先に結論:下垂体転移
- 下垂体転移は乳癌・肺癌からが多く、下垂体柄(漏斗)を侵しやすいため、尿崩症で発症することが多いのが特徴です
- 下垂体腺腫は尿崩症をほとんど起こさないため、がんの既往がある人の尿崩症+鞍内腫瘤では転移を考えます
- MRIでは下垂体柄の腫大・後葉の高信号の消失・強い造影効果・トルコ鞍の拡大が目立たないことが手がかりで、症状が急に出ることも特徴です
下垂体転移(pituitary metastasis)のMRI画像所見のポイント
- 下垂体転移は珍しく、通常は全身性転移疾患が明らかになるまで、下垂体腺腫と誤診されがち。
- がん患者の剖検例の1.9%にみられる(He 2015)。予後は原発巣や全身状態で大きく異なり、日本の201例の生存期間の中央値は12.9か月だった(Habu 2015)。
- 原発巣は乳癌37.2%、肺癌24.2%が多く、次いで前立腺癌・腎癌(各約5%)(He 2015)。日本の201例では肺癌36.8%、乳癌22.9%の順だった(Habu 2015)。
- ホルモン機能不全、尿崩症などの症状が現れることがある。これらの症状は、下垂体腺腫では珍しく、下垂体転移の可能性を示唆する。
- 尿崩症は最も多い症状で、報告例をまとめた検討で42.34%にみられ(He 2015)、中枢性尿崩症(2022年にAVP欠乏症:arginine vasopressin deficiencyへの名称変更が提案)を呈しやすい。
- 診断では、CTやMRIが用いられ、特にMRIが下垂体領域の評価に適している。転移は通常、下垂体窩から生じる腫瘤や漏斗病変の形で現れる。日本の201例では下垂体柄の腫瘤が63.3%、鞍隔膜孔でくびれた形が44.7%にみられた(Habu 2015)。
- トルコ鞍部の病変(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、髄膜腫、リンパ球性下垂体炎、リンパ腫など)とは特徴的な所見に乏しく見分けにくいことがあり(Komninos 2004)、なかでも下垂体腺腫との区別が問題になる(Ricciuti 2025)。下垂体柄の病変は、転移のほかランゲルハンス細胞組織球症や炎症性疾患(リンパ球性下垂体炎・サルコイドーシスなど)でも起こる(İşler 2025)。
下垂体転移と下垂体腺腫のMRIでの違い
| 下垂体転移 | 下垂体腺腫 | |
|---|---|---|
| 尿崩症 | 多い | まれ |
| 下垂体柄 | 腫大・腫瘤が多い | 侵されにくい |
| 後葉のT1高信号 | 消えやすい | 保たれることが多い |
| トルコ鞍 | 拡大は目立たず、壁の破壊がある | 風船状に拡大 |
| 海綿静脈洞浸潤・嚢胞変化 | 少ない | 多い |
(Ricciuti 2025、Zhu 2026)
下垂体の正常MRIと造影MRIの見方
- T1強調像の矢状断で、前葉は脳とほぼ同じ信号、後葉は高信号(bright spot)に見え、その上に下垂体柄(漏斗)がつながります。
- 造影後は前葉・下垂体柄がよく染まり、ダイナミック造影では小さな腺腫が正常下垂体より遅れて染まる低信号として見えます。
症例 60歳代女性 内分泌障害と左側の眼筋麻痺

引用:Radiopaedia
トルコ鞍から突出する造影される腫瘤あり、左海綿静脈洞に浸潤があり腫瘍が疑われます。
手術にて乳癌からの下垂体転移と診断されました。
関連記事:転移性脳腫瘍(脳転移)のMRI画像診断のポイントは?
参考文献:
- 黒川遼. 1. 頭部病変から予測する原発巣 2. 局在総論/局在各論:下垂体. 画像診断 43(13):1220-1221, 2023(本記事の参照: P1221)
- Pituitary metastasis
- Komninos J, Vlassopoulou V, Protopapa D, et al. Tumors metastatic to the pituitary gland: case report and literature review. J Clin Endocrinol Metab. 2004;89(2):574-80. PubMed
- Arima H, Cheetham T, Christ-Crain M, et al. Changing the Name of Diabetes Insipidus: A Position Statement of the Working Group for Renaming Diabetes Insipidus. J Clin Endocrinol Metab. 2023;108(1):1-3. PubMed
- He W, Chen F, Dalm B, et al. Metastatic involvement of the pituitary gland: a systematic review with pooled individual patient data analysis. Pituitary. 2015;18(1):159-68. PubMed
- Habu M, Tokimura H, Hirano H, et al. Pituitary metastases: current practice in Japan. J Neurosurg. 2015;123(4):998-1007. PubMed
- Ricciuti RA, Paracino R, Mancini F, et al. Clinical and neuroradiological red flags in differential diagnosis of pituitary metastases and PitNETs (adenomas): a surgeon’s experience and systematic literature review. Neurol Neurochir Pol. 2025;59(3):254-271. PubMed
- Zhu M, Hu J, Yang Y, et al. Differentiating pituitary metastases from pituitary neuroendocrine tumors in patients with a history of malignancy: clinical and magnetic resonance imaging features and quantitative morphometric analysis. Neuroradiology. 2026. PubMed
- İşler AO, Sendur SN, Gocmen R, et al. An endocrinological point of view on a large series of pituitary stalk lesions. Pituitary. 2025;29(1):11. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

無料講座
腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
