Dunican EM, Elicker BM, Gierada DS, et al. Mucus plugs in patients with asthma linked to eosinophilia and airflow obstruction. J Clin Invest. 2018;128(3):997-1009. PubMed
- Tang M, Elicker BM, Henry T, et al. Mucus Plugs Persist in Asthma, and Changes in Mucus Plugs Associate with Changes in Airflow over Time. Am J Respir Crit Care Med. 2022;205(9):1036-1045. PubMed
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