先に結論:ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)とは
- ランゲルハンス細胞に似た細胞が増えて、骨・皮膚・肺・下垂体などに病変をつくる病気です(以前は histiocytosis X と呼ばれました)。1〜15歳の小児に多いですが、成人にも起こります
- 骨(とくに頭蓋骨)が最も多い病変部位で、頭蓋骨の打ち抜き像や、背骨がつぶれる扁平椎(vertebra plana)をつくります。下垂体・視床下部に起こると尿崩症(のどが渇き尿が多い)が出ます
- 扁平椎は小児ではLCH(好酸球性肉芽腫)の代表ですが、成人ではまれです。成人で椎体が平たくつぶれていたら、まず転移・骨髄腫・感染・外傷性の圧迫骨折を考え、LCHは生検で確かめます
- 成人の喫煙者では肺に起こり(肺LCH)、CTで上・中肺野優位のいびつな嚢胞と結節が特徴。禁煙だけで良くなることが多いです
- まれな病気で、イングランドの全国登録では小児100万人あたり年4.46人、成人(15歳以上)100万人あたり年1.06人でした(Liu 2022)。成人では多臓器に病変が及ぶ例が多いとされます
- 甲状腺にも病変ができ、尿崩症・甲状腺機能低下症・首の腫れを伴う多臓器型で見つかることが多く、甲状腺の穿刺で診断がつくこともあります
ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis(LCH))
- Langerhans cell(に似た細胞)の増殖。以前は非腫瘍性(反応性)の病気と考えられていたが、BRAF V600Eなどの遺伝子変異が見つかり、現在は骨髄系の腫瘍性疾患と位置づけられている。従来histiocytosis Xといわれた。
- 1〜15歳の小児に好発する(男>女)。
- 病変は頭蓋骨を含めた骨に好発するが、皮膚、リンパ節、胸腺、耳、骨髄・末梢血、肝、胆嚢、脾、肺、内分泌腺、消化管などにも生じ、中枢神経系病変を認めることもある。
- 病期に応じて椎体は種々の程度に圧潰するが、すっかり扁平化することもある(Calve扁平椎、vertebra planaと呼ばれる。)。
- 中枢神経系では視床下部下垂体系に好発し、尿崩症や成長障害を来す。尿崩症が初発症状のこともある。
- CD1aに特異的に染色反応をする。組織球が免疫染色でCD1a陽性または電子顕微鏡で Birbeck顆粒と呼ばれる特殊な構造を持っていると診断は確定。
- 主に3つに分けられる。なお、この古典的な3分類は現在ではあまり用いられず、病変が1臓器か多臓器か、肝・脾・造血器などのリスク臓器に浸潤しているかで分類して治療方針を決めるのが一般的です。
LCHの症状(小児・成人)
症状は病変のできる場所によって異なります。
- 骨:痛み・腫れ・こぶ(頭蓋骨では頭のふくらみとして気づかれることも)
- 皮膚:脂漏性皮膚炎(乳児湿疹)に似た発疹やかさぶた。頭皮・わきの下・陰部などに出やすい
- 下垂体:のどが渇いて尿が多くなる(尿崩症)、成長障害
- 肺:咳・息切れ、気胸
成人274例の国際登録では、発症は平均33歳、喫煙者が47.1%、単一臓器型は31.4%(うち肺のみ44例)、多臓器型が68.6%で、尿崩症は29.6%にみられました(Aricò 2003)。成人でも骨・皮膚・肺・内分泌の病気として考える必要があります。気になる症状が続くときは医療機関を受診してください。

好酸球性肉芽腫(eosinophilic granuloma)
- 成人の喫煙者の肺病変
- 骨病変(頭蓋骨、骨盤、肋骨、長管骨)
肺好酸球性肉芽腫症/肺Langerhans細胞組織球症
- 20~40歳代の若年成人の喫煙者に多く(最近の報告では性差はほとんどない)、主訴は咳嗽、喀痰。
- 90〜95%に喫煙歴がある(Radzikowska 2020)。
- 上中肺野優位のいびつな形の嚢胞(厚壁〜薄壁、円形〜いびつな形状)、空洞形成、結節、小葉中心性の粒状影。
- 好酸球とLangerhans組織球からなる肉芽腫の形成を病理学的特徴とする。
- 禁煙のみで軽快することが多い。2022年の成人LCHの国際専門家コンセンサスでは、病期診断と治療効果判定の多くにFDG-PET/CTを用いることが勧められ、喫煙関連の単一臓器肺LCHの第一選択治療は引き続き禁煙とされています。多臓器病変などでは全身治療(クラドリビン、シタラビン、BRAF阻害薬・MEK阻害薬)が用いられます。
- まれに急速に呼吸不全に陥る。
症例 20歳代男性 過去5年間、1日30本の喫煙あり。 呼吸困難、乾性咳嗽、倦怠感あり。

引用:Radiopaedia
間質肥厚と小さな結節が気道の周りに分布しており、両肺上肺野優位にさまざまなサイズ、形状、壁厚の嚢胞性病変を認めています。
肺好酸球性肉芽腫症/肺Langerhans細胞組織球症(LCH)と診断されました。
Hand-Schuller-Christian disease
- 小児
- 視床下部病変による尿崩症
- 多発骨病変
Letterer-Siwe病
- 急性に多発臓器に浸潤する。
骨病変の画像所見(頭蓋骨・扁平椎)
