【胸部】TIPS症例31
【症例】60歳代男性
【現病歴】肺癌検診の胸部XPで異常陰影を指摘された。
【既往歴】脊髄腫瘍にて手術(12年前)
【生活歴】喫煙 40本/日×50年、飲酒なし、職業:粉塵ばく露なし。
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異常所見と診断は?
まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
ちょっと気づきにくいかもしれません(個人的にはなかなか厳しいと思ってしまいました(^_^;))が、右下肺野内側に椎体側から突出する腫瘤影を認めています。
これをCTで確認してみましょう。
後縦隔右側に腫瘤影を認めています。
縦隔条件で、腫瘤は椎間孔に入り込んでいる様子が分かりますが、脊柱管の中には入っておらずいわゆるダンベル型の形態ではないことがわかります。
ダンベル型ではありませんが、このような椎間孔に入り込むような様子は、神経原性腫瘍を示唆する所見です。
また、中葉に微小結節を認めています。
MRIが撮影されました。
腫瘤は、T2WIで筋肉よりもやや高信号で内部はやや不均一であることがわかります。
また低信号の被膜を有しており、CTよりも椎間孔に入り込む様子がよく分かりますね。
またCTでも指摘できますが、大きな腫瘤のやや外側にも小さな腫瘤を認めていることが分かります。
DWIでは一部高信号ですが、ADCの明らかな信号低下は認めず、T2WIで高信号による影響を受けたT2 shine throughが疑われます。
これらの所見は神経原性腫瘍、中でも神経鞘腫を疑う所見として合致します。
診断:神経鞘腫疑い
※手術が施行され、病理学的にも神経鞘腫(線維性被膜を持つ境界明瞭な腫瘍で、好酸性の紡錘形細胞が束状、渦状に増殖している。核のpalisadingが見られる。細胞密度は高いが、細胞異型に乏しく、悪性所見はなし。)と診断されました。
最終診断:神経鞘腫
※実は病歴にもあるように12年前に脊髄腫瘍にて手術歴があります。これは実は後縦隔の神経鞘腫であったようで、今回はその断端再発であると術後診断(病理学的に当時と同じ組織像である)されました。
また今回レントゲンで気腫性変化を認めています。
正常ならば第6前肋骨と肺の下縁が交差しますが、今回は第7前肋骨と交差しており、過膨張が疑われます。
また両側肋骨横隔膜角(CP angle)の鈍化を認めています。
CTではどうでしょうか?
CTでは小葉中心型の気腫性変化を広範に認めています。
気腫を目立たせるようにCT値を調整するとさらに明瞭になります。
両側広範な小葉中心型の気腫性変化を認めています。
この小葉中心型の気腫性変化は喫煙と関連があるのでした。今回の生活歴である、喫煙 40本/日×50年というのにも合致します。
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【胸部】TIPS症例31の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
schwannomaだったんですね。普通に他に悪性疾患があって骨メタかと思いました。聴神経の時と同じように神経の穴からはみ出した感じになっているのですね。体幹部でschwannomaのイメージ自体がなく12年前の既往歴を見ていたにもかかわらず、思いつかなかったです。ネット記事で聴神経のschwannomaは大きくなったり小さくなったりするので不用意に切らないで、切る時期を見極めるのが名医と書かれていたことが記憶にあるのですが、体幹部でも大きくなったり小さくなったりするのでしょうか?ぐぐったらそのような記載は一例だけ見つかりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>体幹部でschwannomaのイメージ自体がなく12年前の既往歴を見ていたにもかかわらず、思いつかなかったです。
後縦隔腫瘍といえば、神経原性腫瘍が第一ですので、覚えておきましょう。
神経根発生の神経鞘腫がダンベル型になる印象ですが、肋間神経発生の神経鞘腫が椎間孔から侵入してダンベル型になる頻度は高いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように神経根発生の神経鞘腫がダンベル型になることが多いですね。
肋間神経発生の神経鞘腫が椎間孔から侵入してダンベル型になる頻度は高いかはちょっとわかりません。
また時間見つけて調べてみます。
神経腫瘍の鑑別もあまり知らないのですが、鞘腫鞘腫を一番見る気がします。造影したら均一に染まるイメージがあります。
アウトプットありがとうございます。
神経鞘腫が多いですね。均一に軽度染まりますが、わかりにくいものもありますね。
知らないと鑑別すら思いつかないですね。
縦隔毎の腫瘍の鑑別は知っておかなければダメなんですね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。部位ごとで頻度の多い疾患はある程度分かっておく必要がありますね。
最低限は国家試験でもやりましたね。
こんばんは、本日もご解説ありがとうございました。
胸部X線ではなかなか所見を指摘するのが難しかったです。胸部CTを見たあと、X線も確認してみたのですが、それでもちょっとむずかしかったです…。
しかし、胸部CT所見から最近の出題傾向から予想して、回答することができました。
いままで、ざっくりと「神経原性腫瘍」と捉えていたものにもいろんな種類があることがわかり、勉強になりました!
