【胸部】TIPS症例32
【症例】70歳代女性
スクリーニング
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縦隔に認める異常所見と診断は?
前縦隔に境界明瞭な2cm大の腫瘤影を認めています。
内部は脂肪濃度を疑う不均一な低吸収域があり、また辺縁に石灰化を認めています。
(皆さんの環境では測定できないのですが)内部のCT値を測定するとマイナスであり、やはり脂肪の含有が示唆されます。
前縦隔腫瘤では大まかに以下の疾患を鑑別に挙げます。
- 胸腺腫
- 胸腺癌
- 悪性リンパ腫
- 成熟奇形腫
- 悪性胚細胞性腫瘍
- 縦隔内甲状腺腫
- 胸腺嚢胞
- 心膜嚢胞
- リンパ管腫
です。
前縦隔に多い腫瘍として、
①Thyroid(甲状腺腫)
②Thymus(胸腺腫)
③Teratoma(奇形腫)
で3Tと国家試験の時に覚えましたね。
で、今回のように、石灰化があり、内部に脂肪濃度を含む場合、まず考えるべきは、成熟奇形腫です。
MRIが撮影されました。
腫瘤はT2WIで内部不均一な高信号で、嚢胞性病変が疑われます。
また低信号の被膜構造を認めています。
またT1WIのin phase→opposed phaseにかけて内部の信号低下を認めています。
これは内部に(霜降り状の)脂肪が含まれていることを示唆する所見です。
嚢胞性の成熟奇形腫を疑う所見です。
診断:(嚢胞性)成熟奇形腫疑い
※この症例は手術が施行されていませんので、「疑い」とします。
関連:
その他所見:
- 甲状腺右葉にLDAあり。
- 右肺尖部にmixed GGOあり。フォローもしくは精査が必要。(肺癌の可能性がありますが、過去画像があり、3年前と著変なく経過していました。)
- 上行大動脈は47mm大と拡張あり。
- 胆石あり。
- 動脈硬化あり。
【胸部】TIPS症例32の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
まずは、mixed GGOの方が気になりました(^^;)
どんな腫瘤影にも言えることですが…、内部構造を丁寧に読むことが重要だと思いました。前回の神経鞘腫でもそうでしたが、「病理」と「画像」を照らし合わせ画像診断を考えることが大切だと実感します。
アウトプットありがとうございます。
>mixed GGOの方が気になりました(^^;)
確かにそこに目が行きますね。単発で見たら悪性を疑ってしまいます。
>内部構造を丁寧に読むことが重要だと思いました。
そうですね。最終的には摘出しないと確定できなくても、内部構造からより○○ぽいと推測することは治療方針に関わり重要ですね。
前縦隔の鑑別多いですね・・・
とりあえず3Tも覚えてなかったのでここだけでもおさえます。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
縦隔は多いですし、画像だけではなんともということが多いので私もあまり好きではありませんが(^_^;)
とりあえず、3T覚えておいてください。
3T・・・
そんなのあったなという感じです笑
勉強してなければ忘れてしまいますね.
ありましたね。
前縦隔腫瘍でも、今回の奇形腫なら問題にならないと思いますが、浸潤性の胸腺腫などがあるのに、「肺炎なし」で救急で帰すと後に問題になることもあるかもしれません。
縦隔もしっかり見るようにしましょう。
こんにちは。いつもお世話になっております.
奇形腫のほうはわかったのですが…
mixed GGOは違和感に気が付かなければならない所見なのですね!
胸膜肥厚の近くにあったので区別をつけずに見逃してしまいました.
「肺尖部に胸膜肥厚が認められたときはそこに腫瘍性病変が隠れていないか慎重に読影しなければならない」という教訓が得られました.
アウトプットありがとうございます。
>奇形腫のほうはわかったのですが…
mixed GGOは違和感に気が付かなければならない所見なのですね!
胸膜肥厚の近くにあったので区別をつけずに見逃してしまいました.
実際の読影の際には救急であったとしても、mixed GGOには気づきたいところです。
ただし、今回は、「縦隔に認める異常所見と診断は?」にあまりに引っ張られますね。すいません(^_^;)
>「肺尖部に胸膜肥厚が認められたときはそこに腫瘍性病変が隠れていないか慎重に読影しなければならない」という教訓が得られました.
左右差がある場合は特に注意ですね。
縦隔腫瘍はほとんど無症状のようですので、偶然発見されるものが多いと思われます。
まずはその存在をチェックできること、3Tなど主だったものの鑑別がある程度できるようになりたいものです。
アウトプットありがとうございます。
>縦隔腫瘍はほとんど無症状のようですので、偶然発見されるものが多いと思われます。
おっしゃるとおりです。
胸部CTではつい肺野ばかりに目が行きがちですが、縦隔腫瘍が隠れていることもありますので、縦隔条件もきちんと見ることがまずは重要ですね。
>まずはその存在をチェックできること、3Tなど主だったものの鑑別がある程度できるようになりたいものです。
鑑別は難しいこともありますが、特徴的なものは診断したいですね。
いつもありがとうございます。
今回の症例ですが、CTでも成熟奇形腫とあたりをつけられるのであれば追加でMRIによる精査を行う必要は必ずしもないと考えて良いでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。CTでフォローして良いと考えられます。