- 頭蓋骨:硬化縁の目立たない打ち抜き像(punched-out lesion)。外板と内板の壊れ方に差があり、縁が二重に見えるbeveled edgeが特徴です。病変内に骨片が残るbutton sequestrumや、多発して地図状になることもあります。CT・MRIでは周囲の軟部腫瘤も評価します。
- 扁平椎(vertebra plana):椎体が薄くつぶれますが、上下の椎間板腔は保たれます。小児の扁平椎の代表的な原因ですが、外傷を除く小児27例の検討では好酸球性肉芽腫(LCH)は12例で、6例は白血病など別の腫瘍でした(Baky 2020)。扁平椎だけでLCHと決めず、生検を含めて評価します。
- 長管骨・骨盤:骨幹〜骨幹端の溶骨性病変で、骨膜反応を伴うことがあります。
扁平椎(vertebra plana)の鑑別:小児と成人で違う
扁平椎は「椎体が薄くつぶれ、上下の椎間板が保たれる」形を指す見え方の名前で、原因はひとつではありません。小児と成人で考える順番が変わります。
- 小児:LCH(好酸球性肉芽腫)が代表ですが、それだけではありません。外傷を除く27例の検討では、12例がLCHで、6例は急性リンパ性白血病・胚細胞腫瘍・巨細胞腫・横紋筋肉腫・奇形腫など別の腫瘍でした。生検した17例のうち、LCHと一致したのは6例、ほかの診断が6例、診断がつかなかったのが5例でした(Baky 2020)。
- 成人:成人でLCHが脊椎にできることはありますが、頸椎のLCH(成人の報告62例)では椎体がつぶれて扁平椎の形になったのは2例とまれでした(Prasad 2019)。成人の骨LCH12例の報告でも、画像は境界が不明瞭な溶骨性病変で、皮質の侵食や軟部への進展を伴うことが多いとされています(Javadi 2023)。
- 結核性脊椎炎:成人の結核性脊椎炎451例のうち、扁平椎のようにつぶれたのは11例(2.4%)で、椎体終板と椎間板は保たれました。硬膜外や椎体周囲の軟部組織の腫瘤、椎弓などの後方要素の病変があるのが手がかりです(Sureka 2013)。
| 子ども | 大人 | |
|---|---|---|
| まず考える | LCH(好酸球性肉芽腫) | 転移・多発性骨髄腫・悪性リンパ腫、骨粗鬆症などによる圧迫骨折、感染(結核性脊椎炎など) |
| ほかに考える | 白血病などの腫瘍(Baky 2020) | LCHはまれ。つぶれ方は扁平椎でないことが多い(Prasad 2019) |
| 確定のために | 画像だけで決めず、病変の範囲(多発か単発か、軟部の腫瘤、椎弓の病変)をMRI・CTで確かめ、生検で診断します | |
扁平椎は椎間板が保たれる点がLCHの特徴とされますが、結核性脊椎炎でも同様の像があります。形だけでなく、軟部腫瘤、後方要素の病変、全身の骨の状態を見て絞り込みます。成人で背中の痛みが続くときは、整形外科などを受診してください。
LCHの頭蓋内病変
- 中枢神経系では、視床下部下垂体系に好発する。
- 尿崩症を来すと下垂体後葉のT1強調像での高信号が消失する。
- 下垂体柄の腫大や腫瘤形成と増強効果を認めることもある。
- 小脳歯状核や脳幹にT2WI高信号域が見られることあり。
甲状腺のLCH
甲状腺はLCHの病変部位としてあまり知られていませんが、まれではありません。1施設のLCH患者では、甲状腺病変が小児の14.00%(50人中7人)、成人の10.10%(198人中20人)にみられました(Li 2022)。
| 項目 | 報告されている特徴 |
|---|---|
| 症状 | 甲状腺LCH27人のうち81.5%が尿崩症で始まり、51.9%が首の腫れ・しこりを訴えました(Li 2022) |
| ほかの病変 | 甲状腺病変のある人は、ない人に比べて視床下部・下垂体と肺の病変が多く、骨の病変は少なめでした(Li 2022)。成人36人では35人が多臓器型で、下垂体(88.6%)・肝(45.7%)・リンパ節(54.3%)の病変が多くみられました(Cai 2022) |
| 甲状腺機能 | 原発性の甲状腺機能低下症が多く(Li 2022)、成人36人中16人で甲状腺機能の異常があり、治療後も12人で機能低下が続きました(Cai 2022) |
| 超音波 | 甲状腺全体に広がるびまん型が55%、結節型が45%(Li 2022)。小児では、甲状腺に散らばる、あるいはびまん性の不整な低エコー域としてみられました(Yang 2025) |
| FDG-PET/CT | 甲状腺のSUVは5.3〜12.8でした(Li 2022) |
| 診断 | 穿刺吸引(54.5%)か手術(45.5%)で確定しました。甲状腺乳頭癌の合併も27人中2人にあり(Li 2022)、成人36人でも3人にみられました(Cai 2022) |
読影のポイント
- 甲状腺のびまん性腫大や低エコー域は橋本病・亜急性甲状腺炎に似るため、尿崩症や肺の嚢胞・結節、下垂体柄の腫大がある人では甲状腺LCHを鑑別に入れる
- 逆に、甲状腺の異常からLCHが疑われたときは、下垂体(MRI)と肺(CT)の病変を確認する
- 結節型では甲状腺癌との区別が問題になり、乳頭癌が一緒にみられることもあるため、穿刺や手術の病理で確かめる