アウトプットありがとうございます。
>胸部X線ではなかなか所見を指摘するのが難しかったです。胸部CTを見たあと、X線も確認してみたのですが、それでもちょっとむずかしかったです…。
ですね。レントゲンでの指摘は難しいと思います(特にこの環境では・・・)。
両側第一肋軟骨の石灰化、第9後肋骨あたりの脊椎右縁に骨棘、色々復習になりました。
右肺尖部が左肺尖部に比べて透過性が低下しているなと思いましたが、加齢性変化だったのでしょうか。。
あと、奇静脈食道線の消失!と思いましたが、今見ると、後出しジャンケンですが、うっすらと見える、、と思います笑
この人は奇静脈と食道が潰れ気味であまりX線と接線を作らないからうっすらとしか映らないんだろうなぁと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>両側第一肋軟骨の石灰化、第9後肋骨あたりの脊椎右縁に骨棘、色々復習になりました。
そうですね。これまで見てきたものも出てきていますね。
>右肺尖部が左肺尖部に比べて透過性が低下しているなと思いましたが、加齢性変化だったのでしょうか。。
CTで見ると特に左右差はなさそうです。両側で気腫性変化を認めていますね。
>あと、奇静脈食道線の消失!と思いましたが、今見ると、後出しジャンケンですが、うっすらと見える、、と思います
今回の症例で奇静脈食道線を引いてみました。
ちょっとレントゲンは見えにくいですが、おっしゃるようにうっすら見えています。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/wp-content/uploads/2020/05/Azygoesophageal-line.png
ありがとうございますm(__)m
いつも勉強させていただきありがとうございます。
質問したいのですが、胸郭の拡大縮小を肋骨で数えて判断する時に、私は第10肋骨の背側が横隔膜と交わるのを正常と判断する基準にしています。この基準で判断していて問題ないですか?ちなみに私は学生です。
アウトプットありがとうございます。
>私は第10肋骨の背側が横隔膜と交わるのを正常と判断する基準にしています。この基準で判断していて問題ないですか?
問題ないです。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/26594
にあるように、横隔膜は第10後肋間、第6肋骨前縁にある。のでどちらで覚えても大丈夫です。
いつもありがとうございます。神経鞘腫のあるスライス114-119で椎体から右側に突出してみえる椎体と同等の高吸収域はなんでしょうか。椎体の変形でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>神経鞘腫のあるスライス114-119で椎体から右側に突出してみえる椎体と同等の高吸収域はなんでしょうか。椎体の変形でしょうか?
症例6ででてきたやつですね。
症例6
https://imaging-diagnosis.com/view/Y7aEN2hc
両側の腋窩リンパ節腫大があるように見えて、脊髄腫瘍の再発、転移かしらと思いました。
胸部レントゲンでは、左肺に比べて右肺が全体的に透過性が落ちているように思いました。
レントゲンで腫瘤を指摘するのは難しそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>両側の腋窩リンパ節腫大があるように見えて、脊髄腫瘍の再発、転移かしらと思いました。
腋窩リンパ節腫大はなさそうです。
>レントゲンで腫瘤を指摘するのは難しそうですね。
個人的には厳しいと思いました(^_^;)
よく指摘されたなと思います。