縦隔(読み方は「じゅうかく」)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
縦隔は胸部に位置し、大まかには左右の肺の間を指します。
では、縦隔には一体どのような臓器が含まれており、どのように分類されるのでしょうか?
今回は縦隔(Mediastinal)について、縦隔腫瘍取扱い規約第1版(2009年)に基づき、実際のCT画像や図(イラスト)を用いて、解剖から整理していきたいと思います。
そもそも縦隔とは?
縦隔とは、先ほど申し上げたように、胸部に存在します。
そして、大まかには左右の肺の間を縦隔と言います。
厳密には、左右の肺の壁側胸膜に覆われる領域を縦隔と言います。
上は胸郭入口部から、下は横隔膜までの範囲です。
胸部レントゲンで見てみますと大まかには下のようになります。
左右の肺の間が縦隔です。
そんな縦隔ですが、さらに細かく解剖は分かれています。
次に縦隔の解剖・分類についてお話しします。
縦隔の解剖は?
縦隔の解剖は、4つの部位に分けられます。
すなわち、
- 縦隔上部
- 前縦隔
- 中縦隔
- 後縦隔
の4部位です。
胸部を横から見た図でそれぞれの解剖は次のようになります。
前縦隔・中縦隔・後縦隔の上に縦隔上部が乗っかっているような形ですね。
それぞれ見ていきましょう。
前縦隔とは?
前縦隔は気管前面から心臓後面の線より前側(腹側)を指します。
後縦隔とは?
後縦隔は、椎体前縁より1cm背側の線より後側(背側)を指します。
中縦隔とは?
そして中縦隔は、それらの2本の線、すなわち
- 気管前面から心臓後面の線
- 椎体前縁より1cm背側の線
の間に囲まれた領域を指します。
縦隔上部とは?
縦隔上部はこれらの前・中・後縦隔の上に乗っかっている位置関係でしたが、その境界となる高さの目安は
- 左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さ
と定義されています。
また上方の境界は胸郭入口部であり、肺野が出てくる部位とほぼ同じ高さです。
(厳密には、胸郭入口部は、鎖骨、第一肋骨、第一胸椎、胸骨によって囲まれる狭い領域を指します。)
すなわち、これを先ほどのイラストに書き込むと下のようになります。
ここでわかりにくいのが、境界である、左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さです。
これは、胸部CTの横断像で見ればわかりやすく、そのレベルのCT画像は以下のようになります。
すなわち気管の真ん中を通る気管正中線と左腕頭静脈が交差しようとする高さです。
ここより上側に縦隔上部が存在するということがわかり、ここより下側に前・中・後縦隔が存在することがわかりますね。
縦隔上部が上下方向でどこからどこまでというのはわかったのですが、前後・左右方法は
- 前外側縁は内胸動静脈外縁
- 後外側縁は横突起の外縁で後胸壁に立てた垂線
と定義されています。
すなわち縦隔上部の部分は上の図の紫部分のようになります。
前・中・後縦隔とCT横断像の画像の関係
先ほどの左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さよりも下側に前・中・後縦隔は存在し、それぞれCT横断像との関係は下のようになります。
すなわち
- 赤いラインで囲まれた部分が前縦隔
- 青いラインで囲まれた部分が中縦隔
- 黄色いラインで囲まれた部分が後縦隔
となります。
では、次に縦隔に含まれる臓器について見ていきましょう。
縦隔に含まれる臓器は?
縦隔に含まれる臓器としては、
- 心臓・大血管
- 胸腺
- 気管
- 食道
- リンパ節
- 神経
が挙げられます。
しかしここで注意点として、疾患という意味では、心疾患、食道腫瘍は縦隔疾患に含めないのです。
ですので、縦隔に含まれる臓器に起こる病気としては、胸腺、リンパ節、神経由来の病気が該当するということになります。
縦隔リンパ節の番号は?
縦隔にはリンパ節がたくさんあり、胸部の炎症や腫瘍が原因となり、それらのリンパ節が腫大(腫れること)することがあります。
どこが腫大しているのかを言語化するために、それぞれのリンパ節には、番号がつけられています。
経験的に腫大を認める頻度が高い
- 気管傍リンパ節(#4)
- 気管分岐下リンパ節(#7)
などは覚えておいても良いと思いますが、全てを覚えるのは大変です。
そこで、ツールを活用されることをお勧めします。
知りたい部位にカーソルを合わせるとその部位のリンパ節の名前及び番号が表記される優れたツールです。
こちらからどうぞ→縦隔リンパ節診断に使えるツール
最後に
ちょっとややこしい縦隔の解剖・分類についてまとめました。
縦隔は4つの部位に分けられます。
それぞれの境界を意識して、縦隔の中でもどこに該当するのかを言語化できることが重要です。
また縦隔リンパ節の番号はよく出てくるところだけを覚えてあとはその都度ツールを活用するのもアリです!
参考になれば幸いです( ´∀`)