首の腫れ、のどの渇きと尿の多さが続くときは、医療機関を受診してください。
LCHでよくある疑問(Q&A)
Q. 子どもの背骨がつぶれていたら、LCHですか?
A. LCHは代表的な原因ですが、すべてではありません。外傷を除いた小児の扁平椎27例では、LCHは12例で、白血病など別の腫瘍が6例ありました(Baky 2020)。生検を含めて評価します。
Q. 大人の扁平椎もLCHですか?
A. 大人ではまれです。成人の頸椎LCH62例のうち、扁平椎の形になったのは2例でした(Prasad 2019)。成人で椎体がつぶれているときは、転移・骨髄腫・感染・圧迫骨折などを先に考えます。
Q. 大人のLCHで気をつけることは?
A. 成人274例の登録では多臓器型が68.6%、尿崩症が29.6%にみられました(Aricò 2003)。骨の病変だけでなく、全身の評価(皮膚・肺・下垂体など)が必要です。のどが渇いて尿が多い、咳や息切れが続くなどの症状があれば、医療機関を受診してください。
参考文献
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- Liu H, Stiller CA, Crooks CJ, et al. Incidence, prevalence and survival in patients with Langerhans cell histiocytosis: A national registry study from England, 2013-2019. Br J Haematol. 2022;199(5):728-738. PubMed
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- Baky F, Milbrandt TA, Arndt C, et al. Vertebra Plana in Children May Result from Etiologies Other Than Eosinophilic Granuloma. Clin Orthop Relat Res. 2020;478(10):2367-2374. PubMed
- Prasad GL, Divya S. Eosinophilic Granuloma of the Cervical Spine in Adults: A Review.. World Neurosurg. 2019;125:301-311. PubMed
- Javadi T, Hill C, McLemore ML, et al. Adult-onset Langerhans cell histiocytosis of bone: A case series highlighting a rare entity.. Ann Diagn Pathol. 2023;66:152171. PubMed
- Sureka J, Samuel S, Keshava SN, et al. MRI in patients with tuberculous spondylitis presenting as vertebra plana: a retrospective analysis and review of literature.. Clin Radiol. 2013;68(1):e36-42. PubMed
- Radzikowska E. Update on Pulmonary Langerhans Cell Histiocytosis.. Front Med (Lausanne). 2020;7:582581. PubMed
- Li Y, Chang L, Chai X, et al. Analysis of thyroid involvement in children and adult Langerhans cell histiocytosis: An underestimated endocrine manifestation. Front Endocrinol (Lausanne). 2022;13:1013616. PubMed
- Cai HC, Liu T, Cai H, et al. Adult Langerhans cell histiocytosis with thyroid gland involvement: clinical presentation, genomic analysis, and outcome. Ann Hematol. 2022;101(9):1925-1929. PubMed
- Yang J, Huang X, Bao Z, et al. Langerhans cell histiocytosis in children: the value of ultrasound in diagnosis and follow-up. BMC Med Imaging. 2025;25(1):29. PubMed
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