髄膜腫(meningioma)とは?

  • くも膜の表層細胞由来の腫瘍。
  • 原発性頭蓋内腫瘍の15〜20%に見られ、頭蓋内脳実質外腫瘍の中で最も多い
  • 硬膜と広基性に発育し、大部分は良性である。
  • 髄膜皮細胞由来の腫瘍。髄膜皮細胞はくも膜に分布し、くも膜顆粒(傍矢状静脈洞周囲に多い)に集簇する。脈絡叢にも分布する。上皮性、間質性の両者の性質を持つ。
  • 中年から高齢者に見られ、やや女性に多い(1:2)。脊柱管内の髄膜腫は女性に多い。(1:10)。悪性髄膜腫はやや男性に優位。
  • 無症候性が多い。頭痛、嘔吐、吐き気、痙攣、認知症など。局所症状は、発生部位に依存。
  • 発生部位は90%はテント上(円蓋部>蝶形骨部>傍矢状部>大脳鎌>嗅窩>頭蓋底>側脳室など)、8〜10%はテント下(小脳テント>小脳橋角部>小脳半球)に見られる。
  • 組織学的にサブタイプが多く、低〜高悪性度の15亜型ある。
  • 髄膜皮型meningothelialが最多。他、線維性fibrous、移行型transitional、血管腫型angiomatousなど。
  • WHO分類はgrade l〜IIIがあるが、90%はgrade lの良性。
  • 組織的には良性でも発生部位により治療が難しく、臨床的には悪性の場合がある。
  • 形状:典型的には硬膜に広く接する腫瘤、時にキノコ状、時に平坦 en plaque meningioma、時に多結節状、時に硬膜構造をまたがる。
  • 偶発的に髄膜腫が発見された場合、蝶形骨縁内側型の髄膜腫以外はMRIで経過観察をする。当初は6ヶ月ごと2回して、その後は1年に1回の経過観察を行う。蝶形骨縁内側型の場合は、視力障害発症後は回復が困難な場合があり、予防的に手術が行われる(脳ドックのガイドライン2019

WHO gradeによる亜型

  • WHO grade Ⅰ

Meningothelial , Fibrous , Transitional , Psammomatous , Angiomatous , Microcystic , Secretary , Lympholasmacyto-rich , Metaplastic

  • WHO gradeⅡ

Atypical , Clear cell , Chordoid

  • WHO gradeⅢ

Rhabdoid , Papillary , Anaplastic※脳浸潤があればgrade Ⅱ

髄膜腫の画像所見

CT所見

  • CTでやや高吸収で、石灰化や骨肥厚(20%)が見られることが多い。他、Blistering(骨の膨隆、副鼻腔の拡大)、溶骨性変化は稀。
  • CTで正常脳実質に比し、高濃度70%、等濃度20%、低濃度5%。腫瘍内石灰化(約20%)、均一な造影増強効果。

MRI所見

  • MRIではT1WI、T2WIで灰白質とほぼ等信号を示すことが多い。
  • 造影にて強い増強効果が見られる。
  • 基本的に造影効果は均一だが、不均一なこともしばしばあり、嚢胞や壊死を反映している。
  • T2WIではさまざまな信号強度を示す(内部のfocalな低信号は血管や石灰化を反映、sun-burst様のflow voidを示す事がある)。
  • dural tail signと呼ばれる増強効果を有する硬膜の肥厚像が診断に有用だが、特異的な所見ではない。
症例 70歳代女性

meningioma

大脳鎌に接する腫瘤性病変を認めています。

dural tail signを呈しており、髄膜腫を疑う所見です。

症例 60歳代女性

meningioma1

CSF cleft sign及び、T2強調像で低信号を示す脳表の血管の偏位を認めています。

extra-axial tumorが疑われます。手術の結果、髄膜腫と診断されました。

症例 髄膜腫(50代女性 Fibrous&Transitional、WHO gradeⅠ)

meningioma1

単純CTで高位円蓋部から側脳室レベルまで辺縁に石灰化を有する高吸収腫瘤あり。

大脳鎌に接しています。
meningioma2

T2強調像では腫瘤の内部は淡い高信号を認めており、内部にはflow voidを疑う低信号あり。

またCTで認めた石灰化部位に一致して、低信号あり。

meningioma3

造影MRIでは腫瘍は均一に著明な造影効果を認めており、大脳鎌に接していることがわかる。

meningioma4

血管造影では、左外頚動脈造影で、腫瘍は中硬膜動脈より栄養されていることがわかり、脳実質外腫瘍であることがわかる。

髄膜腫を疑う所見です。

動画で学ぶ髄膜腫(50代女性 Fibrous&Transitional、WHO gradeⅠ)
症例 60歳代男性 蝶形骨部髄膜腫

meningioma2

蝶形骨部にdural tail signを有する腫瘤あり。髄膜腫を疑う所見です。

血管造影

  • Feederとなる血管の拡張(外頸動脈系)中硬膜動脈>副硬膜動脈、上行咽頭動脈髄膜枝、後頭動脈硬膜枝、眼動脈髄膜枝、meningophypophyseal trunk、脈絡叢動脈。
  • 腫瘍中心部でのsunburst appearance:硬膜付着部から栄養血管が腫瘍内に放射状に分布する所見。
  • 全体としてほぼ一様に早期相から造影。

放射線誘発髄膜腫とは?

  • 放射線治療後10年以降に出現する髄膜腫。
  • 若年者に照射例で出現までの時間が短い。
  • 放射線照射部近傍に発生。
  • 多発性の頻度が通常の髄膜腫より高い。
  • 悪性度の高い髄膜腫の頻度が通常より高い。

悪性度の高い髄膜腫は?

  • WHO grade Ⅱ5-7%、grade Ⅲ 3-5%。
  • 悪性髄膜腫は男性の頻度が低くはない。
  • 再発時に悪性化する場合あり。

出血の合併は?

  • 頻度は1-3%程度。腫瘍内出血、脳実質内出血、慢性硬膜下血腫、くも膜下出血。
  • ガンマナイフ後、術前塞栓術後、悪性度の高い髄膜腫、原因不明など。

髄膜腫の嚢胞形成は?

  • 特定の組織型に特異的ではない。
  • 嚢胞と腫瘍、脳実質の位置により4パターン(Nautaの分類)。

1. central located intratumoral cyst
2. peripherally located intratumoral cyst
3. peritumoral cyst in the adjacent parenchyma
4. peritumoral cyst between the tumor and the adjacent paranchym

  • 原因は中心壊死、腫瘍の分泌、反応性変化、小嚢胞の集簇、脳脊髄液のtrap。

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