• 「中葉に粘液栓あり。」
  • 「中枢側気管支に高吸収な粘液栓を認める。」

などと胸部CTのレポートに記載されることがあります。

この粘液栓とは一体何でしょうか?

今回は、粘液栓(読み方は、ねんえきせん)の画像所見と原因についてまとめました。

粘液栓(mucoid impaction)とは?

  • 粘液栓(mucoid impaction)は、気道内に分泌物が過剰に産生され、排出障害を伴って気管支内に蓄積した状態を指す。
  • 粘液が充満する機序としては、粘液の過剰な産生と排出障害の両方が考えられる。
  • CT画像上では、拡張した気管支の内腔に連続性のある高吸収域や液面形成を示し、周囲の肺実質とは明瞭に区別される所見として認識される。

粘液栓(mucoid impaction)のCT画像所見

  • 棒状・管状の濃度上昇:拡張した気管支に沿って連続性のある高吸収域を示す。
  • 気管支との連続性:血管ではなく気管支内の粘液貯留であることを、気管支走行に沿った陰影の連続性から評価する。肺動脈と粘液栓を伴った気管支は伴走することがあるため、CT画像で2本の並走した血管構造を見た場合には、気管支粘液栓を疑う必要がある。
  • 高吸収性粘液:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)などでは、血清カルシウムや金属イオンの沈着により粘液が高吸収を示すことがある。そのため縦隔条件で高吸収を確認することが重要。また、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)では、粘液栓は木昆棒状(指手袋状)に認められることがある。
  • 液面形成:重力依存性に液面を形成し、立位・仰臥位で液面の位置変化が確認できる場合がある。

これらの特徴的所見により、単なる血管影や結節性病変と区別し、粘液栓を同定する。

      粘液栓(mucoid impaction)が認められる主な病態・原因疾患

      粘液栓は、以下のような様々な呼吸器疾患で認められる。

      • 気管支拡張症慢性の炎症や感染に伴い気管支壁が肥厚・拡張し、粘液が貯留しやすい。非結核性抗酸菌症や陳旧性結核後に多発する。
      • 非結核性抗酸菌症
      • 閉塞性肺炎:中枢に腫瘍があることで気管支が閉塞し、その末梢の肺に肺炎が生じる病態。閉塞している肺の気管支内には粘液栓がみられることがある。ただし、「肺炎だと思って抗菌薬で治療していたら、実は腫瘍が原因だった」というケースも比較的多く、広範囲なコンソリデーションがある場合は、中枢に腫瘤のようなものがないか、気管支が閉塞していないかを必ずチェックすることが重要。
      • 誤嚥性肺炎:誤嚥物や喀痰が原因で起こる肺炎で、下葉背側優位に浸潤影が広がるのが特徴です。気管支内の液面形成や粘液栓の存在は、誤嚥性肺炎の診断を強く支持する所見となります。
      • 気管支閉鎖症:気管が閉塞して末梢肺にair trapping(空気の閉じ込め)が生じた状態です。この病態では、拡張した気管支の粘液栓が肺野の境界明瞭な結節として現れ、末梢肺野の透過性亢進(低吸収域)が特徴的です。
      • アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA):アスペルギルスに対するアレルギー反応により、気管支内腔に粘液が貯留し拡張した状態。典型的な画像所見は、中枢気管支の拡張と、その内部の粘液栓子(mucoid impaction)であり、周囲に粒状影が散布されることもある。
      • 嚢胞性線維症:線維症性変化に伴う粘液排出障害で、小児から若年者にかけて嚢胞状に粘液栓を伴う場合がある
      • 気管支内腫瘍:良性・悪性腫瘍による閉塞性病変が粘液排泄を妨げ、二次的に粘液栓形成を引き起こす。

      症例 70歳代男性

      肺野条件の横断像で右肺底部に分葉状の高吸収域を認めます。

      冠状断像では気管支と連続した構造であり、粘液栓が疑われます。

       

      症例 70歳代男性

      左下葉気管支は腫瘍と思われる軟部影による狭小化し、その先には分枝状の粘液栓を疑う所見を認めます。

      左肺門部腫瘍→左下葉気管支の狭小化→気道内分泌物の排出障害→粘液栓 という機序が考えられます。

      縦隔には多発リンパ節腫大を認め、リンパ節転移が疑われます。

       

      症例 20歳代女性 慢性咳嗽

      引用:radiopedia

      左上葉の気管支に縦隔条件でも高吸収な粘液栓を認めその末梢は無気肺となっています。

      右下葉気管支にも縦隔条件で高吸収な粘液栓を認め、その周囲には小葉中心性粒状影を認めています。

      アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)による閉塞性肺炎を強く示唆する所見で、実際ABPAと診断されました。

        参考文献・出典

        • Martinez S, Gershwin ME. Mucoid Impactions: Finger-in-Glove Sign and Other CT and Radiographic Features. RadioGraphics. 2008;28:765–781.
        • Nguyen ET, Silverman PM. The Gloved Finger Sign. Radiology. 2003;228:10–14.
        • Tsuji S, Heki S, Kobara Y, et al. The Syndrome of Bronchial Mucocele and Regional Hyperinflation of the Lung. Chest. 1973;64:314–320.

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