【胸部】TIPS症例30
【症例】40歳代女性
会社の健診の胸部レントゲンで異常を指摘され、精査となる。
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異常所見と診断は?
まずは胸部レントゲンから見ていきましょう。
奇静脈弓が(1.5cm大に)拡大していることが分かります。
リンパ節腫大でもあるのでしょうか?
次にCTを見てみましょう。
すると気管分岐部やや右側後方の中縦隔に単房性嚢胞性病変を認めています。
奇静脈を右側に圧排していることがわかります。
これが原因でレントゲン上で奇静脈弓が拡大していたことが推測されます。
レントゲン写真上で輪郭を形成するためにはX線が入射する前後方向と接線を形成しないといけないのでした。
その目で見てみましょう。
すると、嚢胞そのものも、嚢胞に押された奇静脈が接線を形成していることがわかります。
さて、この正体は何でしょうか?
- 単房性の嚢胞性病変である。
- 中縦隔に存在する。
- 気管や気管支に接して存在する。
- 気管分岐部に認めている。
といった点から、最も頻度が高く疑わしいのは、気管支原性嚢胞と言うことになります。
診断:気管支原性嚢胞の疑い
※この症例は手術が施行されておらず、「気管支原性嚢胞疑い」ということになります。手術を施行すると、心膜嚢胞などの可能性はもちろんあります。
関連:
その他所見:
- 左腋窩に小リンパ節あり。
- 右乳腺C領域の7mm大の造影結節あり。USで精査され、線維腺腫疑い。
【胸部】TIPS症例30の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
胸部X-Pの読影には「右気管傍線」や「奇静脈弓」の確認を忘れずに行いたいです。
アウトプットありがとうございます。
>「右気管傍線」や「奇静脈弓」の確認を忘れずに行いたい
そうですね。私もここはやや苦手なところですが、今回の症例のような突出像ならば気づかないとダメですね。
APwindowといい奇静脈弓といい、レントゲンで日頃から確認していないことを思い知らされます。
勿論ラインの違和感を感じることが大事ですが、この辺りの疾患も頭に入ってないとイメージできないですね。
アウトプットありがとうございます。
>APwindowといい奇静脈弓といい、レントゲンで日頃から確認していないことを思い知らされます。
そうですね。明らかな肺癌や肺炎の見落としをしないことがまずは大事ですね。
APwindowや奇静脈弓といったリンパ節腫大の可能性を教えてくれたり、下大静脈が閉塞していることを示唆してくれたりと、レントゲンしか撮影されていない場合はCT撮影のきっかけとなるこれらの所見も知っておきたいところです。
まずはこの講座で「そういえば、そんなものもあったなあ!」程度でいいので、一度体験していただけたらと思います。
いろいろな名称の嚢胞があるのですね。勉強になります。頻度の多い場所を紹介してくださっているのしょうが結構多く驚いています。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>いろいろな名称の嚢胞がある
いろいろありそうですが、ここまでで出てきた嚢胞で大半を占めることになります。
好発部位は一応あるので覚えておきましょう。
ただし、手術してみると病理は別の嚢胞だったと言うこともしばしばありますので、画像で決めつけはNGですね。
レントゲンでは全然読めてませんね。
レントゲン講座をして欲しくなってきました笑
アウトプットありがとうございます。
レントゲンは私も苦手ですので、私もして欲しいくらいです(^_^;)
いつもお世話になっております。本日もよろしくお願いいたします。
嚢胞の位置が後縦隔にも跨っているような気がして、後縦隔腫瘍の神経原性腫瘍(peripheral nerve sheath tumor,sympathetic ganglia tumors,paraganglioma)を鑑別に挙げてしまいましたが、「嚢胞」性病変なので、充実性病変であるこれらの腫瘍は鑑別からは除外するべきだったなぁと思いました。
乳房C領域の腫瘤性病変は気がつけず残念でしたが…根気強く、以前教えていただいた読影の手順を実践し続けます!
アウトプットありがとうございます。
>「嚢胞」性病変なので、充実性病変であるこれらの腫瘍は鑑別からは除外するべきだったなぁと思いました。
おっしゃるように後縦隔にもかかっていますね。
CTでは嚢胞のように見えますが、実際はMRIを撮影されて本当に嚢胞なのかのチェックもしたいところです。
ですので、鑑別に挙げることはよいと思います。
>乳房C領域の腫瘤性病変は気がつけず残念でしたが…根気強く、以前教えていただいた読影の手順を実践し続けます!
確かに今回ちょっと気づきにくいですね(^_^;)
今回の症例も経験できてとても良かったです。
レントゲンだけを見た時点で奇静脈弓部位の突出に気付けましたが、精査に回そうと思うほど確信はなかったです。
やはり先生のおっしゃる通り、”人は経験したことのない動きは出来ない”ですね。
あと、繊維腺腫も見つけたかったです>_<
アウトプットありがとうございます。
>レントゲンだけを見た時点で奇静脈弓部位の突出に気付けましたが、精査に回そうと思うほど確信はなかったです。
検診の場合は、おかしいかもと思ったら引っかけた方がいいですね。頻度が多すぎたら問題ですが。
実際、レントゲンで引っかかったけどCTではなんともなかったというケースは多々あります。
おかしいと思ったけどひっかけず翌年サイズが大きくなって指摘となると、前の年はどうだったのかと問題になることがあります(^_^;)
>あと、繊維腺腫も見つけたかったです>_< 言われてみれば・・・くらい気づきにくいかもしれませんね。